日本株

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。


システムトレード

【Youtubeで解説】板は厚い方に動く?大衆心理と板の読み方を徹底解説!


※動画が見られない方は コチラ からご覧ください。

板とは

株式投資における板とは、現時点での買い注文と売り注文の状況を示したものです。

板を見ることによって、その銘柄に現在出されている売り注文と買い注文について、それぞれどの価格帯でどの程度の注文数量が出ているのかを確認することができます。

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上の画像は、世界的自動車メーカーの【7203】トヨタ自動車の板です。

現在価格は1,839.0円であり、左上の売り板では1,839.0円に28,000株の売り注文が出ており、右下の買い板では1,838.5円に30,200株の買い注文が出ている状況です。

株式市場では、買い注文は価格が高い順番に、売り注文は価格が安い順番に約定されていくため、現在価格である板の真ん中に近い順に注文が約定されていきます。

また、板に出ているのは指値注文の状況であり、すぐに取引を行う成行注文が入った場合には、現在の板の状況に応じて、買い注文なら最も安い売り板の価格で、売り注文なら最も高い買い板の価格で約定します。

板を使って短期的な株価の動きを予測することは板読みと呼ばれ、デイトレードを始めとする短期投資を手掛ける場合に使われる手法です。

ただ、板読みで予測できるのは、非常に短期的な価格であることには注意が必要です。

長期投資やスイングトレードなどの時間軸が長い短期投資においては、板を使って将来の価格動向を予測することは非常に困難であることは留意しておきましょう。

 

板の基本的な読み方

板を読む上で、「板が厚い」「板が薄い」と言われることが多々あります。

板の基本的な読み方として、「板が厚い」「板が薄い」と呼ばれる2つの板の情報の読み取り方を押さえておきましょう。

板が厚い状態

板が厚い状態とは、買い注文・売り注文ともに注文がびっしりと入っており、常にその価格で取引できる状態にあることです。

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上の画像は、メガバンクの一角である【8306】三菱UFJフィナンシャルグループのものです。

最小0.1ティック刻みで、売り板・買い板ともに注文がびっしりと入っている「厚い板」であることが分かります。

このように板が厚いと、成行注文を出せばすぐに取引が成立することはもちろん、指値注文も現在価格より1ティックでも不利な価格(買い注文なら現在価格よりも高く、売り注文なら現在価格より低く)を指定すれば、すぐに取引が成立します。

例えば、買い板で最も高い829.4円を下回る価格で売り注文を出せば、すぐに829.4円以下で取引が成立して約定し、売り板で最も低い829.5円を上回る価格で買い注文を出せばすぐに829.4円以上で取引が成立するといった具合です。

また、これはあくまで板の一瞬の状況を切り取った画像ですが、厚い板には常に注文が入って、取引が流動的に成立することによって、板が常にピカピカと光っている状況となっています。

「板が厚い」とは、板の売り注文・買い注文に注文がびっしりと入っている状態に加えて、流動的に注文が入り続けている状態であると言えます。

 

板が薄い状態

板が薄い状態とは、買い注文・売り注文ともに注文がほとんど入っておらず、取引がしづらい状態にあることです。

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上の画像は、東証スタンダード市場に上場している【6543】日宣の板です。

売り板・買い板ともに、100~500株程度の注文しか入っていないことが分かります。

例えば、この銘柄を1,000株買いたいとしたら、現在価格572円に対して、売り注文が十分に出ていないため、売り板で1,000株まで出ている585円まで出して買わなければいけなくなってしまいます。

このような板が薄い銘柄は、取引がほとんどされておらず、板の状態もほとんど変わりません。

板が厚い銘柄は常に注文が入って取引されており、板がピカピカ光り続けている状態からすると対照的です。

板が薄い銘柄の最大のデメリットは、注文がほとんどされないため、デイトレードにおいてすぐに売り注文を出して損切りで逃げることができない点です。

デイトレードを手掛けるにしても、板が薄い銘柄には手を出してはいけません。

 

板の厚い方に価格は動くのか

一般的に、板の厚い方に価格は動くと言われることがあります。

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上の画像は、東京ディズニーリゾートを運営する【4661】オリエンタルランドの板ですが、売り板の方が買い板よりも注文が入っており厚いことが分かります。

この場合は売り板の方が厚いため、売り(下落)の方向に動くと考えることが一般的ではあります。

ただ、「板の厚い方に価格は動く」というのはあくまで一般論に過ぎないことには注意が必要です。

特に、板の厚みについては、大口がだまし注文を出している場合もあり、現在価格が大きな厚みの価格に近付いてくると、注文が取り消されて大きな板が消えるケースが多々あります

「板の厚い方に価格は動く」というのはあくまで一般論であり、騙しも多いことには注意しておくようにしましょう。

 

板を読むためのポイント

板を読むためのポイントとしては、次のポイントがあります。

  • 歩み値(Time&Scale)も同時に活用する
  • 朝9時~9時30分の「ゴールデンタイム」に取引する
  • 株価チャートも活用する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

歩み値(Time&Scale)も同時に活用する

板読みを行うためには、「歩み値(Time&Scale)」を同時に活用することも大切なことです。

「歩み値(Time&Scale)」とは、株価の価格推移を時系列的に示したもので、「時刻(Time)」と「約定価格・出来高(Scale)」で構成されるものです。

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上の画像は、【7203】トヨタ自動車の歩み値です。

歩み値は、「アップティック」「ダウンティック」「横ばい」の3通りがあり、色で示されます(歩み値の色はチャートソフトなどで異なります)。

アップティックとは、価格が上がって約定したもので、上図では赤字で示されています。

ダウンティックとは、価格が下がって約定したもので、上図では青字で示されているものです。

横ばいは、価格が変わらずに約定したもので、色は付いていません。

歩み値は、株価が上昇トレンドにあるときはアップティックが多くなり、下落トレンドにあるときはダウンティックが多くなる傾向があります。

 

朝9時~9時30分の「ゴールデンタイム」に取引する

デイトレードにおいて板読みが最も有効に機能するのが、日本市場が開く朝9時から朝9時30分までの時間帯です。

この時間帯は、デイトレードにおいては「ゴールデンタイム」と呼ばれており、最も利益を出しやすい時間帯となっています。

朝9時~9時30分は取引が活発となり、常に注文が入って板が目まぐるしくピカピカと輝きを放ち続けている光景は、「ゴールデンタイム」を象徴するものです。

逆に、10時から14時までの時間帯は、多くの銘柄で取引が活発ではなくなり、利益を出すチャンスも少なくなることには注意しておきましょう。

 

株価チャートも活用する

板読みで利益を出しているデイトレーダーは多いですが、板読みだけで利益を出しているデイトレーダーはほとんどいないということが実態です。

板読みは、株価チャートによるチャート分析を組み合わせることが重要となります。

具体的には、5分足チャートや30分足チャートの分足チャートを見て仕掛け、日足チャートでトレンドを見るという使い方をすることが一般的です。

株価チャートで見ると抵抗線や支持線となりそうなラインを確認しておけば、板に出ている厚い板がだましである可能性にも気付けるようになります。

 

まとめ

今回は、板読みについて解説してきました。

板読みは、デイトレードやスキャルピングなどの短期投資において使われる投資ツールとなっています。

一般的に、「板は厚い方に動く」と言われていますが、この一般論を逆手に取っただましも多いことには注意が必要です。

板読みだけで利益を出すことは難しいため、「歩み値(Time&Scale)」や「株価チャート」を同時活用し、デイトレードで利益が出しやすい朝9時~9時30分の「ゴールデンタイム」に取引するように心がけることも重要です。

 

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