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空売り残高(信用売り残)が増えるとどうなる
空売り残高とは、その銘柄について、信用取引の空売り(信用売り)で売られた取引のうち、まだ決済されていない株式の残高を示す指標です。
制度信用取引の決済期限は6ヶ月のため、空売り残高が残っている銘柄は、6ヶ月以内に決済の買い注文を必ず入れなければいけません。
つまり、空売り残高が増えているということは、将来の買い圧力になることを意味します。
空売り残高が増えていることは将来の買い圧力を意味するため、現物取引だけで信用取引を手掛けていなくてもチェックが必要な指標です。
ただ、空売り残高の決済買い注文は6ヶ月以内に必ず出ますが、この期間には新たな空売り注文も入ってくるため、空売り残高が増えているからといって必ずしも将来的に上昇するとは限らないことには注意が必要です。
空売り残高だけじゃなく「信用買い残」と「信用倍率」も押さえておこう
信用取引の指標としては「空売り残高(信用売り残)」に加えて、「信用買い残」とその比率を示す「信用倍率」についても押さえておくことが重要です。
信用買い残とは
「空売り残高」と並ぶ信用取引の指標が「信用買い残」です。
信用買い残とは、その銘柄について信用買いで買われた取引のうち、決済されていない株式の残高を示すものです。
制度信用取引で信用買いした銘柄は、6ヶ月以内に売り決済する必要があるため、信用買い残が増えているということは、将来の売り圧力になります。
ただ、信用買い残も空売り残高と同様に、決済売り注文は6ヶ月以内に必ず出ますが、新たな信用買い注文も入ってくるため、信用買い残が多いからといって必ずしも下落するとは限らないことには注意しておきましょう。
信用倍率とは
「空売り残高」と「信用買い残」は、それ単体で見るのではなく、その比率を示す「信用倍率」を見ることが重要です。
例えば、「空売り残高」が増えていたとしても、それ以上のペースで「信用買い残」が増えていた場合には、将来的な買い圧力より売り圧力の方が大きくなっていると認識できます。
逆に、「空売り残高」が増えるペースの方が、「信用買い残」が増えるペースよりも大きい場合には、将来的な買い圧力の方が売り圧力より大きくなっていると判断できます。
「信用買い残」と「空売り残高」の比率を示す「信用倍率」は、「信用買い残÷信用売り残(空売り残高)」で計算されます。
「信用買い残」の方が多い場合には信用倍率は1以上となり、「空売り残高」の方が多い場合には信用倍率は1となります。
信用取引の指標を調べる方法
「空売り残高」「信用買い残」「信用倍率」といった信用取引の指標を調べる方法について押さえておきましょう。
実際の銘柄で「空売り残高」「信用買い残」「信用倍率」を見てみよう
実際の銘柄で、「空売り残高」「信用買い残」「信用倍率」を見ていきましょう。
なお、「空売り残高」「信用売り残」「信用倍率」については、各証券会社のサイトやチャートツール、株式情報サイトなどで確認できます。
次の図は、小売り大手【8267】イオンの、2023年8月10日時点での信用残のデータです。
2023年8月10日時点の【8267】イオンの、空売り残高は1,533.7千株、信用買い残は281.7千株となっており、信用倍率は0.18倍となっています。
つまり、空売り残高が信用買い残よりも、5倍程度多くなっているということです。
また、空売り残高や信用倍率を見る上では、前週比でどのような変化があったのかを見ることも重要です。
2023年8月10日時点の【8267】イオンは、空売り残高は+97.5千株増えた一方で、信用買い残は-35.9千株減ったことが分かります。
つまり、空売り残高は増えた一方で、信用買い残は減ったことから、信用倍率は前週比で減ったことを意味します。
イオンの空売り残高・信用買い残の推移について、より長期的な推移を見ると、次のようになっています(チャート2段目。青線が空売り残高、ピンク線が信用買い残)。
東証全体の信用倍率をチェックしておこう
個別銘柄の「空売り残高」「信用買い残」「信用倍率」を押さえておくとともに、東証全体の信用倍率がどのようになっているのかをチェックしておくことも重要です。
ある個別銘柄の信用倍率が高く(低く)なっていたとしても、相場の平均値だとしたら、そこまで大きな売り圧力や買い圧力にはならないと考えられます。
東証全体の信用倍率は東証が毎週発表しており、日本取引所のホームページ「信用取引残高等」で公開されています。
ただ、東証のホームページの情報はやや見づらいため、株式情報サイト「TRADERS WEB」を活用することがおすすめです。
2023年8月10日時点での、東証全体の信用取引の指標は次の通りです。
※出典:TRADERS WEB
東証全体では、空売り残高は8,640億円、信用買い残は3兆6,742億円となっており、信用倍率は4.25倍です。
東証全体で見ると信用倍率は4.25倍となっており、個別銘柄についても、この数値が一つの目安となります。
個別銘柄の信用倍率を見たときに、4~5倍だった場合には平均程度であると認識するようにしましょう。
また、信用取引をしている個人投資家の損益の平均値を表す指標である「信用評価損益率」も市場全体の信用取引の状況を見る上で重要な指標です。
信用取引をしている個人投資家は、平均的には常に損失を抱えている状況となっており、信用評価損益率は-10%前後で推移しています。
個人投資家は信用買いをしている比率が高いため、相場全体が大きく下落すると、「信用評価損益率」のマイナス幅が大きくなる傾向があります。
空売り残高が増えている銘柄を調べる方法
東証の個別銘柄の中で、空売り残高が増えている銘柄を調べる方法について見ていきましょう。
「Yahoo!ファイナンス」の株式ランキングでは、信用取引関連ランキングとして、「信用売残増加」や「信用倍率下位」といったランキングを見ることができます。
「Yahoo!ファイナンス」のページ上部にある「株式」→「株式ランキング」をクリックします。
ランキングの下の方に、「信用取引関連ランキング」があります。
空売り残高が増えている銘柄を調べたい場合には「信用売残増加」、空売り残高の比率が大きい銘柄を調べたい場合には「信用倍率下位」をクリックしてみましょう。
空売り残高が増えている銘柄を買うときの注意点
空売り残高が増えている(信用倍率が小さくなっている)からといって、必ずしも株価が上がるわけではありません。
空売り残高を使ってトレードする際の注意点について押さえておきましょう。
株価チャートや指標などもあわせてチェックする
信用取引の指標である「空売り残高」や「信用倍率」は重要な指標ですが、この指標だけで将来の株価予測をするのは難しいということが実際の所です。
「空売り残高が増えているから買い!」と安易に判断するのではなく、月足チャートなどの株価チャートの動向や、PER・PBR・ROEといった指標もチェックして総合的に判断することが重要です。
空売り残高が多い銘柄はディフェンシブ寄りの銘柄が多い
「Yahoo!ファイナンス」の「信用倍率下位」ランキングを見てみると、空売り残高が多く、信用倍率が低い銘柄の特徴が見えてきます。
コンビニチェーンの【9946】ミニストップ、外食大手の【7616】コロワイド、外食大手の【7581】サイゼリヤ、牛丼大手の【9861】吉野家ホールディングスなどが並んでいます。
小売りや外食といったセクターの信用倍率が低くなっている傾向がありますが、これらのセクターはディフェンシブ寄りの銘柄であるため、大きく急騰することは期待しづらいと言わざるを得ません。
まとめ
この記事では、空売り残高が増えるとどうなるかについて解説してきました。
空売り残高が増えると、将来的な買い圧力が大きくなっていると見ることができますが、「空売り残高」と「信用買い残」の比率を示した「信用倍率」を見ることが重要です。
ただ、空売り残高などの信用取引の指標だけで株価予測をすることは難しいため、空売り残高が増えている銘柄の買い時を探る上では、株価チャートや指標もチェックして総合的に判断するようにしましょう。
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