目次
自己資本比率とは
自己資本比率とは、総資本(総資産)における自己資本の割合のことで、企業の財政状態を示す経営指標です。
株式投資においては、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の財務三表を読み解くファンダメンタル分析が有効ですが、自己資本比率は「貸借対照表」を読む上で重要となります。
そもそも自己資本とは、企業が内部調達した事業資金のことで、内部留保や減価償却費といった自己金融や、株式発行による直接金融による資金調達などが挙げられます。
自己資本は、銀行からの借り入れなど外部から調達した借入金のように返済する必要がなく、金利を払う必要もありません。
自己資本比率は、「自己資本÷総資産(総資本)」で求められます。
自己資本比率は、50%以上だと安全な状態とされており、10%未満だと危険な状態とされています。
ただ、自己資本比率の平均は業種により差があるため一概には言えません。
なお、東証の全企業の自己資本比率の平均(2021年)は32.71%となっており、製造業は46.46%、非製造業は23.28%となっています。
※出典:日本取引所
業種 | 自己資本比率(2021年) |
全産業 | 32.71% |
製造業 | 46.46% |
非製造業 | 23.28% |
自己資本比率が高い企業のメリット
一般的には、自己資本比率が高い企業は安全経営ができていてメリットがあるとされています。
自己資本比率が高いということは、借入金や融資といった返済の必要があり金利が付く他人資本に依存していないため、財務基盤が安定していると判断されます。
また、財務基盤が安定していると、金融機関からも印象が良く、いざというときに融資が受けやすくなることもメリットです。
企業の自己資本比率が高いことは、投資家にとってもメリットであり、企業の投資格付けにおいても自己資本比率が高いことは投資判断の一つとなっています。
自己資本比率が高い企業のデメリット
自己資本比率は、50%以上などある程度高いことはメリットですが、自己資本比率が高過ぎることには次のような思わぬデメリットも潜んでいます。
- 成長に投資していないと判断される
- 自社株買いや配当金など株主還元していないと判断される
- IPO直後など新興銘柄は自己資本比率が高くなりやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
成長に投資していないと判断される
自己資本比率が高過ぎる場合には、過度に安全な経営をし過ぎており、リスクのための成長投資をしていないと判断されることがあります。
その企業に投資している投資家は、ある程度の借金をしてでも設備投資や新規事業投資をするなど成長戦略を実行することによって、より長期的な成長を期待します。
借金をしていないということは、企業の信用を担保にした「借りる力」を生かしていないという見方をすることもできます。
リーマンショックやコロナショックなど、企業経営にとってはいつ大きなリスクが訪れるか分からないため、ある程度以上の自己資本比率の高さは必要ですが、自己資本比率を高めることを重視し過ぎる余りに成長投資できなくなってしまえば本末転倒です。
自己資本比率は、50%以上などある基準を満たしてさえいれば、高ければ高いほどいいということではないことには注意しておきましょう。
自社株買いや配当金など株主還元していないと判断される
株主の観点からすると、自己資本比率が余りにも高過ぎるということは、株主還元していないと判断されることもあります。
自社の株式を買い戻す「自社株買い」、株主に配当金として利益を還元する「配当金」は、前者は株価上昇効果(キャピタルゲイン)、後者は配当金(インカムゲイン)という形で、いずれも株主還元です。
ただ、自社株買いおよび配当金は、企業が自ら資産を減らして行うものであるため、自己資本比率にはマイナスになります。
ある程度以上の自己資本比率を保てているなら、自社株買いや配当金という形で株主還元して欲しいと考える投資家は少なくありません。
IPO直後など新興銘柄は自己資本比率が高くなりやすい
新興銘柄は、IPO直後などには総資本に占める株式の割合が大きくなることから、一時的に自己資本比率が高い状態になりやすくなります。
自己資本比率は、計算式を見ると明らかですが、株式などの自己資本が高くなればなるほど大きくなる性質があるためです。
ただ、企業の財務状況が株式に偏り過ぎている状況は、株価に左右されることにもなりかねないため、健全な状況とは言えません。
自己資本比率が低い企業のデメリット
当然ながら、自己資本比率が低い企業には大きなデメリットがあります。
自己資本比率が10%以下の企業の財務基盤は脆弱であり、いざというときに経営危機に陥ってしまうリスクがあります。
また、自己資本比率が低いということは、銀行借り入れなどの他人資本に依存しているということであり、他人資本の返済や金利利息の支払いに苦しむことになりがちです。
金利返済が苦しいと、利益が出ても、自社株買いや配当金などの株主還元ではなく、他人資本の返済に回さざるを得なくなるため、投資家にとってもネガティブ材料となります。
自己資本比率の調べ方
株式投資をする上で、企業の自己資本比率を調べる方法として次の2点を押さえておきましょう。
- 個別株の自己資本比率を調べる
- 自己資本比率が高い銘柄のランキングを見る
それぞれ詳しく見ていきましょう。
個別株の自己資本比率を調べる
個別株の自己資本比率を調べたい場合には、「みんかぶ」で銘柄検索をする方法がおすすめです。
「みんかぶ」の銘柄検索欄に銘柄名(「トヨタ自動車」など)か銘柄コード(「トヨタ自動車」の場合は「7203」)を入力して検索します。
銘柄のページが出てきたら、銘柄名の下にあるタブから「決算」をクリックして、ページを下にスクロールしていくと、「財務情報」の所で自己資本率(自己資本比率)を調べることができます。
自己資本比率が高い銘柄のランキングを見る
自己資本比率が高い銘柄についてランキング形式で調べたい場合には、「みんかぶ」のランキングを使うことができます。
「みんかぶ」の「株式」タブから「銘柄を探す」→「株式ランキング」をクリックします。
株式ランキングページを下にスクロールしていき、企業ランキング一覧にある「自己資本比率」をクリックします。
これで、自己資本比率ランキングが高い順に表示されます。
なお、「表示条件」から自己資本比率が低い順に表示することも可能です。
まとめ
この記事では、自己資本比率が高過ぎる場合の思わぬデメリットについて解説してきました。
自己資本比率は、50%以上などある程度高いことで健全財政となるためメリットとなりますが、高過ぎるから良いというものでもありません。
自己資本比率が高過ぎるということは、企業が安全経営し過ぎて成長分野に投資できていない、自社株買いや配当金といった株主還元に乏しいなど、株主視点で見るとデメリットに感じられるケースがあります。
また、自己資本比率ランキングを見ると明らかですが、IPO直後の新興銘柄などは総資本に株式が占める割合が過度に大きくなりやすく、見かけ上の自己資本比率が高くなる傾向にも注意が必要です。
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