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株式投資で「ボラティリティが高い銘柄」と聞くと、初心者は「危険そう」「ハイリスク」とネガティブに捉えがちです。しかし、値動きの大きい日の翌日のリターンには明確な統計的パターンが存在することを、ご存知でしょうか。

本記事では、東証全銘柄16年・約1,490万件のデータを使い、「当日の値幅(高安幅÷前日終値)」を5段階に分け、翌日リターンを集計しました。値幅狭い(〜2%)/普通(2〜4%)/やや広い(4〜7%)/広い(7〜12%)/超大幅(12%以上)の各区分で、翌日終値リターン・5日後リターン・勝率を比較分析します。

結論を先にお伝えします。値幅が大きい日ほど、翌日の平均リターンも大きい。最大値は超大幅(12%以上)の翌日終値リターン+0.384%(勝率40.6%)、5日後+0.96%。一方で値幅が小さい日の翌日は+0.052%(勝率47.2%)と、平均リターンは小さい。「大きく動いた銘柄は翌日もっと大きく動く(プラス方向に)」という、行動経済学的に興味深い構造が浮かび上がりました。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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検証対象:東証全銘柄(プライム・スタンダード・グロース、上場廃止含む)
検証期間:2010年1月〜2025年12月(約16年間)
サンプル数:合計 約1,490万件

【値幅率の定義】

  • 値幅率=(当日高値 − 当日安値)÷ 前日終値 × 100
  • 「ATR (Average True Range)」と類似の概念で、当日の値動きの大きさを表す
  • 大型優良株は通常1〜3%、中小型グロース株や急騰株は10〜20%超になることも

【値幅区分(5段階)】

  • 狭い(〜2%):低ボラ・大型優良株中心
  • 普通(2〜4%):標準的なボラティリティ
  • やや広い(4〜7%):中型〜小型のアクティブな日
  • 広い(7〜12%):強い材料・大型ニュース時
  • 超大幅(12%以上):ストップ高/安・暴騰暴落級

【検証指標】

  1. 翌日デイトレ(翌始値→翌終値)
  2. 翌日終値リターン(当終→翌終、1日保有)
  3. 5日後リターン(当終→5日後終値、中期)

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2.検証結果

(1) 値幅区分別 翌日終値リターン

値幅別 翌日終値リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

値幅区分(高安幅÷前日終値)サンプル平均中央値勝率
狭い(〜2%)7,570,376+0.052%+0.000%47.2%
普通(2〜4%)4,917,240+0.046%+0.000%46.8%
やや広い(4〜7%)1,692,549+0.070%+0.000%46.0%
広い(7〜12%)497,766+0.117%-0.062%44.7%
超大幅(12%以上)190,507+0.384%-0.391%40.6%

明確な傾向が見えます。値幅が大きいほど翌日の平均リターンも大きいのです。具体的には:

  • 狭い(〜2%):平均+0.052%
  • 普通(2〜4%):平均+0.046%
  • やや広い(4〜7%):平均+0.070%
  • 広い(7〜12%):平均+0.117%
  • 超大幅(12%以上):平均+0.384%

狭い値幅銘柄と超大幅値幅銘柄の差は0.332%。年率換算(×250営業日)すると、超大幅銘柄を毎日翌日終値で売買すれば年率+96.0%相当という驚異的な数字になります。

(2) 勝率は値幅が広いほど低下

値幅別 勝率vs平均リターンのトレードオフ

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

ところが、勝率を見ると別の真実が浮かびます。値幅が広いほど勝率は下がるのです:

  • 狭い(〜2%):勝率47.2%
  • 普通(2〜4%):勝率46.8%
  • やや広い(4〜7%):勝率46.0%
  • 広い(7〜12%):勝率44.7%
  • 超大幅(12%以上):勝率40.6%

つまり超大幅銘柄は「勝率は4割と低いが、勝つときの値動きが大きいため平均リターンが高い」という、典型的なハイリスクハイリターン分布。10回中6回は負けても、1〜2回の大勝ちで全体プラスを叩き出すパターンです。

(3) 5日後リターンも値幅広いほど大きい

値幅別 5日後リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

値幅区分(高安幅÷前日終値)サンプル平均中央値勝率
狭い(〜2%)7,570,376+0.215%+0.108%50.9%
普通(2〜4%)4,917,240+0.256%+0.000%49.3%
やや広い(4〜7%)1,692,549+0.463%+0.000%48.3%
広い(7〜12%)497,766+0.789%-0.160%46.8%
超大幅(12%以上)190,507+0.963%-1.299%40.7%

5日後リターンも値幅と正の相関があります。超大幅銘柄の5日後+0.96%に対し、狭い銘柄の5日後+0.21%。中期保有でも「値幅大きい銘柄は中期も上がりやすい」傾向が確認できます。

これは「動意づいた銘柄は1日では収まらず、数日〜数週間にわたってモメンタムが持続する」というモメンタム効果の表れ。投資家心理として「大きく動いた銘柄に注目する→翌日以降も買いが入り続ける」というメカニズムです。

3.なぜ「値幅が大きいほど翌日リターンが大きい」のか

「ボラティリティが高い銘柄ほど儲かる」という結論には、明確な理由があります。

(1) 動意づいた銘柄に資金が集まる「モメンタム効果」

値幅12%以上動いた銘柄は、ニュース・決算・テーマ性などで市場の注目を集めた銘柄。SNS・株掲示板・投資メディアでも取り上げられ、翌日以降も新規買いの資金が流入しやすい状況になります。「動意づいた銘柄に追加で資金が集まる」というのは、株式市場の最も基本的なモメンタム効果です。

(2) 強烈な売り需給の「出尽くし」

値幅12%動く日の中には、暴落して安値で引けた日(投げ売り)も含まれます。本サイト別記事「ストップ安翌日のリバウンド」で示した通り、25%以上下落した翌日は+2.43%リバウンド。「ボラ大 = 売り需給出尽くしの可能性大」という需給的なメカニズムが作用しています。

(3) 平均回帰の弱バージョン

狭い値幅(〜2%)の銘柄は大型優良株中心で、平均回帰の効果が出にくい状態。一方、超大幅(12%以上)の銘柄は極端な動きの後の平均回帰が翌日に表れやすく、結果として翌日のリターンが平均的に大きくなります。

(4) 「勝率は低いが期待値プラス」の非対称分布

超大幅銘柄の勝率は{40.6}%。つまり10回中6回は負ける。しかし「勝つときに大きく勝つ」分布のため、平均では+。これは「カジノの胴元」やオプション売り戦略にも通じる、典型的な正の歪み(positive skewness)を持つ分布です。

(5) 個人投資家の「飛びつき/狼狽売り」

値幅の大きい日は、個人投資家が感情的に動きやすい局面。翌日寄り付きでの飛びつき買い・狼狽売りが集中することで、プロ(機関投資家)が逆向きにポジションを取り、結果として平均リターンが片寄る構造になります。

(6) ボラティリティの「持続性」

過去研究でも、ボラティリティは持続する(ボラの高い日の翌日もボラが高い)ことが知られています。「値幅12%動いた日の翌日も大きく動く可能性が高い」という性質が、平均リターンの拡大に寄与しています。

4.値幅別の特徴を整理

値幅区分ごとの特徴と、戦略への応用を整理します。

狭い(〜2%):低ボラ大型・配当目的に最適

狭い値幅の銘柄は、配当性向の高い大型優良株・電力ガス株・銀行株など。翌日のリターン期待値は+0.052%と小さいですが、勝率47.2%で安定性が高い。配当狙いの中長期保有や、ボラ嫌いの投資家に向いています。

普通(2〜4%):標準的な中型株運用ゾーン

東証プライムの中型株が中心の値幅帯。翌日+0.046%・勝率46.8%と狭い値幅と大差なし。標準的な短期売買のメイン舞台ですが、リターン期待値はそれほど高くありません。

やや広い(4〜7%):イベントドリブン取引の主戦場

決算・IR・テーマ性で動意付いた銘柄が多い値幅帯。翌日+0.070%・勝率46.0%と、リターンが上向き始めるゾーン。テーマ株・小型グロース株のイベントドリブン取引の主戦場です。

広い(7〜12%):強烈な材料銘柄

業績修正・大型契約・買収プレミアム・市場急変時に出現する値幅帯。翌日+0.117%・勝率44.7%。勝率は低下するが、平均リターンは明確にアップ。短期売買のチャンスゾーンです。

超大幅(12%以上):ストップ高/安級の劇的な値動き

ストップ高張り付き・ストップ安比例配分・暴騰暴落級の銘柄が中心。翌日+0.384%・勝率40.6%と、勝率は4割まで低下するが平均リターンは0.4%超え。短期トレーダーが最も注目すべきゾーンです。

5.実践のポイント:値幅を使ったエントリー戦略

本検証で見えた「値幅大→翌日大」の傾向を、実戦の戦略に落とし込みます。

(1) 「超大幅銘柄バスケット」を翌日寄りで買う

最もシンプルな戦略は「値幅12%以上の銘柄を翌日寄りで20〜50銘柄バスケット買い→翌日終値で売り」。期待値は+0.4%相当、勝率4割の代わりに勝つときの幅が大きい。多数バスケット運用で勝率の低さを平準化するのが鉄則です。

(2) 「狭い値幅銘柄」は安定運用に

逆に「値幅2%未満で勝率48%・期待値+0.05%」の安定銘柄群は、低ボラ・配当狙いの中長期運用に向く。短期売買の主軸にはなりませんが、ポートフォリオの「アンカー(安定錨)」として活用できます。

(3) 値幅と終値位置を組み合わせる

終値位置別 翌日リターン」と組み合わせて、「超大幅 + 陰引け」(暴落投げ売り)を抽出すれば、最強の逆張りリバウンドセットアップになります。

(4) 出来高フィルターも併用

出来高×終値位置」と組み合わせて、「超大幅 + 出来高急増(2倍以上)」に絞れば、市場の注目度がさらに高く、翌日のモメンタム効果が強くなる可能性があります。

(5) リスク管理:個別最大ロスを限定

超大幅銘柄は値動きも翌日大きいため、1銘柄あたり投資額の制限・損切ルールの厳守が必須。1銘柄に5%以上は投じないなど、徹底したリスク管理が前提となります。

(6) 連敗時のプロセス維持

勝率4割の戦略は「連続損失」が起きやすい。3〜5連敗しても期待値プラスなので継続。ただし「連敗時に冷静さを失う」のが個人投資家の最大の敵。プロセス(バスケット・ロット・期間)を維持することが重要です。

6.注意すべきリスクと落とし穴

「超大幅銘柄は儲かる」というデータの裏には、いくつかの落とし穴があります。

(1) 勝率4割の心理的負担

勝率40.6%は連敗の心理的負担が大きい戦略。3連敗・5連敗は普通に起こります。期待値プラスでも「3連敗で資金管理を変更」「5連敗で戦略をやめる」では、平均リターンを実現できません。バスケット運用と長期視点が必須です。

(2) 業績悪材料による暴落

超大幅の中には業績下方修正・不祥事・不正会計などの暴落が含まれます。これらの銘柄は翌日も下げ続けたり、上場廃止に至るケースも。IR内容の確認・業績ニュースのフィルタリングが必要です。

(3) ストップ高張り付き時の買い気配

超大幅の中で「ストップ高張り付き」した銘柄は、翌日寄付き買い気配スタートになり、寄り付きで買えないケースが多発します。エントリーできても寄り付きから既に高値で、想定リターンを下回ることが多いです。

(4) ストップ安比例配分時の売れない問題

逆にストップ安張り付きの銘柄は、当日に売れず比例配分になります。翌日寄り付きでさらに下げる可能性もあり、想定通りには売買できません。

(5) スリッページ・手数料負担

超大幅銘柄はスプレッドが広がる傾向があり、寄り付き〜引けでの売買にスリッページが乗りやすい。低コスト証券会社と指値併用で対処することが重要です。

(6) 強烈な暴落相場では機能しない

リーマンショック・コロナショック級の暴落相場では、超大幅銘柄が「連日下げ続ける」状態になり、翌日リバウンドが効きません。地合いフィルター(VIX指数・日経平均トレンド)を組み合わせると安全です。

7.他のアノマリーと組み合わせる戦略

「値幅別アノマリー」は他の検証と組み合わせるとさらに精度が上がります。

(1) 終値位置との組み合わせ

終値位置別 翌日リターン」と組み合わせて、「超大幅 × 陰引け(投げ売り)」を抽出すれば、リバウンド期待値の高い逆張りエントリー候補が抽出できます。

(2) 出来高×終値位置との組み合わせ

出来高×終値位置クロス」と組み合わせて、「超大幅 × 陰引け × 出来高急増」のトリプル底セットアップを抽出。投げ売りピークでの逆張りエントリー最強パターンです。

(3) ストップ安翌日リバウンドとの組み合わせ

ストップ安翌日リバウンド」(25%以上下落で翌日+2.43%)の根本原因は、超大幅値幅銘柄の翌日プラスというデータ。本記事は「値幅」という連続変数で同じ傾向を一般化したものです。

(4) ギャップアップ・ダウンとの組み合わせ

ギャップアップ翌日」「ギャップダウンリバウンド」と組み合わせて、「超大幅 × ギャップダウン × 陰引け」はリバウンド最強パターン。

(5) 連続騰落×規模との組み合わせ

連続騰落×規模クロス」と組み合わせて、「3日連敗 × 超大幅 × 中型・小型」を抽出すれば、過去最大のリバウンド期待値セットアップになります。

8.まとめ:ボラ嫌いは機会損失

東証全銘柄16年・約1,490万件のデータ検証から、「当日値幅が大きいほど翌日のリターンも大きい」という明確なパターンが確認されました。要点を整理します。

  • 狭い(〜2%):翌日+0.052%・勝率47.2%(低リターン低リスク)
  • 普通(2〜4%):翌日+0.046%・勝率46.8%
  • やや広い(4〜7%):翌日+0.070%・勝率46.0%
  • 広い(7〜12%):翌日+0.117%・勝率44.7%
  • 超大幅(12%以上):翌日+0.384%・勝率40.6%(高リターン低勝率)
  • 5日後リターン:狭い+0.21% vs 超大幅+0.96%

この結果は、(1)動意づいた銘柄へのモメンタム効果、(2)強烈な売り需給の出尽くし、(3)平均回帰の効果、(4)正の歪み分布、(5)個人投資家の感情的売買、(6)ボラティリティの持続性から説明できます。

実戦で活用する際のポイントは以下の通りです。

  1. 超大幅銘柄を20〜50銘柄バスケット買いで勝率の低さを平準化
  2. 狭い値幅銘柄は安定運用のアンカーとして活用
  3. 値幅 × 終値位置 × 出来高を組み合わせて精度向上
  4. 1銘柄当たり投資額制限・損切徹底でリスク管理
  5. 3〜5連敗を覚悟し、プロセスを維持する精神力
  6. 業績悪材料・ストップ気配は別途要注意フィルタ

「ボラティリティが高い銘柄は危険」――投資の教科書ではよく聞く言葉ですが、データは違う事実を示しています。値幅が大きい銘柄は、翌日も中期も平均リターンが大きい。「ボラ嫌い」で安定銘柄ばかり選ぶのは、平均リターン的に機会損失になっている可能性が高いのです。

本サイトでは「ストップ安翌日リバウンド」「終値位置別 翌日リターン」「出来高×終値位置クロス」「連続騰落×規模クロス」など、関連する逆張り・モメンタム検証記事を多数公開中。組み合わせて活用することで、より精緻な短期売買戦略を構築できます。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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