RCIは、日本のトレーダーに根強い人気のある指標です。「RCIが-80以下まで下がったら売られすぎで買い、+80以上まで上がったら買われすぎで売り」。そんな使い方を教わった方も多いのではないでしょうか。
この通説を確かめました。東証全銘柄について、2014年1月6日から2026年9月1日までの12,371,282件(5,428銘柄・3,094営業日)を、RCI(9日)の水準別に集計しています。
結論を先に述べます。方向は通説どおりでしたが、差の大半は「地合い」で説明できてしまいました。
- RCIが-80以下の5営業日後は+0.441%・勝率53.0%。全体平均の+0.246%を上回る
- RCIが+80以上の5営業日後は+0.113%・勝率48.3%。全体平均を下回る
- ただし、その日の全銘柄平均を差し引くと、-80以下の5営業日後は+0.112%まで縮む
1.検証ルール
集計条件をすべて開示します。
- データ:東証全銘柄の日足終値(株式分割の影響を除いた調整後株価)。出来高がゼロの日は除外
- 期間:2014年1月6日〜2026年9月1日(3,094営業日・5,428銘柄・12,371,282件)。20営業日後までの値動きが確認できる日までを対象にしました
- RCI(9日):直近9営業日について、日付の新しい順位と終値の高い順位を比べた順位相関に100を掛けた値。9日間上げ続ければ+100、下げ続ければ-100。終値が同じ日は平均順位で扱いました
- 水準の区分:-100ちょうど(完全下降)、-100超〜-80以下、-80超〜-50未満、-50以上〜0未満、0以上〜50未満、50以上〜80未満、80以上〜100未満、+100ちょうど(完全上昇)の8つ
- -80以下/+80以上:通説でいう売られすぎ圏・買われすぎ圏。完全下降・完全上昇もここに含めます
- リターン:その日の終値で買ったとして、翌日寄付き・翌日終値・5営業日後・20営業日後
- 地合い差引:各銘柄のリターンから、その日の全銘柄の平均リターンを引いた超過リターン
比較対象は同じ期間の全銘柄平均で、5営業日後が+0.246%、20営業日後が+0.943%でした。
2.水準別に見た結果:左ほど高く、右ほど低い
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20営業日後を左から右へたどってください。-100超〜-80で+1.162%、-80〜-50で+1.013%、-50〜0で+0.952%、0〜50で+0.936%、50〜80で+0.914%、80〜100で+0.706%。RCIが低いほど高く、高いほど低いという、きれいな右肩下がりです。
勝率も同じ向きです。5営業日後の勝率は-100超〜-80で53.0%、80〜100で48.2%でした。通説でいう-80以下と+80以上を比べると、5営業日後の勝率は4.7ポイント、20営業日後は3.5ポイント、-80以下のほうが高くなっています。
通説でいう2つのラインでまとめ直すと、次のとおりです。
| 区分 | 件数 | 翌日寄付き | 翌日終値 | 勝率 | 5営業日後 | 勝率 | 20営業日後 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| -80以下(全体の13.8%) | 1,710,062 | +0.097% | +0.114% | 49.0% | +0.441% | 53.0% | +1.168% | 53.2% |
| -80〜+80の内側(全体の70.6%) | 8,739,435 | +0.081% | +0.043% | 46.7% | +0.237% | 49.6% | +0.952% | 51.2% |
| +80以上(全体の15.5%) | 1,921,785 | +0.075% | +0.022% | 46.7% | +0.113% | 48.3% | +0.704% | 49.7% |
| 全体平均(比較用) | 12,371,282 | +0.082% | +0.050% | 47.0% | +0.246% | 49.9% | +0.943% | 51.3% |
注目したいのは、-80〜+80の内側が市場平均とほとんど変わらない点です。20営業日後は+0.952%で、全体平均の+0.943%と見分けがつきません。RCIが意味を持つのは、両端の-80以下と+80以上に入ったときだけ、と言えそうです。
20営業日後で見ると、-80以下は全体平均を0.225ポイント上回り、+80以上は0.239ポイント下回りました。両者の差は0.464ポイント。5営業日後では0.328ポイントです。
両端の「完全」な形にも触れておきます。9日間ずっと下げ続けて-100になった銘柄は、20営業日後が+1.593%・勝率53.9%と全区分で最高でした。逆に+100になった銘柄は、5営業日後が-0.047%と唯一のマイナスです。ただし件数は全体のそれぞれ0.2%と0.3%しかありません。
3.地合いを差し引くと、差は半分に縮んだ
-80以下の銘柄が多く出るのは、市場全体が下げた日です。そして市場が下げたあとは、全体が戻りやすい。だとすれば、-80以下の好成績は「その銘柄だから」ではなく、「市場全体が戻ったから」かもしれません。
これを確かめるため、各銘柄のリターンからその日の全銘柄平均を差し引きました。
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| 区分 | 件数 | 5営業日後 そのまま | 5営業日後 地合い差引 | 20営業日後 そのまま | 20営業日後 地合い差引 |
|---|---|---|---|---|---|
| -80以下 | 1,710,062 | +0.441% | +0.112% | +1.168% | +0.112% |
| +80以上 | 1,921,785 | +0.113% | -0.101% | +0.704% | -0.112% |
-80以下の5営業日後は+0.441%から+0.112%へ、20営業日後は+1.168%から+0.112%へ縮みました。+80以上は5営業日後が+0.113%から-0.101%、20営業日後が+0.704%から-0.112%です。
両者の差で見ると、5営業日後は0.328ポイントから0.213ポイントへ、20営業日後は0.464ポイントから0.224ポイントへ。特に20営業日後は、差のおよそ半分が地合いで説明できてしまいました。
とはいえ、符号は変わっていません。地合いを差し引いても、-80以下はプラス、+80以上はマイナスのままです。通説の方向性は残るが、実際の差は見かけの半分程度。これが今回の中心的な結果です。
4.ラインをまたいだ日と、居座った日数
「ラインを抜けた日」を合図にする使い方もあります。-80と+80をまたいだ日を4つに分けました。
| 区分 | 件数 | 翌日寄付き | 翌日終値 | 勝率 | 5営業日後 | 勝率 | 20営業日後 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| -80を下回った日 | 443,252 | +0.059% | +0.061% | 48.7% | +0.371% | 52.5% | +1.127% | 53.1% |
| -80を上回った日 | 443,372 | +0.084% | +0.055% | 45.8% | +0.200% | 49.6% | +0.894% | 51.1% |
| +80を上回った日 | 465,972 | +0.105% | +0.058% | 46.5% | +0.175% | 48.2% | +0.751% | 49.8% |
| +80を下回った日 | 465,661 | +0.059% | +0.042% | 48.3% | +0.202% | 49.9% | +0.882% | 50.8% |
| 全体平均(比較用) | 12,371,282 | +0.082% | +0.050% | 47.0% | +0.246% | 49.9% | +0.943% | 51.3% |
最も高いのは「-80を下回った日」、つまり売られすぎ圏に入った日です。5営業日後は+0.371%・勝率52.5%、20営業日後は+1.127%でした。
一方、売られすぎ圏から抜け出した「-80を上回った日」は、5営業日後が+0.200%、20営業日後が+0.894%。どちらも全体平均を下回っています。反転を確認してから買う、というやり方は、この数字では報われませんでした。
次に、-80以下の状態が何日続いているかで分けます。
| 区分 | 件数 | 翌日寄付き | 翌日終値 | 勝率 | 5営業日後 | 勝率 | 20営業日後 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| -80以下の1日目 | 443,639 | +0.059% | +0.061% | 48.7% | +0.371% | 52.5% | +1.126% | 53.1% |
| -80以下の2〜3日目 | 599,454 | +0.115% | +0.155% | 49.5% | +0.427% | 52.9% | +1.084% | 53.0% |
| -80以下の4日目以上 | 666,969 | +0.107% | +0.113% | 48.7% | +0.500% | 53.5% | +1.272% | 53.5% |
| +80以上の1日目 | 466,161 | +0.106% | +0.058% | 46.5% | +0.175% | 48.2% | +0.751% | 49.8% |
| +80以上の2〜3日目 | 647,292 | +0.073% | +0.021% | 46.4% | +0.082% | 47.9% | +0.683% | 49.5% |
| +80以上の4日目以上 | 808,332 | +0.060% | +0.002% | 47.0% | +0.101% | 48.6% | +0.694% | 49.8% |
| 全体平均(比較用) | 12,371,282 | +0.082% | +0.050% | 47.0% | +0.246% | 49.9% | +0.943% | 51.3% |
-80以下では、長く居座っているほど数字が良くなります。5営業日後は1日目の+0.371%に対し、4日目以上は+0.500%・勝率53.5%。差は0.129ポイントです。20営業日後も4日目以上が+1.272%と最も高くなりました。
地合いを差し引いた20営業日後で見ても、1日目の+0.055%に対し、4日目以上は+0.227%と、同じ向きです。売られすぎ圏に長く居座った銘柄ほど、その後の戻りが大きい傾向がありました。
+80以上は日数による差がほとんどなく、20営業日後は+0.751%、+0.683%、+0.694%と横並びです。
5.この結果はどれくらい信頼できるか
極端な水準は、市場が急変した数日に一斉に発生しやすい性質があります。そのため、特定の日に集中していないかを確認しました。
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-80以下の1,710,062件は3,093営業日に広く分散し、発生が多かった上位3日(2020年3月16日、2020年3月13日、2025年4月8日)を合わせても全体の0.6%にすぎません。その3日を除いて集計し直すと、20営業日後は+1.168%から+1.084%と、ほとんど動きません。+80以上も上位3日の合計は0.4%で、除いた20営業日後は+0.704%から+0.711%です。
例外が、完全下降(-100)です。23,303件のうち上位3日(2025年4月7日、2016年2月12日、2018年12月25日)が3.2%を占め、その3日を除くと、翌日終値は+0.331%から+0.123%、5営業日後は+1.021%から+0.657%、20営業日後は+1.593%から+0.992%に下がります。20営業日後では0.601ポイントの減少です。最も好成績に見えた区分ほど、急落した数日に支えられていました。
次に年別です。13年のうち10年で、-80以下が+80以上を上回りました。5営業日後では11年です。通説の方向は、おおむね毎年成り立っています。
ただし、年ごとの振れは小さくありません。-80以下の20営業日後は2025年の+3.106%から2020年の-0.809%まで開き、マイナスの年が3年ありました。売られすぎからさらに売られる相場では、-80以下で拾っても戻らないということです。
地合いを差し引いた超過リターンで見ると、-80以下の20営業日後がプラスだったのは13年のうち8年にとどまります。5営業日後なら11年がプラスでした。日数が短いほど安定し、20営業日まで持つと年による差が大きくなる、という形でした。
6.この検証の限界
結果を使う前に、次の点をご承知おきください。
- 売買コストを含みません。-80以下と+80以上の差は5営業日後で0.328ポイント、地合いを差し引くと0.213ポイントです。売買を重ねればコストで消えかねない水準です
- 観測が重なっています。-80以下の状態は連日続くことが多く、12,371,282件が独立した試行というわけではありません
- 9日という設定の1例です。他の期間で同じ結果になるかは、今回は確認していません
- 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません。-80以下側は実際より良い数字になっている可能性があります
7.よくある質問(FAQ)
Q. RCIとは何ですか?
A. 一定期間の「日付の順位」と「価格の順位」の一致度を測る指標です。本記事では直近9営業日の終値で計算し、-100〜+100で表しました。一般に-80以下は売られすぎ、+80以上は買われすぎの目安とされます。
Q. RCIの-80以下は買いサインとして機能しましたか?
A. 方向は通説どおりでした。-80以下の5営業日後は+0.441%・勝率53.0%で、全体平均の+0.246%を上回りました。ただし大部分は市場全体の動きによるものです。
Q. 地合いを差し引いても、-80以下は有利でしたか?
A. 差は残りましたが、小さくなりました。超過リターンは-80以下が20営業日後+0.112%、+80以上が-0.112%。両者の差は0.464ポイントから0.224ポイントに縮みます。
Q. RCIが+80以上なら売るべきですか?
A. +80以上の20営業日後は+0.704%と、プラスのままです。全体平均を下回るものの、売りの根拠としては弱い結果でした。
Q. RCIが-100になった銘柄は最強の買い場ですか?
A. 数字は最高で、20営業日後は+1.593%でした。ただし上位3日を除くと+0.992%に下がり、急落した特定の日に支えられた部分が大きいと見るべきです。
Q. -80を上回って反転を確認してから買えば安全ですか?
A. そうなりませんでした。-80を上回った日の20営業日後は+0.894%で、全体平均の+0.943%に届いていません。
Q. この結果は特定の年や日に偏っていませんか?
A. 日の偏りはほとんどありません。-80以下は3,093営業日に分散し、上位3日の合計は全体の0.6%です。年別では13年のうち10年で、-80以下が+80以上を上回りました。
8.まとめ
12,371,282件(銘柄×日)を数え直してわかったことを整理します。
- 方向は通説どおりでした。-80以下の20営業日後は+1.168%・勝率53.2%、+80以上は+0.704%・勝率49.7%で、全体平均は+0.943%
- 地合いを差し引くと差は縮みます。20営業日後の差は0.464ポイントから0.224ポイントへ。-80以下の超過リターンは5営業日後+0.112%にとどまります
- 反転を確認してからでは遅いようです。-80を上回った日の20営業日後は+0.894%で、全体平均を下回りました
- 最高に見えた完全下降(-100)は、急落した数日に支えられていました。上位3日を除くと20営業日後は+1.593%から+0.992%に下がります
- 年による差は大きい。-80以下の20営業日後は2020年に-0.809%でした
RCIの-80や+80という数字は、いかにも「ここが境目」という雰囲気を持っています。実際、その外側では通説どおりの方向に動いていました。
ただ、その差の半分は市場全体が動いたぶんであり、残りも年によって大きく振れます。RCIが-80を割ったという事実は、銘柄固有の買いの根拠というより、市場全体の地合いを映したものと読むほうが、今回のデータには合っていました。指標の数字を見るときは、それが銘柄の話なのか、市場全体の話なのかを一度切り分けてみてください。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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