目次
時価総額とは
時価総額とは、「株価×発行済株式数」で計算される、株式市場におけるその企業の価値を数値で示したものです。
東京証券取引所では、最上位のプライム市場に新規上場・上場維持するためには「時価総額100億円以上」を条件としているなど、時価総額は投資においても重要な企業価値指標です。
時価総額は、企業価値を示す最もポピュラーな指標となっており、日本株では「TOPIX」、米国株では「S&P500指数」など、主要株価指数は「時価総額加重平均」で計算されます。
「時価総額加重平均」とは、株価指数を計算する際には、時価総額が大きい銘柄の比重が大きくなるように組み入れられることです。
※TOPIX(東証株価指数)を算出する際に使われている時価総額は、上場株式数のうち、大株主などの安定株主の保有株数を除いた「浮動株時価総額(=上場株式数×浮動株比率)」で計算されます。
このため、「TOPIX」ではトヨタ自動車やソニーグループ、「S&P500指数」ではGAFAM(Google、Apple、Facebook(Meta)、Amazon、Microsoft)といった、時価総額が大きい銘柄の比重が高くなります。
NISAやiDeCoなどでインデックス投資を始める個人投資家も増えていますが、インデックス指数の多くは時価総額加重平均型であるため、個人投資家にとっても時価総額への理解は重要です。
一般的に、時価総額が大きい銘柄は「大型株」、時価総額が低い銘柄は「中小株」や「小型株」と呼ばれることが多くなっています。
時価総額が低い銘柄のメリット
時価総額が低い銘柄のメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 割安感から急騰する可能性がある
- 市場全体の影響を受けにくい
それぞれについて見ていきましょう。
割安感から急騰する可能性がある
時価総額が大きい大型株は、株価が安定しており、大きな急騰はしないものの、大暴落をすることもほとんどありません。
一方、時価総額が低い小型株は、株価が不安定であり、大きな急騰をする場合がある一方で、大暴落となることもあります。
つまり、時価総額が低い銘柄に投資するメリットとしては、割安感から急騰する可能性に賭けられるということが挙げられます。
投資においては、リターンがリスクに比例するため、時価総額が低い銘柄への投資はハイリスク・ハイリターンです。
年末になると話題になる、東証でこの1年で最も大きく上昇した銘柄ランキングの上位銘柄のほとんどは、時価総額が低い中小株や新興株で占められています。
2023年に最も大きく急騰している銘柄としては、太陽光発電事業者の【3856】Abalanceが挙げられますが、この1年間で10倍以上の値上がりとなったものの、それでも時価総額は2023年5月17日時点で1,780億円となっています。
多くの急騰銘柄は、急騰する前には時価総額が低い銘柄であることが大半です。
市場全体の影響を受けにくい
「TOPIX(東証株価指数)」や「S&P500指数」といった代表的な株価指数は時価総額加重平均型であるため、時価総額が大きい銘柄の影響を受けやすくなっています。
逆に言えば、市場全体が売られているということは、時価総額が大きい銘柄を中心に売られているということです。
時価総額が大きい銘柄は市場全体の影響を受けるため、世界株安局面などで大きく売られます。
一方、時価総額が低い銘柄は市場全体の影響を受けにくいため、市場全体の動向とは関係なく独自の値動きをしやすい傾向にあります。
ただ、これはあくまで一般論であり、時価総額が低い銘柄が、市場全体の影響をより大きく受けて大暴落するケースもあることには注意しておきましょう。
時価総額が低い銘柄のデメリット
時価総額が低い銘柄のデメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 流動性が小さいため取引しづらい
- 東証プライム市場に上場できないためTOPIX買いの恩恵を受けられない
- 株価低迷すると再浮上が難しくなる
それぞれについて見ていきましょう。
流動性が小さいため取引しづらい
時価総額が低い銘柄の最大のデメリットと言えるのが、流動性(売買代金)が小さくなる傾向があるため、取引しづらいということです。
株を取引する際には、その銘柄を手掛けている投資家が多ければ多いほど、スムーズに売買を行うことができます。
時価総額が大きい銘柄であればあるほど、その銘柄への参加者は多くなるため、流動性が大きくなります。
これは実際の例で見てみましょう。
次の板情報は、日本株で最も時価総額が大きい【7203】トヨタ自動車(2023年5月17日時点の時価総額:31兆4,553億円)のものです。
トヨタ自動車は、日中のどの時間帯でも現在株価周辺の価格にびっしりと注文が入っており、常に取引が活発に行われている状態です。
一方、次の板は、東証で時価総額が最も低い銘柄の一つである【2164】地域新聞社(2023年5月17日時点の時価総額:7.2億円)のものです。
トヨタ自動車に比べると、各価格帯には注文がほとんど入っておらず、仮に3,000株買おうとしたら、現在株価は349円であるにも関わらず、356円分まで買う必要があります。
逆に株を売りたい場合には、買い注文がほとんど入っていないため、不利な株価で売らざるを得なくなってしまいます。
このように、時価総額が低い銘柄は流動性が低くなり、売買時に不利な価格で取引せざるを得なくなってしまうのです。
東証プライム市場に上場できないためTOPIX買いの恩恵を受けられない
株式市場において時価総額は、企業価値を示す最も代表的な指標であるため、時価総額が大きければ大きいほど安定感があるとみなされます。
東証の最上位市場である東証プライム市場に上場するためには、「時価総額100億円以上」が条件となっているのは、投資家保護の一環でもあります。
東証プライム市場に上場すると、機関投資家によるTOPIX買いという恩恵を受けられることがメリットです。
TOPIXは、東証プライム市場の全銘柄から構成される時価総額加重平均型の指数であるため、TOPIXに連動するTOPIX連動型投資信託やETF(上場投資信託)を運用している機関投資家からの買いが入ることが期待できるためです。
時価総額が低いと東証プライム市場に上場できないため、機関投資家によるTOPIX買いの恩恵を受けることができません。
また、東証プライム市場に上場していることは企業経営におけるステータスにもなり、人材調達という観点からもメリットになりますが、時価総額が低い銘柄はこの恩恵を受けることもできなくなります。
株価低迷すると再浮上が難しくなる
時価総額が低い銘柄は、株価が急騰することも極稀にありますが、ほとんどが小型株として低迷しているということが実態です。
また、時価総額が低い銘柄が株価低迷すると、再浮上することは難しくなる傾向があります。
次の株価チャートは、かつては格安スマホ(MVNO)のパイオニア企業として注目を集めた【9424】日本通信の月足チャートです。
日本通信は2014年にはMVNOで注目されて、株価は1,200円を超える価格まで急騰していましたが、暴落後は200円台で低迷し続けています。
急騰銘柄の多くは時価総額が低い銘柄ですが、時価総額が低い銘柄のほとんどは低迷している銘柄であることが実態であり、「時価総額が低い銘柄は急騰しやすい」というのは生存バイアスが入った考え方であると言わざるを得ません。
まとめ
この記事では、時価総額が低い銘柄のメリット・デメリットについて解説してきました。
時価総額が低い銘柄のメリットとしては、時価総額が大きい大型株に比べて、急騰しやすい傾向があることが挙げられます。
ただ、時価総額が低い銘柄は、取引量が少なくなるため流動性が低く、不利な価格で取引せざるを得なくなってしまうことには注意が必要です。
また、時価総額が低い銘柄のほとんどは株価が低迷しており、急騰銘柄はほんの一握りであるということが実態です。
割安株や低位株として、急騰が期待できる時価総額が低い銘柄に投資する行為は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法であると認識しておくようにしましょう。
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