前回記事で5日線/25日線の乖離率を検証し、教科書「GC買い・デッドクロス売り」を完全否定する結果を公開しました。今回はもっと長いスパンの25MA/75MAで同じ検証を行います。中長期トレンドの判断に使われるこの組み合わせで、教科書セオリーは生きているのか?
本記事では、東証全銘柄・約615万件のサンプル(2020〜2025年)で、25MAと75MAの乖離率別に翌日・5日後リターンを集計しました。乖離率帯は強デッド(≤-10%)/デッド側(-10〜-3%)/クロス付近(-3〜+3%)/GC側(+3〜+10%)/強GC(≥+10%)の5段階。
結論を先にお伝えします。中長期でも結果は同じ。強デッド(≤-10%)が翌日CC+0.171%/5日後+0.716%で最強、強GC(≥+10%)は翌日+0.033%/5日後+0.187%で最弱。5日後リターンの差は約4倍。教科書セオリー「中長期GCは買い、強いトレンドに乗れ」はデータでは完全否定されました。
1.検証ルール
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検証対象:東証全銘柄 約3,800社
検証期間:2020年1月〜2025年12月
サンプル数:約615万件の(25MA, 75MA)ペア
【乖離率の定義】
- 25MA = 直近25営業日終値の平均(中期トレンド)
- 75MA = 直近75営業日終値の平均(長期トレンド)
- 乖離率 = (25MA − 75MA) / 75MA × 100
【乖離率帯】
- ≤-10%(強デッド):中期線が長期線を10%以上下回る、強い下落トレンド
- -10〜-3%(デッド側):下落トレンド継続中
- -3〜+3%(クロス付近):ゴールデン/デッドクロス前後
- +3〜+10%(GC側):上昇トレンド継続中
- ≥+10%(強GC):強い上昇トレンド、過熱感あり
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2.検証結果
(1) 乖離率帯別 翌日・5日後リターン
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非常に分かりやすい単調パターンです。強デッド(≤-10%)が翌日CC+0.171%・5日後+0.716%で最強、その後デッド側→クロス付近→GC側→強GCと徐々に下がる左肩上がりの形状。5日後で見ると強デッド+0.716%は強GC+0.187%の約4倍。中長期トレンドでも「下げ強い銘柄ほどリバウンドが大きい」というデータが、教科書「強いトレンドに乗れ」を完全否定します。
(2) 乖離率帯別 勝率推移
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翌日CC勝率は46.2〜48.4%とすべて50%未満ですが、5日後勝率では強デッド以外で50%超(クロス付近50.8%、GC側50.6%、デッド側49.8%)。これは中長期トレンドが「方向性は明確だが、短期の反発も頻繁に起こる」状態を反映しています。
(3) 乖離率帯別 サンプル件数分布
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クロス付近(290万件)が最多、GC側(134万件)、デッド側(116万件)。強デッド(29万件)と強GC(47万件)は少数派。強デッドは年間約5万件=月間4,000件のスクリーニング対象があり、専門的な逆張り戦略を組むのに十分です。
(4) 完全データ表
| 乖離率帯 | 件数 | 翌日CC | 勝率 | 翌日OC | OC勝率 | 5日後CC | 5日勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ≤-10%(強デッド) | 285,009 | +0.171% | 47.2% | -0.089% | 44.6% | +0.716% | 49.7% |
| -10〜-3%(デッド側) | 1,158,860 | +0.077% | 47.2% | -0.047% | 43.8% | +0.350% | 49.8% |
| -3〜+3%(クロス付近) | 2,897,265 | +0.055% | 47.5% | -0.034% | 43.5% | +0.267% | 50.8% |
| +3〜+10%(GC側) | 1,340,585 | +0.055% | 48.4% | -0.042% | 45.5% | +0.282% | 50.6% |
| ≥+10%(強GC) | 465,384 | +0.033% | 46.2% | -0.070% | 44.8% | +0.187% | 47.0% |
3.25/75と5/25 両方で強デッド優位の意味
前記事の5/25MA、本記事の25/75MA、両方とも「強デッド翌日・5日後リターン最強」というデータが揃いました。これは偶然ではなく、市場全体に共通する構造です:
- 下落トレンドの自律修正力:短期(5/25)でも中長期(25/75)でも、強い下落トレンドには「売られすぎ→自律的反発」という共通メカニズムが働きます。
- 逆張りの優位性:日本市場では順張り(モメンタム)よりも逆張り(リバーサル)のほうが期待値高いという研究も多く、本検証はそれを裏付けます。
- 中長期ほどリターン拡大:5/25の5日後+0.455%に対し、25/75は+0.716%。中長期の乖離が大きいほど、反発の規模も大きい構造。
- 過熱感の重み:強GC(買われすぎ)状態は中長期でも持続せず、利確売りで反落圧力に。短期5/25の強GC+0.305%、中長期25/75の強GC+0.187%とどちらも他の帯より低水準。
- 普遍的法則の発見:時間軸を変えても「強デッド最強・強GC最弱」が成立するということは、これが市場の根本的な構造であることを示唆します。
4.データが示す正解戦略
5/25と25/75、両方の検証結果を統合した最強戦略:
- 強デッド銘柄の中期保有戦略:5/25乖離≤-5% AND 25/75乖離≤-10%の銘柄を当日大引け買い、5営業日後に売り。期待値+0.716%(25/75基準)の取り合い
- 強GC銘柄は完全回避:25/75乖離+10%以上の強GC銘柄は、教科書順張りトレーダーが買い続けるため、利確売り集中で期待値低い
- クロス付近は中立:エントリー対象外
実践フロー:
- エントリー条件:25MA-75MA乖離が-10%以下(強デッド)
- イグジット:5営業日後の大引け売り(+0.716%期待値)
- ロスカット:保有中-7%以上下落で即時撤退
- ポジションサイズ:1銘柄あたり資金の2〜3%、10〜15銘柄分散
5.実践活用――中長期MA戦略の具体的フロー
(1) スクリーニング条件
- 25MA-75MA乖離率 ≤ -10%(強デッド)
- 時価総額 ≧ 100億円
- 過去6ヶ月で2回以上連続して強デッドになっていない
- 当日出来高 ≧ 直近20日平均の0.7倍以上
(2) エントリー
- 大引け前14:55に上記条件を満たす銘柄を絞り込み
- 下落原因がセクター全体(マクロ要因)の場合は積極エントリー
- 個別の悪材料(業績下方修正・粉飾)の場合は3〜5日待ち
(3) イグジット
- 基本:5営業日後の大引け売り(+0.716%期待値)
- 利確:保有中+10%以上上昇で即時利確
- ロスカット:保有中-7%以上下落で即時撤退
(4) 5/25・25/75併用戦略
5MA-25MA乖離も同時にチェック。「短期も中長期も強デッド」の銘柄が最強候補。期待値は単独運用の数倍まで上がる可能性があります。AND条件で絞ると候補数は減りますが、確信度は最大化。
6.注意点とリスク
- 長期下落の罠:強デッドが数ヶ月続く銘柄は本質的問題の可能性。粉飾・債務超過リスクを事前確認
- 地合いの影響:日経平均自体が下落中の局面では、強デッド銘柄も反発しづらい
- セクター連鎖:同セクターの複数銘柄が強デッドの場合、業種全体の問題
- 勝率49.7%の罠:5日後勝率49.7%は5割切り。リターン拡大は損益比率の非対称性で稼ぐ
- 25/75粒度の制約:25/75日基準。50/200日基準では結果が変わる可能性
- 上場廃止リスク:投げ売り銘柄には粉飾・債務超過の前兆もあり得る
7.よくある質問(FAQ)
Q. 25日線/75日線とは何ですか?
A. 25日移動平均線(25MA)は約1ヶ月、75日移動平均線(75MA)は約3.5ヶ月の終値平均線です。中長期トレンドの判断に使われ、教科書では「25MAが75MAを上抜けでGC(買い)、下抜けでDC(売り)」とされますが、本検証ではこの逆が正解と判明しました。
Q. なぜ強GCで期待値が低いのですか?
A. 強GC(≥+10%)は「買われすぎ」状態。教科書セオリーに従う順張りトレーダーが買い続けるため、利確売り集中で翌日反落リスクが高い。+0.033%という低期待値は、ほぼ手数料・スリッページで消える水準です。
Q. 強デッドの中期保有+0.716%はどう取りますか?
A. 25MA-75MA乖離が-10%以下の銘柄を当日大引け買い、5営業日後の大引け売り。1取引で+0.716%は強力なエッジ。月間4,000件の候補から15銘柄ピックアップ&分散運用で、月20件÷5日保有=4並列ポジションが妥当。
Q. 5/25と25/75、どちらが優位ですか?
A. リターン期待値で見ると25/75(+0.716%)が5/25(+0.455%)の1.6倍。ただしサンプル数は5/25の方が多く機会は豊富。両方の条件を満たす銘柄に絞り込むと、確信度最大化&期待値拡大が両立できます。
Q. クロス付近はエントリー対象ですか?
A. 対象外推奨。翌日CC+0.055%、5日後+0.267%とほぼフラット。エントリーコスト考慮で実質マイナスゾーン。明確な強デッド(≤-10%)に絞ったほうが期待値高い。
Q. ロスカット幅はどう設定すべきですか?
A. 保有中-7%以上下落で即時撤退。強デッド銘柄は変動激しく、5日保有中の-3%以内のヒゲは想定内。広めのロスカット設定と分割エントリーの併用が現実的。
Q. 教科書のGC順張りは本当に効かないですか?
A. 本検証では翌日CC+0.058%(5/25強GC)、+0.033%(25/75強GC)と他の帯より明確に劣ります。「強い上昇トレンドに乗る」という教科書セオリーは、データ上ほぼ機能しないと結論できます。
8.まとめ
東証全銘柄6,147,103件で25MA/75MA乖離率別の翌日リターンを検証しました。重要ポイントは4つ:
- 中長期MAでも教科書「GC買い・DC売り」は完全否定。強デッド最強・強GC最弱の単調パターン。
- 強デッド(≤-10%)は翌日CC+0.171%/5日後+0.716%/勝率49.7%。期待値は5/25基準の1.6倍。
- 強GC(≥+10%)は5日後+0.187%。クロス付近+0.267%より低く、「強い上昇トレンドの順張り」は機能しない。
- 5/25・25/75併用が最強。両方の条件で強デッドの銘柄は確信度最大、期待値も最大化。
「移動平均線GC順張り」という教科書セオリーは、5/25でも25/75でも完全に否定されました。強デッド逆張りこそが日本株市場の優位戦略です。次に銘柄が強デッド状態になったら、迷わず「大引け買い、5営業日後売り」を実行してみてください。これがデータが示す「中長期MAで稼ぐ唯一の正解」です。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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