目次
信用倍率とは
信用倍率とは、信用取引の取引残高を示す「信用買い残」と「信用売り残(空売り残高)」の比率のことです。
信用買い残とは、その銘柄について信用買いで買われた取引のうち、決済されていない株式の残高を指します。
信用売り残とは、その銘柄について、空売り(信用売り)で売られた取引のうち、まだ決済されていない株式の残高です。
信用買い・空売りのいずれも、制度信用取引の決済期限は6ヶ月のため、6ヶ月以内に決済する必要があります。
信用買い残の方が大きければ、将来的な売り圧力の方が大きくなっていると認識できます。
一方、信用売り残の方が大きければ、将来的な買い圧力の方が大きくなっていると判断できるでしょう。
信用倍率は、「信用買い残÷信用売り残」で計算されます。
「信用買い残」の方が多い場合には信用倍率は1以上となり、「信用売り残」の方が多い場合には、信用倍率は1未満となります。
東証全体の信用倍率は4倍程度
東証全体の信用倍率は東証が毎週発表しており、日本取引所のホームページ「信用取引残高等」で公開されています。
ただ、東証のホームページの情報はやや見づらいため、株式情報サイト「TRADERS WEB」を活用することがおすすめです。
2023年8月10日時点での、東証全体の信用取引の指標は次の通りです。
※出典:TRADERS WEB
東証全体では、空売り残高は8,640億円、信用買い残は3兆6,742億円となっており、信用倍率は4.25倍です。
東証全体で見ると信用倍率は4.25倍となっており、個別銘柄についても、この数値が一つの目安となります。
個別銘柄について信用倍率を見たときに、4~5倍だったときには平均程度であると認識するようにしましょう。
信用倍率が異常に高い銘柄について
「Yahoo!ファイナンス」の株式ランキングでは、信用取引関連ランキングとして、「信用倍率上位」や「信用倍率下位」といったランキングを見ることができます。
信用倍率トップ10は次のようになっています(2023年8月23日時点)。
順位 | 銘柄名 | 信用倍率 | 信用買い残 | 信用売り残 |
1 | 【7692】アースインフィニティ | 128,443倍 | 12,844,300 | 100 |
2 | 【7527】システムソフト | 43,151倍 | 4,315,100 | 100 |
3 | 【9204】スカイマーク | 26,900倍 | 2,690,000 | 100 |
4 | 【2764】ひらまつ | 23,704倍 | 2,370,400 | 100 |
5 | 【7794】イーディーピー | 17,820倍 | 1,782,000 | 100 |
6 | 【3133】海帆 | 16,362.5倍 | 6,545,000 | 400 |
7 | 【3760】ケイブ | 11,570倍 | 1,157,000 | 100 |
8 | 【5032】ANYCOLOR | 8,871.8倍 | 4,435,900 | 500 |
9 | 【3984】ユーザーローカル | 8,834倍 | 883,400 | 100 |
10 | 【4395】アクリート | 8,148倍 | 814,800 | 100 |
東証全体の信用倍率の平均が4.25倍であることからすると、これらの銘柄の信用倍率は異常に高いと言えます。
信用倍率トップの【7692】アースインフィニティは12万8,443倍となっていますが、2023年5月に大暴落となり、多くの個人投資家を追証に追い込むことになりました。
ただ、これらの上位銘柄には、信用倍率が異常に高くなる理由があります。
ズバリ、制度信用取引で空売り可能な貸借銘柄ではなく、制度信用取引で空売りできない非貸借銘柄であることです。
貸借銘柄とは、制度信用取引の対象銘柄のうち、信用買いだけではなく、空売り(信用売り)もできる銘柄のことです。
貸借銘柄になるかどうかは、証券取引所と証券金融会社が定める貸借銘柄選定基準を満たした銘柄が選定されています。
東証グロース市場や東証スタンダード市場の多くの銘柄が非貸借銘柄となっており、東証プライム市場でも非貸借銘柄となっている銘柄があります。
信用倍率トップ10を見てみると、いずれの銘柄も信用売り残が3ケタとなっており、信用倍率が異常に高くなるのも当然の結果と言えます。
信用倍率が異常に高い銘柄を取引する際の注意点
信用倍率が異常に高い銘柄を取引する際の注意点について見ていきましょう。
非貸借銘柄は制度信用取引による空売りはできない
前述したように、非貸借銘柄の場合には、制度信用取引による空売りはできません。
非貸借銘柄の新興銘柄やIPO銘柄であっても1日限定で空売りできる、松井証券の「プレミアム空売り」やSBI証券の「HYPER空売り」といった一般信用取引の制度もあります。
ただ、これらのサービスは手数料が割高となっており、【7692】アースインフィニティのような人気銘柄の場合は、在庫がなく空売りすることはできません。
信用倍率が異常に高い非貸借銘柄は、基本的には空売りできないと考えておきましょう。
信用倍率が異常に高い銘柄を買うときは暴落リスクに注意しておこう
信用倍率が異常に高い銘柄を買う際には、暴落リスクに注意が必要です。
空売りが入らない非貸借銘柄であるということは、空売りの買い戻し(ショートカバー)による買いも入らないため、暴落したときに買い支えるものがなく、一方的な下落となりやすい傾向があります。
信用倍率が異常に高くなっている銘柄の中には、急騰銘柄も多く、買いで利益を出しやすい銘柄もありますが、あまり大きな資金で買い注文を入れることは避けた方が賢明です。
信用倍率が異常に高い銘柄を保有しているときは売り時を探そう
信用倍率が異常に高い銘柄を保有している場合には、信用倍率が異常に高くなってきたら、売り時を探すタイミングに来ているかもしれません。
信用倍率トップの【7692】アースインフィニティも、暴落前には急騰しており、売り抜けることも十分に可能でした。
信用倍率が異常に高い非貸借銘柄は、空売りによるショートカバーが入らないため暴落しやすく、早めに売り抜けることが重要です。
信用倍率が異常に低い銘柄について
逆に、信用倍率が異常に低い銘柄について見ていきましょう。
信用倍率が異常に低いということは、空売りが多いということであり、つまり制度信用取引で空売りができる貸借銘柄ということになります。
また、空売りが多いということは、将来的には買い圧力が高まっていると見ることもできます。
信用倍率が低い銘柄トップ10は次の通りです(2023年8月23日時点)。
順位 | 銘柄名 | 信用倍率 | 信用買い残 | 信用売り残 |
1 | 【1397】SMDAM 日経225上場投信 | 0.00倍 | 0 | 10 |
2 | 【1473】One ETF トピックス | 0.00倍 | 0 | 10 |
3 | 【2524】NZAM 上場投信 TOPIX | 0.00倍 | 0 | 110 |
4 | 【2525】NZAM 上場投信 日経225 | 0.00倍 | 0 | 11 |
5 | 【8275】フォーバル | 0.02倍 | 8,700 | 370,700 |
6 | 【3222】ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス | 0.03倍 | 63,000 | 2,142,600 |
7 | 【9946】ミニストップ | 0.04倍 | 26,700 | 707,000 |
8 | 【8160】木曽路 | 0.04倍 | 30,100 | 781,500 |
9 | 【7611】ハイデイ日高 | 0.04倍 | 66,100 | 1,706,700 |
10 | 【7520】エコス | 0.04倍 | 14,900 | 368,600 |
信用倍率が低い銘柄の内、1位から4位はETFとなっています。
ETFは現物買いによる長期・積立・分散投資に適した銘柄であるため、そもそも信用買いには適していません。
5位から10位の銘柄についても、直近では上昇・下落・横ばいとバラバラな値動きとなっています。
信用倍率が異常に低いからといって、必ずしも将来的に上昇するというわけではないことに注意しておきましょう。
まとめ
この記事では、信用倍率が異常に高い銘柄について解説してきました。
信用倍率が異常に高い銘柄は、将来的な売り圧力が高まっていると考えられますが、その大多数は制度信用取引で空売りができない非貸借銘柄となっています。
松井証券の「プレミアム空売り」やSBI証券の「HYPER空売り」では、非貸借銘柄であっても一般信用取引で空売りできますが、信用倍率1位の【7692】アースインフィニティのような人気銘柄は在庫がなく、実質的には空売りできない状況です。
信用倍率が異常に高い非貸借銘柄は、空売り決済によるショートカバーが入らないため一方的な暴落となりやすく、保有している場合には信用倍率が異常に高くなった段階で売り時を探すようにしましょう。
【無料】株システムトレードの教科書の記事は「システムトレードの達人」を使って検証しています。
↓↓↓↓↓
今ならシステムトレードの達人(無料版)がこちらよりダウンロードできます。
ぜひ手に入れてください!