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1週間ほどで大きく動いた銘柄を、どう扱えばよいのか。急落したから拾うべきか、急騰したから乗るべきか。あるいはどちらも避けるべきか。

東証全銘柄について、2022年10月3日から2026年8月8日までの4,018,089件(4,805銘柄・942営業日)を、直近7営業日の変動率で8つの帯に分けて集計しました。

結論から申し上げます。急騰側は明確にマイナスでした。7日で30%以上上げた銘柄の20営業日後は-1.071%・勝率39.7%。全銘柄平均の+1.299%を大きく下回ります。しかもこの結果は、発生日を除く検証をしても変わりませんでした。

一方で急落側の好成績は、条件つきです。7日で20〜30%下げた銘柄の20営業日後は+7.132%と際立って高いのですが、その19.6%が3日に集中しています。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

集計条件をすべて開示します。

  • データ:東証全銘柄の日足終値(株式分割の影響を除いた調整後株価)。出来高がゼロの日は除外
  • 期間:2022/10/03〜2026/08/08(942営業日・4,805銘柄)
  • 7日変動率:当日終値 ÷ 7営業日前の終値 − 1 を%で表示
  • 帯:-30%以下/-30〜-20/-20〜-10/-10〜0/0〜10/10〜20/20〜30/30%以上の8区分
  • リターン:その日の終値で買ったとして、翌日寄付き・翌日終値・5営業日後・20営業日後
  • 頑健性の確認:極端な帯について、発生が多かった上位3営業日を除いた再集計と年別集計

分布も示しておきます。中央値は+0.16%、下位5%が-8.04%、上位5%が+9.09%。7日で20%以上下げるのは全体の0.48%、20%以上上げるのは1.06%にすぎません。

2.変動率の帯別に見た結果

直近7営業日の変動率別 その後の平均リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

7日変動率件数翌日寄付き翌日終値勝率5営業日後勝率20営業日後勝率
-30%以下3,761+1.552%+1.893%50.7%+3.989%52.7%+5.732%51.3%
-30〜-20%15,677+1.174%+1.786%57.2%+4.545%62.2%+7.132%61.6%
-20〜-10%108,995+0.175%+0.250%51.4%+1.376%55.9%+3.093%57.4%
-10〜0%1,734,762+0.092%+0.072%49.3%+0.312%52.8%+1.370%54.8%
0〜10%1,985,368+0.075%+0.036%46.9%+0.250%49.8%+1.130%52.6%
10〜20%126,958+0.164%+0.031%45.0%+0.365%47.1%+1.009%46.8%
20〜30%24,653+0.539%+0.199%44.5%+0.570%45.2%+0.777%43.9%
30%以上17,915+1.124%+0.222%40.9%-0.175%40.5%-1.071%39.7%
全銘柄平均(比較用)4,018,089+0.101%+0.068%48.0%+0.331%51.1%+1.299%53.4%

20営業日後の列を左から右へたどると、U字ではなく右肩下がりになっています。急落側が高く、急騰側が低い。最も高いのは-30〜-20%の+7.132%、最も低いのは30%以上の-1.071%です。

勝率も同じ形です。-30〜-20%が61.6%、30%以上が39.7%。40%を割り込むのは、本サイトの検証でもなかなか見ない低さです。

目を引くのが翌日寄付きの列です。両端がどちらも高く出ています(-30%以下で+1.552%、30%以上で+1.124%)。大きく動いた翌朝は、方向に関係なく高く始まるという傾向です。ただし急騰側は翌日終値までに+0.222%まで縮んでいます。

3.急騰した銘柄を買ってはいけない

今回の検証で最も確度が高いのは、急騰側の結果です。

7日で30%以上上げた銘柄17,915件は、翌日終値+0.222%(勝率40.9%)、5営業日後-0.175%、20営業日後-1.071%。期間が延びるほど悪化します。

20〜30%の帯も同じ傾向で、20営業日後+0.777%・勝率43.9%。全銘柄平均を大きく下回りました。

この結果が信頼できる理由は、発生日の分散にあります。30%以上の急騰は上位3日を合わせても全体の3.4%にとどまります。特定のイベントに集中していません。

そして上位3日を除いて集計し直すと、20営業日後は-1.071%から-1.243%へ。むしろ悪化しました。マイナスが特定の日に作られたものではない、ということです。

4.急落側の好成績は、いつ作られたのか

一方、急落側は慎重に読む必要があります。

急落からの戻りは、いつ起きたのか

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

7日で20〜30%下げた15,677件の発生日を数えると、次のようになりました。

  • 2024/08/05(1353件)
  • 2025/04/07(1181件)
  • 2024/08/06(531件)

この3日だけで全体の19.6%。市場全体が急落した日に、多数の銘柄が同時にこの帯へ入っています。

変動率の帯件数上位3日のシェア20営業日後上位3日を除くと変化
-30%以下3,76114.8%+5.732%+0.380%-5.352pt
-30〜-20%15,67719.6%+7.132%+2.892%-4.240pt
20〜30%24,6535.3%+0.777%+0.676%-0.101pt
30%以上17,9153.4%-1.071%-1.243%-0.172pt

※全銘柄平均の20営業日後は+1.299%

上位3日を除くと、-30〜-20%の20営業日後は+7.132%から+2.892%へ。半分以下になりました。それでも全銘柄平均+1.299%は上回っていますので、効果がゼロになったわけではありません。

より極端な-30%以下は深刻です。+5.732%から+0.380%へと、平均を下回るところまで落ちました。件数も3,761件と少なく、判断材料としては使えません。

年別でも確認します。-30〜-20%の20営業日後は2022年+0.411%、2023年+0.943%、2024年+11.541%、2025年+10.580%、2026年-0.330%。急落のあった年だけが突出し、それ以外はほぼゼロかマイナスという形です。

5.2つの結論の確度は同じではない

ここまでの内容を整理すると、同じ1枚の表から読み取れる2つの結論には、確からしさに差があることがわかります。

「急騰した銘柄は買わない」は、かなり確度が高い。発生が分散し、上位3日を除いても変わらず、期間が延びるほど悪化するという一貫性があります。

「急落した銘柄を拾う」は、条件つき。好成績の大部分が数日の暴落とその後の戻りで説明でき、平時に同じことをしても同じ結果は得られない可能性があります。

同じ検証から出た2つの数字でも、その裏側を見れば信頼度は違う。平均値だけを並べて比べると、この違いは見えません。

6.この検証の限界

結果を使う前に、次の点をご承知おきください。

  • 売買コストを含みません。とくに急落銘柄は値動きが荒く、想定した値段で売買できないことがあります
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません。下げ続けた銘柄が抜け落ちている分、急落側の数字は実際より良く出ている可能性があります
  • 材料の中身は見ていません。決算なのか、不祥事なのか、市場全体の下げに巻き込まれただけなのかを区別していません
  • 観測が重なっています。7日変動率は連日似た値を取るため、4,018,089件が独立した試行というわけではありません

7.よくある質問(FAQ)

Q. 7日変動率とは何ですか?

A. 当日の終値を7営業日前の終値と比べた変化率です。約1週間半でどれだけ動いたかを表します。5日(約1週間)で見るより少し長い期間を取ることで、数日の振れに左右されにくくなります。

Q. 急落した銘柄は買いですか?

A. 条件つきで、そう言える面はあります。7日で20〜30%下げた銘柄の20営業日後は+7.132%・勝率61.6%と、全銘柄平均の+1.299%を大きく上回りました。ただし発生日が偏っており、上位3日を除くと+2.892%まで下がります。

Q. 30%以上下げた銘柄はどうですか?

A. こちらは注意が必要です。そのままの集計では20営業日後+5.732%ですが、上位3日を除くと+0.380%まで落ち、平均を下回ります。件数も3,761件と少なく、判断材料としては弱い数字です。

Q. 急騰した銘柄はどうでしたか?

A. 明確にマイナスでした。7日で30%以上上げた銘柄の20営業日後は-1.071%・勝率39.7%。5営業日後も-0.175%です。しかもこの結果は上位3日を除いても-1.243%と変わりません。

Q. 急騰側の結果が信頼できるのはなぜですか?

A. 発生が分散しているからです。30%以上の急騰は上位3日を合わせても全体の3.4%にとどまり、急落側(20〜30%下げが3日で19.6%)と比べてはるかに偏りが小さい。特定の暴落に依存していないぶん、結論が安定しています。

Q. 翌日の寄付きだけ高いのはなぜですか?

A. 急落側も急騰側も、翌日寄付きは高く出ます(-30%以下で+1.552%、30%以上で+1.124%)。大きく動いた翌朝は注目が集まり、買い注文が寄り付きに集中するためと考えられます。ただし30%以上の急騰では、翌日終値までに+0.222%まで縮んでいます。

Q. この検証をどう使えばよいですか?

A. 「急騰した銘柄を買わない」という判断のほうが、今回の範囲では根拠がしっかりしています。急落からの反発を狙う場合は、それが市場全体の急落なのか個別の事情なのかを見分ける必要があります。前者であれば、買っているのは個別銘柄ではなく市場全体の戻りということになります。

8.まとめ

4,018,089件を数え直してわかったことを整理します。

  • 急騰側は明確にマイナスでした。7日で30%以上上げた銘柄の20営業日後は-1.071%・勝率39.7%。上位3日を除いても-1.243%と変わりません
  • 急落側の好成績は数日に支えられています。-30〜-20%の20営業日後+7.132%は、上位3日を除くと+2.892%まで落ちます
  • -30%以下は使えません。上位3日を除くと+0.380%と、全銘柄平均+1.299%を下回ります
  • 翌朝はどちらも高く寄ります。急騰側は翌日終値までに+0.222%まで縮みました

大きく動いた銘柄は目立ちます。値上がり率ランキングにも値下がり率ランキングにも、それらは毎日並んでいます。

ただ今回の数字が示していたのは、ランキングの上位に飛びつくことの分の悪さと、下位を拾う戦略が暴落という特殊な場面に依存していることでした。どちらのランキングを見るときも、その銘柄がなぜそこにいるのかを一度考えてみてください。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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