「IPO(新規上場)銘柄は公開価格で買えたら勝ち、上場後にセカンダリーで買うのは危ない」――長く語られてきた通説です。一方で「成長企業を早い段階で仕込めるのだから上場直後こそ買い場だ」という声も根強くあります。印象論ではなく、実際の株価データで確かめてみます。
検証したのは、東証プライム・スタンダード・グロースに新規上場した280社(2022/12/30〜2026/07/29上場)。上場初日の終値を起点に、翌日から60営業日後(約3ヶ月後)までの値動きを1銘柄ずつ全数追跡しました。
結論からお伝えします。60営業日後のリターンは中央値-9.67%、上場初日の終値を上回っていた銘柄はわずか37.3%。つまり約63%が3ヶ月後に初日終値を割り込んでいました。平均は+1.90%とわずかにプラスですが、これは上位5社(最大+464.1%)が押し上げた見かけの数字で、その5社を除くと-3.77%です。
初日の値動きで分けると差はさらに鮮明でした。初日を大幅高(+10%以上)で終えた銘柄は60営業日後の中央値-17.75%・勝率28.0%と最弱、初日が横ばい(-3〜+3%)だった銘柄だけが中央値+1.15%・勝率53.3%とプラス圏を保ちました。
1.検証ルール
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検証対象:東証プライム・スタンダード・グロースに新規上場した280社
検証期間:2022/10/03〜2026/07/31
上場日の範囲:2022/12/30〜2026/07/29
追跡期間:上場初日の終値から60営業日後(約3ヶ月)まで
【上場初日の近似判定】
- 株価データベース内でその銘柄コードが最初に出現した日を「上場初日」とみなしています(上場日を記録した項目がデータベースに無いための近似です)
- 検証開始日(2022/10/03)から60営業日以内に初出現した銘柄は既存銘柄を拾う可能性が高いため除外。対象は2022/12/29以降に初出現した銘柄です
- 初日の市場区分が東証プライム・スタンダード・グロースのものだけを採用し、ETF・ETN・REIT(196件)、株価指数(33件)、名古屋証券取引所単独上場(12件)は対象外
- 公開価格・初値の情報はデータベースに含まれていません。「公開価格で買えた場合の損益」は扱わず、市場で誰でも買える上場初日の終値を起点にしています
【計測方法】
- リターン=(N営業日後の終値 ÷ 上場初日の終値 – 1)×100(%)。N=1・5・10・20・40・60営業日
- 上場初日の値動き=(初日終値 ÷ 初日始値 – 1)×100(%)。この値で5層に分けて比較
- 勝率=上場初日の終値を上回っていた銘柄の割合
- ボラティリティ=日次リターンの標準偏差。上場初日〜20日目と21〜60日目に分けて算出し、比較用に既存銘柄900社の同じ長さの窓でも計算
- 配当・株式分割は調整後株価ベース。売買手数料・スリッページは考慮していません
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2.検証結果
(1) 上場後60営業日の値動き――平均と中央値が正反対を向く
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左は上場初日の終値をゼロとして60営業日の値動きを平均(赤)と中央値(青)で追ったものです。両者はまったく違う姿を描きます。平均は9営業日目の-5.07%を底に持ち直して+1.90%へ戻りますが、中央値は32営業日目に-12.18%まで沈み、60営業日後も-9.67%と大きくマイナスのままです。
右のグラフはさらに直接的です。初日終値を上回っている銘柄の割合は1営業日後(初値の翌日)で43.9%、10営業日後には32.0%まで低下し、60営業日まで一度も50%に届きません。中央値も5営業日後-5.37%、20営業日後-6.79%、40営業日後-10.89%。「時間が経てば戻る」どころか、2ヶ月目に向けてじわじわ悪化していくのが実態でした。
(2) 上場初日の値動きで、その後の成績はここまで変わる
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初日を「終値÷始値-1」で5層に分けました。全280社の初日の値動きは平均-0.52%・中央値-2.27%で、初日の始値(実質的な初値)より高く引けた銘柄は40.4%だけ。初値をつけた後に売りに押される銘柄が多数派でした。
初日を大幅高(+10%以上、54社)で終えた銘柄は20営業日後の中央値-16.89%、60営業日後の中央値-17.75%・勝率28.0%と5層で最も低調です。人気が過熱した銘柄ほど反動が大きいことになります。逆に初日が横ばい(-3〜+3%、63社)だった銘柄は60営業日後の中央値+1.15%・勝率53.3%と唯一プラス圏を維持しました。
注意したいのが初日に大きく売られた層(-10%以下、60社)です。60営業日後の平均は+16.36%と最高に見えますが、中央値-7.15%・勝率37.3%。大化けした数社が偏って含まれているだけで、典型的な1社はマイナスです。右のグラフで平均(オレンジ)と中央値(青)の差が最も開くのがこの層で、平均だけを見て「売られた銘柄は買い」と判断するのは危険だとわかります。
(3) 上場直後のボラティリティは市場平均の約2.6倍
日次リターンの標準偏差で値動きの荒さを測ると、上場初日〜20営業日目は1日あたり5.64%で既存銘柄の20営業日窓(2.13%)の約2.6倍。21〜60営業日目は4.05%へ落ち着きますが、それでも既存銘柄の40営業日窓(2.22%)の約1.8倍です。値幅を見ると60営業日のあいだの最大上昇率は中央値+12.9%、最大下落率は中央値-23.4%で、含み損に耐える時間が長くなりがち。さらに31.4%(85社)は一度も上場初日の高値を超えられませんでした。
| 対象と期間 | 日次標準偏差(平均) | 中央値 | サンプル数 |
|---|---|---|---|
| 新規上場銘柄 上場初日〜20営業日目 | 5.636% | 4.951% | 276社 |
| 新規上場銘柄 21〜60営業日目 | 4.052% | 3.836% | 271社 |
| 既存銘柄 20営業日の窓(比較用) | 2.129% | 1.696% | 38,458件 |
| 既存銘柄 40営業日の窓(比較用) | 2.218% | 1.835% | 18,803件 |
(4) 平均を作っているのは、ごく一部の大化け銘柄
平均+1.90%はそのまま受け取ってはいけません。上位5社は+464.1%、+326.2%、+257.6%、+241.3%、+229.0%で、この5社だけでプラス側の合計リターンの32.5%を占めます。上位5社を除くと平均-3.77%、上下5社ずつを除くと-2.75%、上下5%を切り落とした刈り込み平均は-6.30%。60営業日後に-30%以下だった銘柄が22.9%ある一方、+30%以上は12.2%と、多くが負けてごく一部が跳ねる宝くじ型の分布です。
なお対象280社の初日出来高はその後20営業日の中央値の15.4倍(中央値)で、上場初日らしい売買の集中が確認できました。倍率が1.5倍に届かなかった23社(持株会社化などによる技術的な新規上場の可能性が高い銘柄)を除くと60営業日後は平均-2.31%・中央値-11.46%・勝率35.6%。純粋なIPOに絞るほど結果は厳しくなりました。
| 60営業日後リターンの区分 | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1.-30%以下 | 62 | 22.9% |
| 2.-30〜-10% | 72 | 26.6% |
| 3.-10〜0% | 36 | 13.3% |
| 4.0〜+10% | 30 | 11.1% |
| 5.+10〜+30% | 38 | 14.0% |
| 6.+30%以上 | 33 | 12.2% |
(5) 市場別・上場年別の内訳
市場で分けると差が出ます。東証グロース(185社)は60営業日後の中央値-16.86%・勝率32.4%と最も厳しく、東証プライム(25社)は中央値-0.14%・勝率48.0%、東証スタンダード(61社)は中央値-0.57%・勝率47.5%。上場年別でも中央値は-7.33%(2023年)、-12.34%(2024年)、-9.28%(2025年)、-3.94%(2026年1〜7月)と4年すべてマイナスで、特定の年だけの現象ではありません。
| 上場した市場 | 社数 | 5日後中央値 | 20日後中央値 | 60日後平均 | 60日後中央値 | 60日後勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東証プライム | 25 | -2.80% | -1.78% | +4.62% | -0.14% | 48.0% |
| 東証スタンダード | 61 | -2.66% | -2.08% | +3.53% | -0.57% | 47.5% |
| 東証グロース | 185 | -9.44% | -12.85% | +1.00% | -16.86% | 32.4% |
| 上場年 | 検出社数 | 60日後の集計社数 | 60日後平均 | 60日後中央値 | 60日後勝率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 98 | 98 | +3.71% | -7.33% | 36.7% |
| 2024年 | 91 | 91 | +1.18% | -12.34% | 38.5% |
| 2025年 | 62 | 62 | +4.94% | -9.28% | 38.7% |
| 2026年(1〜7月) | 28 | 19 | -11.55% | -3.94% | 31.6% |
(6) 完全データ表
| 経過営業日 | 件数 | 平均リターン | 中央値 | 勝率 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1営業日後(初値の翌日) | 280 | +0.190% | -1.934% | 43.9% | 11.4% |
| 5営業日後 | 280 | -1.742% | -5.369% | 37.1% | 25.6% |
| 10営業日後 | 278 | -4.790% | -7.584% | 32.0% | 25.4% |
| 20営業日後(約1ヶ月) | 276 | -4.053% | -6.795% | 35.5% | 30.0% |
| 40営業日後(約2ヶ月) | 272 | -2.096% | -10.895% | 37.1% | 43.4% |
| 60営業日後(約3ヶ月) | 271 | +1.902% | -9.668% | 37.3% | 58.3% |
| 上場初日の値動き | 社数 | 初日平均 | 5日後平均 | 5日後中央値 | 20日後平均 | 20日後中央値 | 60日後平均 | 60日後中央値 | 60日後勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.初日大幅安(-10%以下) | 60 | -15.45% | +1.49% | -5.29% | +1.42% | -9.43% | +16.36% | -7.15% | 37.3% |
| 2.初日下落(-10〜-3%) | 72 | -6.34% | -4.16% | -5.73% | -5.58% | -6.54% | +0.13% | -11.39% | 35.2% |
| 3.初日横ばい(-3〜+3%) | 63 | -0.18% | -5.31% | -3.06% | -4.41% | -3.24% | -1.12% | +1.15% | 53.3% |
| 4.初日上昇(+3〜+10%) | 31 | +5.82% | -1.02% | -6.94% | -11.27% | -12.06% | -5.39% | -12.34% | 25.8% |
| 5.初日大幅高(+10%以上) | 54 | +19.78% | +1.65% | -9.97% | -3.42% | -16.89% | -4.50% | -17.75% | 28.0% |
3.なぜ新規上場銘柄は上場直後に上値が重くなるのか
データが示した「初値天井」型の値動きは、新規上場銘柄が置かれた需給環境から説明できます。
- 初日に買い需要が集中しきってしまう:上場前から注目された銘柄は、初値の時点で買いたい人の多くが買い終わっています。初日の始値より高く引けた銘柄は40.4%だけ(中央値-2.27%)。買いが出尽くした瞬間から需給の重心が売り側へ傾きます。
- 浮動株が極端に少なく、値動きが荒い:上場直後は市場に出回る株数が限られ、少額の売買で株価が大きく動きます。上場初日〜20営業日目の日次標準偏差は5.64%と既存銘柄の約2.6倍。荒い値動きは含み損を抱えた投資家の投げ売りを誘発しやすく、下向きの圧力になりがちです。
- ロックアップ解除という時限式の売り圧力:ベンチャーキャピタルや創業株主の売却制限が期間経過や株価条件で解除されると、大口の売りが出る余地が生まれます。中央値が32営業日目(約2ヶ月)に向けて-12.18%まで悪化する形は、時間とともに供給が増える構造と整合します。
- 機関投資家が買いにくい:時価総額が小さく流動性も乏しい銘柄には大口資金が入りにくいものです。時価総額の大きい企業が多い東証プライム上場は60営業日後の勝率48.0%とほぼ五分なのに対し、東証グロースは勝率32.4%・中央値-16.86%。買い支える主体の有無が差になっています。
- 業績の実績が乏しく、評価の基準がない:上場直後は成長ストーリーへの期待だけで値がついている状態です。最初の決算で期待に届かないと株価は一気に水準訂正されます。60営業日後に-30%以下となった銘柄が22.9%に達するのは、期待剥落の速さの表れです。
- ごく一部の大化けが「IPOは儲かる」という印象を作る:60営業日後に+30%以上となった銘柄は12.2%あり、上位数社は3ヶ月で株価が3倍以上になりました。成功例は記憶に残る一方、静かに下げ続けた大多数は話題になりません。この非対称さが通説と実態のズレを生みます。
4.データが示す正解戦略
280社の全数追跡から導かれる、新規上場銘柄への向き合い方を整理します。
- 上場直後の飛びつき買いは分が悪い:初日終値で買って3ヶ月保有した場合、中央値-9.67%・勝率37.3%。10回買えば約6回は初日終値を下回る計算です
- 初日が大幅高(+10%以上)で終えた銘柄は特に慎重に:60営業日後の中央値-17.75%・勝率28.0%と最も弱い層でした
- 初日が横ばい(-3〜+3%)の銘柄は相対的に堅い:60営業日後の中央値+1.15%・勝率53.3%と5層で唯一プラス圏。過熱も失望もなかった銘柄が最も素直に動いていました
- 平均ではなく中央値で判断する:平均+1.90%も上位5社を除けば-3.77%。典型的な1社の姿を示すのは中央値の-9.67%です
- 市場区分で期待値を変える:東証グロース上場は中央値-16.86%・勝率32.4%、東証プライム上場は中央値-0.14%・勝率48.0%。同じ新規上場でも中身は別物です
- 時間を味方につける:上場から3ヶ月は需給が落ち着かない期間と割り切り、決算を通過してから判断する。60営業日で一度も初日高値を超えられなかった銘柄が31.4%あった事実は、待つコストの小ささを示しています
- ポジションサイズは通常の半分以下に:値動きの荒さが既存銘柄の約2.6倍である以上、同じ金額なら体感リスクは倍以上になります
5.実践活用――新規上場銘柄との付き合い方の具体的フロー
(1) 上場当日にやること:買うのではなく記録する
- 初日の始値・高値・終値・出来高をメモし、「終値÷始値-1」を計算する
- 大幅高(+10%以上)/上昇/横ばい/下落/大幅安(-10%以下)のどの層かを判定し、大幅高の銘柄には「3ヶ月は静観」の印を付ける(この層の60営業日後の中央値は-17.75%)
- 初日に売買しないと決めておくだけで、勝率37.3%の勝負を避けられます
(2) 上場後1ヶ月:需給が落ち着くのを観察する
- 出来高が初日の10分の1程度まで減り、日々の値動きが落ち着いたかを確認する(対象280社の初日出来高はその後20営業日の中央値の15.4倍でした)
- 株価が上場初日の安値を割り込んでいないか、下値を切り上げているかを見る
- この時点の中央値は-6.79%。まだ多数派は初日終値を下回っている局面だと認識しておく
(3) 上場後2〜3ヶ月:判断材料が揃ってから検討する
- 上場後最初の決算発表を通過し、計画に対する進捗が見えたかを確認する
- ロックアップ解除の有無と時期を目論見書や適時開示で確認する
- 株価が上場初日の高値を明確に上回ったかを見る。60営業日以内に達成できなかった銘柄が31.4%ある一方、超えてきた銘柄は需給が入れ替わったサインになります
(4) 実際にエントリーする場合のリスク管理
- ポジションサイズ:日次の値動きが既存銘柄の約2.6倍のため、1銘柄あたりの投資額を通常の半分以下に抑える
- 損切り:60営業日のあいだに中央値で-23.4%の下落を経験しています。許容できる下落幅を決め、超えたら機械的に撤退する
- 分散:22.9%が3ヶ月で-30%以下になる世界です。1銘柄への集中投資は避ける
- 期待値の置き方:3ヶ月で+30%以上になるのは全体の12.2%。大化けを当てにした資金計画は立てない
6.注意点とリスク
- 上場初日の判定は近似です:データベースに上場日の項目がないため銘柄コードが最初に出現した日を上場初日とみなしており、データ収録の都合で実際の上場日とずれる可能性が残ります
- 公開価格・初値のデータは含まれていません:「公開価格で当選した場合の損益」は扱わず、市場で誰でも買える上場初日の終値を起点にした検証です
- 持株会社化・経営統合・再上場が混じっている可能性:初日出来高がその後20営業日の中央値の1.5倍に届かなかった23社(8.2%)は組織再編による技術的な新規上場の可能性が高い銘柄です。除いても60営業日後の中央値は-11.46%と結論の向きは変わりませんが、サンプルに不純物が含まれる点はご認識ください
- サンプル数が多くありません:全体280社、60営業日後まで追えたのは271社。層別すると1層31〜72社しかなく、数社の値動きで数値が動きます。年別の検出数は2023年98社・2024年91社と実態(年間90〜100社程度)におおむね一致しますが、2025年62社・2026年1〜7月28社は少なめ。東証3市場に限定し、名古屋証券取引所単独上場・TOKYO PRO Market・ETF・REITを対象外としたことが主因と考えられます
- 平均は一握りの銘柄に依存しています:平均+1.90%は上位5社(最大+464.1%)がプラス側合計の32.5%を占めた結果です。平均値だけを根拠にした判断は避けてください
- 手数料・スリッページで実際の成績はさらに目減りします:終値どうしの計算で売買手数料・スプレッド・スリッページを考慮していません。上場直後は板が薄く、想定より不利な価格で約定する可能性があります
- 相場環境の影響を受けます:検証期間は日本株が総じて堅調だった局面を多く含みます。相場全体が下落する局面では、新興市場の銘柄はさらに厳しい下げに見舞われる可能性があります
- 過去の傾向であり、将来を保証するものではありません:2022/12/30〜2026/07/29に上場した280社の実績です。すべての新規上場銘柄が下がるという意味ではなく、3ヶ月で株価が3倍以上になった銘柄も実在します。投資判断はご自身の責任でお願いします
7.よくある質問(FAQ)
Q. 上場初日の終値で買って3ヶ月持つと、どうなりましたか?
A. 新規上場280社を追跡した結果、60営業日後(約3ヶ月)のリターンは中央値-9.67%、上場初日の終値を上回っていた銘柄は37.3%でした。つまり約63%が初日終値を下回っていたことになります。
Q. 平均リターンはプラスなのに、中央値がマイナスなのはなぜですか?
A. ごく一部の大化け銘柄が平均を押し上げているためです。60営業日後の平均+1.90%のうち、上位5社(最大+464.1%)だけでプラス側合計の32.5%を占めます。5社を除くと平均-3.77%、刈り込み平均は-6.30%です。典型的な1社の姿を知りたいときは中央値を見てください。
Q. 上場初日が大幅高で終わった銘柄は避けたほうがよいのでしょうか?
A. データ上は最も分の悪い層でした。初日を+10%以上で終えた54社の60営業日後は中央値-17.75%・勝率28.0%です。一方、初日が横ばい(-3〜+3%)だった63社は中央値+1.15%・勝率53.3%と5層で唯一プラス圏でした。
Q. 初日に大きく売られた銘柄は、リバウンド狙いで買えますか?
A. 平均だけを見ると魅力的ですが注意が必要です。初日が-10%以下だった60社の60営業日後は平均+16.36%と最も高い一方、中央値-7.15%・勝率37.3%にとどまります。大化けした数社が偏って含まれているだけで、典型的な1社はマイナスでした。
Q. 新規上場銘柄の値動きはどれくらい荒いのですか?
A. 上場初日から20営業日目までの日次リターンの標準偏差は1日あたり5.64%で、既存銘柄の同じ長さの窓(2.13%)の約2.6倍でした。21〜60営業日目でも4.05%と既存銘柄の約1.8倍です。ポジションサイズを小さくする対応が現実的です。
Q. グロース市場に上場した銘柄は特に弱いのですか?
A. 今回の集計では差が出ました。東証グロース上場の185社は60営業日後の中央値-16.86%・勝率32.4%、東証プライム上場の25社は中央値-0.14%・勝率48.0%、東証スタンダード上場の61社は中央値-0.57%・勝率47.5%です。ただしプライムは少数のため参考値として扱ってください。
Q. この検証では「上場初日」をどのように判定していますか?
A. 株価データベースの中でその銘柄コードが最初に出現した日を上場初日とみなす近似方法です。検証開始日から60営業日以内に初出現した銘柄は既存銘柄の可能性が高いため除外し、初日の市場区分が東証プライム・スタンダード・グロースのものだけを採用しました。公開価格や初値の情報はデータベースに無く、持株会社化などによる技術的な新規上場が混じる可能性も残ります。
8.まとめ
新規上場した280社の上場後3ヶ月を全数追跡しました。押さえておきたいポイントは5つです。
- 上場初日の終値で買うと3ヶ月後の中央値は-9.67%・勝率37.3%。約63%が初日終値を下回っており、「初値天井」はデータで確認できる傾向でした。
- 平均+1.90%は上位5社が作った見かけの数字。上位5社を除くと-3.77%、刈り込み平均は-6.30%。多数が負けて一部が跳ねる宝くじ型の分布です。
- 初日を大幅高(+10%以上)で終えた銘柄が最も弱い:60営業日後の中央値-17.75%・勝率28.0%。初日が横ばいだった層だけが中央値+1.15%とプラス圏を維持しました。
- 値動きの荒さは既存銘柄の約2.6倍(上場初日〜20営業日目)。3ヶ月経っても約1.8倍で、ポジションサイズを小さくする必要があります。
- 市場区分で中身が違う:東証グロース上場は60営業日後の中央値-16.86%・勝率32.4%、東証プライム上場は中央値-0.14%・勝率48.0%でした。
「IPOはセカンダリーで買うと危ない」という通説は、少なくとも上場後3ヶ月という時間軸では、データに裏付けられた妥当な警戒でした。もちろん3ヶ月で株価が3倍以上になった銘柄も実在し、成長企業を早い段階で保有する意義そのものを否定するものではありません。大切なのは上場直後の熱狂に乗るのではなく、需給が落ち着き決算という判断材料が出そろうのを待ってから検討するという順番です。新規上場銘柄を見かけたら、まずは初日の値動きを記録して静かに観察するところから始めてみてください。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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