「3か月続けて上げたから、そろそろ天井だ」。月足チャートを見ながら、そんな会話が交わされることがあります。上げ続けた株はいずれ息切れする、という感覚は多くの方が持っているはずです。
その感覚を数字で確かめました。日足から月足を組み直し、2013年1月から2026年7月までの661,136件(銘柄×月・5,491銘柄・163か月)を、連続した陽線・陰線の月数で分けて集計しています。
結論を先に述べます。「3か月続伸で天井」は当てはまりませんでした。3か月連続で陽線が出た銘柄の翌月は+1.603%・勝率53.7%で、全体平均の+1.105%を上回っています。
息切れが見られたのは、もっと先でした。5か月以上続いた場合の翌月は+0.591%。そして最も成績が良かったのは、4か月連続で下げた銘柄(翌月+1.976%・勝率56.6%)でした。
1.検証ルール
集計条件をすべて開示します。
- データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)から月足を組み立て
- 期間:2013年1月〜2026年7月(163か月・5,491銘柄・661,136件)
- 月足の始値:その月の最初の営業日の始値。月足の終値:最後の営業日の終値
- 陽線:月足の終値 > 始値。陰線:終値 < 始値
- 連続月数:陽線(陰線)が何か月続いているか。1か月でも途切れれば1か月目に戻る
- リターン:その月末の終値で買ったとして、翌月末・翌2か月後・翌3か月後
- 除外:営業日が5日未満の月(新規上場・上場廃止の月など)
期間を約14年と長めに取ったのは、月単位の検証では観測数が一気に減るためです。日足なら1銘柄で年間240件になるところ、月足では12件しかありません。
2.連続陽線の月数別に見た結果
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| 区分 | 件数 | 翌月 | 勝率 | 翌2か月 | 勝率 | 翌3か月 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1か月(陽線全体の49.3%) | 165,341 | +1.258% | 51.0% | +2.107% | 51.3% | +3.167% | 52.5% |
| 2か月連続(陽線全体の25.2%) | 84,617 | +0.971% | 49.8% | +2.308% | 52.1% | +3.597% | 52.6% |
| 3か月連続(陽線全体の12.4%) | 41,399 | +1.603% | 53.7% | +2.944% | 53.4% | +3.324% | 52.6% |
| 4か月連続(陽線全体の6.5%) | 21,778 | +1.533% | 52.4% | +1.550% | 50.0% | +2.066% | 50.9% |
| 5か月以上連続(陽線全体の6.6%) | 22,074 | +0.591% | 49.6% | +1.342% | 50.5% | +2.484% | 52.7% |
| 陽線すべて | 335,209 | +1.202% | 51.0% | +2.174% | 51.6% | +3.177% | 52.4% |
| 全体平均(比較用) | 661,136 | +1.105% | 51.4% | +2.164% | 52.2% | +3.135% | 52.8% |
翌月の列を上から下へたどってください。1か月+1.258%、2か月連続+0.971%、3か月連続+1.603%、4か月連続+1.533%、5か月以上+0.591%。
3か月連続がいちばん高く、そこから下がっていくという形です。単純な右肩下がりでも右肩上がりでもありません。
勝率も同じ形で、3か月連続が53.7%と最も高く、5か月以上では49.6%まで下がります。
つまり「3か月続伸で天井」という感覚は、少なくとも翌月の値動きに関しては当てはまっていません。むしろ3か月続いた時点では、まだ上昇の勢いが残っていたことになります。
3.息切れするのは5か月以上
下がり始めるのは、そこから先です。
5か月以上連続した場合の翌月は+0.591%。全体平均+1.105%を下回り、勝率も49.6%と半分を切りました。
翌2か月では+1.342%、翌3か月で+2.484%と戻していきますが、いずれも全体平均(+2.164%、+3.135%)には届きません。
5か月連続で上げるということは、半年近く買われ続けたということです。そこまで続く銘柄は陽線全体の6.6%しかなく、珍しい状態と言えます。珍しいほど続いた上昇は、そこから先が重い――そう読める結果でした。
4か月連続も翌2か月+1.550%、翌3か月+2.066%と全体平均を下回っています。息切れの兆しは4か月目から出ていると見ることもできます。
4.最も報われたのは「4か月連続の下げ」だった
今度は陰線側です。
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| 区分 | 件数 | 翌月 | 勝率 | 翌2か月 | 勝率 | 翌3か月 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1か月(陰線全体の52.4%) | 166,010 | +0.905% | 51.4% | +2.008% | 52.2% | +2.796% | 52.1% |
| 2か月連続(陰線全体の25.1%) | 79,567 | +0.960% | 51.8% | +1.909% | 51.8% | +3.248% | 54.1% |
| 3か月連続(陰線全体の12.1%) | 38,396 | +1.017% | 52.6% | +2.716% | 55.9% | +3.797% | 56.2% |
| 4か月連続(陰線全体の5.7%) | 17,996 | +1.976% | 56.6% | +3.345% | 56.7% | +3.977% | 55.5% |
| 5か月以上連続(陰線全体の4.7%) | 14,872 | +1.063% | 51.3% | +1.926% | 51.5% | +2.352% | 50.6% |
| 陰線すべて | 316,841 | +1.001% | 51.9% | +2.141% | 52.7% | +3.078% | 53.2% |
| 全体平均(比較用) | 661,136 | +1.105% | 51.4% | +2.164% | 52.2% | +3.135% | 52.8% |
1か月+0.905%、2か月連続+0.960%、3か月連続+1.017%と上がっていき、4か月連続で+1.976%・勝率56.6%。これが今回の全区分で最も高い数字です。
翌2か月+3.345%、翌3か月+3.977%と、その後も全体平均を上回り続けます。3か月連続の陰線も翌3か月+3.797%・勝率56.2%と良好です。
ただし陽線と同じく、5か月以上になると+1.063%まで下がります。長すぎる下落は、下落が続く理由があるということかもしれません。
整理すると、陽線も陰線も4か月目あたりが転換点という共通の形になっています。上げ続けた銘柄は4か月目から重くなり、下げ続けた銘柄は4か月目に最も報われる。方向は逆ですが、区切りの位置は同じでした。
5.年による差は大きい
この結果がどの年でも成り立つわけではありません。
3か月以上連続で陽線が出た銘柄の翌月リターンを年別に見ると、2013年+3.836%、2014年+1.850%、2015年+0.631%、2016年+1.584%、2017年+2.899%、2018年-1.847%、2019年+0.735%、2020年-1.468%、2021年+0.435%、2022年+0.620%、2023年+1.383%、2024年+0.531%、2025年+2.398%、2026年-0.349%となっています。
プラスの年もあればマイナスの年もあり、相場環境に大きく左右されます。月足の検証は観測数が少ないぶん、年ごとの振れも大きくなります。
この点は、日足の検証と比べたときの弱点です。661,136件という数字は大きく見えますが、同じ銘柄の連続した月が含まれているため、独立した観測はそれよりずっと少なくなります。
6.この検証の限界
結果を使う前に、次の点をご承知おきください。
- 観測数が実質的に少なくなります。月単位のため、日足の検証と同じ感覚で信頼してはいけません
- 売買コストを含みません。手数料やスプレッド、実際に約定できるかは考慮していません
- 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません。下げ続けて上場廃止に至った銘柄が抜けている分、陰線側は実際より良い数字になっている可能性があります
- 月の区切りは暦どおりです。決算期や権利確定月との関係は考慮していません
7.よくある質問(FAQ)
Q. 月足の陽線・陰線はどう判定していますか?
A. その月の最初の営業日の始値と、最後の営業日の終値を比べています。終値のほうが高ければ陽線、低ければ陰線です。営業日が5日未満の月(新規上場や上場廃止の月など)は集計から外しました。
Q. 「3か月続伸で天井」は本当ですか?
A. 当てはまりませんでした。3か月連続陽線の翌月は+1.603%・勝率53.7%で、全体平均の+1.105%を上回っています。息切れが見られるのは5か月以上続いた場合で、翌月は+0.591%まで下がりました。
Q. 5か月以上続くとなぜ下がるのですか?
A. データから理由は断定できません。ただ5か月連続で上げるということは、半年近く買われ続けたということです。その間に上昇の材料は出尽くしている可能性があります。件数も全体の6.6%と少なく、そこまで続くこと自体が珍しい状態です。
Q. 連続陰線の銘柄はどうでしたか?
A. 4か月連続で下げた銘柄の翌月が+1.976%・勝率56.6%と、全区分で最も高くなりました。翌2か月、翌3か月でも高い水準を保っています。長く下げた銘柄ほど報われる、という形です。
Q. 陰線も5か月以上続くと変わりますか?
A. はい。5か月以上連続の陰線は翌月+1.063%と、4か月連続の+1.976%から下がります。陽線と同じく、極端に長く続いた状態は別物として扱ったほうがよさそうです。
Q. どれくらいの頻度で連続が起きますか?
A. 陽線の月のうち、1か月だけが49.3%、2か月連続が25.2%、3か月連続が12.4%、4か月連続が6.5%、5か月以上が6.6%でした。陰線もほぼ同じ分布です。
Q. この結果は毎年同じですか?
A. 違います。3か月以上連続で陽線が続いた銘柄の翌月リターンは年によって差が大きく、2018年-1.847%、2020年-1.468%、2025年+2.398%のように、マイナスの年もあります。相場環境に左右される点はご留意ください。
8.まとめ
661,136件(銘柄×月)を数え直してわかったことを整理します。
- 「3か月続伸で天井」は当てはまりませんでした。3か月連続陽線の翌月は+1.603%・勝率53.7%で、全体平均+1.105%を上回ります
- 息切れは5か月以上から。翌月+0.591%・勝率49.6%と、全体平均を下回りました
- 最も高かったのは4か月連続の陰線(翌月+1.976%・勝率56.6%)。翌3か月でも+3.977%を保ちます
- 陰線も5か月以上では下がります(+1.063%)。上下どちらも4か月目あたりが転換点でした
- 年による差は大きくなっています。月足の検証は観測数が少ないため、日足ほどの安定性はありません
「そろそろ天井」「そろそろ底」という感覚は、多くの場合3という数字に結びついています。三度目の正直、三日坊主。日本語には3を区切りとする言い回しが多いからかもしれません。
ただ今回の数字が示したのは、区切りは3ではなく4から5にあったということでした。感覚として持っている区切りが、実際のデータの区切りと一致しているとは限りません。自分がどこで「そろそろ」と感じているのか、一度数えて確かめてみてください。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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