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決算書の「△」「▲」はマイナスを示す記号
株式投資でファンダメンタルズ分析をするためには、貸借対照表や損益計算書、キャッシュ・フロー計算書といった決算書(財務諸表)を読み解く必要があります。
決算書を読んでいると、数字の横に「△(白三角)」や「▲(黒三角)」マークをたびたび目にすることかと思います。
決算書の数字の横に書かれている「△」や「▲」マークは、マイナスを意味する記号です。
例えば、「-100,000」は「△100,000」や「▲100,000」のように記述されます。
下記の図は、【7203】トヨタ自動車の2023年3月期の決算書の概要です。
トヨタ自動車の、営業収益や営業利益の数字の前には「△」や「▲」マークが付いていないため黒字(プラス)であることが分かります。
一方、営業利益や税引き前利益の%(対前期増減率)の前には△が付いており、これは前期比でマイナスになったことを意味します。
2023年3月期の営業利益は「△9.0(%)」となっていますが、これは前期比に比べて営業利益が-9.0%下がったということです。
続いて、下記の図は、【9984】ソフトバンクグループの2023年3月期の決算書の概要です。
ソフトバンクグループは、2022年度には世界株安の影響で大きな赤字になったというニュースが流れことも記憶に新しいことかと思います。
ソフトバンクグループの決算書を見ると、税引き前利益や当期利益の数字の前に△が付いており、赤字であったことを示しています。
2023年3月期の税引前利益は「△469,127(百万円)」となっていますが、これは-4,691億2,700万円の赤字であったということです。
△と▲の違いとは
決算書において、△と▲はいずれもマイナスを示す記号として使われています。
両者に明確な違いはなく、決算書においてどちらを優先的に使わなければいけないといった決まりはありません。
ただ、日本経団連の「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな形(改訂版)」では、貸借対照表などに「△」が使われています。
※出典:日本経団連「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版) (2022-11-01)」
特に決まりはないものの、トヨタ自動車やソフトバンクグループなど、多くの企業の決算書では「△(白三角)」によってマイナス表記を示す慣習があると言えそうです。
日本で△と▲がマイナスを意味するようになった由来
決算書において、△と▲がマイナスを示すのは日本だけの商慣習です。
日本で、△と▲がマイナス表記として使われ始めたのは大正時代にまでさかのぼり、その由来には諸説あります。
当時は、「-(マイナス)」表記が、漢数字の「一(いち)」と混同しやすいことから、税務署が△と▲を使うように指導した説が有力です。
また、「-(マイナス)」表記は偽造されやすいため、偽造防止のために△マークを使うようになったという説もあります。
「-(マイナス)」表記は、後から別の数字に書き換えられてしまう可能性があるため、どの数字にも書き換えできない△マークを使うことによって、不正な書き換えが防止できるというものです。
さらに別の説としては、数学において差分の意味を示す「Δ(デルタ)」を意味する表記として、△マークが使われるようになった説もあります。
海外企業の決算書では()(かっこ)表記がマイナスを示す
欧米などの海外企業の決算書では、()(かっこ)表記がマイナスを示す記号として使われることが一般的です。
例えば、「-10,000」は(10,000)として記載されます。
下記の図は、【AAPL】Appleの2023年第二四半期の決算書です。
※出典:Apple「2023 Q2 Financial Statement」
Appleの決算はほとんどがプラスとなっていますが、本業以外の収益を示す「Other income/(expense), net」は、「(329)」とかっこ表記となっておりマイナスであることが分かります。
会計・経理業務でも「△」「▲」はマイナスを示す記号として使われる
決算書(財務諸表)のほか、会計・経理業務においても、「△」「▲」はマイナスを示す記号として使われています。
例えば、請求書において、数字の横に△マークが使われていれば、それは値引き処理などを意味するものです。
なお、会計・経理業務においても、「△」「▲」のどちらを使うべきかという取り決めはなく、いずれもマイナスを示す記号で、使い分けもしません。
株価では△と▼で意味が異なるため注意
日本の決算書では、△(白三角)と▲(黒三角)はいずれもマイナスを示す表記となっており、違いはありません。
ただし、株価においては、△(白三角)と▼(下向きの黒三角)とで意味が異なるため注意が必要です。
特に、新聞などでは、△(白三角)は上昇を示し、▼(下向きの黒三角)は下落を示す意味で使われることが多くなっています。
ただ、色は媒体により異なるため、上向きの三角形は上昇を示し、下向きの三角形は下落を示すことが一般的です。
実際の例で見てみましょう。
下記の図は、日本経済新聞のトップページに表示されている株価や為替の動向です。
※出典:日本経済新聞
日経平均株価は+567.57円の上昇を意味する「△+567.57」、NYダウは「+285.18ドル」の上昇を意味する「△+285.18」となっており、オレンジ色がプラスや上昇を意味しています。
一方、為替相場のドル円は-0.38円の円高ドル安を意味する「▼-0.38円高」となっており、緑色がマイナスや下落を意味しています。
株価においては、色と三角形の向きでプラスとマイナスの表記を意味することが多いため、△と▼の違いに注意して見るようにしましょう。
Excelで見るマイナス表記の違い
表計算ソフト「Excel」では、セルに合わせて右クリックから「セルの書式設定」をクリックすることで、さまざまなマイナス表記にできます。
Excelでは、海外基準の()表記、マイナスマーク(-)を付けた表記、日本の会計基準である△と▲を付けたマイナス表記にすることも可能となっています。
まとめ
この記事では、決算書や会計・経理における△(白三角)と▲(黒三角)の表記について解説してきました。
△と▲は、会計・経理・決算書において、マイナス表記を意味する記号として使われています。
日本経団連のひな型では「△」を使っていることもあり、トヨタやソフトバンクグループなどの主要企業は△でマイナス表記をしていますが、どちらを使うべきという決まりはありません。
△と▲をマイナス表記とするのは、大正時代からある日本独自の商慣習となっており、その由来は偽造防止や書き換え防止という説が有力です。
欧米など海外企業の決算書では、()表記がマイナスを示す記号として使われています。
株価では、プラスや上昇を示す△(白三角)と、マイナスや下落を示す▼(下向きの黒三角)とで意味が異なるため注意が必要で、媒体によって色でもプラスとマイナス表記を使い分けています。
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