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上がっている株は買い増せ」「トレンドフォロー戦略は王道」――こうしたモメンタム投資の格言は、多くの投資家に信じられています。実際、長期的なトレンドフォローは有効な戦略です。

しかし、「N日連続で上昇した銘柄を翌日買う」という短期の追い掛け買いはどうでしょうか?「ここまで上がっているなら、まだ上がるはず」という心理は、データで裏付けられるのでしょうか?

本記事では、2021年〜2025年の日本株全銘柄(424,767イベント)を対象に、3〜4日/5〜6日/7日以上の連続上昇後、翌日の始値→終値リターンを集計しました。

結論は「追い掛けるな」。全カテゴリで翌日平均リターンがマイナス。連続上昇日数が長いほど期待リターンが悪化し、勝率も50%を割り続けます。短期の追い掛け買いがいかに罠であるか、データが明確に語っています。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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対象銘柄:東証プライム/スタンダード/グロース上場の全銘柄(TPM除外、424,767イベント)
検証期間:2021/01/01 〜 2025/12/31(5年間)
計算方法:各銘柄の前日終値→当日終値で連続上昇日数をカウント。一定日数連続上昇後、翌営業日の始値で買い、当日終値で売りのリターン(%)を集計

【分類】3〜4日連続上昇 / 5〜6日連続上昇 / 7日以上連続上昇 の3カテゴリ

【手数料・税金】含まれていません(純粋な値動き効果を見るため)

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「翌日の始値で買い、当日の終値で売り」というシンプルなデイトレード戦略を想定。連続上昇後の1営業日の値動きを測定することで、「追い掛け買い」の期待値を直接評価しています。

2.検証結果

連続上昇日数別の翌日リターン

連続上昇後の翌日リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

連続上昇件数平均中央値勝率最大最小
3〜4日連続上昇332,563件-0.0749%-0.0578%44.42%+47.3%-36.5%
5〜6日連続上昇71,538件-0.0837%-0.0666%45.11%+43.5%-34.1%
7日以上連続上昇20,666件-0.1023%-0.0701%45.54%+36.2%-41.8%

3カテゴリすべての翌日リターンがマイナスです:

  • 3〜4日連続上昇:平均-0.0749%、勝率44.42%(n=332,563)
  • 5〜6日連続上昇:平均-0.0837%、勝率45.11%(n=71,538)
  • 7日以上連続上昇:平均-0.1023%、勝率45.54%(n=20,666)

注目すべきは「連続上昇日数が長くなるほど、期待リターンが悪化する」こと。3〜4日連続→5〜6日連続→7日以上連続と進むにつれ、平均リターンが-0.0749%→-0.0837%→-0.1023%と段階的に悪化します。

つまり「長く上がり続けた銘柄ほど、翌日の下落リスクが大きい」というのが過去5年の現実。「7日も連続で上がったから、もうそろそろ落ちる」――この素朴な直感は、データに裏付けられた事実だったのです。

勝率は50%を割る

連続上昇後の翌日勝率

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翌日が「始値から終値にかけてプラス」で終わる確率は、3〜4日連続上昇で44.42%、5〜6日連続上昇で45.11%、7日以上連続上昇で45.54%。すべて50%を割っています

連続上昇日数が長くなると勝率が「わずかに改善」して見えるのは、サンプルが減ったことによる統計的なゆらぎ。本質的には全カテゴリで「半分以下しか勝てない」のが結論です。

サンプル分布

連続上昇イベント数の分布

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

5年間で3〜4日連続上昇は332,563件、5〜6日連続上昇は71,538件、7日以上連続上昇は20,666件と、十分なサンプル数を確保しています。これらは過去の偏りや偶然ではなく、統計的に有意な構造的アノマリーと言えます。

3.なぜ連続上昇後の追い掛け買いは負けるのか

(1) 「上がりすぎ=過熱感」の修正

連続上昇銘柄は、テクニカル指標が買われすぎ(RSI70超など)を示すことが多くなります。アルゴリズム取引や逆張り投資家がこれを察知し、利益確定の売りを入れやすい。これが翌日の下落圧力になります。

(2) 短期需給のサイクル

連続上昇は機関投資家・個人投資家の買い疲れを意味します。買い手が一巡すると、新規買いが減少。一方で利益が乗った既存投資家の売り意欲は強まるため、需給バランスが崩れます。

(3) 個人投資家の「踏み上げ完了」

連続上昇局面では、信用売りポジションが踏み上げられて強制決済(買戻し)が発生します。これが上昇の最終段階を作りますが、踏み上げが終わった瞬間、需給の支えが消失するため、翌日に反動安が出やすい。

(4) アルゴリズム取引の逆張り

近年は高頻度取引(HFT)アルゴリズムが、短期の連続上昇を「過熱」と判定して逆張りする戦略を採用しています。これが連続上昇後のリターン悪化を制度的に作り出しています。

(5) 「テンバガー」発覚銘柄の反動

SNSやネット掲示板で「テンバガー候補」と話題になった銘柄は、短期間に集中買いを浴びて連続上昇しますが、話題性が一巡した瞬間に売り浴びせを受けます。これが7日以上連続上昇銘柄の平均-0.1023%という結果に表れています。

4.実践への活用法

(1) 「連続上昇銘柄を翌日寄り買いしない」

最もシンプルな活用法は、「3日以上連続で上昇している銘柄を翌日の寄り付きで買わない」ルールを徹底すること。新規買いを入れるなら、押し目を待つか、別の銘柄に切り替えるべきです。

(2) 連続上昇銘柄の「持ち越し売却」

保有株が連続上昇している場合、「5日連続で上がったら一度売る」というシンプルなルールでパフォーマンスが改善する可能性があります。連続上昇日数が長いほど翌日のリスクが高まるためです。

(3) 空売り戦略の検討

7日以上連続上昇後の翌日リターン-0.1023%は、空売り戦略として活用できる可能性があります。ただし、貸株料・追証リスクを考慮した上で実行が必須。手数料込みで期待値がプラスになるか厳密に検証してください。

(4) トレンドフォロー戦略との使い分け

本記事は「翌日」という短期の話。週次・月次のトレンドフォローでは、連続上昇銘柄が長期で勝つ事例もあります。短期(1日)と中長期(数週間〜数ヶ月)で戦略が真逆になる点に注意。

(5) システムトレードの利確ルールに組み込む

システムトレードでは、「N日連続上昇したら利食い」というルールを組み込むことで、ホールド期間のリスクを抑制できます。連続日数3日・5日・7日でリターン悪化が確認できるため、自動利食いの目安として有効です。

5.注意点

(1) 平均値であり、個別銘柄は別

マイナス0.1%でも、「連続上昇している優良成長株を保有し続ける」のが正解のケースは多数あります。これは「全銘柄の平均」の話であり、個別企業の業績やテーマ性で結論は変わります。

(2) 期間バイアス

2021〜2025年はコロナ→利上げ→AIブームという特殊な5年。市況によって連続上昇のアノマリーは強弱が変動します。長期で同じパターンが続く保証はありません。

(3) 取引コストの重さ

マイナス0.07〜0.10%という値動きは、取引手数料・スプレッドで簡単に消える水準。手数料込みでは「ほぼゼロ〜マイナス」になります。アクティブ売買での収益化は困難で、「やらない判断」の根拠として使うのが現実的です。

(4) 連続日数の定義

本記事は「前日終値→当日終値」で上昇判定。始値ベース、高値ベース、出来高加重など定義を変えると結果は変わります。お使いのチャートツールの「連続上昇」定義も確認してください。

6.FAQ

Q1. 連続上昇銘柄は絶対に買ってはいけない?

絶対ではありません。本記事は「翌日寄り買いしてその日に売る」短期戦略の話。業績好調な成長株を中長期で保有する場合は別の話です。短期トレードでの追い掛け買いを避ける、と理解しましょう。

Q2. 連続下落と連続上昇では、どちらが反発しやすい?

連続下落の方がリバウンドしやすい傾向があります。こちらの記事で詳しく検証していますが、5日以上連続下落後は平均+1.19%の反発が観測されています。連続下落は逆張り、連続上昇は様子見が定石です。

Q3. 何日連続上昇したら売り時ですか?

データ的には3〜4日連続上昇から既に翌日リターンがマイナスに転じています。保有株なら5日連続上昇で一度利食いするのが一つの目安。完璧な高値売りは不可能なので、ルール化が重要です。

Q4. テクニカル指標(RSI等)と組み合わせるとどうですか?

連続上昇+RSI70超のような複合条件では、さらにマイナス幅が拡大する傾向があります。短期売買の利確シグナルとして「N日連続上昇 AND RSI過熱」を組み合わせるのは有効でしょう。

Q5. グロース市場の小型株でも同じですか?

本記事は全銘柄での平均。グロース市場の小型株はボラティリティが大きく、連続上昇後の反動も大きい傾向があります。低位株+連続上昇は特に翌日下落のリスクが高い組み合わせです。

Q6. 「煮詰まり相場」の連続上昇とトレンド相場は別ですか?

はい、マーケット全体のトレンドが強い時期と、レンジ相場での連続上昇では性質が異なります。日経平均が右肩上がりの2025年のような相場では、連続上昇銘柄も翌日プラスで終わるケースが増えます。ただし「平均」を見ると、それでもマイナスです。

Q7. 上昇相場でも利食いすべきですか?

連続上昇日数が長くなったら一部利食い」が現実的な答えです。全売却は機会損失ですが、ホールドし続けると翌日リスクが高まる。段階的利食い(半分売り、3分の1売り)でリスクを管理しましょう。

7.まとめ

2021〜2025年の424,767イベントで検証した結果:

  • 連続上昇後の翌日リターンは全カテゴリでマイナス
  • 3〜4日連続上昇:-0.0749%、勝率44.42%
  • 5〜6日連続上昇:-0.0837%、勝率45.11%
  • 7日以上連続上昇:-0.1023%、勝率45.54%
  • 連続日数が長いほど期待リターン悪化

上がっている銘柄を追い掛ければ、さらに上がるはず」――この素朴な直感は、データの世界では明確に否定されました。短期での追い掛け買いは、統計的に負ける戦略です。

逆に、これを「やらない判断の根拠」として使えば、無駄なトレードを減らし、ポートフォリオの取引コスト負担を軽減できます。連続上昇銘柄に飛びつきたくなった時、本記事のデータを思い出してください。

「上がってるから買う」を「連続上昇日数を確認してから判断する」に変えるだけで、勝率は確実に改善します。本記事のデータを、ぜひシステムトレードのルール設計に取り入れてください。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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