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「値幅がどんどん小さくなってきた。そろそろ大きく動くはずだ」。チャートを見ながら、そう感じたことがある方は多いのではないでしょうか。前日の高値と安値の内側に収まる日、いわゆるインサイドデイは、嵐の前の静けさとして語られることがあります。

その感覚を数字で確かめました。2014年1月6日から2026年10月1日までの東証全銘柄(5,446銘柄・3,113営業日)で、インサイドデイは1,448,477件ありました。全体の11.6%にあたる、ありふれた日です。これを連続日数、翌日の放れ方、直前の足の種類で分けて集計しています。

結論を先に述べます。インサイドデイそのものは、買いのサインではありませんでした。終値で買った場合の翌日終値は+0.070%で、全体平均の+0.050%との差は0.020ポイントしかありません。

翌日に上へ抜ける割合は29.3%、下へ抜ける割合は28.8%と、放れる向きは五分五分です。違いが出たのは動くかどうかで、内側に留まる割合は全体平均の49.6%から41.9%へ下がりました。

そのほかに目立った点が2つあります。インサイドデイが3日連続した場合は、翌日終値が+0.189%と小幅に上回りました。また、直前の足(親足)が陰線だったインサイドデイは上放れが多く、陽線だった場合と差が出ました。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)。出来高がゼロの日は除外
  • 期間:2014年1月6日〜2026年10月1日(3,113営業日・5,446銘柄・12,449,302件)(20日後の結果が出る範囲まで)
  • インサイドデイ:その日の高値が前日の高値より低く、かつ安値が前日の安値より高い日(同値は含めない)
  • 連続日数:インサイドデイが何日続いているか(1日・2日連続・3日連続・4日以上連続)。連続の直前にある、内側に入っていない足を「親足」と呼びます
  • 買いの起点:インサイドデイの終値。翌日寄付き・翌日終値・5営業日後・20営業日後の平均リターンと勝率を集計
  • 放れ:翌日の終値がインサイドデイの高値を上回れば上放れ、安値を下回れば下放れ、その間なら内側に留まる
  • 比較対象:同じ期間の全銘柄・全営業日の平均(全体平均)

2.インサイドデイは買いのサインか

インサイドデイの連続日数別 その後の平均リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区分件数翌日寄付き勝率翌日終値勝率5日後勝率20日後勝率
1日1,361,431+0.087%45.0%+0.070%47.4%+0.291%50.2%+0.999%51.4%
2日連続83,245+0.102%45.3%+0.081%47.6%+0.288%50.2%+1.026%51.4%
3日連続3,655+0.095%45.6%+0.189%49.1%+0.464%50.5%+1.172%51.3%
4日以上連続146+0.110%39.7%-0.224%46.6%-0.702%45.9%-0.749%50.0%
インサイドデイすべて1,448,477+0.088%45.0%+0.070%47.4%+0.291%50.2%+1.001%51.4%
全体平均(比較用)12,449,302+0.082%44.8%+0.050%47.0%+0.243%49.8%+0.926%51.1%

まず1日だけのインサイドデイです。これが全体の94.0%を占め、翌日寄付きは+0.087%、翌日終値は+0.070%・勝率47.4%でした。全体平均は+0.050%・勝率47.0%ですから、差は0.020ポイントです。

5日後は+0.291%(全体平均+0.243%)、20日後は+0.999%(全体平均+0.926%)でした。どの期間でも全体平均をわずかに上回りますが、その差は5日後で0.048ポイント、20日後で0.073ポイントにすぎません。

売買には手数料やスプレッドがかかります。この程度の差は、実際の売買では消えてしまう水準と考えるのが妥当です。

つまり「値幅が縮んだから買う」だけでは、優位性は見つかりません。毎日平均465件ほど出る、ありふれた日です。

3.連続日数が増えるとどうなるか

先ほどのチャートで目を引くのは、3日連続です。3,655件で、翌日終値は+0.189%・勝率49.1%、5日後は+0.464%、20日後は+1.172%でした。全体平均との差は翌日終値で0.139ポイント、勝率で2.1ポイントです。この集計の中では最も良い数字です。

一方、4日以上続いた場合は様子が変わります。翌日寄付きは+0.110%とプラスでしたが、翌日終値は-0.224%、5日後は-0.702%、20日後は-0.749%と、すべて全体平均を下回りました。

ここで注意が必要です。4日以上連続は146件しかありません。3,113営業日の中で、これだけ内側の足が続く銘柄はごく稀でした。当日の値幅は全体平均より56.5%も狭く、値動きの乏しい銘柄に偏っている可能性があります。売りの根拠にはなりません。

なお、当日の値幅に対する翌日の値幅の比は、1日が1.32倍、4日以上が2.03倍と、縮んだ日が続くほど大きくなります。ただ翌日の値幅そのものは、1日が2.45%、4日以上でも2.19%と、全体平均の2.49%前後に戻るだけです。縮んだぶんが上乗せされて大きく動くわけではありません。

4.翌日はどちらへ放れるか

インサイドデイの翌日、終値はどちらへ抜けたか

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区分件数上放れ下放れ内側に留まる当日の値幅翌日の値幅
1日1,361,43129.2%28.7%42.1%1.86%2.45%
2日連続83,24530.9%30.7%38.4%1.59%2.46%
3日連続3,65533.1%31.2%35.7%1.39%2.46%
4日以上連続14626.7%33.6%39.7%1.08%2.19%
全体平均(比較用)12,449,30225.4%25.0%49.6%2.48%2.49%

「インサイドデイの次は放れる」という言い方は、半分だけ当たっていました。

翌日の終値がインサイドデイの高値か安値のどちらかを抜けた割合は、インサイドデイ全体で58.1%です。全体平均の50.4%より7.7ポイント高く、内側に留まる日は減りました。

ところが向きは五分五分です。1日のインサイドデイは上放れ29.2%・下放れ28.7%、3日連続でも上放れ33.1%・下放れ31.2%と、差は1.9ポイントにとどまります。上と下の差が最も開いたのは4日以上連続の6.9ポイントで、こちらは下放れが多い結果でしたが、先に述べたとおり146件の数字です。

放れを見てから追いかけた場合も確かめました。翌日の終値で放れ方を確認し、その終値で買ったとして5日後・20日後を見たものが次の表です。

翌日の放れ方件数5日後勝率20日後勝率全体平均の5日後全体平均の20日後
インサイドデイ→上放れ423,862+0.235%48.7%+0.905%50.4%+0.154%+0.806%
インサイドデイ→下放れ417,878+0.263%51.6%+1.001%52.2%+0.326%+1.069%
インサイドデイ→持ち合い継続606,737+0.293%50.1%+0.994%51.2%+0.247%+0.922%

上放れのあとの5日後は+0.235%、下放れのあとは+0.263%でした。放れた向きについていっても、優位は見られません。むしろ下放れのあとのほうが5日後の平均は高くなっています。

同じ放れ方をした全銘柄の平均との差も、上放れの5日後で+0.081ポイント、下放れで-0.063ポイントと、ごく小さな差でした。

5.親足が陰線か陽線かで差が出た

唯一、はっきりした差が出たのが親足の種類です。親足とは、インサイドデイ(連続の場合は最初のインサイドデイ)の直前の足のことです。

親足が陽線か陰線かで分けたその後の平均リターン

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区分件数上放れ下放れ翌日終値5日後20日後
親足が陽線(全体の45.8%)662,96427.4%30.5%+0.035%+0.199%+0.847%
親足が陰線(全体の54.2%)785,51330.8%27.4%+0.100%+0.370%+1.130%
全体平均(比較用)12,449,30225.4%25.0%+0.050%+0.243%+0.926%

親足が陰線のインサイドデイは全体の54.2%で、翌日の上放れは30.8%、下放れは27.4%でした。親足が陽線の場合は上放れ27.4%・下放れ30.5%です。陰線のほうが上放れの割合が3.4ポイント高くなりました。

リターンにも表れています。翌日終値は陰線の親足が+0.100%、陽線の親足が+0.035%。20日後では陰線が+1.130%、陽線が+0.847%で、差は0.283ポイントです。陰線の親足の20日後は全体平均の+0.926%を0.204ポイント上回り、陽線の親足は0.079ポイント下回りました。

ただし、これはインサイドデイ特有の現象とは限りません。下げた日の翌日は戻りやすいといった短期の反転傾向は、インサイドデイに限らず現れることがあります。インサイドデイ以外の日で同じ比較はしていないため、切り分けられていません。

6.頑健性チェックと検証の限界

極端な条件の好成績は、市場が急変した特定の数日に集中していることがあります。今回も、発生日の集中度と、上位3日を除いた再集計を確認しました。

発生が多かった上位3日を除いた再集計

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区分件数発生日数上位3日の占有率翌日終値上位3日を除く20日後上位3日を除く
インサイド全体1,448,4773,1130.4%+0.070%+0.065%+1.001%+0.984%
1日1,361,4313,1130.5%+0.070%+0.064%+0.999%+0.982%
3日連続3,6551,9261.1%+0.189%+0.184%+1.172%+1.119%
3日以上3,8011,9661.1%+0.173%+0.168%+1.098%+1.046%
4日以上連続1461375.5%-0.224%-0.199%-0.749%-0.840%

インサイドデイの発生は3,113日に分散しており、発生が多かった上位3日の占有率は0.4%です。上位3日は2016年6月27日(2,559件)、2015年8月26日(2,000件)、2024年8月8日(1,880件)で、いずれも相場が急変した直後の日付でした。1日平均465件ほどの発生に対し、最多日は2,559件と5.5倍になります。

とはいえ総数が多いため、この3日を除いて集計しても、インサイドデイ全体の翌日終値は+0.070%から+0.065%へ動いただけです。3日連続も+0.189%から+0.184%と変わりません。特定の日に集中した結果ではないと言えます。

次に年別です。3日連続以上(3,801件)の成績を、同じ年の全体平均と並べました。

翌日終値は13年のうち12年で同じ年の全体平均を上回りました。一方で20日後を同じ年の全体平均と比べると、上回ったのは13年中5年にとどまり、2年はマイナスです。2016年は+4.179%、2018年は-2.580%と、年による振れも大きくなっています。翌日の小さな優位は続きやすい一方、20日後の差は年次の相場に左右されるというのが実態です。

最後に、この検証の限界を整理します。

  • 売買コストを含みません。手数料やスプレッド、実際に約定できるかは考慮していません
  • 終値で買えるとは限りません。インサイドデイかどうかは終値の確定後でないとわかりません
  • 値動きの乏しい銘柄を含みます。流動性の低い銘柄ではインサイドデイが出やすい可能性があります
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません

7.よくある質問(FAQ)

Q. インサイドデイとは何ですか?

A. その日の高値が前日の高値より低く、同時にその日の安値が前日の安値より高い日のことです。ローソク足でいえば、前日の値幅の内側にすっぽり収まった日にあたります。

Q. インサイドデイが出たら買えばよいのでしょうか?

A. 今回の集計では、買いの根拠になる差は見られませんでした。インサイドデイの終値で買った場合の翌日終値は+0.070%で、全体平均の+0.050%との差は0.020ポイントです。勝率も47.4%と47.0%でほぼ同じでした。

Q. 次の日は上と下のどちらに動きやすいですか?

A. ほぼ五分五分でした。翌日の終値がインサイドデイの高値を上回った割合は29.3%、安値を下回った割合は28.8%で、差は0.5ポイントしかありません。向きではなく、動くかどうかに違いが出ました。

Q. インサイドデイが3日続くと特別ですか?

A. 成績は少し良くなりました。3日連続の翌日終値は+0.189%・勝率49.1%で、全体平均を上回っています。ただし件数は3,655件にとどまり、差も小さいため、強い根拠とは言えません。

Q. 4日以上続くと売られやすいのでしょうか?

A. 4日以上連続の翌日終値は-0.224%、20日後は-0.749%と弱い数字でしたが、件数は146件しかありません。偶然の振れを排除できないため、売りの根拠にするのは控えたほうがよいと考えます。

Q. 親足の陽線・陰線は関係しますか?

A. 差が出ました。インサイドデイの直前の足が陰線だった場合は上放れが30.8%で、陽線の場合の27.4%を上回りました。翌日終値も陰線の親足が+0.100%、陽線の親足が+0.035%です。ただし、インサイドデイ以外の日で同じ比較はしていないため、インサイドデイ特有の効果かどうかは確認できていません。

Q. 特定の日に偏った結果ではありませんか?

A. 偏っていません。インサイドデイの発生は3,113日に分散し、上位3日の占有率は0.4%でした。その上位3日を除いて再集計しても、翌日終値は+0.070%から+0.065%へとほとんど変わりません。

8.まとめ

1,448,477件のインサイドデイを数え直してわかったことを整理します。

  • インサイドデイだけでは買いの根拠になりません。翌日終値は+0.070%で、全体平均+0.050%との差は0.020ポイントでした
  • 放れる向きは五分五分。上放れ29.3%・下放れ28.8%で、違いが出たのは内側に留まる割合(41.9%、全体平均49.6%)でした
  • 3日連続は小さく優位(翌日終値+0.189%・勝率49.1%)。4日以上は146件と少なく、結論は出せません
  • 親足が陰線のときは上放れが多く(30.8%、陽線の親足は27.4%)、20日後も+1.130%と高い結果でした。ただしインサイドデイ特有かは未確認です
  • 頑健性は良好。発生日の集中は上位3日で0.4%にとどまり、除いて集計しても結果はほとんど変わりません

値幅が縮むと次に大きく動く、というのは納得しやすい話です。実際、動きやすくなる傾向は確認できました。ただ、動いた先が上か下かは、インサイドデイの形だけからは読み取れませんでした。

見つけたら、それだけで売買を決めず、直前の足がどう動いたかを組み合わせて確認するほうが理にかなっているようです。チャートで見慣れた形でも、数え直すと印象が変わることがあります。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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