無料レポート 直近25年分の統計データで分かる「株の買い時・売り時」
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株価チャートに重ねる線といえば、移動平均線が定番です。一方で、「出来高で重みづけした平均」であるVWAP(出来高加重平均価格)を使う投資家もいます。多くの人が実際に売買した価格の平均なので、そこから株価が大きく離れたら、いずれ戻りやすいのではないか――そんな考え方です。

その見方が日本株で成り立つのかを数字で確かめました。直近25営業日のVWAPを日足から組み立て、終値がそこから何%離れているかで銘柄を8つの帯に分けています。対象は2014年1月6日から2026年9月14日までの12,387,508件(5,425銘柄・3,103営業日)です。

結論を先に述べます。VWAPから大きく下に離れた銘柄だけが、その後に突出して戻していました。-15%以下の帯は、20営業日後の平均が+4.234%・勝率54.7%で、全体平均の+0.940%を+3.294ポイント上回っています。

反対に、上に離れた側では平均と中央値が食い違いました。+15%以上の帯は20営業日後の平均が+0.672%とプラスなのに、中央値は-2.273%です。この食い違いと、特定の日への集中の影響も合わせて見ていきます。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

集計条件をすべて開示します。

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)。出来高がゼロの日は除外
  • 期間:2014年1月6日〜2026年9月14日(3,103営業日・5,425銘柄・12,387,508件)。2026年10月16日までのデータのうち、20営業日後が確認できる範囲まで
  • VWAPの計算:1日の代表価格を(高値+安値+終値)÷3とし、出来高で重みづけして直近25営業日分を平均。分足を使った本物のVWAPではなく、日足による近似
  • 乖離率:(当日の終値 ÷ 25日VWAP − 1)× 100。当日を含む25営業日で計算
  • リターン:当日の終値で買ったとして、翌日の寄付き・翌日の終値・5営業日後の終値・20営業日後の終値で評価
  • 比較対象:同期間・同条件の全銘柄平均(全体平均)

乖離率の分布を先に確認しておきます。全体の中央値は-0.08%で、下位5%点が-9.91%、上位5%点が+8.29%でした。終値がVWAPより上にある割合は49.1%で、ほぼ半々です。つまり±5%以内におさまる日が大半で、15%以上離れるのは例外的な状態です。

2.乖離率の帯別に見た結果

25日VWAPからの乖離率別 その後の平均リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区分件数翌日寄付き翌日終値5日後20日後20日後の中央値20日後の勝率
-15%以下(全体の1.8%)221,563+0.327%+0.515%+1.784%+4.234%+1.829%54.7%
-15〜-10%(全体の3.1%)386,521+0.117%+0.106%+0.581%+1.626%+0.808%52.6%
-10〜-5%(全体の10.3%)1,281,463+0.110%+0.050%+0.303%+1.067%+0.517%52.1%
-5〜0%(全体の35.7%)4,419,321+0.091%+0.056%+0.205%+0.800%+0.292%51.8%
0〜+5%(全体の36.6%)4,539,325+0.038%+0.022%+0.196%+0.865%+0.215%51.2%
+5〜+10%(全体の9.2%)1,140,857+0.043%+0.010%+0.165%+0.825%-0.185%48.6%
+10〜+15%(全体の2.2%)272,830+0.119%+0.003%+0.085%+0.842%-0.725%47.0%
+15%以上(全体の1.0%)125,628+0.730%+0.301%+0.214%+0.672%-2.273%43.9%
全体平均(比較用)12,387,508+0.081%+0.050%+0.245%+0.940%+0.239%51.2%

20営業日後の平均を左から順に見てください。-15%以下が+4.234%、-15〜-10%が+1.626%、-10〜-5%が+1.067%、-5〜0%が+0.800%。下に離れているほど高く、VWAPに近づくにつれて全体平均(+0.940%)に収束していきます。

VWAPより上の側は、0〜+5%が+0.865%、+5〜+10%が+0.825%、+10〜+15%が+0.842%で、いずれも全体平均とほとんど変わりません。差が出るのは下側の端だけで、上側には目立った傾きがありませんでした。

3.大きく下に離れた帯だけが突出していた

-15%以下の帯を、全体平均と比べながら見ます。件数は221,563件で、全体の1.8%にあたります。

  • 翌日の寄付き:+0.327%(全体平均+0.081%)
  • 翌日の終値:+0.515%(全体平均+0.050%)
  • 5営業日後:+1.784%(全体平均+0.245%)・勝率53.4%
  • 20営業日後:+4.234%(全体平均+0.940%)・勝率54.7%

翌日の時点では差が小さく、日数が経つほど差が開いていきます。5営業日後で全体平均との差が+1.539ポイント、20営業日後では+3.294ポイントです。急落直後に反発する、というより、数週間かけてじわじわ戻る形でした。

この差は平均値だけの話ではありません。20営業日後の中央値で見ても、-15%以下は+1.829%で、全体平均の中央値+0.239%を上回っています。一部の大化け銘柄だけが平均を押し上げているのではなく、典型的な銘柄でも戻していたことになります。

ひとつ下の-15〜-10%では、20営業日後が+1.626%・勝率52.6%と、差は小さくなります。「VWAPから離れすぎた」と言えるほどの乖離が必要で、1割程度の下振れではあまり差が付きませんでした。

4.上に離れた側は「平均と中央値」が食い違う

VWAPから大きく上に離れた+15%以上の帯(125,628件・全体の1.0%)は、読み方に注意が必要です。

  • 翌日の寄付き:平均+0.730%(中央値+0.000%)
  • 翌日の終値:平均+0.301%・中央値-0.356%・勝率44.5%
  • 5営業日後:平均+0.214%・中央値-1.192%・勝率43.3%
  • 20営業日後:平均+0.672%・中央値-2.273%・勝率43.9%

翌日の寄付きの平均は+0.730%と、全8帯の中で最も高くなっています。ところが中央値は+0.000%で、翌日の終値以降は中央値がマイナスに転じます。勝率も全体平均(20営業日後で51.2%)を下回る43.9%です。

平均がプラスなのに中央値がマイナスという形は、大半の銘柄が下がる一方で、ごく少数が大きく上がって平均を引き上げていることを意味します。前日までに急騰した銘柄の中には、そのまま上げ続けるものもありますが、そうならない銘柄のほうが多数派でした。

VWAPから大きく上に離れた銘柄は、平均値だけで判断すると有利に見えてしまいます。平均値と中央値を必ず並べて見ることが、この帯を読むときの注意点です。

5.頑健性:発生日の集中と、上位3日を除いた結果

VWAPから大きく離れる状態は、市場全体が急落・急騰した日に一斉に発生しやすい性質があります。その数日の値動きだけで平均が決まっていないかを確認しました。

VWAP乖離が大きい銘柄の20営業日後リターン 上位3日を除いた場合

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

-15%以下の帯は、発生が多かった日が特定の時期に集中していました。最も多い日は2020/03/13(3231件)、続いて2020/03/16(3032件)、2020/03/12(2675件)で、いずれも2020年3月のコロナショックの時期です。上位3日で全体の4.0%を占めます。

その上位3日を除いて再集計すると、20営業日後の平均は+4.234%から+3.801%に変わりました。下がりはしましたが、全体平均+0.940%を大きく上回る水準は残っています。5営業日後では+1.784%が+1.758%と、ほとんど変わりませんでした。特定の数日だけの結果ではないと言えそうです。

+15%以上の帯では上位3日が1.4%、-15〜-10%の帯では1.0%と、集中度はそれほど高くありません。

次に年別です。-15%以下の帯の20営業日後は、2015年が+7.001%、2024年が+6.779%と大きく戻した年があります。反対に、2021年は-1.598%と、マイナスでした。2026年も-0.070%にとどまっています(2026年は途中までの集計です)。

年ごとの全体平均と比べると、13年のうち11年で-15%以下の帯が上回りました。2021年の全体平均は+0.152%、2026年は+0.822%です。毎年必ず効くわけではなく、外れる年もあるという点は押さえておく必要があります。

6.単純平均との比較と、この検証の限界

VWAPは単純移動平均より優れているのでしょうか。今回は乖離率を並べて比較してはいませんが、終値がVWAPと25日単純平均のどちら側にあるかで4つに分けて、成績を見ました。

VWAPと単純平均の位置関係別 その後の平均リターン

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区分件数翌日寄付き翌日終値5日後20日後20日後の中央値20日後の勝率
VWAPより上・単純平均より上(全体の47.4%)5,877,350+0.058%+0.024%+0.183%+0.851%+0.108%50.4%
VWAPより上・単純平均より下(全体の1.6%)201,290+0.039%+0.054%+0.256%+0.874%+0.249%51.5%
VWAPより下・単純平均より上(全体の4.2%)514,920+0.125%+0.033%+0.182%+0.919%-0.279%47.0%
VWAPより下・単純平均より下(全体の46.8%)5,793,948+0.103%+0.077%+0.314%+1.034%+0.423%52.5%
全体平均(比較用)12,387,508+0.081%+0.050%+0.245%+0.940%+0.239%51.2%

ほとんどの銘柄は、2本の平均線の同じ側にあります。両方より上が全体の47.4%、両方より下が46.8%です。差がつく領域は少なく、VWAPを下回り単純平均を上回る銘柄は4.2%、その反対は1.6%でした。

成績に目を向けると、両方を下回る銘柄が20営業日後の平均+1.034%・勝率52.5%で最も良く、VWAPを下回り単純平均を上回る銘柄は中央値が-0.279%・勝率47.0%と最も弱くなりました。VWAPを上回り単純平均を下回る銘柄は平均+0.874%・勝率51.5%です。

ただし、位置関係による差は、前の節の乖離率の帯による差より小さく収まっています。VWAPが単純平均より効いているとまでは、この結果からは判断できません。

結果を使う前に、次の点をご承知おきください。

  • 本物のVWAPではありません。日足の高値・安値・終値の平均を代表価格にした近似です
  • 売買コストを含みません。手数料やスプレッド、大きく下げた銘柄で実際に約定できるかは考慮していません
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません。大きく下に離れた銘柄ほど上場廃止の確率が高いため、下側の成績は実際より良く見えている可能性があります
  • 観測は独立ではありません。同じ銘柄の連続した日が含まれるため、件数ほどの独立した検証にはなっていません
  • 平均値は少数の値動きに引っ張られます。そのため中央値と勝率も併記しました

7.よくある質問(FAQ)

Q. VWAP(出来高加重平均価格)とは何ですか?

A. 一定期間に実際に取引された価格の平均を、出来高で重みづけして求めたものです。たくさん売買された価格帯の影響が大きくなるため、多くの参加者が実際にどの水準で持ったかの目安になります。

Q. この記事のVWAPは本物のVWAPですか?

A. いいえ、日足から組んだ近似です。本物のVWAPは分足やティックデータが必要ですが、今回は日足しか使っていません。1日の代表価格を(高値+安値+終値)÷3とし、これを出来高で重みづけして直近25営業日分を平均しています。株式分割があった銘柄は、出来高も調整後の株数に直してから計算しました。

Q. VWAPから下に離れた銘柄は買いということですか?

A. そうは言い切れません。25日VWAPから-15%以下に離れた銘柄の20営業日後は平均+4.234%・中央値+1.829%でしたが、これは過去の平均的な傾向です。年別では2021年, 2026年に全体平均を下回っており、毎回戻るわけではありません。個別の売買判断は、ご自身の責任で行ってください。

Q. 平均値と中央値で印象が違うのはなぜですか?

A. 平均値は、少数の大きく上がった銘柄に引っ張られるためです。+15%以上の帯では20営業日後の平均が+0.672%とプラスなのに、中央値は-2.273%でした。半数以上の銘柄は下がっていて、一部の急騰が平均を押し上げている形です。

Q. 2020年3月のような急落局面だけの結果ではないのですか?

A. その可能性を確かめるため、発生が多かった上位3日(2020/03/13など)を除いて再集計しました。20営業日後の平均は+4.234%から+3.801%に下がりましたが、全体平均の+0.940%を大きく上回る水準は保たれています。

Q. 25日単純移動平均からの乖離率で見た場合と何が違いますか?

A. 今回は両者の乖離率を並べて比較してはいません。確認したのは、終値がVWAPと単純平均のどちら側にあるかによる成績の違いです。両方を下回る銘柄は20営業日後が+1.034%・勝率52.5%、VWAPを下回り単純平均を上回る銘柄は+0.919%・勝率47.0%でした。VWAPを加えることで精度が上がるかどうかは、この結果だけでは判断できません。

Q. 今回の検証で最も気をつけるべき点は何ですか?

A. 売買コストを含んでいない点と、データが途切れた(上場廃止になった)銘柄が結果から抜けている点です。大きく下げた銘柄ほど上場廃止の確率も高く、その分だけ下に離れた帯の成績は実際より良く見えている可能性があります。また、同じ銘柄の連続した日が含まれるため、件数ほど独立した観測があるわけではありません。

8.まとめ

12,387,508件を数え直してわかったことを整理します。

  • VWAPから-15%以下に離れた銘柄だけが突出していました。20営業日後の平均は+4.234%・勝率54.7%で、全体平均の+0.940%を上回ります
  • 差が開くのは数週間かけて。翌日終値では+0.515%と小さく、5営業日後で+1.784%、20営業日後で+4.234%と広がりました
  • -15〜-10%では差が小さく、20営業日後は+1.626%にとどまります。それなりに大きな乖離が必要でした
  • 上に離れた+15%以上は平均と中央値が食い違い、20営業日後の中央値は-2.273%・勝率43.9%でした
  • 頑健性:-15%以下は2020年3月に集中しましたが、上位3日を除いても20営業日後は+3.801%を保ちました。年別では13年のうち11年で全体平均を上回り、2021年は外れました

「平均から離れすぎたものは戻る」という発想は、半分だけ当たっていました。下に離れた側には戻りが見られた一方、上に離れた側は、平均値だけを見ると錯覚を起こしやすい形でした。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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