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ストップ高は「強い買いが集まった証拠」として一律に語られがちです。しかし上昇トレンドのまっただ中で付けたストップ高と、下落トレンドの途中で一時的に跳ねただけのストップ高では、上値に残った売り物の量が違います。同じ現象でも、その後の値動きは別物になるはずです。

そこで東証全銘柄の日足データから、ストップ高6,214件・ストップ安1,731件を抽出し、発生日の前日終値が25日移動平均線・200日移動平均線のどちら側にあったかで4象限に分けて集計しました。期間は2022年10月3日〜2026年7月31日、対象7,006銘柄です。

結論から申し上げます。その後を分けていたのは200日線の上下でした。200日線より上でのストップ高(4,006件)は5営業日後の平均が+4.336%、下(2,208件)は+3.527%。象限別の最強は意外にもC:上昇トレンド中の押し目で+5.306%、最弱はB:下落トレンドからの反発初期で+2.942%/勝率44.0%でした。

さらに200日線からの乖離率で見ると、-10〜+10%の範囲(1,703件)が5営業日後+6.533%/勝率52.0%と最良+30%以上の過熱圏(1,848件)は+1.740%/勝率42.5%まで落ちます。順に見ていきます。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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検証対象:東証全銘柄 7,006銘柄(上場廃止銘柄を含む)
検証期間:2022年10月3日〜2026年7月31日
ウォームアップ:200日移動平均線の算出のため2021年1月からの株価を読み込み
サンプル数:ストップ高6,214件/ストップ安1,731件

【ストップ高・ストップ安の判定】

  • 東京証券取引所の値幅制限テーブル(前日終値の水準ごとに制限値幅が決まる方式)を使用
  • 終値ベース判定。当日終値が「前日終値±制限値幅」に達していればストップ高(安)
  • 調整株価の端数ズレを吸収するため、制限値幅の99.5%以上の変動を達成とみなします
  • ザラ場で一時的に付けても引けで剥落した銘柄は対象外です

【4象限の分類】発生日の前日終値前日までのデータで計算した25日線・200日線の位置で分類します(当日株価は使わず後知恵を避けます)。

  • A:25日線より上 かつ 200日線より上=上昇トレンド継続中
  • B:25日線より上 かつ 200日線より下=下落トレンドからの反発初期
  • C:25日線より下 かつ 200日線より上=上昇トレンド中の押し目
  • D:25日線より下 かつ 200日線より下=下落トレンド継続中

【リターンの定義】いずれも発生日の終値で買った場合の騰落率です。

  • 翌日オーバーナイト(ON)=翌日始値で売却/翌日CC=翌日終値で売却/5営業日後=5営業日後の終値で売却
  • ストップ安も同じ計算式です。マイナスが大きいほど下落が続いたことを意味します
  • 手数料・スリッページは考慮していません

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2.検証結果

(1) 4象限別のリターン――200日線の上下が5営業日後を分ける

移動平均線の位置別 ストップ高・ストップ安のリターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

まずストップ高(左)です。翌日CCが最も高いのはA:上昇トレンド継続中で+4.681%(3,295件)、最も低いのはC:上昇トレンド中の押し目で+3.180%(711件)。ところが5営業日後まで持つと順位が入れ替わり、Cが+5.306%でトップ、Aは+4.127%になります。翌日だけを見ていると、この逆転を見落とします。

2本の線を分けて集計すると構造がはっきりします。25日線より上(4,196件)は翌日CC+4.564%、下(2,018件)は+3.557%と短期線が翌日の勢いを約1.01ポイント分け、200日線より上(4,006件)は5営業日後+4.336%、下(2,208件)は+3.527%と長期線が数日先の持続力を約0.81ポイント分けます。25日線は翌日の勢い、200日線はその後の持続力に効くという役割分担です。最弱のB:下落トレンドからの反発初期は翌日CC+4.134%と悪くないのに5営業日後+2.942%/勝率44.0%/中央値-2.257%まで落ち、「下げ止まって25日線を回復し、そこでストップ高」という分かりやすい形が最も続きませんでした。

ストップ安(右)ではA:上昇トレンド継続中が翌日CC-7.275%/5営業日後-9.992%/勝率24.1%と圧倒的に悪く、順調だった銘柄の突然のストップ安はさらに下げ続ける傾向があります。逆にD:下落トレンド継続中は5営業日後+10.608%/勝率71.2%と派手ですが、後述のとおりほぼ1日の暴落に依存していました。

(2) 200日線からの乖離率帯別――離れすぎたストップ高は続かない

200日線乖離率帯別のストップ高リターンと勝率

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

前日終値が200日線からどれだけ離れていたかで5帯に分けると、リターンも勝率もきれいな山型になりました。頂点は-10〜+10%の帯(1,703件)で翌日CC+4.770%/勝率59.7%、5営業日後+6.533%/勝率52.0%。5帯で唯一、5営業日後の勝率が50%を超えました。

両端は明確に劣化します。+30%以上の過熱圏(1,848件)は5営業日後+1.740%/勝率42.5%-30%以下の超割安圏(451件)は+3.186%/勝率44.1%で、中心帯との差は4.79ポイント。しかも件数では過熱圏が全体の29.7%と最多です。目立つストップ高ほど数が多く、そして続きにくい。ただし過熱圏でも翌日CC勝率は54.6%と50%超で、離れすぎたストップ高は翌日で降りるという使い分けが示唆されます。

(3) 頑健性チェック――その数字は特定の1日に偏っていないか

層別集計では、大きな相場変動があった1日や値動きの荒い少数銘柄が平均を押し上げることがあります。象限ごとに「最頻日が全体の何%か」「上位3銘柄が何%か」を確認しました。

区分件数発生日数銘柄数最頻日の占有率上位3銘柄の占有率最頻日を除いた5日後
ストップ高 A:上昇トレンド継続中3,2958601,2591.0%1.9%+4.125%
ストップ安 A:上昇トレンド継続中6603874341.4%3.6%-10.311%
ストップ高 B:下落トレンドからの反発初期9015155821.0%2.6%+3.225%
ストップ安 B:下落トレンドからの反発初期138113952.9%26.8%-3.102%
ストップ高 C:上昇トレンド中の押し目7114205011.4%2.8%+5.361%
ストップ安 C:上昇トレンド中の押し目29014424432.8%4.5%-4.371%
ストップ高 D:下落トレンド継続中1,3076157965.5%5.4%+3.652%
ストップ安 D:下落トレンド継続中64318549455.5%4.7%-1.249%

ストップ高側は非常に安定しています。全6,214件が928営業日・1,843銘柄に分散し、最頻日でも1.3%、上位3銘柄合計でも2.1%。象限別の最頻日占有率も最大5.5%(D象限)で、その日を除いても5営業日後は+3.931%から+3.652%とほぼ変わりません。ストップ高の結論は特定日に依存していません。

問題はストップ安側です。D:下落トレンド継続中は643件のうち357件(55.5%)が2024/08/05の1日に集中。市場全体が歴史的な急落に見舞われ、翌日以降に急反発した日です。この1日を除くと5営業日後は+10.608%から-1.249%、勝率は71.2%から37.8%へ崩壊します。C象限も32.8%が同じ日に集中し、除外後は+3.671%から-4.371%へ反転。「下落トレンド中のストップ安は買い」という結論は成立しません。

(4) 完全データ表(ストップ高)

象限件数構成比翌日ONON勝率翌日CCCC中央値CC勝率5日後5日中央値5日勝率
A:上昇トレンド継続中3,29553.0%+6.923%72.6%+4.681%+2.586%57.4%+4.127%-0.762%48.0%
B:下落トレンドからの反発初期90114.5%+6.723%73.4%+4.134%+2.000%56.0%+2.942%-2.257%44.0%
C:上昇トレンド中の押し目71111.4%+4.657%70.7%+3.180%+1.799%56.5%+5.306%-0.696%47.7%
D:下落トレンド継続中1,30721.0%+5.360%65.9%+3.762%+1.822%56.5%+3.931%+0.000%48.7%

(5) 完全データ表(ストップ安)

ストップ安は「その日の終値で買った場合」の騰落率です。マイナスが大きいほど下落が続いたことを意味します。

象限件数構成比翌日ON翌日CCCC中央値CC勝率5日後5日中央値5日勝率
A:上昇トレンド継続中66038.1%-5.577%-7.275%-6.883%21.8%-9.992%-9.532%24.1%
B:下落トレンドからの反発初期1388.0%+0.479%+0.542%-3.252%27.5%-2.306%-4.423%24.6%
C:上昇トレンド中の押し目29016.8%-0.840%-0.434%-0.183%49.0%+3.671%+1.890%54.8%
D:下落トレンド継続中64337.1%+1.996%+3.078%+4.146%64.7%+10.608%+13.605%71.2%

(6) 完全データ表(200日線からの乖離率帯別)

乖離率帯ストップ高件数翌日ON翌日CCCC勝率5日後5日勝率ストップ安件数ストップ安5日後
-30%以下(超割安圏)451+5.420%+2.965%53.7%+3.186%44.1%169+8.368%
-30〜-10%934+6.278%+4.200%57.2%+3.175%46.1%382+8.889%
-10〜+10%(200日線近辺)1,703+6.363%+4.770%59.7%+6.533%52.0%395+5.539%
+10〜+30%1,278+6.520%+4.736%57.4%+5.020%51.2%206-1.733%
+30%以上(過熱圏)1,848+6.337%+3.730%54.6%+1.740%42.5%579-9.790%

3.なぜ位置で差が出るのか

同じ「終値でストップ高」でも、位置によって板の向こう側にいる投資家の顔ぶれが違います。データと整合する仮説を6つ挙げます。

  1. 上値のしこり(戻り待ちの売り圧力):200日線より下は、過去1年近くの平均取得コストを株価が下回った状態で、上がれば「やれやれ売り」が湧きます。実際に5営業日後は+3.527%で、上の+4.336%に届きません。B象限が最弱(+2.942%)なのは、25日線を回復した直後という戻り待ちの売りが最も集中しやすい価格帯だからだと説明できます。
  2. トレンドフォロー資金の有無:200日線より上の銘柄は中長期の資金の買い候補に残り続け、ストップ高で注目度が上がったあとも買いが入りやすい。下の銘柄はそうした網に最初から掛かりません。これが5営業日後の0.81ポイント差です。
  3. 25日線は短期の需給を映す:翌日CCは25日線の上+4.564%、下+3.557%。直近1か月の買い手が全員含み益なら翌日に慌てて投げる人が少なく、下では戻ったところで手放したい短期保有者が上値を抑えます。翌日勝負なら25日線の上という根拠です。
  4. C象限(押し目)が5日後最強の理由:中期上昇トレンドが生きたまま短期調整が入り、短期筋の投げがひととおり終わった位置です。翌日CCは+3.180%と鈍いものの5営業日かけて+5.306%まで伸びる、初動は鈍いが伸びしろが残る形。ただし711件(11.4%)と機会は多くありません。
  5. 乖離しすぎると買い手が尽きる:+30%以上離れた銘柄(1,848件)は大きく上げた後の「最後の一押し」でストップ高になりがちで、新規に買う投資家の余地が乏しい。翌日CC勝率54.6%に対し5営業日後勝率42.5%という落差は、順張り資金が入ったあと続く買いがないためと考えられます。
  6. 上昇トレンド中のストップ安が最悪な理由:A象限は5営業日後-9.992%/勝率24.1%。順調な銘柄の突然のストップ安は上昇シナリオを覆す想定外の悪材料で起こり、含み益を抱えた保有者が一斉に手仕舞うため売りが連鎖します。「よく上がっていた銘柄だから押し目だろう」という発想が最も危険です。

4.データが示す正解戦略

6,214件のストップ高と1,731件のストップ安から読み取れる方針です。

  • ストップ高は200日線より上を選ぶ:5営業日後+4.336%(4,006件)対+3.527%(2,208件)。位置を見るだけの単純なフィルターで、数日先の期待値が変わります。
  • 翌日で降りるなら25日線より上(A・B):翌日CCはAが+4.681%、Bが+4.134%。中央値もAが+2.586%、Bが+2.000%とプラス圏です。
  • 数日持つなら200日線より上(A・C):5営業日後はCが+5.306%、Aが+4.127%。Cは翌日の弱さで諦めない設計が必要です。
  • B象限は数日保有に向かない:5営業日後+2.942%/勝率44.0%/中央値-2.257%。翌日で手仕舞う前提でなければ見送りが無難です。
  • 200日線から±10%以内を重ねる:この帯(1,703件)だけが5営業日後勝率52.0%と50%超。+30%以上(1,848件)は42.5%まで落ちます。
  • ストップ安の逆張りは採らない:全1,731件の5営業日後平均は+0.562%/勝率46.8%。特にA象限は-9.992%と明確なマイナスです。
  • 「下落トレンド中のストップ安は買い」は誤り:見かけ上+10.608%でも、暴落の1日を除くと-1.249%。平常時の戦略には転用できません。

5.実践活用

(1) 大引け後のスクリーニング手順

  • 当日の終値がストップ高で引けた銘柄を抽出(ザラ場でタッチしただけの銘柄は除外)
  • 前日終値前日までの25日線・200日線を並べ、200日線より上のものだけ残す(全体の64.5%)
  • 25日線との位置でA(上)とC(下)に分け、保有予定期間で使い分ける
  • 乖離率(前日終値÷200日線−1)を計算し、+30%以上は候補から外す

(2) 保有期間で象限を使い分ける

  • 翌日で手仕舞う短期回転:A象限。翌日ON+6.923%/勝率72.6%、翌日CC+4.681%/勝率57.4%と短い時間軸ほど安定します
  • 5営業日程度の持ち越し:C象限を優先。翌日CC+3.180%は目立ちませんが5営業日後+5.306%まで伸びます
  • 迷ったらA象限:3,295件(全体の53.0%)で翌日・5営業日後ともプラス圏。機会量と安定性のバランスが最良です
  • B・D象限は原則見送り。入るなら翌日決済に限定します

(3) 乖離率フィルターの重ね方

  • 乖離率は「前日終値 ÷ 200日移動平均線 − 1」。表計算ソフトでも簡単に出せます
  • -10〜+10%が最良(5営業日後+6.533%/勝率52.0%)。200日線を上抜けて間もない銘柄が有力候補です
  • +10〜+30%も+5.020%/勝率51.2%と実用圏。-30%以下は+3.186%/勝率44.1%で、「下げすぎからの反発」は数字ほど続きません

(4) 手仕舞いとリスク管理

  • ストップ高の翌日は買い気配で始まることが多く、想定より不利な価格でしか買えない場合があります。指値の上限を決めておきます
  • 5営業日後の中央値はA象限-0.762%、C象限-0.696%と、平均がプラスでもゼロ近辺です。伸びた銘柄を早く切らず、伸びない銘柄は損失を限定して撤退する運用が前提になります
  • 1銘柄集中は避けて分散します。1件あたり数%のエッジは、試行回数を確保して初めて平均に近づきます
  • 市場全体が急落する局面ではどの象限も数字が崩れます。指数の状況を見て建玉量を調整してください

6.注意点とリスク

  • 手数料とスリッページで実際の成績は目減りします:本検証は終値・始値をそのまま用いた理論値です。売買手数料や約定価格が滑る影響を差し引くと手取りは小さくなります。1件あたり数%のエッジを狙う戦略ほど、コストの影響は相対的に大きくなります
  • 平均と中央値の乖離:A象限の5営業日後は平均+4.127%に対し中央値-0.762%、C象限は+5.306%に対し-0.696%。4象限すべてで5営業日後の中央値はゼロ近辺かマイナスで、平均は一部の大きく伸びた銘柄が押し上げています。「半分以上の取引が勝つ」戦略ではありません
  • ストップ安側は日付集中の影響が大きい:D象限55.5%、C象限32.8%が2024/08/05の1日に集中し、除外するとD象限は+10.608%から-1.249%へ反転します。逆張りの数値は実戦の期待値として使えません
  • B象限のストップ安はサンプルが少数:138件(95銘柄)しかなく、上位3銘柄で26.8%を占めます。特定銘柄の値動きに強く影響された数字です
  • 翌日に想定価格で買えないことがあります:翌日も買い気配で寄り付かない場合があり、検証上の翌日始値で必ず約定できるとは限りません。流動性の低い銘柄ほど乖離が大きくなります
  • 判定は終値ベースです:ザラ場で一時的にストップ高になり引けで剥落した銘柄は含まれていません。リアルタイム表示の銘柄にそのまま当てはめると結果が変わる可能性があります
  • 象限は連続量を切っただけです:25日線をわずかに上回った銘柄と大きく上回った銘柄が同じ象限に入ります。境界付近は分類が入れ替わりやすい点にご注意ください
  • 過去の傾向であり、将来の成績を保証するものではありません:2022年10月から2026年7月までの集計結果です。相場環境や参加者構成が変われば結果も変わります。投資判断はご自身の責任で行ってください

7.よくある質問(FAQ)

Q. 25日移動平均線と200日移動平均線はどう計算しますか?

A. それぞれ直近25営業日・200営業日の終値の単純平均です。本検証では発生日の前日までのデータで計算しています。当日の株価を含めると実運用では判定できない後知恵になるためです。

Q. なぜ25日線と200日線の組み合わせなのですか?

A. 25日線はおよそ1か月、200日線はおよそ1年の平均取得コストに相当し、短期と中長期の需給を同時に見られるためです。実際、25日線の上下は翌日CCを+4.564%対+3.557%に、200日線の上下は5営業日後を+4.336%対+3.527%に分けており、役割がきれいに分かれました。

Q. 4象限のうち、どれを狙うのが良いですか?

A. 保有期間で変わります。翌日で手仕舞うならA(上昇トレンド継続中)が翌日CC+4.681%、5営業日持つならC(上昇トレンド中の押し目)が+5.306%で最良でした。共通点は200日線より上であることです。Bは5営業日後+2.942%/勝率44.0%と最も弱く、数日保有には向きません。

Q. ストップ安の逆張り買いは有効ですか?

A. データからは推奨できません。全1,731件の5営業日後平均は+0.562%/勝率46.8%です。特にA(上昇トレンド継続中)は-9.992%/勝率24.1%と明確なマイナスで、よく上がっていた銘柄の急落こそ最も危険でした。

Q. 下落トレンド中のストップ安が5営業日後プラスなのは買い場では?

A. 頑健性チェックをすると成立しません。D象限643件のうち55.5%が2024/08/05の1日に集中しており、除外すると+10.608%から-1.249%/勝率37.8%へ反転します。市場全体が暴落した特殊な日にだけ現れた現象で、平常時には再現しません。

Q. 5営業日後の平均がプラスなのに中央値がマイナスなのはなぜですか?

A. リターン分布が右に長く伸びているためです。A象限は平均+4.127%に対し中央値-0.762%。過半数は5営業日後に横ばいから小幅マイナスで、一部の大きく伸びた銘柄が平均を押し上げています。分散して試行回数を確保する運用が前提です。

Q. 200日線からの乖離率はどう使えばよいですか?

A. 「前日終値 ÷ 200日移動平均線 − 1」で計算し、フィルターとして重ねます。-10〜+10%の帯(1,703件)が5営業日後+6.533%/勝率52.0%と最良で、5帯のうち唯一勝率50%を超えました。+30%以上(1,848件)は+1.740%/勝率42.5%まで落ちるため、数日保有の候補からは外すのが無難です。

8.まとめ

東証全銘柄のストップ高6,214件・ストップ安1,731件を移動平均線との位置関係で層別しました。ポイントは5つです。

  1. 同じストップ高でも位置で結果は変わります。200日線より上は5営業日後+4.336%(4,006件)、下は+3.527%(2,208件)。上下を確認するだけで数日先の期待値が変わります。
  2. 25日線は翌日、200日線は数日先に効きます。翌日CCは25日線の上下で+4.564%対+3.557%、5営業日後は200日線の上下で+4.336%対+3.527%。狙う時間軸に合わせて見る線を変えるのが合理的です。
  3. 最強はC:上昇トレンド中の押し目、最弱はB:下落トレンドからの反発初期。Cは5営業日後+5.306%、Bは+2.942%/勝率44.0%。初動の派手さと数日後の結果は一致しません。
  4. 200日線から±10%以内が最良(5営業日後+6.533%/勝率52.0%)。一方で最多は+30%以上の過熱圏(1,848件)で+1.740%。目立つものほど続きにくい傾向です。
  5. ストップ安の逆張りは頑健ではありません。下落トレンド中の+10.608%という数字は2024/08/05の1日に55.5%が集中した結果で、除外すると-1.249%まで低下します。

ストップ高そのものには翌日CC平均+4.237%(6,214件)という傾向が確かにあります。ただし中身は均一ではなく、チャート上のどこで起きたかによって翌日の勢いも数日後の持続力も違います。次にストップ高を見つけたときは、値上がり率の数字だけでなく、その銘柄が25日線と200日線のどちら側にいるかを一度確認してみてください。手を出す場面と見送る場面の区別がつきやすくなります。なお本記事の数値はすべて過去の集計結果であり、将来同じ傾向が続くことを保証するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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