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「株を買う」と聞くと、数字が上下するだけのゲームのようなイメージを持つ方も少なくありません。しかし仕組みを一言で表すなら、株式投資とは、株式会社の所有権の一部を買うことです。

株式を買うとあなたはその会社の株主となり、会社の業績が伸びれば株価の値上がりや配当という形で利益を受け取れる可能性があります。逆に業績が悪化すれば株価が下落し、購入した金額を下回って損失を抱える可能性もあります。

この記事では、株式とは何か、株価が動く理由、株式市場のルール、株主の権利、そしてリスクの考え方まで、株式投資の仕組みを初心者の方にも分かるように整理して解説します。

1.株式とは何か

株式とは、株式会社が事業に必要な資金を集めるために発行する、会社の所有権を細かく分けた証券です。株式を1株でも購入すれば、その会社の株主となり、会社の所有者の一人に加わることになります。

1-1.株式会社と株主の関係

株式会社は、株主から集めた資金を元手に事業を行い、そこで得た利益を株主に還元する仕組みで成り立っています。会社の業績が伸びて事業価値が高まれば、それに伴って株式の価値も高まりやすくなります。逆に業績が悪化すれば、株式の価値は下がります。つまり株主は、会社の成長や業績と運命を共にする立場にあるといえます。

1-2.株主としての基本的な権利

株式を持つと、株主には主に「議決権」「配当を受け取る権利」「株主優待を受ける権利」などが与えられます。これらの権利は、原則として保有している株数に応じて発生します。それぞれの権利については、5章で詳しく解説します。

2.株式投資で利益を得る2つの方法

株式投資で得られる利益は、大きく分けて「値上がり益(キャピタルゲイン)」「配当金(インカムゲイン)」の2種類です。

2-1.値上がり益(キャピタルゲイン)

買ったときより株価が上がったタイミングで売却すると、その差額が利益になります。例えば1株1,000円で買った株式が1,500円に値上がりしたときに売却すれば、1株あたり500円の値上がり益を得られる計算です。ただし株価は下落することもあり、購入したときより安い価格でしか売れず、損失(キャピタルロス)になる場合もあります。

2-2.配当金(インカムゲイン)

会社が事業で得た利益の一部を株主に分配するお金が配当金です。配当金の金額は決算のたびに会社が決定するもので、業績が悪化すれば減配や無配になることもあります。配当金の支払いは会社の義務ではなく、業績に応じて変動するものだと理解しておく必要があります。

値上がり益を重視して短中期の売買を中心に考える投資家もいれば、配当金を重視してじっくり長期保有する投資家もいます。どちらを重視するかによって、選ぶ銘柄の傾向も変わってきます。

3.株価が動く仕組み

株価は、証券取引所で日々行われる売買によって刻一刻と変化します。株価が動く背景には、主に4つの要因があります。

3-1.需要と供給のバランス

株価の変動のもっとも基本的な仕組みは、「買いたい人」と「売りたい人」のバランスです。ある銘柄を買いたい人が売りたい人より多ければ株価は上昇し、逆に売りたい人が多ければ株価は下落します。これは株式に限らず、あらゆる市場に共通する価格形成の原理です。

3-2.企業業績

会社の売上や利益が伸びていれば、その会社の将来性への期待から株を買いたい人が増え、株価は上昇しやすくなります。逆に業績が悪化すれば、株を手放したい人が増え、株価は下落しやすくなります。決算発表や業績予想の修正が、株価が大きく動くきっかけになることも少なくありません。

3-3.金利の動き

金利が上昇すると、企業は資金を借りるコストが増えるため業績への懸念が強まりやすく、また預金や債券の魅力が相対的に高まるため株式から資金が流出しやすくなります。反対に金利が低下する局面では、相対的に株式に資金が向かいやすくなる傾向があります。

3-4.投資家心理

株価は業績や金利といった数字だけでなく、投資家の心理にも大きく左右されます。将来への楽観的なムードが広がれば実際の業績以上に株が買われやすくなり、逆に不安や悲観が広がれば業績に大きな変化がなくても株が売られやすくなります。この心理的な振れ幅の大きさが、短期的な株価変動を生み出す一因になっています。

ここまでの要因を整理すると、次のようになります。

要因株価が上がりやすい局面株価が下がりやすい局面
需要と供給買い注文が売り注文より多いとき売り注文が買い注文より多いとき
企業業績増収増益、業績予想の上方修正減収減益、業績予想の下方修正
金利金利が低下する局面金利が上昇する局面
為替(円相場)円安(輸出企業に追い風)円高(輸出企業に逆風)
投資家心理楽観的なムードが広がるとき不安・悲観が広がるとき

実際の株価は、これらの要因が複雑に絡み合って形成されます。どれか一つだけを見て先行きを断定するのではなく、複数の視点を組み合わせて捉える姿勢が大切です。

4.株式市場の仕組み

株式は個人同士で自由に売買するものではなく、証券取引所という決められた市場を通じて売買されます。ここでは市場の役割と、実際の注文の仕組みを見ていきます。

4-1.証券取引所の役割

日本国内の株式は、主に東京証券取引所で売買されています。証券取引所は、多くの投資家から集まる注文を集約し、公正な価格で売買を成立させる役割を担っています。個人投資家が証券取引所に直接注文を出すことはできず、証券会社を経由して売買を行う仕組みになっています。

4-2.板情報の見方

証券会社の取引画面では、「板(いた)」と呼ばれる、買い注文と売り注文の状況を一覧にした情報を確認できます。板には価格ごとに「買いたい株数」と「売りたい株数」が並んでおり、どの価格帯に注文が集まっているかを見ることで、その銘柄の需給状況をある程度把握することができます。

4-3.注文方法の基本――成行注文と指値注文

株式を売買する際の代表的な注文方法が「成行注文」「指値注文」です。成行注文は価格を指定せず、そのときの市場価格で売買を成立させる方法です。指値注文は「この価格以下で買う」「この価格以上で売る」のように、自分で価格を指定する方法です。それぞれの特徴を比較すると、次のようになります。

項目成行注文指値注文
価格の指定しないする(例:1,000円以下で買う)
約定のしやすさ高い(市場価格ですぐ成立しやすい)指定した価格に届かないと成立しない
価格の確実性想定より不利な価格で約定することがある指定した価格より不利な価格にはならない
向いている場面今すぐ売買を成立させたいとき価格にこだわりたいとき

初心者のうちは、約定の確実性を優先したい場面では成行注文、想定外の価格での売買を避けたい場面では指値注文、というように使い分けると失敗を減らしやすくなります。

5.株主になることで得られる権利

株式を保有すると、株主にはいくつかの権利が発生します。ここでは代表的な3つの権利を紹介します。

5-1.議決権

株主は、会社の重要な意思決定を行う株主総会に出席し、議案に対して賛成・反対の票を投じる権利を持ちます。これを議決権といいます。一般的に、保有する株式数が多いほど議決権の影響力は大きくなります。個人投資家が保有する株数だけで経営方針を左右することは現実的には難しいものの、株主としての意思を表明できる重要な権利です。

5-2.株主優待を受ける権利

企業によっては、一定数以上の株式を保有する株主に対して、自社製品やサービス、割引券、クオカードなどを贈る株主優待制度を設けています。ただし、すべての企業が株主優待を実施しているわけではなく、優待の内容や条件は各社が任意に決めるものなので、将来にわたって同じ内容が続くとは限りません。

5-3.配当を受け取る権利

2章で触れた通り、株主は会社が生み出した利益の一部を配当金として受け取る権利を持ちます。配当を受け取るには、企業が定める「権利確定日」に株主として株主名簿に登録されている必要があります。権利確定日の直前は配当を目当てにした買いが入って株価が底堅くなりやすく、権利確定日の翌営業日(権利落ち日)には配当額に見合う分だけ株価が下落しやすいという値動きの傾向も知られています。

6.株式投資のリスクの仕組み

株式投資には利益を得られる可能性がある一方で、元本が保証されていないという大前提があります。ここではリスクの種類と、その抑え方を整理します。

6-1.値下がりリスク

株価は企業業績や市場全体の状況によって下落することがあり、購入した価格を下回れば含み損を抱えることになります。相場全体が調整局面に入ると、業績に大きな問題がない企業の株価まで連れ安することも珍しくありません。

6-2.倒産・上場廃止リスク

投資先の企業が経営破綻すると、株式の価値がほとんどなくなってしまう可能性があります。また、経営統合や重大な不祥事などによって上場廃止となるケースもあり、この場合も株式の売買や価値に大きな影響が及びます。1社に資金を集中させることは、この倒産リスクを丸ごと引き受けることを意味します

6-3.分散投資でリスクを抑える考え方

これらのリスクを完全になくすことはできませんが、複数の企業や業種に資金を分けて投資する「分散投資」によって、特定の1社に何かあった場合の影響を和らげることができます。あわせて、値下がり時にあらかじめ売却する価格を決めておく「損切りルール」を持つことも、リスクを管理するうえで有効な考え方です。

株式投資は、リターンとリスクが表裏一体の関係にあります。仕組みを理解したうえで、自分がどこまでの値下がりを受け入れられるかを事前に考えておくことが大切です。

7.よくある質問(FAQ)

Q. 株式投資は少額から始められますか?

A. 証券会社によっては1株から購入できる単元未満株のサービスがあり、数百円〜数千円程度の少額からでも株式投資を始めることができます。まとまった単位(100株)で購入する場合は、銘柄によって数万円〜数十万円の資金が必要になります。

Q. 株価はどのように決まるのですか?

A. 株価は証券取引所に集まる買い注文と売り注文が一致した価格で決まります。買いたい人と売りたい人のバランスに加え、企業業績、金利、投資家心理といった要因が影響し合いながら、日々の価格が形成されています。

Q. 配当金や株主優待は必ずもらえますか?

A. 必ずもらえるわけではありません。配当金や株主優待は企業が任意に実施するものであり、業績が悪化すれば減配や無配になったり、優待制度自体が変更・廃止されたりすることもあります。

Q. 株式投資にはどのくらいのリスクがありますか?

A. 株式投資に元本保証はなく、購入した価格を下回って損失が出る可能性があります。投資先企業が倒産すれば株式の価値がほとんどなくなることもあるため、複数の銘柄に資金を分ける分散投資でリスクを抑える考え方が重要です。

8.まとめ――仕組みを知ることが株式投資の第一歩

  • 株式投資とは、株式会社の所有権の一部を持つこと
  • 利益は値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)の2種類
  • 株価は需要と供給、企業業績、金利、投資家心理が絡み合って動く
  • 株主には議決権・株主優待・配当を受け取る権利がある
  • 元本保証はなく、分散投資でリスクを抑える考え方が欠かせない

株式投資の仕組みは、突き詰めれば「会社の一部を所有し、その成長を分かち合う」というシンプルな考え方に基づいています。値動きの背景にある需給や業績、金利、投資家心理を知っておくだけで、日々のニュースや株価の動きの見え方は大きく変わってくるはずです。

とはいえ、株式投資には値下がりや倒産といったリスクが常につきまといます。まずは仕組みを正しく理解したうえで、少額かつ分散を意識した投資から始めることが、長く付き合っていくための第一歩になります。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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