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「短期投資は初心者にもおすすめできるのでしょうか」――株式投資を始めようとする方から、こうした質問をよく受けます。

結論から言えば、短期投資は誰にでもおすすめできる手法ではありません。値動きをチェックする時間が取れるか、含み損に動じない精神的な耐性があるか、そして生活に影響しない余裕資金で取り組めるかどうかによって、向き不向きがはっきり分かれます。

この記事では、短期投資の基本的な考え方から、向いている人・向いていない人の特徴、代表的な手法、そして初心者が無理なく始めるためのステップまでを整理して解説します。

1.短期投資とは何か

短期投資とは、株式などを購入してから比較的短い期間で売却し、値上がり益(キャピタルゲイン)を積み重ねていく投資スタイルの総称です。人によって定義の幅はありますが、一般的には保有期間が数日から数ヶ月程度までのスタイルを短期投資と呼ぶことが多く、その日のうちに売買を終えるデイトレードのようなさらに短い手法も、広い意味では短期投資に含まれます。

1-1.保有期間の目安(数日〜数ヶ月)

短期投資の中でも代表的なのが、数日から数週間程度の値動きの波を狙うスイングトレードです。長くても数ヶ月以内には売買を完結させることが多く、決算発表をまたいで保有するかどうかも重要な判断ポイントになります。数分〜1日で売買を終えるデイトレードや、数秒〜数分単位のスキャルピングも短期売買の一種ですが、必要な時間や難易度は大きく異なるため、手法ごとの違いは3章以降で整理します。

1-2.長期投資との違い

短期投資と長期投資の最大の違いは、「何を根拠に利益を狙うか」という点です。短期投資はチャートの形や出来高の変化、需給といった値動きそのものを根拠に売買判断を行います。一方、長期投資は企業の業績成長力や財務の健全性といった事業の中身を根拠に、時間をかけて資産価値の拡大を待つスタイルです。

なお、日本の税制では保有期間の長さによって税率が変わることはなく、上場株式の売却益にはおおむね一律で約20%程度の税金がかかります(NISA口座を除く)。短期でも長期でも税率面の有利不利はない、という点はあらかじめ押さえておくとよいでしょう。

短期投資と長期投資の特徴を整理すると、次のようになります。

比較項目短期投資長期投資
保有期間の目安数日〜数ヶ月数年〜数十年
主な収益源値上がり益(キャピタルゲイン)値上がり益+配当・株主優待
値動きの影響度大きい(日々の変動が損益に直結)相対的に小さい(一時的な下落を許容しやすい)
必要な時間日々〜週次のチェックが必要月次〜年次の確認でも成立しやすい
重視される分析チャート・出来高などのテクニカル分析業績・財務などのファンダメンタルズ分析

2.短期投資が向いている人の特徴

短期投資は、以下のような条件に当てはまる人ほど無理なく取り組みやすい傾向があります。

2-1.値動きをチェックする時間が取れる人

短期投資は保有期間が短い分だけ、相場の変化に早く気づき、早く対応することが求められます。デイトレードほどではなくても、スイングトレードであっても始値・終値の確認や重要なニュースのチェックは毎日必要になります。朝夕にまとまった時間を確保できる人や、在宅勤務・自営業など相場の急変に比較的対応しやすい環境にいる人は、短期投資に取り組みやすいといえます。

2-2.値動きへの精神的耐性がある人

短期投資では、保有株が数%単位で上下することが日常的に起こります。含み損が出た局面でもあらかじめ決めたルールに従って冷静に判断できるかどうかが成果を左右します。値動きに一喜一憂せず、損切りも利益確定も機械的に実行できるタイプの人ほど、短期投資に向いていると考えられます。

2-3.余裕資金で投資できる人

短期投資は長期投資に比べて売買回数が多くなりやすく、損失が出る場面も相応に増えます。生活費や近い将来に使う予定のあるお金ではなく、当面使う予定のない余裕資金で取り組める人であれば、目先の損益に振り回されず、ルール通りの売買を継続しやすくなります。

3.短期投資が向いていない人の特徴

反対に、次のような状況にある人は短期投資で消耗してしまうケースが目立ちます。

3-1.本業が忙しく相場を見る時間が取れない人

日中ほとんど株価を確認できない、出張や会議が多く相場の急変に対応できないという人にとって、短期投資はチャンスを逃すだけでなく、想定外の損失を広げるリスクにもなります。相場を見られない時間帯にこそ大きく動くことも珍しくないため、無理に短期売買を続けるより、数ヶ月〜数年単位でどっしり構えられる長期投資のほうが合理的です。

3-2.感情に左右されやすい人

含み損が出るとすぐに不安になって狼狽売りしてしまう人や、逆に「もう少し待てば戻るはず」と損切りを先延ばしにしてしまう人は、短期投資では損失を膨らませやすい傾向があります。短期投資は感情ではなくルールで動く規律が前提になるため、感情の波が売買に直結しやすい人は特に注意が必要です。

3-3.生活資金しかない人

生活防衛資金や近々使う予定のあるお金しか手元にない状態で短期投資を始めると、含み損の状態でも生活のために売却せざるを得なくなる場面が出てきます。これでは冷静な判断ができず、本来なら回復したはずの損失を確定させてしまうこともあります。まずは生活費の数ヶ月分を現金で確保したうえで、余裕資金の範囲で検討することが大切です。

4.短期投資の主な手法

ひとくちに短期投資といっても、保有期間や必要な時間、難易度はさまざまです。代表的な3つの手法を紹介します。

4-1.スイングトレード

数日〜数週間の値動きの波(スイング)を狙う手法です。日中ずっと画面に張り付く必要がなく、朝晩の時間を使って銘柄選定や注文を行えるため、本業がある人でも比較的取り組みやすいのが特徴です。トレンドに沿ったポジションを持ち、一定の値幅を狙うのが一般的なスタイルです。

4-2.デイトレード

買った株をその日のうちに売却し、翌日にポジションを持ち越さない手法です。オーバーナイトリスク(翌朝の急変リスク)を避けられる一方で、取引時間中は継続的に値動きを追う必要があり、兼業では実践のハードルが高くなります。値動きが読みやすい銘柄を絞り込み、短時間で売買判断を繰り返すスキルが求められます。

4-3.IPOセカンダリー投資

新規上場(IPO)した銘柄について、上場直後の初値がついた後から数日〜数週間の値動きを狙って売買する手法です。抽選に当選しなくても参加できる点がメリットですが、上場直後は値動きが荒くなりやすく、需給の読み違いによる損失リスクも相応にあります。値動きの癖を理解したうえで臨む必要があります。

それぞれの特徴を比較すると、次のようになります。

手法保有期間必要な時間値動きの大きさ難易度の目安
スイングトレード数日〜数週間朝晩中心で比較的少ない中程度初心者でも着手しやすい
デイトレード数分〜1日取引時間中ほぼ継続大きい高い(兼業には不向き)
IPOセカンダリー投資数日〜数週間上場前後の情報収集が中心大きい(値動き荒め)中〜高

5.短期投資のリスク管理

短期投資で長く続けている人に共通しているのは、手法の巧拙以上にリスク管理を徹底しているという点です。ここでは最低限押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

5-1.損切りルールの徹底

短期投資における典型的な失敗パターンは、損切りができずに含み損を放置してしまうことです。「あと少し待てば戻るはず」という期待は、多くの場合そのまま損失の拡大につながります。エントリーする前に「何%下落したら売却するか」をあらかじめ決めておき、実際にその水準に達したら理由を問わず機械的に実行することが基本になります。

5-2.資金管理(1回の取引の許容損失)

1回の取引で許容する損失額を、投資資金全体に対してあらかじめ一定の割合(目安として数%程度)に制限しておくという考え方も重要です。この上限を決めずに取引を重ねると、数回の連敗だけで資金の大部分を失いかねません。1回あたりの損失を小さく抑えておけば、多少の連敗があっても再起できる余地を残せます。

5-3.集中投資を避ける

短期投資は特定の銘柄への確信が強まりやすく、資金を1銘柄に集中させてしまいがちです。しかし短期的な値動きは、決算発表や材料の有無、需給の変化など予測しづらい要因に左右されます。複数の銘柄・複数のタイミングに資金を分散させることで、1つの読み違いが資金全体に与える影響を抑えることができます。

6.初心者が短期投資を始める実践ステップ

短期投資を始める際は、いきなり本格的に取り組むのではなく、段階を踏んで慣れていくことが失敗を防ぐポイントです。

6-1.少額から始める

最初から大きな資金を投入するのではなく、失っても生活に影響のない少額からスタートしましょう。単元未満株を扱うネット証券であれば、数千円〜数万円程度からでも値動きを体験できます。少額であれば、判断ミスをしても損失は限定的です。

6-2.練習期間を設ける

いきなり本番資金で売買を繰り返すのではなく、まずは少額の取引や仮の売買記録で、自分なりの売買ルールを試す期間を設けることをおすすめします。エントリーのタイミングや損切りのルールが実際の値動きの中でうまく機能するかどうかを、小さな痛みで確認できます。

6-3.記録をつける

売買のたびに銘柄名・エントリー根拠・エントリー価格・決済価格・結果・反省点を記録に残しましょう。振り返りを積み重ねることで、自分がどのような場面で勝ちやすく、どのような場面で負けやすいのかという傾向が見えてきます。この振り返りの習慣こそが、短期投資で長く生き残るための土台になります。

7.よくある質問(FAQ)

Q. 短期投資は初心者にもおすすめできますか?

A. 誰にでもおすすめできるわけではありません。値動きをチェックできる時間、含み損に動じない精神的な耐性、生活に影響しない余裕資金の3つが揃っている人には向いていますが、そうでない場合は数ヶ月〜数年単位の長期投資から始めるほうが無理なく続けられます。

Q. 短期投資はいくらから始められますか?

A. 単元未満株を扱うネット証券であれば数千円程度からでも始められます。値動きを実感しながら学びたい場合は数万円〜10万円程度、複数銘柄に分散したい場合は数十万円程度が目安です。まずは少額から始め、慣れてから金額を増やす方法が安全です。

Q. 短期投資と長期投資はどちらがおすすめですか?

A. どちらが優れているかは一概には言えず、本人の生活環境や性格との相性で決まります。値動きをこまめに追える時間と精神的な耐性がある人は短期投資に向いていますが、本業が忙しく相場を見る時間が取れない人は、数年単位でどっしり構える長期投資のほうが無理なく続けられます。

Q. 短期投資で最も注意すべきことは何ですか?

A. 損切りルールを決めずに含み損を放置してしまうことです。あらかじめ損切りの水準と1回の取引で許容する損失額を決めておき、感情に流されずに実行することが、短期投資を長く続けるための最低条件になります。

8.まとめ――短期投資は「向き不向き」を見極めてから始める

  • 短期投資は数日〜数ヶ月程度の値動きを狙う投資スタイルで、値上がり益を短いサイクルで積み重ねていく
  • 向いているのは、値動きをチェックする時間が取れ、精神的な耐性があり、余裕資金で取り組める人
  • 本業が忙しい人・感情に左右されやすい人・生活資金しかない人は、無理をすると消耗しやすい
  • スイングトレード・デイトレード・IPOセカンダリー投資など、手法ごとに必要な時間と難易度は異なる
  • 損切りルールの徹底、1回の取引の許容損失の設定、集中投資を避けることがリスク管理の基本になる

短期投資は、正しく取り組めば資金効率よく経験を積める手法ですが、向き不向きを無視して始めると、時間的にも精神的にも消耗するだけに終わってしまうこともあります。まずは自分の生活環境や性格と照らし合わせ、無理のない範囲で少額から試してみることが第一歩です。

短期投資にせよ長期投資にせよ、共通して重要なのはルールを決めて、それを守り続けることです。焦らず自分のペースで、リスクと向き合いながら経験を積んでいきましょう。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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