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「上場して間もない株は、値動きが軽くて狙い目だ」。一方で「実績のない新顔は避けたほうがいい」という声もあります。どちらの感覚が正しいのかを、上場からの経過年数という物差しで確かめました。

東証全銘柄の日足から、各日の時点で「上場から何年経っているか」を銘柄ごとに求め、6つの区分に分けてその後のリターンを集計しています。対象は2014年1月6日から2026年9月16日までの1,244万件(12,437,533件・5,437銘柄・3,105営業日)です。

結論を先に述べます。上場から3年未満の銘柄は、典型的な値動きが弱く、経過年数が長いほど安定していました。20営業日後の中央値は、6か月未満が-0.401%、1〜3年が-0.051%、20年以上が+0.344%と一貫して上がります。

ただし平均だけを見ると、景色が変わります。6か月未満の20営業日後の平均は+0.517%で、中央値との間に0.918ポイントの開きがありました。若い銘柄の平均は、一部の大きく上がった銘柄に支えられているのです。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)。出来高がゼロの日は除外
  • 期間:2014/01/06〜2026/09/16(3,105営業日・5,437銘柄・12,437,533件)。20営業日後の株価が確定できる日までを対象にしています
  • 上場日:株価データベースにその銘柄が初めて現れた日。収録開始(1990年)より前から上場していた銘柄は、1990年3月末までに現れたものを「それ以前から上場」として扱う(1,368銘柄)
  • 経過年数:評価日から上場日を引いた年数。6か月未満・6か月〜1年・1〜3年・3〜10年・10〜20年・20年以上の6区分
  • リターン:その日の終値で買ったとして、翌日寄付き・翌日終値・5営業日後・20営業日後
  • 比較対象:同じ期間・同じ条件の全銘柄全日の平均(12,437,533件)

件数の内訳は、20年以上が全体の52.0%、10〜20年が22.8%、3〜10年が16.1%、1〜3年が5.9%です。1年未満は6か月未満と6か月〜1年を合わせても3.2%と少数です。平均に加えて、極端な値に引っ張られない中央値(データを並べたときの真ん中の値)も併記します。

2.経過年数別の平均リターン

上場からの経過年数別に見たその後のリターン

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経過年数件数翌日寄付き翌日終値5営業日後20営業日後(平均)20営業日後(中央値)勝率
6か月未満201,454+0.192%+0.008%+0.080%+0.517%-0.401%47.6%
6か月〜1年196,442+0.096%+0.028%+0.146%+0.509%-0.236%48.4%
1〜3年729,386+0.113%+0.044%+0.224%+0.878%-0.051%49.3%
3〜10年1,999,622+0.093%+0.050%+0.254%+0.960%+0.090%50.2%
10〜20年2,840,469+0.088%+0.058%+0.277%+1.056%+0.204%50.9%
20年以上6,470,160+0.069%+0.049%+0.238%+0.912%+0.344%52.0%
全体平均(比較用)12,437,533+0.082%+0.050%+0.245%+0.938%+0.236%51.2%

まず平均です。20営業日後の平均は、6か月未満+0.517%、6か月〜1年+0.509%、1〜3年+0.878%、3〜10年+0.960%、10〜20年+1.056%、20年以上+0.912%。全体平均は+0.938%です。

1年未満の2区分は全体平均を大きく下回り、差は6か月未満で0.421ポイント、6か月〜1年で0.429ポイントでした。1〜3年は0.060ポイントの下回りにとどまり、3〜10年以降は全体平均とほぼ同水準です。

5営業日後でも同じ並びです。6か月未満は+0.080%、6か月〜1年は+0.146%で、全体平均の+0.245%に届きません。

ただし平均の並びは揃いませんでした。最も高いのは10〜20年の+1.056%で、20年以上(+0.912%)より上です。この点は次章で中央値と合わせて確かめます。

3.平均と中央値で、景色はまるで違った

20営業日後の平均と中央値

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上の図のとおり、20営業日後の中央値は6か月未満の-0.401%から、6か月〜1年-0.236%、1〜3年-0.051%、3〜10年+0.090%、10〜20年+0.204%、20年以上+0.344%へと、一度も逆転せずに上がっていきます。6か月未満と20年以上の差は0.745ポイントです。

勝率(20営業日後にプラスで終わった割合)も同じ形で、6か月未満の47.6%から20年以上の52.0%へ、区分ごとに高くなります。全体平均の勝率は51.2%なので、1〜3年までの3区分は、20営業日後にプラスで終わる銘柄が半数に届きません。

平均はプラスなのに、中央値はマイナス。この食い違いの正体は、値動きの両端の厚みです。

経過年数銘柄数同日平均との差(翌日終値)同(5営業日後)同(20営業日後)20営業日後に+30%以上同−30%以下20営業日後の標準偏差
6か月未満1,733-0.039%-0.152%-0.387%4.97%2.74%18.733
6か月〜1年1,700-0.015%-0.066%-0.265%3.46%1.61%14.914
1〜3年1,745-0.008%-0.034%-0.121%3.15%1.10%14.549
3〜10年2,178+0.000%+0.008%+0.020%2.36%0.76%14.347
10〜20年2,213+0.009%+0.035%+0.131%1.92%0.60%20.839
20年以上2,984-0.001%-0.007%-0.030%1.03%0.27%10.135
全体平均(比較用)5,437―――1.67%0.54%14.400

6か月未満では、20営業日後に+30%以上上がる割合が4.97%あり、20年以上の1.03%の4.8倍です。ところが−30%以下に下がる割合も2.74%と、20年以上の0.27%の10.1倍あります。

20営業日後の標準偏差(値のばらつき)は、6か月未満が18.733、20年以上が10.135で、若い銘柄のほうが約1.85倍も散らばっています。若い銘柄は、大きく上がる銘柄も大きく下がる銘柄も多い。その大きく上がった側が平均を引き上げ、大多数の銘柄は平均より低いところに残る、という構図です。

なお10〜20年は標準偏差が20.839と、3〜10年の14.347や20年以上の10.135より大きく、ごく一部の極端な値が平均を押し上げている可能性があります。この区分の平均が最高だったことは、そのまま読まないほうがよさそうです。中央値は+0.204%で、順序どおりです。

4.相場の強弱を取り除いても、3年未満の弱さは残った

新規上場は相場の強い時期に増えやすい、と言われます。若い銘柄が特定の相場環境に偏っていれば、比較が公平ではありません。そこで「その日の全銘柄の平均」からの差を取り、相場全体の強弱を取り除いて見ました。前章の表の「同日平均との差」の3列がその結果です。

20営業日後の差は、6か月未満が-0.387%、6か月〜1年が-0.265%、1〜3年が-0.121%。3年未満の3区分は、いずれも同じ日の全銘柄平均を下回りました。差の大きさも、経過年数が短いほど大きくなっています。

3年を超えると、3〜10年は+0.020%、10〜20年は+0.131%、20年以上は-0.030%と、差はごくわずかです。

もう1つ、翌日の寄り付きだけは別の動きをします。6か月未満の翌日寄付きは+0.192%・勝率49.8%で、全体平均の+0.082%・勝率44.8%を0.110ポイント上回りました。

ところが翌日終値になると+0.008%と、全体平均の+0.050%を下回ります。新しい銘柄は寄り付きで買われるが、その優位は終値まで続かないという形です。

5.この結果は特定の日や年に偏っていないか

特定の数日に発生が偏っていないか、念のため確かめました。経過年数の区分は毎日どこかの銘柄が該当するので、集中は起こりにくい条件です。

発生が多かった上位3日を除いた20営業日後

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

6か月未満の201,454件は、3,104営業日に分散しています。発生が多かった上位3日は2025年12月22日(116件)、2025年12月23日(115件)、2025年12月24日(115件)ですが、合わせても全体の0.2%です。日付の集中は見られません。

その3日を除いて集計し直しても、20営業日後は+0.517%から+0.513%、6か月〜1年は+0.509%から+0.505%、1〜3年は+0.878%から+0.879%とほぼ動きません。20年以上も+0.912%が+0.909%です。特定の日に左右された結果ではありませんでした。

次に年別です。上場から1年未満の銘柄の20営業日後を、同じ年の全体平均と比べました。

年1年未満の件数1年未満の20営業日後同年の全体平均差比較
2014年22,904-0.203%+1.239%-1.442%下回る
2015年35,187-0.670%+0.485%-1.155%下回る
2016年29,828+2.737%+1.555%+1.182%上回る
2017年27,397+2.680%+2.778%-0.098%下回る
2018年29,701-2.128%-1.619%-0.509%下回る
2019年26,527+1.914%+1.372%+0.542%上回る
2020年25,209+2.406%+0.710%+1.696%上回る
2021年34,919-2.718%+0.134%-2.852%下回る
2022年37,313+0.604%+0.432%+0.172%上回る
2023年33,717+0.381%+1.537%-1.156%下回る
2024年35,103+0.593%+0.486%+0.107%上回る
2025年30,961+1.585%+2.226%-0.641%下回る
2026年29,130+0.646%+0.821%-0.175%下回る

1年未満が全体平均を上回ったのは13年のうち5年だけです。ただし、その差の大きさは年によって大きく違います。+1.696%の差が出た2020年や+1.182%の2016年がある一方、-2.852%と大きく下回った2021年もありました。

平均で見た「若い銘柄の弱さ」は、年によっては逆転する、安定しない傾向だということです。なお2026年は9月中旬までの分です。

6.この検証の限界

結果を使う前に、次の点をご承知おきください。

  • 上場日は推定です。株価データベースへの初出日を上場日としており、市場変更や持株会社化などで銘柄コードが変わった場合は、実際の上場日より新しく見えることがあります
  • 差はそれほど大きくありません。翌日終値では最も差が出た6か月未満でも、全体平均との差は0.042ポイントです。売買コストを含まず、実際の売買で優位になるとは限りません
  • 若い銘柄は件数が少なく、極端な値の影響を受けやすい区分です(6か月未満は1,733銘柄)
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません。上場後に急落して廃止に至った銘柄が抜けている分、若い銘柄は実際より良い数字になっている可能性があります

7.よくある質問(FAQ)

Q. 上場からの経過年数は、どうやって決めていますか?

A. 株価データベースに、その銘柄の取引が初めて現れた日を上場日とみなしました。データの収録開始は1990年2月で、1990年3月末までに現れた1,368銘柄は、それ以前から上場していたものとして扱っています。評価期間は2014年以降なので、これらは「20年以上」に入ります。

Q. 上場したばかりの株は、買わないほうがよいのですか?

A. そう断定できるほどの差ではありません。6か月未満の20営業日後の平均は+0.517%で、全体平均の+0.938%を下回りましたが、中央値は-0.401%、勝率は47.6%でした。平均と中央値で景色が違う点と、年によって結果が逆転する点にご注意ください。

Q. 平均と中央値で、なぜこれほど差が出るのですか?

A. 若い銘柄は、20営業日後に+30%以上上がる割合が4.97%と、20年以上の1.03%の4.8倍あります。ごく一部の大きく上がった銘柄が平均を引き上げ、大多数は平均より低い位置にいるためです。6か月未満では平均と中央値の差が0.918ポイントに開き、20年以上の0.568ポイントを上回りました。

Q. 古い銘柄ほど成績がよい、と言えますか?

A. 中央値と勝率では言えます。20営業日後の中央値は、6か月未満の-0.401%から20年以上の+0.344%まで一貫して上がりました。一方、平均では10〜20年が+1.056%で最も高く、20年以上は+0.912%と順序が逆転します。経過年数が効いているのは、3年未満の領域だと見るのが妥当です。

Q. 相場全体が強い時期に偏った結果ではありませんか?

A. 同じ日の全銘柄平均との差で見ても、6か月未満の20営業日後は-0.387%、6か月〜1年は-0.265%と、3年未満の弱さは残りました。発生日の集中も確認しており、上位3日を除いても6か月未満の20営業日後は+0.517%から+0.513%とほとんど変わりません。

Q. 翌日の寄り付きまでなら、新しい銘柄は有利ですか?

A. はい、その傾向はありました。6か月未満の翌日寄付きは+0.192%・勝率49.8%で、全体平均の+0.082%・勝率44.8%を上回ります。ただし翌日終値では+0.008%と全体平均の+0.050%を下回りました。

Q. この結果は毎年同じですか?

A. 違います。1年未満の20営業日後が同年の全体平均を上回ったのは13年のうち5年だけで、2016年、2020年、2021年の差はそれぞれ+1.182%、+1.696%、-2.852%と、向きも大きさもまちまちでした。年ごとの相場環境に左右される点はご留意ください。

8.まとめ

12,437,533件を上場からの経過年数で分けて、わかったことを整理します。

  • 3年未満の銘柄は、20営業日後の中央値が弱い。6か月未満-0.401%、6か月〜1年-0.236%、1〜3年-0.051%で、全体の中央値+0.236%を下回ります
  • 中央値と勝率は、経過年数とともに一貫して上がりました。勝率は6か月未満の47.6%から20年以上の52.0%です
  • 平均は順序が揃いません。6か月未満の平均は+0.517%と全体平均を下回りますが、10〜20年が最高で、一部の極端な値の影響が混ざります
  • 若い銘柄は両端が厚い。+30%以上に上がる割合は20年以上の4.8倍ですが、−30%以下に下がる割合は10.1倍あります
  • 相場の強弱を除いても、3年未満の弱さは残りました。同日の全銘柄平均との差は6か月未満で-0.387%です
  • 日付の集中はなく、年によって逆転します。上位3日を除いても+0.513%と変わらない一方、1年未満が全体平均を上回った年は13年のうち5年でした

上場間もない銘柄は、上がれば大きく上がります。その印象が強く残るために、平均的にも有利だと感じやすいのかもしれません。ただ今回の数字が示したのは、大きく上がる銘柄の陰に、典型的にはさえない値動きの銘柄が多く並んでいるということでした。上がった少数の例だけでなく、大多数がどう動いたかも併せて数えてみてください。

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<追伸>
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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