「三日続伸で天井、三日続落で底」――古くから語り継がれてきた相場格言です。3日続けて上がったら利益確定、3日続けて下がったら押し目買い。しかし本当にデータで裏付けられるのでしょうか。
東証全銘柄4,816社の2022/10/03〜2026/07/31・延べ3,991,633営業日を全数走査し、三日続伸218,894件・三日続落202,690件を含む合計1,625,920件のイベントを集計しました。
核心は、同じ三日続伸でも3日間で+2.58%しか上がっていないケースと+34.98%も急騰したケースを分けて見る点です。あわせて2日・4日・5日連続も集計し、「3日」の特別性を検証しました。
結論です。「三日続伸で天井」は半分だけ正解でした。+0〜5%と緩やかな続伸は翌日CC+0.052%・勝率48.07%で全銘柄平均(+0.0634%・47.89%)並み。ところが+5〜10%で-0.031%・44.77%、+10〜20%で-0.051%・43.34%と沈みます。天井を作るのは「3日」ではなく「上がった幅」。そして「三日続落で底」には、さらに大きな落とし穴が隠れていました。
1.検証ルール
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検証対象:東証全銘柄 4,816社(上場廃止銘柄を含む)
検証期間:2022/10/03〜2026/07/31
使用データ:分割・併合調整後の日足4本値。終値・出来高がともに0超の日のみ有効
母数:日足4,001,274行/延べ3,991,633営業日/イベント1,625,920件
【連続の定義】
- 三日続伸=前日比プラスが3営業日連続した日。三日続落=マイナスが3営業日連続した日。変わらず(±0円)は打ち切り
- 連続がちょうどN日に到達した日を1イベントとして計上(5日続伸なら3・4・5日目が別々に該当)
【本記事の主軸=累積騰落率による層別】3日間の累積騰落率(当日終値÷3営業日前終値-1)で、続伸は+0〜5%(緩やか)/+5〜10%/+10〜20%/+20%以上(急騰)、続落は-0〜5%(緩やか)/-5〜10%/-10〜20%/-20%以下(急落)の各4段階に層別しました。
【リターンと勝率】翌日ON=当日終値→翌日始値、翌日CC=当日終値→翌日終値、5営業日後=当日終値→5営業日後の終値。勝率はプラスだった比率で、変わらず(±0%)は含めません。日本株は値動きのない日が5〜6%あるため条件なしの全銘柄平均でも翌日CC勝率は47.89%と50%を下回ります。本記事の数値は50%ではなく、この全銘柄平均と比較してください(表②の最終行に併記)。
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2.検証結果
(1) 緩やかな続伸と急騰後の続伸は正反対
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左が三日続伸。上昇率で層別すると翌日CC勝率が右肩下がりになり、+0〜5%(緩やか)の48.07%から+10〜20%で43.34%、+20%以上(急騰)で43.23%まで低下。全銘柄平均47.89%と横並びなのは緩やかな続伸だけです。「三日続伸したから危ない」のではなく「急いで上がった続伸が危ない」のです。
右の三日続落は下落率が大きいほど跳ね上がり、-20%以下では翌日CC+4.360%、5営業日後+8.498%・勝率69.03%。ただし薄いオレンジの棒(上位3日を除いた5営業日後)は-0.562%と反転します。
(2) 「3日」に特別な意味はあるのか
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格言が「三日」と言い切る以上、3日目に何かが起きているはずです。しかし続伸の翌日CCは2日+0.0333%/3日+0.0414%/4日+0.0108%/5日+0.0928%と揺れるだけで段差がなく、5営業日後も全銘柄平均+0.316%をわずかに下回る水準で横ばいです。
続落は明快です。5営業日後は2日+0.335%/3日+0.580%/4日+0.588%/5日+0.662%、勝率も52.41%→55.30%と日数とともに単調に増える連続的な関係でした。
(3) 平均値の裏にある中央値
+20%以上だけは翌日CC+0.716%と平均がプラスに跳ねますが、勝率43.23%は最低クラス。鍵は中央値で、翌日CCの中央値-0.541%、5営業日後も平均+0.412%に対し中央値-1.380%と符号が逆転。ごく一部の大化けが平均を押し上げ、真ん中の銘柄は下げているのです。
(4) 「三日続落で底」の正体
-20%以下(急落)は3,338件ですが、うち1,334件(40.0%)が2024/08/05というたった1営業日に集中していました。上位3日を除くと5営業日後は+8.498%から-0.562%へ反転、勝率も69.03%から42.26%へ低下し、-10〜20%も+1.861%→+0.136%と同じ動きです。正体は個別銘柄の下げ過ぎ修正ではなく市場全体の暴落リバウンドでした。
一方、続伸側は補正に耐えました。+20%以上の5営業日後は上位3日除外で+0.412%→+0.007%とむしろ悪化し、結論は崩れませんでした。
(5) 完全データ表①:累積騰落率別
| 分類(3日間の累積騰落率) | 件数 | 翌日CC | CC勝率 | 5日後 | 5日後中央値 | 5日勝率 | 上位3日除外の5日後 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 続伸 +0〜5%(緩やか) | 158,863 | +0.052% | 48.07% | +0.210% | +0.085% | 50.68% | +0.222% |
| 続伸 +5〜10% | 43,374 | -0.031% | 44.77% | +0.101% | -0.306% | 46.55% | +0.086% |
| 続伸 +10〜20% | 12,725 | -0.051% | 43.34% | +0.602% | -0.349% | 47.28% | +0.152% |
| 続伸 +20%以上(急騰) | 3,932 | +0.716% | 43.23% | +0.412% | -1.380% | 43.30% | +0.007% |
| 続落 -0〜5%(緩やか) | 142,224 | +0.092% | 50.76% | +0.345% | +0.266% | 53.64% | +0.345% |
| 続落 -5〜10% | 44,147 | +0.116% | 51.40% | +0.367% | +0.374% | 52.73% | +0.299% |
| 続落 -10〜20% | 12,981 | +0.878% | 56.27% | +1.861% | +1.157% | 56.33% | +0.136% |
| 続落 -20%以下(急落) | 3,338 | +4.360% | 67.68% | +8.498% | +9.661% | 69.03% | -0.562% |
(6) 完全データ表②:連続日数別
| 連続日数 | 件数 | 累積騰落率 | 翌日ON | 翌日CC | CC勝率 | 5日後 | 5日勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2日続伸 | 471,899 | +3.05% | +0.0903% | +0.0333% | 46.43% | +0.2459% | 50.05% |
| 3日続伸 | 218,894 | +4.62% | +0.1053% | +0.0414% | 47.05% | +0.2151% | 49.53% |
| 4日続伸 | 102,972 | +6.23% | +0.1324% | +0.0108% | 46.80% | +0.2365% | 49.58% |
| 5日続伸 | 48,181 | +7.91% | +0.1841% | +0.0928% | 48.91% | +0.2147% | 48.48% |
| 2日続落 | 452,617 | -2.92% | +0.0850% | +0.0262% | 50.24% | +0.3348% | 52.41% |
| 3日続落 | 202,690 | -4.62% | +0.1957% | +0.2179% | 51.53% | +0.5799% | 53.87% |
| 4日続落 | 89,218 | -5.98% | +0.1578% | +0.1943% | 51.73% | +0.5876% | 54.29% |
| 5日続落 | 39,449 | -7.52% | +0.0755% | +0.1182% | 50.27% | +0.6620% | 55.30% |
| 全銘柄平均 | 3,991,633 | - | +0.1000% | +0.0634% | 47.89% | +0.3163% | 51.04% |
3.なぜ緩やかな続伸と急いだ続伸で結果が分かれるのか
- 利益確定売りは日数ではなく含み益に比例する:売りたくなるのは3日経ったからではなく利益が乗ったからです。+2.58%しか上がっていない銘柄は勝率48.07%を保つ一方、+34.98%上げた銘柄は買い手全員が含み益を抱え勝率43.23%まで落ちます。
- モメンタムと平均回帰が競り合っている:上昇は買いを呼ぶ一方、上がり過ぎは戻りを呼びます。緩やかな上昇では両者が拮抗し、上昇率が大きいほど平均回帰が優勢に。転換点は翌日CCが最も沈む+10〜20%です。
- 急騰銘柄は短期資金に偏り、平均は大化けが作る:3日で20%以上動く銘柄には短期資金が集中し、利が乗れば即座に降ります。翌日CCは最大+74.0%の事例がある一方で中央値-0.541%、勝率43.23%。「多くは負けるが勝つときは大きい」分布です。
- 続落側のリバウンドは市場全体の急落が源泉:-20%以下の5営業日後+8.498%はその40.0%が2024/08/05に由来し、上位3日を除けば-0.562%へ反転します。
- 日数は値幅の粗い代理指標にすぎない:平均累積上昇率は3日続伸+4.62%、5日続伸でも+7.91%と伸びません。ならば値幅を直接測るほうが精度が高いことになります。
4.データが示す正解戦略
- 「三日続伸だから売る」は根拠が弱い:緩やかな三日続伸は翌日CC+0.052%・勝率48.07%と全銘柄平均並み。日数を理由に利確すると伸びる銘柄を手放します。
- 警戒すべきは短期間で大きく上げた続伸:3日で+5%以上上げた続伸は翌日CCが-0.031%〜-0.051%とマイナス圏。基準は日数ではなく上昇率です。
- 急騰後の続伸に飛び乗るのは分が悪い:+20%以上の急騰後は勝率43.23%、5営業日後の中央値-1.380%。平均がプラスでも典型的な結果はマイナスです。
- 平常時の「三日続落で押し目買い」は期待値が薄い:緩やかな三日続落の5営業日後は+0.345%・勝率53.64%で全銘柄平均+0.316%・51.04%と同水準。-20%以下の+8.498%も上位3日を除くと-0.562%で、狙うなら市場全体の急落を条件にすべきです。
- 日数のカウントに時間を使わない:2日でも5日でも結果はほとんど変わらず、労力は騰落率の計測に振り向けるほうが有効です。
5.実践活用――値幅で判断するフロー
(1) 保有銘柄を点検する手順
- ステップ1:当日終値÷3営業日前終値-1で3日間の騰落率を出します
- ステップ2:+5%未満なら需給は落ち着いていると判断し、続伸を理由にした利確は見送ります(勝率48.07%はベースライン47.89%並み)
- ステップ3:+5〜20%は勝率が43.34%〜44.77%に落ちる領域。分割利確や逆指値の引き上げを検討
- ステップ4:+20%以上は勝率43.23%・5営業日後の中央値-1.380%。伸ばすなら撤退ラインを必ずセットで
(2) 新規エントリー時のチェック
- 避けたい条件:直近3日で+10%以上上げた銘柄への飛び乗り。翌日CCは-0.051%と平均でもマイナスです
- ましな条件:直近3日の上昇が+5%未満。翌日CC+0.052%・5営業日後+0.210%と市場平均並みです
- 使いどころ:差は1回あたり0.1%前後とごく小さく、売買回数を増やす根拠にはなりません。保有銘柄の判断精度を上げる材料です
(3) 続落銘柄への向き合い方
- 平常時:3日下げただけの銘柄を拾っても5営業日後+0.345%・勝率53.64%と市場平均並み
- 市場全体の急落時:指数が数日で大きく下げ、値下がり銘柄数が極端に多い局面かを確認します
- 再現方法:3日間の騰落率は表計算ソフトの1行の数式で計算できます。ご自身でも確認されることをおすすめします
6.注意点とリスク
- 1回あたりの差は極めて小さい:緩やかな続伸と+10〜20%の続伸の翌日CC差は0.102ポイント程度です。売買手数料やスプレッド、想定価格で約定しないスリッページを差し引けば手元に残るリターンはさらに目減りします。この差だけを狙った高頻度売買はコスト負けの可能性が高い点にご注意ください。
- 極端なバンドは特定日への集中が大きい:-20%以下の三日続落は40.0%が2024/08/05に集中。件数が多くても独立した試行ではなく、統計的な信頼度は見かけほど高くありません。
- 指標の読み方に注意:変わらず(±0%)を勝ちに含めないため全銘柄平均でも翌日CC勝率は47.89%。また急騰後の続伸は平均+0.716%に対し中央値-0.541%と符号が逆で、平均どおりの成績にならない可能性があります。
- データ上の制約:売買代金の小さい銘柄では想定した価格で売買できない場合があります。分割・併合調整後の価格で計算しているため当時の実際の売買価格とは異なり、値幅制限などの取引制度も完全には再現していません。
- 検証期間の地合いに依存する:本検証期間は日本株が上昇した局面を多く含みます。全銘柄平均の5営業日後が+0.316%とプラスであること自体がその反映で、下落基調では結果が変わる可能性があります。
- 過去の傾向であり将来を保証するものではありません:投資判断はご自身の責任において行ってください。
7.よくある質問(FAQ)
Q. 「三日続伸で天井」は間違いなのですか?
A. 日数だけを見る限り根拠は確認できませんでした。緩やかな三日続伸(+0〜5%)の翌日CCは+0.052%・勝率48.07%で全銘柄平均(+0.0634%・47.89%)並み。ただし+5%以上上がった続伸に限れば翌日CCは-0.031%〜-0.051%とマイナス圏。格言が捉えていたのは日数ではなく上昇の大きさだったと考えられます。
Q. なぜ「3日」なのか、データ上の根拠はありましたか?
A. ありませんでした。続伸の5営業日後は2日+0.246%/3日+0.215%/4日+0.236%/5日+0.215%と横ばいで段差はなく、続落側は日数が増えるほど反発力が増す単調な関係でした。
Q. 三日続落で押し目買いをするのは有効ですか?
A. 平常時は期待値が薄いと考えられます。緩やかな三日続落(-0〜5%)の5営業日後は+0.345%・勝率53.64%で全銘柄平均+0.316%・51.04%と大差なし。大きなリバウンドは市場全体の急落局面に限られます。
Q. 3日で20%以上下げた銘柄は本当に大きく戻るのですか?
A. そのまま受け取るのは危険です。3,338件のうち1,334件(40.0%)が2024/08/05の1営業日に集中しており、市場全体の暴落からのリバウンドを拾ったものです。上位3日を除くと5営業日後は-0.562%・勝率42.26%へ反転します。
Q. 急騰後の三日続伸は平均がプラスです。乗ってもよいですか?
A. 平均だけで判断しないほうが安全です。+20%以上上げた続伸の翌日CCは平均+0.716%ですが中央値-0.541%、勝率43.23%、5営業日後も中央値-1.380%。典型的な結果はマイナスと考えられます。
Q. 3日間の騰落率はどう計算すればよいですか?
A. 「当日終値 ÷ 3営業日前の終値 - 1」を100倍するだけです。当日終値1,150円、3営業日前1,000円なら+15%となり、+10〜20%のバンドに該当します。
Q. 勝率が50%未満なのに平均リターンがプラスなのはなぜですか?
A. 1つは勝率が変わらず(±0%)を含めていないためで、日本株は値動きのない日が5〜6%あります。もう1つは分布が右に裾を引き、上昇時の値幅が下落時より大きくなりやすいためです。勝率は50%ではなく全銘柄平均47.89%と比較してください。
8.まとめ
- 「三日続伸で天井」は日数ではなく値幅の話だった:緩やかな三日続伸(+0〜5%)は翌日CC+0.052%・勝率48.07%で全銘柄平均並み。+10〜20%上げた続伸は-0.051%・43.34%まで沈みます。
- 「3日」という区切りに統計的な根拠はない:続伸の5営業日後は2日+0.246%〜5日+0.215%とほぼ横ばい。続落側は勝率が52.41%→55.30%と日数とともに単調に上がる連続的な関係でした。
- 「三日続落で底」の強烈な数字は暴落1日の産物だった:-20%以下は5営業日後+8.498%・勝率69.03%ですが40.0%が2024/08/05に集中。上位3日を除くと-0.562%・42.26%へ反転します。
- 平均値ではなく中央値と勝率を見る:急騰後の続伸は平均+0.716%に対し中央値-0.541%。ごく一部の大幅高が平均を押し上げているだけで、上位3日を除いても5営業日後は+0.412%→+0.007%と悪化しました。
データが指していたのは「何日上がったか」ではなく「どれだけ上がったか」でした。保有銘柄が3日続けて上がったときは、日数を数えるのをやめて3営業日前の終値と比べて何%動いたかを確認してみてください。+5%未満なら需給は落ち着いており、+10%を超えれば翌日の勝率が明確に下がる領域です。なお示した差は1回あたり0.1%前後と小さく、手数料やスリッページでさらに縮みます。過去の傾向として、ご自身の投資方針と資金管理のなかで活用いただければ幸いです。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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