日本株

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。


システムトレード

空売りの手数料負けとは?

「手数料負け」とは、取引の収益から手数料を引いてマイナスになることです。

特に、取引の結果がプラスマイナスゼロのトントンとなった場合には、手数料負けと言われるケースが多くなります。

空売りの手数料負けは、ある銘柄を1,000円で空売りし、1,000円で買い戻して、結果自体はプラマイゼロのトントンだったものの、そこから手数料が引かれた分だけ手数料負けになるといったケースです。

空売り 手数料負け

上図の例では、【6861】キーエンスを、2025年2月26日に新安値を付けたため61,060円で空売りし、ある程度は下落したものの、反発して戻ってきたため、3月5日にエントリー同値の61,060円で決済した場合です。

トレードの結果自体は、61,060円空売り→61,060円買い戻しとなり、プラスマイナスゼロのトントンですが、ここから手数料が引かれるため、手数料負けとなります。

空売りの手数料について

空売り(信用売り)の手数料には、次の3つがあります。

  • 取引手数料
  • 貸株料
  • 逆日歩(品貸料)

主要証券会社について、空売り(制度信用取引)の手数料は次の通りです。

 

取引手数料(税込み)

貸株料

逆日歩(品貸料)

SBI証券

0円

1.10%

発生する場合がある

楽天証券

0円

1.10%

発生する場合がある

マネックス証券

99~385円

1.15%

発生する場合がある

SBIネオトレード証券

0円

1.10%

発生する場合がある

SBI証券や楽天証券、SBIネオトレード証券では空売りの取引手数料は0円となっていますが、貸株料が年率で発生するため、貸株料が実質的な空売りの手数料となっています。

貸株料は、年率計算で発生するため、空売りの玉を、100万円分、5日間保有していた場合には、100万円×年率1.10%×(5日÷365日)=150円となります。

逆日歩(品貸料)については、空売りが多くなり、株を貸してくれる証券金融会社に株不足が生じた際に発生する場合があり、注意が必要です。

逆日歩は、株式優待で人気がある銘柄などで、権利確定日に向けて両建て需要が増える時期に発生しやすくなります。

 

良い手数料負けと悪い手数料負け

空売りの手数料負けには、良い手数料負けと悪い手数料負けがあります。

良い手数料負け:ルールに従った結果の手数料負け

良い手数料負けとは、売買ルールに従った結果として、手数料負けになるものです。

売買ルールに従ってエントリーし、売買ルールに従って保有し、売買ルールに従って決済して、その結果として、手数料負けになってしまうケースです。

もっと早めに利食いしておけば、含み益を確保できたかもしれませんが、利益を伸ばすために保有した結果として、逆行して手数料負けになってしまったなら、リスクを取った結果であり仕方ありません。

空売り 手数料負け

空売りした銘柄が、手数料負けで決済した直後に、より反発して含み損が大きくなってしまう展開もあるため、手数料負けで撤退できたことは成功であるとも言えます。

ルールに従って、リスクを取った結果、もしくは早めの損切りをした結果としての手数料負けは良い手数料負けであるため、問題ありません。

悪い手数料負け:チキン利食いして、手数料負け

悪い手数料負けとは、ルールを無視して、チキン利食いして手数料負けになってしまう場合です。

チキン利食いとは、早過ぎるタイミングで利食いをして、わずかな利益で利益確定してしまうことです。

空売りの場合には、エントリー後になかなか下落しないため、「反発してきて損切りになってしまうんじゃないか?」という不安心理から、ほぼエントリーと同値で利食いしてしまう展開です。

悪い手数料負けについて、具体的に見ていきましょう。

次のチャートは、【1911】住友林業の日足チャートです。

空売り 手数料負け

2025年2月14日に、大陰線を出して直近安値を割り込みました(上図赤丸)。

終値の4,919円で空売りエントリーし、5,000円を上回ってきたら損切りしようと逆指値注文を出しておきます。

翌日の寄り付きには4,970円と上昇して寄り付き。含み損になって嫌な気持ちとなりますが、まだ損切りライン(5,000円)には達していません。

株価は4,981円まで上がったものの下落し、空売りエントリー価格の4,919円まで到達。

ルール上は保有ではあるものの、含み損がなくなった安堵感から、「猛反発する前に利食いしておこう……」という気持ちから、エントリー価格の4,919円で利食いして、手数料負けで決済。

決済直後は解放感から良い気分になりますが、株価はさらに下落していき、保有していれば大きな利益になっていました。

このように、ルールに従わず、感情的な判断によって手数料負けになったケースは、悪い手数料負けです。

 

空売りの「良い手数料負け」は受け入れよう

ルールに従った結果の「良い手数料負け」は、受け入れるようにしましょう。

今回のトレードが手数料負けになったとしても、ルールに従っていけば、長期的にはトータルではプラスになる可能性が高いためです。

トレードにおいて重要なのは、トータルを確率統計で考えることであり、1つ1つのトレードの結果ではなく、多くのトレードの結果としてプラスになれば良いと考えます。

ルールに従ったトレードを継続していけば、手数料負けになるトレードが出てくることは避けられません。

重要なのは、期待値プラスのルールに従って、長期的にはトータルプラスを実現することです。

 

空売りで「悪い手数料負け」をしない対策

空売りで、ルールに従わずに手数料負けとなり、大きな利益の機会を逃してしまう「悪い手数料負け」にならないための対策を見ていきましょう。

チキン利食いを防ぐためのマインドセットを身に付ける

空売りをして、小さな利益で焦ってチキン利食いをしてしまうと、長期的な成績を下げる要因となります。

損切りをしっかりしていたとしても、伸ばせるはずの利益を伸ばせずにチキン利食いしてしまえば、トータルでプラスになるのは難しくなるためです。

重要なのは、トレードの結果で成功を判断するのではなく、ルールに従えたかどうかで成功を判断するマインドセッドを身につけることです。

結果として手数料負けや損失になったとしても、ルールに従った結果なら、成功したとポジティブに考えます。

一方、チキン利食いをしてプラスや手数料負けになったら、ルールに従えなかったため、良くないトレードだったと評価します。

ルールに従う規律を実践し続けると、「ルールに従うことが利益を生む」という実感が得られ、チキン利食いを防ぐマインドセットが習慣として身についてきます。

ポジションを小さくして精神的負荷を小さくする

どうしてもルールを守れず、悪い手数料負けになって利益を伸ばせない場合には、ポジションサイズ(玉)を小さくすることも有効です。

チキン利食いしてしまう心理の背景には、含み損への拒否感があると考えられます。

現在のポジションサイズでは精神的負荷が大きくなっているため、ポジションサイズを小さくして精神的負荷を小さくすれば、含み損にも耐えて利益を伸ばしやすくなります。

小さなポジションでルールに従う経験を積み続ければ、ルールに従う習慣ができ、ルールに従う規律が身についてくるでしょう。

 

まとめ

この記事では、空売りの手数料負けについて解説してきました。

手数料負けには、ルールに従った結果として手数料負けになる「良い手数料負け」、ルールに従えずチキン利食いしてしまう「悪い手数料負け」があります。

ルールに従った結果として手数料負けになってしまうものは、トレードを継続していく中で避けられないため問題ありません。

一方、ルールに従えずの手数料負けは、利益を伸ばせないため、改善する必要があります。

悪い手数料負けの習慣が抜けない場合には、トレードの結果ではなくルールを守れたかどうかを成功判断にする、ポジションサイズを小さくして精神的負荷を小さくするなどして習慣するようにしましょう。

 

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