「出来高が細ってきたら、売りが出尽くした合図」「閑散に売りなし」。相場の世界には、出来高が減ることに意味を見いだす言い回しがいくつもあります。出来高が急に減った銘柄は、その後どう動くのでしょうか。
日足の4本値と出来高を使い、2014年1月6日から2026年9月14日までの12,387,849件(5,427銘柄・3,103営業日)を、その日の出来高が直前20日平均の何倍かで分けて集計しました。
結論を先に述べます。出来高が3分の1以下に急減した銘柄は、全体平均とほぼ同じ値動きでした。急減した1,470,772件の20日後は+0.928%、全体平均は+0.940%です。
差が出たのは銘柄の規模でした。直前20日の売買代金が10億円以上の銘柄では、急減後の20日後が-0.758%と、急減でない同規模の銘柄を1.531ポイント下回っています。売買代金の小さい銘柄では、この差はほとんどありませんでした。
1.検証ルール
集計条件をすべて開示します。
- データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)と出来高
- 期間:2014年1月6日〜2026年9月14日(12,387,849件・5,427銘柄)。データの最終日は2026年10月16日で、20営業日後のリターンが計算できる日までを対象にしています
- 出来高倍率:その日の出来高 ÷ 直前20営業日(当日を含まない)の平均出来高
- 急減:出来高倍率が3分の1以下の日。さらに騰落率・売買代金の規模・25日線との位置・市場全体の出来高の厚みで切り分けました
- リターン:その日の終値で買ったとして、翌日終値・5営業日後・20営業日後の終値で測定
- 比較対象:同期間の全銘柄平均(翌日終値+0.050%、5日後+0.245%、20日後+0.940%)。区分ごとの分析では、同じ区分にいる「急減でない銘柄」とも比べます
最後の点は大切です。たとえば売買代金の小さい銘柄は、出来高の多寡に関係なくリターンが高めに出る傾向があります。全体平均とだけ比べると、急減の効果と規模の効果が混ざってしまうため、同じ区分どうしの比較を併用しました。
2.出来高倍率の帯別に見た結果
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| 区分 | 件数 | 翌日終値 | 勝率 | 5日後 | 勝率 | 20日後 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.2倍以下(全体の5.4%) | 663,634 | +0.025% | 43.9% | +0.215% | 48.4% | +0.924% | 50.4% |
| 0.2〜0.33倍(全体の6.5%) | 807,138 | +0.047% | 44.7% | +0.249% | 48.6% | +0.932% | 49.9% |
| 0.33〜0.5倍(全体の11.6%) | 1,432,171 | +0.045% | 46.0% | +0.245% | 49.4% | +0.921% | 50.6% |
| 0.5〜0.8倍(全体の26.2%) | 3,241,591 | +0.050% | 47.3% | +0.238% | 50.3% | +0.930% | 51.6% |
| 0.8〜1.25倍(全体の27.2%) | 3,372,303 | +0.058% | 48.0% | +0.250% | 50.6% | +0.927% | 51.9% |
| 1.25倍以上(全体の23.2%) | 2,871,012 | +0.048% | 47.2% | +0.254% | 49.5% | +0.982% | 50.9% |
| 急減すべて(1/3以下) | 1,470,772 | +0.037% | 44.4% | +0.234% | 48.5% | +0.928% | 50.1% |
| 全体平均(比較用) | 12,387,849 | +0.050% | 47.0% | +0.245% | 49.9% | +0.940% | 51.2% |
上のグラフと表を、出来高倍率の低い帯から順に見てください。20日後は0.2倍以下が+0.924%、0.2〜0.33倍が+0.932%、1.25倍以上が+0.982%です。出来高が少なくても多くても、20日後はほとんど同じという結果です。
急減(1/3以下)全体では、翌日終値が+0.037%(全体平均+0.050%)、5日後が+0.234%(同+0.245%)、20日後が+0.928%(同+0.940%)でした。全体平均との差は、翌日終値で-0.013ポイント、20日後でも-0.012ポイントにすぎません。
勝率に目を向けると、翌日終値で上がった割合は急減で44.4%、全体平均で47.0%でした。わずかに低めですが、「出来高が減ったら買い」と言える差ではありません。
3.急減した日の騰落率で分ける
出来高が急減した日に、株価は上がったのか下がったのか。ここで分けると景色が少し変わります。
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| 区分(急減した銘柄) | 件数 | 翌日終値 | 5日後 | 20日後 | 20日後勝率 | 急減でない銘柄の20日後 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| -3%以下 | 40,095 | +0.036% | +0.412% | +1.329% | 46.7% | +1.894% | -0.565 |
| -3〜-1% | 209,786 | +0.133% | +0.342% | +1.007% | 49.5% | +0.969% | +0.038 |
| -1〜+1% | 980,780 | +0.042% | +0.221% | +0.875% | 50.9% | +0.810% | +0.065 |
| +1〜+3% | 205,526 | -0.091% | +0.097% | +0.888% | 48.1% | +0.856% | +0.032 |
| +3%以上 | 34,585 | +0.081% | +0.536% | +1.725% | 46.0% | +1.130% | +0.595 |
表の「差」は、急減した銘柄の20日後から、同じ騰落率帯にいる急減でない銘柄の20日後を引いたものです。青字は0.2ポイントを超えるプラス、赤字は0.2ポイントを超えるマイナスを示します。
最も件数が多いのは、騰落率が-1〜+1%の「ほぼ動かなかった日」で66.7%を占めます。20日後は+0.875%、差は+0.065ポイントで、特別な傾向はありません。
目立つのは、出来高が薄いまま+1〜+3%上げた日です。翌日終値が-0.091%、勝率は40.3%と、5区分のなかで翌日終値が唯一のマイナスになりました。同じ騰落率帯の急減でない銘柄との差は、翌日終値で-0.123ポイントです。買いが続かない上昇、という見方を裏付ける数字ですが、20日後には+0.888%まで戻っています。
一方、-3%以下に下げた日の急減は、20日後が+1.329%と一見高いものの、急減でない銘柄(同じく大きく下げた銘柄)との差は-0.565ポイントとマイナスです。大きく下げたあとの戻りは、出来高が減っていない銘柄のほうが強いことになります。
+3%以上の日は急減後の20日後が+1.725%、差は+0.595ポイントとプラスでしたが、件数が34,585件と少なく、勝率は46.0%です。平均を押し上げているのは一部の大きく上昇した銘柄で、安定した傾向とは言えません。
4.差が出たのは「売買代金の大きい銘柄」だった
急減の影響は、銘柄の規模で大きく変わりました。直前20日の平均売買代金(1日あたり)で4つに分けた結果です。
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| 区分(急減した銘柄) | 件数 | 翌日終値 | 5日後 | 20日後 | 20日後勝率 | 急減でない銘柄の20日後 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1千万円未満 | 702,659 | +0.037% | +0.282% | +1.187% | 53.0% | +1.240% | -0.053 |
| 1千万〜1億円 | 524,067 | +0.043% | +0.258% | +0.980% | 49.1% | +0.998% | -0.018 |
| 1億〜10億円 | 203,397 | +0.030% | +0.064% | +0.239% | 44.5% | +0.724% | -0.485 |
| 10億円以上 | 40,649 | +0.011% | -0.060% | -0.758% | 41.3% | +0.773% | -1.531 |
売買代金が1千万円未満の銘柄は、急減後の20日後が+1.187%で、急減でない銘柄との差は-0.053ポイント。1千万〜1億円でも-0.018ポイントで、差はほぼありません。
ところが規模が大きくなると、差が開いていきます。1億〜10億円で-0.485ポイント、10億円以上では-1.531ポイントです。10億円以上の急減は20日後が-0.758%、勝率は41.3%でした。
理由はデータからは断定できません。ただ、普段は活発に売買されている銘柄の出来高が急に3分の1以下になるのは、市場の関心が離れたことを示している可能性があります。売買代金の小さい銘柄は、もともと出来高の振れが大きく、急減が日常的に起きているため、特別な意味を持たないのかもしれません。なお、10億円以上の急減は2.8%と件数が少ない点にもご注意ください。
25日移動平均線との位置でも見ておきます。25日線より5%超下にいる銘柄の急減は、20日後が+1.187%で、急減でない銘柄との差は-0.637ポイント。25日線より5%超上にいる銘柄では+1.189%・差+0.387ポイントでした。25日線の±5%以内(急減全体の78.9%)では差は+0.056ポイントで、ほぼ違いがありません。
5.頑健性チェック:発生日の集中と、上位日を除いた結果
極端な条件の成績は、市場が急変した数日に偏っていることがあります。そこで、急減がどの日に発生していたかの集中を確認しました。
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- 発生日の集中:急減は3,103営業日にわたって発生し、最多の3日(2025/04/17(1511件)、2024/08/21(1451件)、2024/08/22(1371件))を合わせても全体の0.3%でした。特定の数日に偏った結果ではありません
- 上位3日を除いた再集計:20日後は+0.928%から+0.922%へ、翌日終値は+0.037%から+0.035%へとほぼ変わりません
- 売買代金10億円以上の急減:上位3日を除いても20日後は-0.790%(除く前は-0.758%)。弱さは特定の日の影響ではありませんでした
市場全体の出来高が薄かった日も確認しました。各営業日の出来高倍率の中央値を出し、下位1割(中央値が0.657倍以下)の311営業日を「市場全体が特に薄い日」としています。この日に急減した銘柄は急減全体の15.8%で、20日後は+1.313%と高く出ました。ただし同じ日の急減でない銘柄は+1.254%で、差は+0.059ポイントです。相場全体が薄い日の後に戻ったのであって、急減した銘柄だけが戻ったわけではありません。
年別に見ると、急減後の20日後は13年のうち1年でマイナスです。最も高かった2017年は+2.794%、最も低かった2018年は-1.647%と、年による振れは大きくなっています。
6.この検証の限界
結果を使う前に、次の点をご承知おきください。
- 売買コストを含みません。手数料やスプレッド、売買代金の小さい銘柄で実際に約定できるかは考慮していません
- 出来高は分割調整をしていません。株式併合の直後は出来高が減るため、本当の急減ではない日が混ざる可能性があります。ただし件数が多いため、結果への影響は小さいと考えられます
- 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません。急減後に下げ続けて上場廃止に至った銘柄が抜けていれば、成績は実際より良く見えます
- 同じ銘柄の連続した日が含まれます。12,387,849件という数字ほど、独立した観測があるわけではありません
7.よくある質問(FAQ)
Q. 出来高の「急減」はどう定義していますか?
A. その日の出来高を、直前20営業日(当日を含まない)の平均出来高で割った倍率が3分の1以下の日を急減としました。出来高がゼロで値が付かなかった日は集計から外しています。急減は評価対象12,387,849件のうち11.9%にあたる1,470,772件でした。
Q. 出来高が急減した銘柄は、その後に上がりやすいのですか?
A. 全体としては、上がりやすくも下がりやすくもありませんでした。急減した銘柄の20日後は+0.928%、全銘柄の平均は+0.940%で、ほぼ同じです。翌日終値も+0.037%と+0.050%で、差は小さいものでした。
Q. 「出来高が枯れたら底打ち」という見方は当てはまりますか?
A. 出来高の減少だけでは判断できません。25日線より5%超下で出来高が急減した銘柄の20日後は+1.187%で、急減でない銘柄との差は-0.637ポイントとマイナスでした。下落の途中で出来高が減っても、その後の戻りが強いとは言えません。
Q. どんな銘柄で急減後の成績が悪くなりましたか?
A. 売買代金が大きい銘柄です。直前20日の平均売買代金が10億円以上の銘柄は、急減後の20日後が-0.758%で、同じ規模の急減でない銘柄(+0.773%)を1.531ポイント下回りました。一方、1千万円未満の銘柄では差は-0.053ポイントにとどまります。
Q. 特定の日の暴落や急騰に引っ張られた結果ではありませんか?
A. 発生日の集中を調べましたが、急減は3,103営業日にわたって発生しており、最も多い3日を合わせても全体の0.3%でした。その3日を除いて再集計しても20日後は+0.922%で、+0.928%とほとんど変わりません。
Q. 市場全体の出来高が少ない日に急減した銘柄は有利ですか?
A. 成績は良く見えますが、銘柄の差ではありません。市場全体が特に薄い日(下位1割・311営業日)に急減した銘柄の20日後は+1.313%ですが、同じ日の急減でない銘柄との差は+0.059ポイントです。その日の相場全体の動きが反映されたものと考えられます。
Q. この結果は毎年同じですか?
A. 違います。急減後の20日後を年別に見ると、最も高い2017年は+2.794%、最も低い2018年は-1.647%でした。13年のうちマイナスだった年は1年あります。相場環境の影響が大きく、出来高の急減だけで方向を決められるわけではありません。
8.まとめ
12,387,849件を数え直してわかったことを整理します。
- 出来高の急減だけでは、買いにも売りにもなりません。1/3以下に急減した銘柄の20日後は+0.928%で、全体平均+0.940%とほぼ同じでした
- 出来高倍率の帯別でも違いはほぼありません。0.2倍以下から1.25倍以上まで、20日後は+0.924%〜+0.982%の範囲に収まります
- 薄い出来高で+1〜+3%上げた日の翌日は弱い(翌日終値-0.091%・勝率40.3%)。ただし20日後には戻っています
- 弱さが出たのは売買代金10億円以上の銘柄。急減後の20日後は-0.758%で、急減でない同規模の銘柄を1.531ポイント下回りました
- 頑健性チェックでは偏りは見つかりませんでした。発生は3,103営業日に分散し、上位3日を除いても結果は変わりません。年による振れは大きい点にご留意ください
「出来高が枯れたから、そろそろ反転」という見立ては、感覚としては自然です。しかし今回の数字は、出来高が減ったという事実だけでは、その後の方向を示してくれないことを示しました。
出来高を見るなら、「減った」かどうかよりも、売買代金の大きい銘柄で起きたのか、株価がどう動いた日に減ったのかを併せて確認することが大切です。自分が使っている出来高の条件がどの区分に当てはまるのか、一度数えて確かめてみてください。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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