無料レポート 直近25年分の統計データで分かる「株の買い時・売り時」
無料で受け取る →

「52週高値から3割も下がった。もう十分に売られたから、そろそろ戻るはずだ」。高値圏で買い逃した銘柄を、押したところで拾う。株式投資でよく聞く考え方です。

この考え方を数字で確かめました。2014年1月1日から2026年9月14日までの東証全銘柄(5,252銘柄・3,097営業日・11,931,052件)について、当日終値が52週高値から何%下にあるかで5つの帯に分け、翌日以降のリターンを集計しています。

結論を先に述べます。「深く下げた株ほど戻る」とは言えませんでした。20日後の平均は、-10〜-20%が+0.822%、-20〜-30%が+0.793%で、市場平均の+0.967%を下回ります。その日の全銘柄平均を差し引くと、-30〜-50%は-0.198%と最も弱くなりました。

例外は-50%以下です。20日後は+2.268%と市場平均の2.35倍でした。ところが、この帯は勝率が48.9%と市場平均(51.4%)を下回り、中央値は0.0%。さらに2020年を除くと+1.648%まで下がります。一部の大きな上昇が平均を作っている形でした。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後の4本値)。出来高がゼロの日は除外
  • 期間:2014年1月1日〜2026年9月14日(5,252銘柄・3,097営業日・11,931,052件)。20営業日後が確認できる日までです
  • 52週高値:当日を含む直近252営業日の高値のうち最も高い値
  • 下落率:当日終値 ÷ 52週高値 − 1。0〜-10%、-10〜-20%、-20〜-30%、-30〜-50%、-50%以下の5つの帯に分類
  • 経過日数:52週高値を付けた日から当日までの営業日数。60日以内を「60日以内(急落型)」、61〜150日、151日以上を「151日以上(長期低迷型)」と呼ぶ
  • リターン:当日終値で買った場合の、翌日終値・5日後・20日後
  • 比較対象:同期間の全銘柄・全日の平均(市場平均)。加えて、同じ日の全銘柄平均を差し引いた「地合い差引後」も算出

地合い差引後を用意したのは、市場全体が急落した日に下落率の大きい銘柄が一斉に増えるためです。相場全体の動きを引かないと、銘柄の状態の効果と相場の効果が混ざります。

2.下落率の帯別に見た結果

まず帯別の結果です。

52週高値からの下落率別 翌日以降の平均リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

下落率の帯件数翌日終値勝率5日後勝率20日後勝率
0〜-10%(全体の31.0%)3,698,415+0.045%47.8%+0.221%50.9%+0.930%52.9%
-10〜-20%(全体の26.2%)3,124,305+0.031%47.4%+0.186%50.5%+0.822%52.0%
-20〜-30%(全体の18.0%)2,149,573+0.036%46.8%+0.183%49.7%+0.793%50.7%
-30〜-50%(全体の18.6%)2,221,386+0.059%46.0%+0.273%48.6%+0.967%49.4%
-50%以下(全体の6.2%)737,373+0.170%44.9%+0.738%47.7%+2.268%48.9%
市場平均(比較用)11,931,052+0.050%47.0%+0.247%49.9%+0.967%51.4%

20日後の列を上から見てください。0〜-10%が+0.930%、-10〜-20%が+0.822%、-20〜-30%が+0.793%、-30〜-50%が+0.967%。市場平均の+0.967%に対する差は、-10〜-20%で-0.145ポイント、-20〜-30%で-0.174ポイントでした。下げるほど戻りが大きくなる、という並びにはなっていません。

勝率はもっとはっきりしています。20日後の勝率は52.9%、52.0%、50.7%、49.4%、48.9%と、下落が深くなるほど低下しました。0〜-10%と-50%以下の差は4.0ポイントです。

3.地合いを差し引くと「深いほど弱い」

次に、その日の全銘柄平均を差し引いた超過リターンを見ます。

20営業日後の平均リターン そのままと地合い差引後

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

下落率の帯件数20日後の平均市場平均との差20日後の中央値地合い差引後の平均
0〜-10%3,698,415+0.930%-0.037ポイント+0.376%+0.102%
-10〜-20%3,124,305+0.822%-0.145ポイント+0.326%-0.060%
-20〜-30%2,149,573+0.793%-0.174ポイント+0.190%-0.164%
-30〜-50%2,221,386+0.967%+0.000ポイント+0.000%-0.198%
-50%以下737,373+2.268%+1.301ポイント+0.000%+0.821%
市場平均(比較用)11,931,052+0.967%―+0.262%+0.000%

地合い差引後の20日後は、0〜-10%が+0.102%、-10〜-20%が-0.060%、-20〜-30%が-0.164%、-30〜-50%が-0.198%。0〜-10%から-30〜-50%へ、一貫して下がっていきます。両端の差は0.3ポイントです。

-30〜-50%はそのままの平均こそ+0.967%と市場平均並みですが、これは相場全体が大きく下げた局面(2020年3月など)に件数が多く、その後の相場全体の反発に乗った分を含みます。地合いを引くと、同じ日に買った他の銘柄より0.198ポイント劣っていたことになります。

表の「20日後の中央値」も見てください。0〜-10%は+0.376%ですが、-30〜-50%は+0.0%です。平均がプラスでも、中央の銘柄は動いていません。安く見える株は、そのまま安値に張り付いていることが多い、と読めます。

4.-50%以下だけは違った:急落型と長期低迷型

-50%以下の帯は、全体の6.2%(737,373件)です。20日後は+2.268%、地合い差引後も+0.821%と、唯一はっきりプラスでした。

この帯を、52週高値を付けてからの経過日数で分けたのが次の表です。-30〜-50%も並べています。

52週高値からの経過日数別 20営業日後の平均リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区分件数帯の中の割合翌日終値5日後20日後20日後の中央値20日後の勝率20日後の地合い差引後
-30〜-50%|60日以内(急落型)199,689(9.0%)+0.074%+0.316%+1.196%-0.322%48.0%-0.508%
-30〜-50%|61〜150日564,022(25.4%)+0.074%+0.306%+0.845%+0.000%48.8%-0.499%
-30〜-50%|151日以上(長期低迷型)1,457,675(65.6%)+0.051%+0.254%+0.983%+0.000%49.9%-0.040%
-50%以下|60日以内(急落型)33,189(4.5%)+0.676%+2.292%+7.329%+0.000%49.7%+4.715%
-50%以下|61〜150日146,724(19.9%)+0.198%+0.850%+2.179%+0.000%48.7%+0.439%
-50%以下|151日以上(長期低迷型)557,460(75.6%)+0.133%+0.615%+1.991%+0.000%48.9%+0.690%
市場平均(比較用)11,931,052―+0.050%+0.247%+0.967%+0.262%51.4%+0.000%

-50%以下では、急落型の20日後が+7.329%と突出しています。61〜150日が+2.179%、長期低迷型が+1.991%ですから、急落型との差は5.338ポイントです。地合い差引後でも急落型は+4.715%でした。

ただし、急落型でも中央値は0.0%、勝率は49.7%です。半数以上の銘柄は20日後に動いていないか、下がっています。平均を引き上げているのは、短期間で大きく反発した少数の銘柄です。

一方、-30〜-50%の急落型は地合い差引後が-0.508%と、全区分で最も弱い結果でした。

5.頑健性チェック:発生日の集中・時期の偏り・年別

今回の条件は、特定の日に起きる「イベント」ではなく、数か月続く「状態」です。そのため、発生日の集中は小さいという結果になりました。-50%以下の上位3日が占める割合は0.5%で、3,096日に分散しています。上位3日は2020年3月19日(1,207件)、2020年3月13日(1,191件)、2020年3月16日(1,178件)で、いずれも2020年3月です。

区分上位3日の占める割合20日後(そのまま)上位3日を除く2020年を除く2020年の占める割合
-30〜-50%0.3%+0.967%+0.933%+0.807%11.8%
-50%以下0.5%+2.268%+2.173%+1.648%11.2%
-50%以下|60日以内(急落型)2.7%+7.329%+6.794%+5.891%21.2%
市場平均(比較用)―+0.967%―+0.993%7.9%

上位3日を除いても、-50%以下の20日後は+2.268%から+2.173%と、ほとんど変わりません。ただしこれは、3日を除いても影響が小さいだけです。確かめるべきは、数日ではなく「時期」の偏りでした。

-50%以下のうち2020年に発生したものは11.2%で、市場全体に占める2020年の割合(7.9%)より多くなっています。2020年を除くと、20日後は+2.268%から+1.648%に下がりました。除外後の市場平均(+0.993%)との差は+0.655ポイントで、全期間の+1.301ポイントから縮みます。優位が消えるわけではありませんが、約半分は2020年の急落からの反発でした。

急落型はさらに偏っています。60日以内(急落型)の-50%以下(33,189件)は、21.2%が2020年の発生です。月別の上位は2020年3月(3,451件)、2020年4月(1,775件)、2026年7月(665件)で、2020年を除くと+7.329%から+5.891%になります。2020年を除いても市場平均を+4.898ポイント上回るので傾向は残りますが、水準は大きく変わります。

続いて年別です。

-50%以下の銘柄と市場平均 20営業日後の年別比較

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

-50%以下の20日後は、13年中9年で市場平均を上回りました。2017年、2021年、2023年、2026年は下回っています。差が最も大きいのは2020年(-50%以下が+7.182%、市場平均が+0.658%)で、これが平均を押し上げています。最も下回ったのは2026年(-0.322%、市場平均+0.827%)でした。

6.この検証の限界

結果を使う前に、次の点をご承知おきください。

  • -50%以下の銘柄は売買しにくい場合があります。低位株や流動性の低い銘柄が多く含まれ、表の価格で約定できるとは限りません。ストップ安に張り付いた日に買えないこともあります
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません。下げ続けて上場廃止に至った銘柄が抜けている分、深く下げた帯の結果は実際より良い数字になっている可能性があります
  • 観測は重なっています。同じ銘柄が何日も同じ帯に居続けるため、独立した観測は件数より少なくなります
  • 売買コストを含みません。帯の区切りや252営業日という期間も検証者が決めたもので、変えれば数字も変わります

7.よくある質問(FAQ)

Q. 52週高値からの下落率はどう計算していますか?

A. 直近252営業日(約1年)の高値のうち最も高い値に対して、当日の終値が何%下にあるかを計算しています。株式分割の影響を除いた調整後の株価を使い、出来高がゼロの日は集計から外しました。

Q. 「高値から大きく下がった株は割安だから買い」は本当ですか?

A. 少なくとも-30%までは当てはまりませんでした。20日後の平均は、-10〜-20%が+0.822%、-20〜-30%が+0.793%で、市場平均の+0.967%を下回っています。その日の全銘柄平均を差し引くと、-30〜-50%は-0.198%と全帯で最も弱い結果でした。

Q. -50%以下まで下げた株は買い場になりますか?

A. 平均で見ると20日後は+2.268%と最も高い帯でした。ただし勝率は48.9%と市場平均の51.4%を下回り、中央値は0.0%です。一部の大きく上昇した銘柄が平均を押し上げており、2020年を除くと+1.648%まで下がります。平均だけを見て買い場と判断するのは危険です。

Q. 急落して下げた株と、ゆっくり下げ続けた株で違いはありますか?

A. -50%以下の帯では差がありました。52週高値を付けてから60日以内に半値以下になった銘柄の20日後は+7.329%、151日以上かけて下げた銘柄は+1.991%です。ただし急落型の21.2%は2020年の発生で、その年を除くと+5.891%になります。

Q. 「地合い差引」とは何ですか?

A. 同じ日に買った全銘柄の平均リターンを引いた、超過分のことです。相場全体の動きを取り除き、銘柄の状態そのものに差があるかを確かめるために使いました。

Q. この結果は毎年同じですか?

A. 違います。-50%以下の帯は13年中9年で市場平均を上回りましたが、2017年、2021年、2023年、2026年は下回りました。差が最も大きいのは2020年の+6.524ポイントで、他の年とは桁が違います。

Q. 52週高値に近い銘柄(高値から10%以内)はどうでしたか?

A. 20日後は+0.930%・勝率52.9%で、市場平均とほぼ同じ平均、勝率は全帯で最も高い結果でした。地合い差引後は+0.102%と、-10〜-20%〜-30〜-50%の各帯より良好です。一方、13年中で市場平均を上回ったのは3年にとどまります。

8.まとめ

11,931,052件を数え直してわかったことを整理します。

  • 「深く下げた株ほど戻る」は成り立たない。20日後の平均は-10〜-20%で+0.822%、-20〜-30%で+0.793%と、市場平均(+0.967%)を下回りました
  • 勝率は下落が深いほど低下。20日後の勝率は52.9%から48.9%へ下がります
  • 地合いを差し引くと0〜-10%から-30〜-50%へ一貫して弱くなる(+0.102%から-0.198%)
  • -50%以下だけは平均が高い(20日後+2.268%)。ただし中央値は0.0%、勝率は48.9%で、一部の大きな上昇が平均を作っています
  • 頑健性:上位3日への集中は0.5%と小さい一方、時期の偏りは大きく、2020年を除くと-50%以下は+1.648%に下がります。急落型は+5.891%です

今回の数字が示したのは、「下がったから戻る」は、下落率だけでは根拠にならないということでした。深く下げた銘柄は、割安になったのではなく、下げ続ける理由を抱えたまま安値に居ることが多い。例外の-50%以下も、安全な買い場ではなく、当たり外れの大きい帯でした。

高値からの下落率を見るなら、下がった幅より先に、下がった期間と相場全体の地合いを確かめてみてください。

この記事を読んだ方におすすめ

西村剛が今買うべき最有望株を限定公開中

  • 3年連続で売買シグナルコンテスト優勝の実力
  • 日本証券アナリスト協会検定会員が厳選
  • メールアドレスだけで今すぐ確認できる
最有望株を無料で確認する

※ メールアドレスのみで登録できます。いつでも配信停止可能です。

<追伸>
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
↓↓↓↓↓

毎朝届く投資情報メルマガ「西村剛の勝ち株の流儀」(無料)はこちらから登録できます。
すでに22,000名が登録中。今なら10大特典を無料プレゼント中!