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「節分天井、彼岸底」。2月の節分で株価は天井をつけ、3月の彼岸にかけて下がって底を打つ――相場の格言として、毎年この時期になると耳にします。

この格言を、東証の全銘柄の値動きで確かめました。2014年から2026年までの13年分、節分から彼岸までの区間だけでも51,303件(銘柄×年)を集計しています。

結論を先に述べます。格言を支持する材料は、思ったより弱いものでした。1〜3月の最高値が節分の前後5営業日に入ったのは13年中1年、節分以降の最安値が彼岸の前後5営業日に入ったのは3年です。

節分から彼岸までの平均リターンは+0.003%で、同じ長さの全期間の平均(+1.438%)を下回りました。見かけ上は格言どおりです。ところが2020年を除くと+2.364%となり、市場平均を上回ります。この下げは、コロナ禍の1年が作っていました。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

集計条件をすべて開示します。

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)、1年あたり平均3,946銘柄
  • 期間:2014年〜2026年の13年分。2026年は3月以降の20営業日後まで確認できています
  • 節分の基準日:2月3日以前で最後の営業日の終値。彼岸の基準日:3月21日以前で最後の営業日の終値
  • 区間リターン:「節分前の上り」は節分の20営業日前から節分まで、「節分→彼岸」は節分から彼岸まで(約30営業日)、そのほか節分と彼岸それぞれの5営業日後・20営業日後
  • 比較対象(市場平均):同じ年に始まる、同じ長さの全期間(毎営業日スタート)の平均
  • 頑健性の確認:年別の結果、特定の年を除いた再集計、年への集中度、そして等ウェイト指数での天井・底の位置

この検証では、ある日に一斉に起きる現象を「年に1回」の観測としてまとめています。同じ年の銘柄は同じ相場環境にあるため、独立した観測は13件しかないことに注意が必要です。

2.「節分天井」は本当か

節分・彼岸まわりの区間リターンと市場平均

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区間件数平均中央値勝率市場平均市場の勝率差
節分前の上り(20営業日前→節分)51,507+0.829%+0.056%50.1%+0.923%51.2%-0.094%
節分→彼岸(約30営業日)51,303+0.003%+0.116%50.3%+1.438%51.5%-1.435%
節分の5営業日後51,420-0.049%+0.335%53.3%+0.240%49.8%-0.289%
節分の20営業日後51,286+0.161%-0.154%48.3%+0.922%51.2%-0.761%
彼岸の5営業日後51,409+1.156%+0.048%50.1%+0.241%49.8%+0.915%
彼岸の20営業日後51,085+0.777%-0.714%45.1%+0.925%51.2%-0.148%

まず節分に向けての上りです。節分の20営業日前から節分までの平均は+0.829%・勝率50.1%で、市場平均の+0.923%とほぼ同じ水準でした。節分に向けて特別に上がっているわけではありません。

では節分の後はどうでしょうか。節分の5営業日後の平均は-0.049%と、ほぼ横ばいです。市場平均(+0.240%)には届いていませんが、中央値は+0.335%・勝率は53.3%で、市場の勝率49.8%を上回っています。

20営業日後は平均+0.161%で、市場平均の+0.922%を下回りました。ただし下落したわけではなく、上昇が鈍かったというのが実態です。

天井かどうかは、指数の形でも確認できます。全銘柄の等ウェイト指数で、1月初めから3月末までの最高値をつけた日を調べました。節分との差が5営業日以内だったのは13年中1年だけです。節分より前だった年が4年、節分より後だった年が8年で、最高値は節分の後に来る年のほうが多くなっています。

節分の終値は、1〜3月の最高値より平均5.637%低い位置にありました。節分は、天井というより「天井の手前か、天井を過ぎたあと」の位置だったと言えます。

3.「彼岸底」は本当か

次に彼岸です。彼岸の基準日から5営業日後の平均は+1.156%で、市場平均+0.241%との差は+0.915%と、6区間のなかで唯一はっきり上回りました。「彼岸で底を打って戻る」という格言に沿った形です。

ところが20営業日後に延ばすと、様子が変わります。平均は+0.777%、中央値は-0.714%、勝率は45.1%で、市場の勝率51.2%を下回りました。戻りは長くは続かなかったことになります。

底の位置も確認しました。節分以降の最安値をつけた日と彼岸の基準日の差が5営業日以内だったのは、13年中3年だけです。彼岸より前にすでに底を打っていた年が8年、彼岸より後に底が来た年は2年でした。

彼岸の終値は、節分以降の最安値より平均6.945%高い位置にありました。底そのものというより、底を打ったあとの戻り途中で彼岸を迎える年が多かったということです。

4.節分→彼岸の下げは、2020年が作っていた

6区間のなかで、格言に最も近い形をしていたのが「節分→彼岸」でした。平均は+0.003%・中央値+0.116%・勝率50.3%。市場平均の+1.438%・勝率51.5%と比べると、平均で-1.435%の差があります。

年別に見た節分前の上りと節分→彼岸のリターン

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年別に見ると、様子が違って見えてきます。13年のうち平均がプラスだった年は9年、マイナスだった年は4年。下がったのは少数派です。そのなかで突出していたのが2020年の-28.201%でした。

2020年は、節分の後に新型コロナの感染拡大で世界の株価が急落した年です。節分→彼岸の区間が、ちょうどその急落の全期間を含んでいました。これは季節性ではなく、その年に起きた出来事です。

この1年を除いて集計し直すと、節分→彼岸の平均は+2.364%となり、市場平均との差も+0.920%に変わります。市場平均を上回る側に転じるのです。

年を除いて集計し直した区間別の平均リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

図のとおり、「2020年を除く」を見ると、節分→彼岸だけでなく、彼岸の5営業日後(+1.156%から+0.069%へ)も大きく縮みます。「彼岸で底を打って戻る」ように見えた部分も、2020年3月の急反発に支えられていたことがわかります。

5.頑健性の確認:年への集中と、除いたときの結果

特定の年に結果が引っ張られていないかを確認します。各区間の平均リターンへの寄与を年ごとに合計し、上位3年が全体の何割を占めるかを集計しました(発生が年に1回ずつなので、集中は日ではなく年で見ています)。

  • 節分→彼岸:2020年、2015年、2021年の3年で57.9%
  • 彼岸の5営業日後:2020年、2014年、2023年の3年で63.5%
  • 彼岸の20営業日後:2020年、2017年、2025年の3年で62.3%
  • 節分前の上り:2019年、2022年、2023年の3年で36.4%

13年を均等に並べれば上位3年は全体の約2割強になるはずですが、節分→彼岸では57.9%、彼岸の5営業日後では63.5%と、特定の年に偏っていました。

上位の年を除いた再集計も示します。節分→彼岸は、最も下げた3年(2020年、2018年、2014年)を除くと+3.735%、最も上げた3年(2015年、2021年、2024年)を除くと-2.222%です。除く年によって結果が大きく入れ替わります。彼岸の5営業日後も、最も上げた3年を除くと-0.370%まで下がりました。

年別の表も示します。節分→彼岸が市場平均を上回った年は13年中7年で、ほぼ半々です。

年節分の基準日彼岸の基準日節分前の上り(A)節分→彼岸(B)同年の市場平均差
2014年2014年2月3日2014年3月20日-2.879%-3.982%+2.358%-6.339%
2015年2015年2月3日2015年3月20日-0.852%+9.006%+0.283%+8.723%
2016年2016年2月3日2016年3月18日-5.481%-0.641%+2.697%-3.338%
2017年2017年2月3日2017年3月21日+0.636%+5.577%+3.949%+1.628%
2018年2018年2月2日2018年3月20日+3.700%-5.931%-2.148%-3.783%
2019年2019年2月1日2019年3月20日+5.881%+4.492%+1.912%+2.579%
2020年2020年2月3日2020年3月19日-2.946%-28.201%+1.365%-29.566%
2021年2021年2月3日2021年3月19日+4.739%+7.546%-0.000%+7.547%
2022年2022年2月3日2022年3月18日-5.195%+1.107%+0.718%+0.390%
2023年2023年2月3日2023年3月20日+4.989%+0.284%+2.230%-1.946%
2024年2024年2月2日2024年3月21日+3.470%+5.685%+0.739%+4.946%
2025年2025年2月3日2025年3月21日-0.219%+4.544%+3.460%+1.085%
2026年2026年2月3日2026年3月19日+3.697%+0.120%+1.218%-1.099%

節分前の上りも同じで、プラスの年が7年、マイナスの年が6年と、年によって逆の結果になります。毎年同じ形で現れる季節性ではなく、その年の相場環境が結果を決めていたと見るのが自然です。

6.この検証の限界

結果を使う前に、次の点をご承知おきください。

  • 独立した観測は13年分だけです。件数は各区間で約5万件ありますが、同じ年の銘柄は同じ相場環境で動きます。年を超えた安定性の根拠にはなりません
  • 基準日の置き方で結果が変わります。節分を2月3日、彼岸を3月21日と置きましたが、数営業日ずれるだけで区間の平均は動きます
  • 売買コストを含みません。手数料やスプレッド、実際に約定できるかは考慮していません
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄は集計に入っていません。下げ続けて上場廃止に至った銘柄が抜けている分、実際より良い数字になっている可能性があります
  • 期間は13年に限られます。コロナ禍のような特殊な年が1つ入るだけで、平均は大きく動きました

7.よくある質問(FAQ)

Q. 節分と彼岸の基準日はどう決めましたか?

A. 節分は2月3日、彼岸は3月21日ごろ(春分の日の前後)を目安に、それぞれその日以前で最後の営業日の終値を基準にしました。たとえば2020年2月3日と2020年3月19日のように、年ごとに営業日へ読み替えています。節分から彼岸までは平均で約30.8営業日でした。

Q. 「節分天井」は本当ですか?

A. 全銘柄の平均で見る限り、はっきりとは確認できませんでした。1〜3月の最高値をつけた日が節分の前後5営業日に入ったのは13年中1年だけで、節分より前だった年が4年、後だった年が8年です。節分の20営業日後の平均は+0.161%で、市場平均+0.922%より低めでしたが、下落ではありません。

Q. 「彼岸底」は本当ですか?

A. こちらも半分以下でした。節分以降の最安値が彼岸の前後5営業日に入ったのは13年中3年で、彼岸より前に底を打っていた年が8年ありました。彼岸の5営業日後は+1.156%と市場平均を上回りましたが、20営業日後は+0.777%・勝率45.1%で、市場平均の勝率51.2%を下回っています。

Q. 節分から彼岸にかけて下がるのは、なぜ平均が市場より低くなるのですか?

A. 13年分をまとめると、2020年の影響が大きいためです。2020年は節分から彼岸の間に新型コロナの感染拡大で市場が急落し、全銘柄の平均は-28.201%になりました。この1年を除くと、節分→彼岸の平均は+2.364%です。

Q. 2020年を除くと結果はどう変わりますか?

A. 節分→彼岸は+0.003%から+2.364%になり、市場平均との差も-1.435%から+0.920%に変わります。彼岸の5営業日後も+1.156%から+0.069%となり、反発の大きさは小さくなりました。格言を裏づけるように見えた部分の多くが、特定の1年に支えられていたことになります。

Q. 2月に売って3月に買い戻す、といった戦略は使えますか?

A. この検証だけでは根拠になりません。節分→彼岸で下がった年は13年中4年、上がった年は9年で、12年(2020年を除く)に絞ると下がったのは3年です。年によってばらつきが大きく、毎年同じ形になる保証はありません。投資判断はご自身でお願いします。

Q. 13年分のデータで十分ですか?

A. 件数は1区間あたり約5万件ありますが、独立した観測は年の数、つまり13年分しかありません。同じ年の銘柄は同じ相場環境で動くため、件数が多くても年を超えた安定性は保証されません。結果は「傾向の目安」としてご覧ください。

8.まとめ

「節分天井・彼岸底」を、13年・51,303件(節分→彼岸の区間)で検証してわかったことを整理します。

  • 天井は節分に来ていませんでした。1〜3月の最高値が節分の前後5営業日だったのは13年中1年で、節分より後に来た年が8年ありました
  • 底は彼岸に来ていませんでした。節分以降の最安値が彼岸の前後5営業日だったのは3年で、彼岸より前に底を打っていた年が8年でした
  • 節分→彼岸の平均は+0.003%と市場平均を下回りましたが、2020年を除くと+2.364%で上回ります。この区間の下げは、コロナ禍の1年が作っていました
  • 彼岸の5営業日後の反発(+1.156%)も、2020年を除くと+0.069%に縮みます。20営業日後の勝率は45.1%で、市場平均を下回りました
  • 独立した観測は13年分だけで、年によって結果は入れ替わります。格言として語り継がれる季節性は、少なくとも全銘柄の平均では、安定した形では確認できませんでした

相場の格言は、覚えやすい形に整えられているぶん、印象に残った年の記憶で補強されがちです。節分で天井をつけた年、彼岸で底を打った年は確かにあります。ただそれが13年のうち何年なのかを数えると、感覚とは違う姿が見えてきました。

格言を使うなら、「今年はどちらの側の年なのか」を相場環境で確認することが先です。日付だけで売買を決めるのではなく、数字で確かめたうえで、ご自身の判断で活用してください。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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