「NISAを使うと、個別株には投資できないのでは」と誤解している人が少なくありません。
結論から言うと、NISAの成長投資枠を使えば、上場している個別株に投資することができます。値上がり益や配当金が非課税になるため、同じ取引を課税口座で行うよりも、手取りのリターンを大きくできる可能性があります。
この記事では、株式投資でNISAを使うメリットから、成長投資枠で個別株を買う際の注意点、課税口座との使い分け方、リスク管理の考え方までを整理し、非課税枠を最大限活かすための実践的なステップを解説します。
1.NISAとは何か
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託などへの投資で得た利益を非課税にできる制度です。2024年からは制度の内容が大きく見直され、新しいNISA(以下、新NISA)としてスタートしています。
本記事で紹介する年間投資枠・生涯投資枠などの数値は、2024年に開始した新NISA制度に基づく情報です。税制は将来的に見直される可能性があるため、最新の内容は金融庁や口座を開設する証券会社の公式情報で必ず確認してください。
1-1.新NISA制度の全体像
新NISAでは、非課税で保有できる期間が無期限化され、制度自体も恒久的に利用できるようになりました。旧NISAにあった「非課税期間は5年間」「制度の利用は◯年まで」といった期限を気にする必要がなくなり、長期的な資産形成に使いやすい制度になっています。
新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠で構成されており、この2つは同じ口座内で併用することができます。
1-2.つみたて投資枠と成長投資枠の違い
つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資に適していると金融庁が定めた基準を満たす投資信託などが対象で、個別株を購入することはできません。一方の成長投資枠は、上場株式(個別株)や投資信託、REITなど幅広い商品を購入できる枠で、株式投資でNISAの非課税メリットを活かしたい場合は、この成長投資枠を使うことになります。
両者の違いを整理すると、以下の通りです。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 生涯非課税保有限度額 | 1800万円(枠全体で共有) | うち1200万円まで |
| 対象商品 | 金融庁の基準を満たす投資信託等 | 上場株式・投資信託・REIT等 |
| 個別株投資 | 不可 | 可能 |
| 対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
本記事では、主にこの成長投資枠を使って個別株に投資する場合を中心に解説していきます。
2.株式投資でNISAを使うメリット
株式投資でNISA(成長投資枠)を使う最大のメリットは、通常であれば約20%かかる税金がゼロになることです。具体的には、次のような利益が非課税になります。
2-1.値上がり益(譲渡益)が非課税になる
課税口座で株式を売却して利益が出た場合、原則として所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて20.315%の税金がかかります。例えば30万円の値上がり益が出た場合、約6万円が税金として引かれ、手取りは約24万円になります。
これがNISAの成長投資枠であれば、同じ30万円の利益がそのまま手元に残ります。非課税というメリットは、利益が大きくなるほど効果も大きくなります。
2-2.配当金も非課税で受け取れる
NISA口座で保有する個別株の配当金も非課税の対象です。ただし注意点があり、証券会社への配当金の受け取り方法を「株式数比例配分方式」に設定していないと、NISA口座で保有していても配当金が課税されてしまいます。証券口座を開設したら、配当金受取方法の設定を必ず確認してください。
2-3.非課税分を再投資に回せる
税金として引かれるはずだった金額を、そのまま再投資に回せる点も見逃せません。長期的に運用を続けた場合、非課税分を再投資できることは複利効果にプラスに働きます。もちろん株価は上昇し続けるとは限らず、非課税はあくまで税負担がなくなるという意味であり、投資成果そのものを保証するものではありません。値下がりのリスクは課税口座と同じようにNISA口座でも存在します。
3.NISA成長投資枠で個別株を買う際の注意点
成長投資枠には、年間投資枠と生涯投資枠という2つの上限が設けられています。この仕組みを理解しないまま個別株を買い進めると、意図せず非課税枠を使い切ってしまうことがあります。
3-1.年間投資枠の上限
成長投資枠で投資できる金額は、年間240万円までです。つみたて投資枠(年間120万円)と併用した場合、1年間に投資できる上限は合計で360万円になります。
年内であれば複数回に分けて買い付けても構いませんが、その年に使わなかった枠を翌年に繰り越すことはできません。年末が近づいたら、その年の枠をどれだけ使ったか証券会社の画面で確認しておくとよいでしょう。
3-2.生涯投資枠(非課税保有限度額)の上限
新NISAには、一生涯で非課税保有できる金額の上限があり、合計1800万円です。このうち、成長投資枠で使える金額は最大1200万円までと決められています(残りはつみたて投資枠での利用分にあたります)。
この上限は、値上がり後の時価ではなく、購入したときの金額(取得価額)を基準に計算される点も押さえておいてください。保有中に株価が値上がりしても、それだけで非課税枠を余分に消費するわけではありません。
3-3.売却すると枠は翌年に復活する
保有している個別株を売却すると、その取得価額分の非課税枠は翌年以降に復活し、再び非課税で投資に使えるようになります。ただし、枠が復活するのは売却した翌年からで、同じ年のうちに使い直すことはできません。短期間で売買を繰り返す投資スタイルとは、NISAはあまり相性がよくない点に注意してください。
4.NISAと課税口座の使い分け方
個別株投資を続けていくと、いずれ非課税枠だけでは投資額が足りなくなる場面が出てきます。NISA(非課税)と課税口座は、それぞれの特徴を踏まえて使い分けることが大切です。
4-1.基本はNISA口座を優先する
値上がり益・配当金がともに非課税になるメリットは大きいため、購入したい個別株がある場合は、まずNISA成長投資枠の残り枠を優先的に使うのが基本的な考え方です。同じ銘柄を同じタイミングで買うのであれば、課税口座よりNISA口座を使ったほうが、税引き後のリターンで有利になります。
4-2.非課税枠を使い切った後の考え方
年間360万円、あるいは生涯1800万円の非課税枠を使い切った場合、それ以上の投資は課税口座(特定口座・一般口座)で行うことになります。課税口座では「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでおけば、証券会社が税金の計算・納付を代行してくれるため、原則として確定申告の手間がかかりません。
4-3.NISA口座と課税口座、どちらを優先するかの考え方の一例
絶対的な正解があるわけではありませんが、一般的には長期保有を前提とする銘柄をNISA口座に、短期的な売買が中心の取引を課税口座に振り分ける考え方があります。NISA口座は頻繁な売買には向いていないためです。あくまで一例であり、投資の目的や資金計画に応じて判断してください。
NISA口座と課税口座の主な違いをまとめると、次のようになります。
| 比較項目 | NISA口座 | 課税口座(特定口座) |
|---|---|---|
| 値上がり益への課税 | 非課税 | 約20.315%課税 |
| 配当金への課税 | 非課税(受取方法の設定が必要) | 約20.315%課税 |
| 損益通算 | できない | できる |
| 損失の繰越控除 | できない | 確定申告で最大3年 |
| 年間の投資可能額 | 上限あり(最大360万円) | 実質的に上限なし |
5.NISAで個別株投資する際のリスク管理
NISAは税制上のメリットがある制度であって、投資そのもののリスクをなくす制度ではありません。値上がり益が非課税になる一方で、株価が下落すれば当然に含み損を抱えます。
5-1.分散投資の重要性
個別株投資では、銘柄や業種を分散させることがリスク管理の基本です。1つの業種だけに偏って投資すると、その業種特有の悪材料が出た際にまとめてダメージを受けてしまいます。NISA口座であっても、複数の銘柄・複数の業種に分けて投資することを心がけてください。
5-2.集中投資を避ける
NISAの生涯投資枠には上限があるため、限られた枠を値動きの荒い1銘柄に集中させてしまうと、大きな含み損を抱えたときの回復手段が限られます。非課税枠は貴重な資源だからこそ、複数銘柄・複数タイミングに分けて投資することが望ましいといえます。
5-3.NISA口座は損益通算・繰越控除ができない点への注意
NISA口座で損失が出た場合、課税口座の利益と相殺する損益通算はできず、損失を翌年以降に繰り越す繰越控除も使えません。課税口座であれば認められているこの2つの制度が、NISA口座では最初から対象外になっている点は必ず理解しておく必要があります。
そのため、含み損を抱えた銘柄を「税務上のメリットを得るために売る」という発想は、NISA口座では成り立ちません。値下がりリスクのある個別株には、生活防衛資金を削らない範囲の余裕資金で向き合うことが大前提です。
6.新NISAを最大限活用する実践的なステップ
ここまでの内容を踏まえ、新NISAの非課税枠を無理なく活かすための実践的なステップをまとめます。
- ステップ1:年間投資枠と生涯投資枠の残りを確認する――証券会社の口座画面で、現在の非課税枠の使用状況をチェックします
- ステップ2:長期保有を前提とする銘柄から成長投資枠で買う――値上がり益・配当の非課税メリットを最も活かせる買い方です
- ステップ3:配当金の受取方法を株式数比例配分方式に設定する――設定を誤ると配当が非課税にならないため、証券会社の管理画面で確認します
- ステップ4:1銘柄・1業種への集中を避け、複数回に分けて投資する――限られた非課税枠を計画的に分散させます
- ステップ5:年末が近づいたら、その年の未使用枠を確認する――使わなかった年間枠は翌年に繰り越せません
- ステップ6:非課税枠を使い切ったら課税口座も併用する――特定口座(源泉徴収あり)を選べば確定申告の手間も抑えられます
特にステップ4とステップ5は見落としがちなポイントです。非課税枠は使い方次第で効果が大きく変わる限られた資源です。無計画に1銘柄へ集中させてしまう前に、年間・生涯それぞれの上限と残り枠を意識する習慣をつけておくと、新NISAのメリットを最大限に活かせます。
7.よくある質問(FAQ)
Q. NISA口座で個別株は買えますか。
A. 買えます。成長投資枠を使えば上場株式(個別株)を購入でき、値上がり益や配当金が非課税になります。ただし、つみたて投資枠では個別株を購入できず、金融庁が定めた基準を満たす投資信託などに限られます。
Q. NISAの年間投資枠と生涯投資枠はいくらですか。
A. 年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、併用すると最大360万円です。生涯投資枠は合計1800万円で、このうち成長投資枠で使えるのは1200万円までとなっています。
Q. NISA口座で損失が出た場合、税金の計算上どうなりますか。
A. NISA口座内の損失は、課税口座で得た利益と損益通算することができず、損失を翌年以降に繰り越す繰越控除も使えません。含み損を抱えた銘柄を売却しても、税務上のメリットは基本的にない点に注意が必要です。
Q. 新NISAの非課税枠を使い切ったら、それ以上は個別株に投資できませんか。
A. 生涯投資枠を使い切っても、保有商品を売却すればその分の非課税枠が翌年以降に復活し、再び非課税で投資できます。非課税枠を超えて投資したい場合は、特定口座など課税口座を併用する方法もあります。
8.まとめ――非課税枠を賢く使うために
- NISAの成長投資枠を使えば、個別株の値上がり益・配当金を非課税にできる
- 年間投資枠は最大360万円(つみたて120万円+成長240万円)、生涯投資枠は1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)
- 非課税枠を使い切った後は、特定口座など課税口座を併用して投資を続けられる
- NISA口座の損失は損益通算・繰越控除ができないため、分散投資でリスクを抑えることが重要
- 制度の数値は2024年開始の新NISAに基づくものであり、将来の税制改正で内容が変わる可能性がある
NISAは、個別株投資の値上がり益や配当金を非課税にできる、個人投資家にとってメリットの大きい制度です。しかし非課税だからといって値下がりのリスクがなくなるわけではなく、非課税というメリットと、価格変動のリスクは別のものとして捉える必要があります。
まずは自分の年間投資枠・生涯投資枠がどれだけ残っているかを確認し、分散を意識しながら、無理のない範囲で成長投資枠を使った個別株投資を検討してみてください。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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