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「窓は必ず埋まる」――株式投資の教科書には、ほぼ必ず書かれている格言です。しかし、本当でしょうか?特に5%、10%といった大きな窓も、本当に埋まるのでしょうか?そして、埋まるまで平均何日かかるのでしょうか?

本記事では、東証全銘柄・約110万件のギャップ事例(2020〜2025年)を集計し、ギャップサイズ別の窓埋め確率と所要日数を完全データ化しました。ギャップアップ(窓上げ)とギャップダウン(窓下げ)それぞれを、0.5〜1%/1〜2%/2〜3%/3〜5%/5〜10%/10%以上の6段階に分けて分析しています。

結論を先にお伝えします。0.5〜1%の小さな窓は60営業日以内に約96%(GU)/96%(GD)が埋まるのに対し、10%以上の巨大ギャップは60営業日経っても60%(GU)/56%(GD)しか埋まらない――つまり約4割は3ヶ月経っても埋まらないのです。「窓は必ず埋まる」というセオリーは、小さな窓には正確で、大きな窓には大きく誤りという、データが示す厳然たる事実をお見せします。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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検証対象:東証全銘柄(プライム・スタンダード・グロース)約3,800社
検証期間:2020年1月〜2025年12月(約5〜6年間)
サンプル数:ギャップアップ約60万件、ギャップダウン約51万件

【ギャップの定義】

  • ギャップアップ(GU):当日始値 > 前日高値(前日ローソク足の高値より上に窓を開けて寄り付き)
  • ギャップダウン(GD):当日始値 < 前日安値(前日ローソク足の安値より下に窓を開けて寄り付き)
  • ギャップサイズは「前日終値からの乖離率」ではなく、「前日高値(安値)からの乖離率」で計算

【ギャップサイズの帯】

  • 0.5〜1%/1〜2%/2〜3%/3〜5%/5〜10%/10%以上の6段階
  • 0.5%未満は誤差レベルのため除外

【窓埋めの判定】

  • ギャップアップ埋め:その後どこかで「当日安値 ≦ 前日高値」になった日=窓の下端まで戻った日
  • ギャップダウン埋め:その後どこかで「当日高値 ≧ 前日安値」になった日=窓の上端まで戻った日
  • 追跡期間:当日含む最大60営業日

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「即日(その日のうち)」「3日以内」「5日以内」「10日以内」「20日以内」「60日以内」の累積埋め率を集計しています。また、埋まったケースのみで「埋まるまでの日数の中央値」も算出しました。

2.検証結果

(1) ギャップサイズ別 累積窓埋め率

ギャップ後の窓埋め累積確率

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

このグラフは、横軸に経過日数(1/3/5/10/20/60営業日)、縦軸に累積窓埋め率を取り、ギャップサイズ別に折れ線で示したものです。実線がギャップアップ(GU)、点線がギャップダウン(GD)。色が濃いほど大きなギャップを意味します。一目で分かるのは、ギャップが大きくなるほど、線が下に位置すること。大きい窓ほど埋まりにくいというデータが視覚的に確認できます。

(2) 60営業日以内の窓埋め率(最終確率)

60営業日以内 窓埋め率

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

60営業日(約3ヶ月)以内に窓が埋まる確率を、ギャップサイズ別に比較したグラフです。0.5〜1%の小さなギャップは95%以上が埋まるのに対し、10%以上の巨大ギャップは60%(GU)/56%(GD)しか埋まらない――つまり3〜4割は3ヶ月経っても残ったままです。「窓は必ず埋まる」という格言は、明らかに過信であることが分かります。

(3) 窓が埋まるまでの中央値日数

窓埋め中央値日数

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

埋まったケースのみで、埋まるまでの所要日数の中央値を示したグラフです。1%程度の小窓は中央値1日(即日埋まる)、5〜10%窓は中央値3〜4日10%以上窓は中央値5〜6日と段階的に増加します。「埋まる窓」でも、サイズが大きいほど待ち時間が長くなります。

(4) ギャップアップ 完全データ表

ギャップ帯件数即日3日5日10日20日60日中央値
0.5〜1%280,45065.3%80.6%85.3%89.7%92.7%95.5%1.0日
1〜2%197,13351.0%70.5%77.4%83.8%88.5%92.6%1.0日
2〜3%53,51439.1%60.4%68.7%76.7%82.5%88.7%2日
3〜5%33,11031.4%52.2%60.6%69.6%76.4%83.8%2日
5〜10%19,39922.7%42.5%49.8%58.6%65.8%75.5%3日
10%以上12,06011.9%25.8%32.3%40.4%48.0%60.1%5.0日

(5) ギャップダウン 完全データ表

ギャップ帯件数即日3日5日10日20日60日中央値
0.5〜1%218,57461.2%79.5%84.7%89.8%93.2%96.5%1日
1〜2%170,07245.4%68.7%75.9%83.3%88.8%94.2%2.0日
2〜3%53,14532.0%56.7%65.0%74.4%82.2%90.5%2日
3〜5%36,68922.7%47.6%55.0%65.2%74.0%85.5%3日
5〜10%21,03713.9%37.4%45.4%56.6%64.1%77.2%4日
10%以上5,5425.8%19.3%27.2%37.1%43.7%56.4%6.0日

3.なぜ大きな窓は埋まりにくいのか

「窓は必ず埋まる」という格言は、テクニカル分析の基本ルールとして広く信じられています。確かに小さな窓(0.5〜2%程度)は、データ上も95%以上が即日〜数日で埋まります。これは、ザラ場中の小さな価格変動の中で自然に上下動するため、機械的に埋まるからです。

しかし、5%以上の大きな窓が開く時――特に10%以上の巨大ギャップが発生する時――は、必ず強い材料が背景にあります。具体的には:

  • 業績修正・決算サプライズ:「上方修正」「黒字転換」などのポジティブ材料、または「下方修正」「赤字転落」などのネガティブ材料
  • M&A・TOB・業務提携:プレミアム価格でのTOB発表、大手との業務提携
  • 新製品・新技術・受注獲得:AI関連、防衛関連、半導体関連での大型受注
  • 不祥事・行政処分・訴訟:粉飾決算、データ改ざん、訴訟リスク
  • 外部環境急変:地政学リスク、業界規制、新興国政変

これらの強い材料は株価の「適正水準」自体を変えるため、窓が埋まることなく新水準で安定してしまうケースが多発します。「窓は必ず埋まる」と信じて、ギャップ反対側に逆張りした投資家は、3ヶ月待っても損切りラインを越えて戻ってこない状況に陥ります。

4.実践活用――サイズ別の戦略マップ

(1) 小窓(0.5〜2%):機械的な逆張りが有効

0.5〜2%の小窓は95%以上が10営業日以内に埋まります。これは「相場の自然な揺らぎ」の範囲内であり、特定材料が背景にないことが多い。実践戦略:

  • ギャップアップ寄り付き売り→数日後の埋め値で買い戻し(ショート狙い)
  • ギャップダウン寄り付き買い→数日後の埋め値で利確(ロング狙い)
  • ストップ幅は窓サイズの1.5倍程度、利確は窓埋め水準

(2) 中窓(2〜5%):材料を確認してから判断

2〜5%の中窓は60日以内に約85〜90%が埋まりますが、材料次第で「埋まらない10〜15%」に入るリスクがあります。実践戦略:

  • まず材料を確認:決算サプライズ、業務提携、不祥事など強い材料があれば逆張り回避
  • 材料が不明確(市場全体の地合いだけ)なら、5〜10日待って埋め値狙いの逆張り
  • 逆張りエントリー時は分散必須、1銘柄あたり3%以内に

(3) 大窓(5%以上):順張りor見送りが原則

5%以上の大窓は必ず強い材料が背景にあります。10%以上のギャップは60日経っても40%は埋まりません。実践戦略:

  • 逆張りは避ける――「窓は必ず埋まる」を信じて逆張りすると塩漬けリスク大
  • 順張りも厳格化:寄り付き後の値動きを5〜15分観察、押し目買いor高値追い
  • 埋め狙いをするなら材料の「賞味期限」を見極めてからにする

(4) 巨大ギャップ(10%以上):基本は見送り

10%以上のギャップは、データ上40%が3ヶ月埋まりません。新水準への完全な切り替えが起きている可能性が高く、テクニカル分析の通常ルールが効きません。実践戦略:

  • 原則として手出ししない――新水準で安定する1〜2週間は観察期間
  • 触るなら順張りのみ、押し目買いを徹底
  • 「いつか埋まるはず」の逆張りエントリーは絶対回避

5.「実線が点線より高い」――ギャップアップの方が埋まりやすい

グラフをよく見ると、ほぼすべてのギャップサイズでギャップアップ(実線)の方がギャップダウン(点線)より埋め率が高い傾向が見えます。これは何を意味するのでしょうか?

理由は「市場の非対称性」です:

  • 上昇材料は「利確売り」を呼ぶ:上方修正後の急騰は、既存保有者の利確売り+空売り参戦で押し戻されやすい
  • 下落材料は「投げ売り」と「再評価」を生む:下方修正後の急落は、投げ売りで深く沈み、その後の「再評価」が新水準を作る
  • 信用買い残vs信用売り残の比率:日本株は信用買い残が圧倒的に多く、上昇局面で売り圧力が出やすい

結果として、ギャップアップは比較的埋まりやすく、ギャップダウンは新水準で安定しやすい。「ギャップダウンの逆張りはリスクが大きい」というデータの示唆を、実践では重視すべきです。

6.注意点とリスク

  • 2020年以降の検証期間:コロナショックを含む特殊な期間。長期トレンドが強い局面では埋め率が下がる傾向
  • 個別銘柄での再現性は低い:データは「平均」の話。個別銘柄では極端な結果が出ることもしばしば
  • 追跡期間60日の制約:60日以降に埋まるケースも実在。本記事の「未埋め率」は60日基準
  • 立会日換算:日数は営業日(立会日)基準。週末・祝日は含みません
  • 調整株価ベース:株式分割・併合の調整済み価格を使用。配当落ちは未調整なので、配当落ち分の窓は一時的に開きます

7.よくある質問(FAQ)

Q. 窓(ギャップ)とは何ですか?

A. ローソク足チャートで、前日のローソク足と当日のローソク足の間に隙間(窓)ができることです。ギャップアップは前日高値より上に寄り付くこと、ギャップダウンは前日安値より下に寄り付くこと。日米株式市場の重要なテクニカルシグナルとされます。

Q. 「窓は必ず埋まる」は本当ですか?

A. 小さな窓(0.5〜2%)は95%以上が埋まるので、ほぼ正解です。しかし5%以上の大きな窓は埋まらない確率が急上昇し、10%以上では60日経っても40%は埋まりません。「サイズによって扱いを変える」のが正しい解釈です。

Q. ギャップアップとギャップダウンはどちらが埋まりやすいですか?

A. データ上、ギャップアップの方が埋まりやすい傾向があります。上昇材料は利確売りを呼ぶ一方、下落材料は新水準への再評価を生むためです。「ギャップダウンの逆張りはリスクが大きい」という示唆として活用すべきです。

Q. 10%以上の巨大ギャップの逆張りはやってもいいですか?

A. 原則やめるべきです。データ上40%は埋まらず、強い材料による新水準への完全切り替えが起きています。逆張りすると数ヶ月の塩漬けリスクが高いです。順張りか見送りが基本戦略です。

Q. 窓埋めまでの中央値日数を教えてください

A. ギャップアップは0.5〜1%が1日、1〜2%が1日、2〜3%が2日、3〜5%が2日、5〜10%が3日、10%以上が5日。ギャップダウンは1日/2日/2日/3日/4日/6日と、ギャップアップよりやや遅い傾向です。

Q. 窓埋めシグナルだけで儲かりますか?

A. 小窓(0.5〜2%)の逆張りは期待値プラスを取りやすいですが、1回あたりのリターンは1〜2%と小さく、回数を稼ぐ必要があります。資金管理と分散投資が必須です。中窓・大窓は材料確認が前提なので、シグナル単独では難しい。

Q. 窓開けを材料発表のヒントとして使えますか?

A. はい、有効です。0.5%程度の小ギャップが多発する銘柄は「材料なし」、5%以上の大ギャップが出る銘柄は「重要材料あり」のシグナルです。ニュース確認のトリガーとして使えます。

8.まとめ

「窓は必ず埋まる」という格言を、東証全銘柄1,100,725件のギャップ事例で検証しました。重要なポイントは4つ:

  1. 0.5〜2%の小窓はほぼ確実に埋まる(95%以上)。即日〜数日で機械的に埋まり、逆張りエントリーの期待値プラス。
  2. 5%以上の大窓は埋まらない確率が急上昇。10%以上は60日経っても40%は埋まらない。「強い材料」で新水準に切り替わったケースが多発。
  3. ギャップダウンはギャップアップより埋まりにくい。下落材料は新水準への再評価を生むため、ギャップダウン逆張りはリスク大。
  4. 窓埋め戦略は「サイズ別」に組み立てる。小窓は逆張り、中窓は材料確認、大窓は順張り、巨大ギャップは見送り――が王道。

「窓は必ず埋まる」を盲信していた投資家は、本記事のデータを見て戦略を見直す必要があります。窓のサイズ別に戦略を変える――それが、テクニカル分析を実践レベルに引き上げる第一歩です。

次にチャートで窓を見つけたら、まずサイズを確認してください。1%以下なら逆張り、5%以上なら順張りor見送り。サイズが戦略を決めます。教科書の「必ず埋まる」を疑う勇気が、勝つ投資家への入口です。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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