終値が前日と同じ「変わらず」で引けた銘柄は、翌日どちらに動くのでしょうか。上にも下にも動かなかった日の次は、動き出す前の静けさなのか、それとも関心を集めなくなった銘柄の停滞なのか、判断に迷う場面です。
これを数字で確かめました。2014年1月6日から2026年9月16日までの東証全銘柄12,435,780件(5,435銘柄・3,105営業日)のうち、前日比がちょうど0だった804,758件(全体の6.5%)を取り出し、その翌日以降を集計しています。
結論を先に述べます。「変わらず」で引けたこと自体には、将来を占う力はほとんどありませんでした。翌日終値の平均は+0.046%、5営業日後は+0.242%、20営業日後は+0.944%で、全体平均(+0.050%、+0.245%、+0.938%)との差は小数第3位の違いにとどまります。
一方で、翌日終値の勝率は41.3%と、全体平均の47.0%より5.7ポイントも低く出ます。この差の正体は、翌日も変わらずに終わる引き分けが18.3%と多いことでした。引き分けを除くと勝率は50.6%で、全体平均の50.2%と並びます。
1.検証ルール
- データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)
- 期間:2014年1月6日〜2026年9月16日(3,105営業日・5,435銘柄・12,435,780件)。20営業日後まで測れるよう、データ最終日の約1か月前で区切りました
- 「変わらず」の定義:その日の終値が前日終値とぴたり同じで、調整前の価格でも同じだった日。分割で偶然一致しただけの行は除外
- リターン:その日の終値で買ったとして、翌営業日の終値・5営業日後・20営業日後の終値で測った騰落率(%)
- 比較対象:同じ期間の全銘柄・全営業日の平均(全体平均)
- 勝率:リターンがプラスだった割合。ゼロ(翌日も同じ値)は勝ちにも負けにも数えません
2.「変わらず」の翌日以降は、市場平均とほぼ同じだった
まず前日比を7つの区分に分けます。「ちょうど0」の隣にわずかな下落・上昇を置いたのは、変わらずという状態が特別なのか、値動きが小さい日の特徴にすぎないのかを切り分けるためです。
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| 区分(構成比) | 件数 | 翌日終値 | 勝率 | 5営業日後 | 勝率 | 20営業日後 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| -3%以下(6.2%) | 771,276 | +0.072% | 49.3% | +0.592% | 51.0% | +1.838% | 51.2% |
| -3〜-0.5%(28.17%) | 3,503,245 | +0.063% | 48.9% | +0.259% | 51.2% | +0.914% | 51.7% |
| -0.5%〜0%未満(12.2%) | 1,516,910 | +0.037% | 48.1% | +0.184% | 51.2% | +0.720% | 52.4% |
| 変わらず(ちょうど0)(6.47%) | 804,758 | +0.046% | 41.3% | +0.242% | 47.4% | +0.944% | 50.1% |
| 0%超〜+0.5%(12.57%) | 1,563,476 | +0.061% | 47.6% | +0.231% | 51.0% | +0.823% | 52.7% |
| +0.5〜+3%(27.91%) | 3,471,435 | +0.031% | 45.9% | +0.192% | 48.7% | +0.860% | 50.7% |
| +3%以上(6.47%) | 804,680 | +0.055% | 43.4% | +0.225% | 45.9% | +1.148% | 47.6% |
| 全体平均(比較用) | 12,435,780 | +0.050% | 47.0% | +0.245% | 49.9% | +0.938% | 51.2% |
「変わらず」の翌日終値は+0.046%、5営業日後は+0.242%、20営業日後は+0.944%でした。全体平均との差は、順に-0.004%、-0.003%、+0.006%です。
わずかに下げた区分(-0.5%〜0%未満)は5営業日後+0.184%、わずかに上げた区分(0%超〜+0.5%)は+0.231%で、「変わらず」と大差ありません。
目立つのは両端です。-3%以下の大きな下落をした銘柄は20営業日後+1.838%と全体平均を大きく上回り、+3%以上の大幅上昇をした銘柄は翌日終値の勝率が43.4%まで下がります。これは「大きく動いた」ことの影響で、動かなかった日の次には見られません。
3.勝率41.3%の正体は「翌日も変わらず」の引き分け
表を見ると、「変わらず」の翌日終値の勝率は41.3%で、全体平均の47.0%や他の区分の48.1%前後より明らかに低くなっています。平均リターンは市場並みなのに、勝率だけが低いのは不自然です。そこで翌日終値を「上昇」「下落」「変わらず(引き分け)」に分けました。
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| 区分 | 翌日終値の勝率 | 負け率 | 引き分け(翌日も変わらず) | 引き分けを除いた勝率 |
|---|---|---|---|---|
| -0.5%〜0%未満 | 48.1% | 45.2% | 6.7% | 51.6% |
| 変わらず(ちょうど0) | 41.3% | 40.3% | 18.3% | 50.6% |
| 0%超〜+0.5% | 47.6% | 45.7% | 6.7% | 51.0% |
| 全体平均(比較用) | 47.0% | 46.6% | 6.5% | 50.2% |
「変わらず」の翌日が再び変わらずに終わる割合は18.3%。全体平均の6.5%の約2.8倍です。つまり5回に1回近くは、翌日も同じ値で引けています。
引き分けは勝ちにも負けにも数えないため、そのぶん勝率が下がります。負け率は40.3%と全体平均の46.6%よりむしろ低く、下がりやすいから勝率が低いのではありません。引き分けを除いた勝率は50.6%で、全体平均の50.2%とほぼ同じです。
4.株価水準・値幅で分けても、際立った差は出なかった
最初は株価水準です。株価が低い銘柄ほど「変わらず」になりやすいことが分かりました。市場全体で300円未満の銘柄が占める割合は10.2%ですが、「変わらず」では29.5%に達します。
そのため、価格帯をそろえずに全体平均と比べると誤解が生じます。300円未満の「変わらず」は5営業日後+0.348%と高く見えますが、同じ価格帯の市場平均は+0.409%あり、差は-0.061%とむしろ下回ります。
| 株価水準(調整前終値) | 件数(変わらず全体の構成比) | 変わらずの5営業日後 | 同価格帯の市場平均 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 300円未満 | 237,309(29.5%) | +0.348% | +0.409% | -0.061% |
| 300〜1,000円 | 286,337(35.6%) | +0.241% | +0.299% | -0.058% |
| 1,000〜3,000円 | 171,525(21.3%) | +0.182% | +0.200% | -0.018% |
| 3,000円以上 | 109,587(13.6%) | +0.107% | +0.163% | -0.056% |
同じ価格帯の市場平均と比べると、4つの価格帯すべてで5営業日後の差がマイナスでした(300円未満は-0.061%、3,000円以上は-0.056%)。差は小さいものの、「変わらず」に上乗せの優位性は見つかりませんでした。300円未満では市場全体でも翌日の引き分けが18.7%あり、引き分けの多さは価格帯の特徴です。
次に、その日の値幅で分けた結果です。値幅は(高値−安値)÷前日終値です。
| 区分 | 件数 | 翌日終値 | 勝率 | 引き分けを除いた勝率 | 5営業日後 | 20営業日後 | 20日後の勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 値幅1%未満 | 357,572 | +0.036% | 40.9% | 52.1% | +0.196% | +0.781% | 52.2% |
| 値幅1〜3% | 356,566 | +0.054% | 43.1% | 49.9% | +0.257% | +0.979% | 49.8% |
| 値幅3%以上 | 90,620 | +0.052% | 36.1% | 47.7% | +0.365% | +1.437% | 43.3% |
| 変わらず全体 | 804,758 | +0.046% | 41.3% | 50.6% | +0.242% | +0.944% | 50.1% |
| 全体平均(比較用) | 12,435,780 | +0.050% | 47.0% | 50.2% | +0.245% | +0.938% | 51.2% |
値幅が小さく、まったく動かなかった日(値幅1%未満)は5営業日後+0.196%・20営業日後+0.781%と、全体平均に届きません。
目を引くのは値幅3%以上です。日中に大きく上下したのに終値が前日と同じになった銘柄で、20営業日後は+1.437%と全体平均の+0.938%を上回ります。ただし件数は90,620件と少なく、翌日終値の勝率は36.1%、20営業日後の勝率も43.3%と低いままです。勝率が低いのに平均が高いのは、少数の大きな上昇が平均を引き上げているためと読め、偶然の可能性も残ります。
5.連続日数と直近5日の流れ――向きが逆転する条件
次は「変わらず」が何日続いたか、そして変わらずになる前の5日間の流れです。
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連続が長いほど、翌日が引き分けになる割合が上がります。1日だけなら14.7%、2日連続で26.7%、3日以上連続では49.4%です。3日以上続いた銘柄は、翌日もほぼ半分の確率で同じ値で引けます。
20営業日後を見ると、3日以上連続は+0.580%・勝率42.1%と、全体平均の+0.938%・51.2%を下回っています。ただし「変わらず」が3日以上続くのは、全体のごく一部(6.3%)です。
続いて、変わらずになる直前5日間の騰落率で分けます。ここでは「変わらず」だけでなく、同じ5日間の流れだった市場全体の平均とも比べます。直前5日が下落していた銘柄は、そもそも反発しやすいためです。
| 直近5日の流れ | 件数 | 変わらずの翌日終値 | 同条件の市場平均 | 差(翌日) | 差(5営業日後) | 差(20営業日後) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 直近5日で-5%以下 | 41,364 | +0.271% | +0.150% | +0.121% | -0.111% | -0.301% |
| 直近5日で±5%未満 | 722,175 | +0.045% | +0.041% | +0.004% | +0.027% | +0.052% |
| 直近5日で+5%以上 | 41,055 | -0.161% | +0.023% | -0.184% | -0.058% | +0.445% |
直近5日で-5%以下の下落だった銘柄は、変わらずの翌日終値が+0.271%と高く見えます。しかし同じ流れの市場平均が+0.150%あるため、差は+0.121%にすぎません。さらに5営業日後の差は-0.111%、20営業日後は-0.301%と逆転しました。
反対に直近5日で+5%以上上昇していた銘柄は、翌日終値の差が-0.184%と弱い一方、20営業日後の差は+0.445%と市場平均を上回ります。
このように、翌日と20営業日後で向きが入れ替わるのが共通した姿です。流れが止まる、あるいは続くといった一貫した効果は読み取れません。「変わらず」の89.7%を占める直近5日で±5%未満の区分は、市場平均とほぼ重なります。
6.頑健性チェック――発生日の集中・年別・検証の限界
極端な条件の好成績が、特定の数日に偏っていることがあります。まず発生日の集中度を調べました。
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「変わらず」804,758件のうち、発生が多かった上位3日(2014年8月20日(471件)、2016年5月27日(461件)、2014年6月26日(457件))が占める割合は0.2%でした。発生日の集中はなく、毎営業日に259件前後が万遍なく出ています。
その上位3日を除いて再集計しても、翌日終値は+0.045%(除く前は+0.046%)、5営業日後は+0.240%(同+0.242%)、20営業日後は+0.945%(同+0.944%)で、ほとんど変わりません。直近5日で-5%以下下落していた区分でも、上位3日を除いた5営業日後は+0.552%(除く前+0.597%)でした。今回の結果は、数日の特殊な相場に左右されたものではありません。
次に年別です。「変わらず」の5営業日後を、その年の市場平均と比べると、差がプラスだったのは13年のうち、翌日終値で4年、5営業日後で5年、20営業日後で3年にとどまります。5営業日後の差は2014年の+0.083%から2024年の-0.119%まで、年によって向きが入れ替わっています。
最後に、この検証の限界を挙げます。
- 売買コストを含みません。手数料や約定のしやすさは考慮していません
- 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません
- 条件を多く並べています。比べるほど、偶然に目立つ組み合わせが出やすくなります
7.よくある質問(FAQ)
Q. 「変わらず」はどのように判定していますか?
A. その日の終値が前日の終値とぴたり同じで、株式分割の調整前の価格でも同じだった日です。出来高ゼロで値が付かなかった日は対象外で、804,758件(全体の6.5%)を集計しています。
Q. 「変わらず」の翌日は上がりやすいですか、下がりやすいですか?
A. どちらにも偏っていませんでした。翌日終値の平均は+0.046%で、全体平均の+0.050%とほぼ同じです。20営業日後も+0.944%(同+0.938%)でした。
Q. 勝率が低く見えるのはなぜですか?
A. 翌日も変わらずに終わる「引き分け」が多いためです。変わらずの翌日が引き分けになる割合は18.3%で、全体平均の6.5%の約2.8倍です。引き分けを除いた勝率は50.6%で、全体平均並みです。
Q. 株価が安い銘柄ほど「変わらず」が多いのですか?
A. その傾向がありました。市場全体で300円未満の銘柄が占める割合は10.2%ですが、「変わらず」では29.5%を占めます。値動きの最小単位(呼び値)が価格に対して大きいためと考えられますが、データから断定はできません。
Q. 直近5日で下げていた銘柄が「変わらず」になったら反発しますか?
A. 翌日終値は同じ条件の市場平均より+0.121%高く、わずかに反発しました。ところが5営業日後は-0.111%、20営業日後は-0.301%と、市場平均を下回りました。
Q. 「変わらず」が3日以上続いた銘柄はどうでしたか?
A. 翌日が引き分けになる割合が49.4%と極端に高くなります。20営業日後の平均は+0.580%で、全体平均の+0.938%を下回り、勝率も42.1%でした。値動きが乏しい状態が続く銘柄は、その後の上昇も乏しい傾向が見られます。
Q. 「変わらず」を売買の条件に使えますか?
A. 今回の結果からは、単独の条件として使う根拠は見つかりませんでした。市場平均との差は小さく、株価水準で分けても同じ価格帯の市場平均を上回りませんでした。
8.まとめ
- 「変わらず」の翌日以降は市場平均並みでした。翌日終値+0.046%、5営業日後+0.242%、20営業日後+0.944%で、全体平均との差は小さい範囲に収まります
- 勝率41.3%の低さは、引き分けのせいです。翌日も変わらずに終わる割合が18.3%あり、引き分けを除いた勝率は50.6%と全体並みでした
- 価格帯をそろえると優位性はありません。同じ価格帯の市場平均と比べると、5営業日後は全価格帯で下回りました
- 3日以上続く「変わらず」は伸びにくい。20営業日後は+0.580%でした
- 直近5日の流れによる差は、翌日と20営業日後で向きが逆転します
- 発生日の集中はなく、上位3日を除いても結果は変わりません(集中度0.2%)。ただし年ごとの向きは安定していません
「動かなかった日の次は動く」「関心がないからその後も伸びない」。どちらの感覚も、今回の数字では裏付けられませんでした。引き分けが混ざる指標では、勝率だけを見ると実態を取り違えます。検証の際は、引き分けの割合と、同じ条件の市場平均との比較を併せて確認してください。
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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