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「投資を始めるなら、何から手をつければいいですか」――投資未経験の方から、よくいただく質問です。多くの方は真っ先に「どの株を買うか」「どの投資信託を選ぶか」という商品選びから考え始めます。

しかし結論から言えば、投資を無理なく続けていくためには、「何を買うか」を決める前に整えておくべき準備があります。お金の状況の整理、投資の目的の設定、口座選びといった土台を飛ばしてしまうと、どれだけ良い商品を選んでも長続きしにくいためです。

この記事では、投資がまったくの未経験という方に向けて、最初の一歩を踏み出すために押さえておきたい5つのステップを順番に解説します。

1.投資を始める前に整理すべきお金の状況

投資の話というと、多くの人が真っ先に銘柄や商品の選び方を考えます。しかし実際にまず取り組むべきは、自分自身のお金の状況を整理することです。

1-1.生活防衛資金を確保する

投資は元本が保証された仕組みではありません。市場の状況によっては、資産が一時的に目減りする場面も起こり得ます。そこでまず用意しておきたいのが生活防衛資金です。目安として、生活費の3〜6か月分を、普通預金などすぐに引き出せる形で確保しておくと安心です。この資金があれば、急な出費が生じても、投資中の商品を慌てて売却せずに済みます。

1-2.余裕資金とは何かを理解する

投資に回すお金は、生活防衛資金とは別に用意する余裕資金であることが原則です。余裕資金とは、目安として当面(3〜5年程度)使う予定のないお金を指します。数か月後に控えた大きな出費や、用途が決まっているお金を投資に回すのは避けたほうが無難です。相場が下がったタイミングで急に現金が必要になると、損失を抱えたまま売却せざるを得なくなるためです。

1-3.家計を「消費」「貯蓄」「投資」に分けて考える

手取り収入を「消費」「貯蓄」「投資」の3つに分けて管理する考え方も有効です。消費は日々の生活費、貯蓄は生活防衛資金や近い将来使う予定のあるお金、投資は余裕資金にあたります。この3つを意識的に分けるだけで、無理なく投資に回せる金額が見えてきます。

2.ステップ1:目的とゴールを決める

お金の状況を整理できたら、最初のステップとして投資の目的とゴールを決めます。目的があいまいなまま始めると、値動きのたびに一喜一憂し、途中でやめてしまう原因になりかねません。

2-1.何のために増やしたいのかを言葉にする

老後の生活資金なのか、子どもの教育費なのか、住宅購入の頭金なのか。目的によって、投資に回せる期間や取れるリスクの大きさは変わります。老後資金であれば数十年という長い時間を味方にできますが、数年後に使う予定のあるお金であれば、値動きの大きい商品は避けたほうが無難です。

2-2.いつまでに・いくら増やしたいかを数字にする

「なんとなく増えたらいい」ではなく、「何年後までに、いくら」という形で目安を具体化しておくと、必要な積立額や許容できるリスクの大きさが見えやすくなります。目標が明確であるほど、途中の値下がり局面でも冷静に向き合いやすくなります。

2-3.目的ごとにリスクの取り方を変える

使う時期が近いお金と、当分使わないお金では、選ぶべき商品の性格が異なります。使う時期が近い資金は値動きの小さい商品を中心に、使う時期が遠い資金は多少値動きが大きくても長期的な成長を期待できる商品を組み合わせる、という考え方が基本になります。

3.ステップ2:NISA口座を開設する

目的が決まったら、次に検討したいのが投資専用の口座です。中でも初心者がまず確認しておきたいのが、NISA(少額投資非課税制度)口座です。

3-1.NISAとは何か

NISAは、口座内で得た値上がり益や配当金・分配金が非課税になる制度です。通常の課税口座では投資の利益に一定の税金がかかりますが、NISA口座内での利益であればこの税金がかかりません。少額から投資を始める初心者にとって、優先的に確認しておきたい制度です。

3-2.つみたて投資枠の特徴

つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資に適するとされる一定の投資信託を、コツコツ積み立てていくための枠です。毎月一定額を自動的に買い付ける設定にできるため、値動きを見ながら売買判断をする手間がかからず、投資に慣れていない人でも始めやすいのが特徴です。

3-3.成長投資枠の特徴

成長投資枠は、個別株式を含む比較的幅広い商品を購入できる枠です。つみたて投資枠より対象商品の選択肢が多い分、銘柄選びの知識やリスク管理の意識がより求められます。投資に慣れてから活用を検討しても遅くありません。

項目つみたて投資枠成長投資枠
主な対象商品長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託上場株式・投資信託など比較的幅広い商品
基本的な買い方毎月一定額を自動的に積み立てる積立・スポット購入のどちらも選べる
初心者との相性値動きを気にせず始めやすい銘柄選びの知識がある程度必要

3-4.口座開設の大まかな流れ

NISA口座は、証券会社や銀行などの金融機関で、通常の取引口座開設と合わせて申し込めるのが一般的です。本人確認書類の提出と審査を経て、数営業日から数週間程度で利用を開始できる場合が多いですが、金融機関によって扱いは異なります。1人につき1口座しか持てない点にも注意しましょう。

4.ステップ3:少額から積立投資を始める

口座の準備が整ったら、実際に投資を始めます。ここで大切なのが、いきなり大きな金額を一括で投じないという考え方です。

4-1.いきなり大きな金額を投じない理由

まとまった資金を一度に投じると、その直後に相場が下落した場合の値動きの影響が大きくなります。大きな金額が動く緊張感から、値下がり時に冷静な判断がしにくくなる面もあります。少額から始めれば、値動きに対する自分自身の反応を確かめながら、無理なく投資に慣れていくことができます。

4-2.積立投資という考え方

毎月決まった日に、決まった金額を買い付けていく方法を積立投資と呼びます。価格が高いときは少なく、安いときは多く購入することになるため、一度にまとめて購入する場合に比べて、購入タイミングが一点に偏りにくくなるとされています。ただし、これは値動きを完全に平準化する仕組みではなく、下落が続く局面では含み損を抱える可能性がある点は理解しておく必要があります。

4-3.最初の金額はどれくらいが目安か

最初の金額は、家計に負担のない範囲から始めるのが目安です。金額の大小よりも、値動きのある資産を実際に保有し、値上がりと値下がりの両方を経験すること自体に学びの価値があります。慣れてきたら、無理のない範囲で少しずつ金額を見直していくとよいでしょう。

5.ステップ4:投資対象の基本を学ぶ

積立を始めたら、並行して投資対象そのものの基本も学んでおきましょう。代表的な投資対象には株式・投資信託・債券があり、それぞれリスクの大きさと必要な知識量が異なります。

5-1.株式とは

株式は、企業が資金調達のために発行する証券です。株主になることで値上がり益や配当金、株主優待などを期待できる一方、企業の業績や市場環境によって価格が大きく変動することがあります。個別企業を分析する知識が求められるため、3つの中では相対的に学習の負荷が大きい投資対象といえます。

5-2.投資信託とは

投資信託は、多くの投資家から集めたお金を専門家がまとめて運用し、株式や債券など複数の資産に分散投資する商品です。1つの商品を買うだけで自動的に分散投資ができるため、個別企業を分析する時間が取りにくい初心者にとって扱いやすい選択肢とされています。ただし、運用にかかる手数料がかかる点や、元本が保証されない点は株式と同様です。

5-3.債券とは

債券は、国や企業が資金を借り入れるために発行する証券で、購入者はあらかじめ決められた利子を受け取り、満期には額面金額が払い戻される仕組みが基本です。一般に、株式やそれを組み入れた投資信託と比べて値動きは小さい傾向がありますが、発行体の財務状況によっては利払いや償還が滞るリスクもゼロではありません。

投資対象リスクの大きさ(目安)リターンの傾向必要な知識量
株式比較的大きい値動きが大きくなりやすい比較的多い(個別企業分析など)
投資信託商品の構成により異なる分散によりある程度緩和されやすい比較的少ない(分散が自動化)
債券比較的小さい株式より緩やかな傾向比較的少ない

6.ステップ5:記録をつけて振り返る習慣を作る

最後のステップは、記録をつけて定期的に振り返る習慣を作ることです。地味に見えますが、投資を長く続けるうえで欠かせない土台になります。

6-1.なぜ記録が必要なのか

投資は始めた瞬間がゴールではなく、そこから何年、何十年と付き合っていくものです。記録をつけずに感覚だけで運用を続けると、当初の目的からずれた商品を保有していたり、リスクを取りすぎていたりすることに気づきにくくなります。定期的な記録は、目的とのズレを早期に発見するための手段です。

6-2.家計簿的に資産推移を可視化する

家計簿で毎月の収支を記録するのと同じ感覚で、保有している投資商品の評価額や積立額を月に1回程度記録しておくと、資産全体の推移が見えるようになります。日々の値動きに一喜一憂するのではなく、半年・1年単位の推移を俯瞰する習慣が、感情に流されにくい投資判断につながります。

6-3.振り返りで確認したい3つのポイント

振り返りの際は、目的やゴールとズレが生じていないか、積立額が家計の負担になっていないか、リスクの取り方が自分の状況に合っているか、という3点を確認する習慣をつけましょう。状況が変われば、投資の内容を見直すことも自然なことです。

7.よくある質問(FAQ)

Q. 投資を始めるなら、まず何から手をつければいいですか?

A. まず生活防衛資金と余裕資金を整理し、投資の目的とゴールを決めることから始めるのがおすすめです。口座開設や商品選びは、その後のステップになります。

Q. 投資はいくらくらいから始められますか?

A. 金融機関によっては、月々数百円〜数千円程度の少額から積立を始められる場合があります。まずは家計に負担のない金額から始め、慣れてきたら少しずつ見直していく方法が無理を招きにくいと考えられます。

Q. NISA口座は必ず使ったほうがいいですか?

A. 投資の利益が非課税になる制度であるため、多くの初心者にとって優先的に検討する価値のある選択肢です。ただし、対象商品や非課税枠には条件があるため、事前に内容を確認しておくと安心です。

Q. 株式・投資信託・債券はどれから始めるべきですか?

A. 明確な正解はありませんが、分散投資が自動的に行われる投資信託は、初心者が最初の一歩として検討しやすい選択肢の1つです。株式や債券についても基本を学びながら、自分の目的に合わせて組み合わせを考えていくとよいでしょう。

8.まとめ――「何を買うか」より先に「始め方」を整える

  • 投資を始める前に、生活防衛資金と余裕資金を整理しておく
  • 目的とゴール(何のために・いつまでに・いくら)を先に言葉にする
  • NISA口座を軸に、つみたて投資枠と成長投資枠の違いを理解しておく
  • いきなり大きな金額を投じず、少額の積立から始める
  • 株式・投資信託・債券の基本を学びながら、記録をつけて定期的に振り返る

「投資を始めるなら何から手をつけるべきか」という問いへの答えは、特別な銘柄選びのテクニックではなく、こうした地道な準備の積み重ねにあります。

焦って大きな金額を投じるのではなく、今回紹介した5つのステップを1つずつ確認しながら、自分のペースで投資家としての一歩を踏み出してみてください。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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