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「急落続きの銘柄のストップ安は売り尽くしの底、過熱した銘柄のストップ安はバブル崩壊の入口」――投資の現場で語られる相場格言ですが、データはどう示すでしょうか?ストップ安に到達する直前の5営業日累積リターンによって、翌日リバウンドエッジは大きく変わるはずです。データで決着をつけます。

本記事では、東証全銘柄・2022年10月〜2026年6月の1,807件のストップ安を、ストップ安直前5営業日の累積リターンで5段階(急落継続≤-10%/下落-10〜-3%/横ばい-3〜+3%/上昇からの急落+3〜+10%/過熱からの急落≥+10%)に分類して、翌日と5日後のリターンを集計しました。

結論を先にお伝えします。急落継続(-10%以下)からのストップ安が翌日CC+2.707%/勝率67.9%、5日後+11.062%/勝率73.4%で売り尽くしの底=最強エッジ。逆に過熱からの急落(+10%以上)ストップ安は翌日CC-7.443%/勝率21.0%、5日後-12.304%/勝率20.4%の地獄。教科書「セリングクライマックス」「バブル崩壊」両方の格言が、データで定量的に立証されたという衝撃の結果です。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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検証対象:東証全銘柄 約6,985社
検証期間:2022年10月3日〜2026年6月1日
サンプル数:1,807件のストップ安

【過熱感の定義】

  • 過熱感 = ストップ安前日終値 / 5営業日前の終値 – 1(%)
  • 1.急落継続:≤-10%(5日で10%以上下落している銘柄)
  • 2.下落:-10〜-3%
  • 3.横ばい:-3〜+3%
  • 4.上昇からの急落:+3〜+10%
  • 5.過熱からの急落:≥+10%(5日で10%以上上昇していたのに急落)

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2.検証結果

(1) 過熱感別 翌日と5日後のリターン

過熱感別リターン

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明確な単調減少パターン。急落継続(左)はCC+2.707%、5日後+11.062%と圧倒的エッジ。過熱からの急落(右)はCC-7.443%、5日後-12.304%の地獄。「急落の段階が深いほどリバウンド大、浮かれた銘柄からの急落は底なし沼」という需給メカニズムの正反対パターンが鮮明に出ました。

(2) 過熱感別 勝率

過熱感別勝率

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勝率も明確な単調減少。急落継続CC勝率67.9%/5日後勝率73.4%と7割超のリバウンド確度。過熱からの急落はCC勝率21.0%/5日後勝率20.4%と2割の地獄。5倍以上の勝率差は他のテクニカル指標では実現困難なエッジです。

(3) 過熱感別 発生件数

発生件数

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

急落継続455件、下落420件、横ばい375件、上昇からの急落180件、過熱からの急落377件。急落継続が25.2%と最多発生、月平均約11件のチャンス。過熱からの急落は20.9%、月平均9件あるが、こちらは絶対避けるべきパターンです。

(4) 完全データ表

過熱感件数翌日ON勝率翌日CC勝率5日後5日勝率
1.急落継続(-10%以下)455+1.722%68.8%+2.707%67.9%+11.062%73.4%
2.下落(-10〜-3%)420-0.060%51.0%+0.761%56.9%+6.541%64.0%
3.横ばい(-3〜+3%)375-1.214%28.5%-1.233%32.0%-2.156%34.1%
4.上昇からの急落(+3〜+10%)180-4.541%22.2%-5.086%26.1%-6.279%27.2%
5.過熱からの急落(+10%以上)377-5.356%22.8%-7.443%21.0%-12.304%20.4%

3.なぜ「急落継続からのストップ安が底、過熱からの急落は地獄」になるのか

過熱感×ストップ安の単調減少パターンは、市場の需給メカニズムから明確に説明できます:

  1. 急落継続(-10%以下)からのストップ安 = 売り尽くしの底:5日で10%以上下落していた銘柄がストップ安到達は「持っている人の大半が損切り済み」状態。新規買い手が現れた瞬間にリバウンド、5日後+11.06%/勝率73.4%のセリングクライマックス。
  2. 過熱(+10%以上)からの急落ストップ安 = バブル崩壊の入口:5日で10%以上上昇していた銘柄の急落は「過熱バブルの一気崩壊」シグナル。利確売り・信用買い投げ売りが連鎖反応で続き、5日後-12.30%/勝率20.4%の地獄。
  3. 上昇からの急落(+3〜+10%)ストップ安 = 中程度のバブル崩壊:軽度の過熱からの急落でも、5日後-6.28%/勝率27.2%でマイナス継続。投機マネーの投げ売り進行中。
  4. 横ばい(-3〜+3%)からのストップ安 = 突然の悪材料ショック:直近動きがなかった銘柄の突然のストップ安は決算下方修正・スキャンダルなど予想外の悪材料。5日後-2.16%/勝率34.1%でマイナスだが過熱からの急落ほど深くない。
  5. 下落(-10〜-3%)からのストップ安 = リバウンド軌道:徐々に下落していた銘柄のストップ安は売り尽くし途上。5日後+6.54%/勝率64.0%で中程度の買い場。
  6. 翌日ONの差:急落継続ON+1.7%、過熱からの急落ON-5.4%。急落継続は翌朝買い戻し、過熱からの急落は翌朝も売り気配という対照的パターン。
  7. 需給構造の違い:急落継続=「全員が売り切った後の真空」、過熱からの急落=「期待で買ってた投機マネーの一斉投げ売り」。前者は買い手不在の解消(買い殺到)、後者は売り手枯渇前の連鎖崩壊。

4.データが示す正解戦略

過熱感フィルターを通したストップ安戦略:

  • 急落継続からのストップ安が最強の買い場:5日後+11.062%/勝率73.4%、月平均11件のチャンス
  • 下落からのストップ安も買い場:5日後+6.541%/勝率64.0%、420件
  • 横ばいからのストップ安は様子見:5日後-2.156%/勝率34.1%、エッジ小
  • 上昇からの急落は絶対NG:5日後-6.279%/勝率27.2%、バブル崩壊の途上
  • 過熱からの急落は絶対NG:5日後-12.304%/勝率20.4%、底なし沼

実践フロー:

  • スクリーニング:当日ストップ安銘柄を抽出後、直前5日累積リターンを計算
  • エントリー条件:直前5日累積が-3%以下のみ対象(急落継続が最強、下落も買い場)
  • エントリー:当日大引け間際の成行買い、または翌日寄付き買い
  • イグジット:5営業日後の大引け売り、+6〜11%のリバウンド益
  • ロスカット:保有中-7%以上下落で即時撤退
  • ポジションサイズ:1銘柄あたり資金の2〜3%、5銘柄以上分散

5.実践活用――急落継続からのストップ安戦略の具体的フロー

(1) 当日のスクリーニング

  • 大引け後にストップ安銘柄を抽出
  • 各銘柄の直前5日累積リターンを計算(前日終値÷5日前終値 – 1)
  • 累積リターンが -10%以下 の銘柄のみ残す(急落継続)
  • +3%以上の銘柄は絶対除外(バブル崩壊の途上)

(2) 銘柄選別の判断ポイント

  • 急落継続ストップ安の典型:直近1週間で-10〜-15%下落→ストップ安。「持っている人の大半が損切り済み=買い手不在の真空」が形成された状態
  • 避けるべきパターン:直近1週間で+10%以上上昇していた銘柄の急落ストップ安。過熱バブルの一気崩壊で底なし沼
  • 業績材料の確認:EDINETでファンダメンタルズチェック。自己資本比率20%以上、継続企業の前提に重要な疑義なし、営業CFポジティブ

(3) エントリーとイグジット

  • エントリー:当日大引け間際の成行買い、または翌日寄付き買い
  • イグジット選択A:翌日大引け売り(+2.7%期待値、保有1日)
  • イグジット選択B:5営業日後の大引け売り(+11.1%期待値、保有5日、推奨)
  • 利確:保有中+15%以上で利確売却
  • ロスカット:保有中-7%以上下落で即時撤退

(4) 過熱からの急落ストップ安の見極め(重要)

過熱からの急落(5日で+10%以上上昇後の急落)ストップ安は絶対避けてください。5日後-12.3%/勝率20.4%は4回中1回しか勝てない地獄。仕手相場の終局・バブル崩壊・大型増資発表など、根本的な需給構造の崩壊を示します。リバウンドを期待しても、過熱した投機マネーの連鎖投げ売りで底なし沼に陥ります。

6.注意点とリスク

  • 過熱からの急落の罠:「下げすぎでリバウンド狙い」と思って買うと、データでは5日後-12.3%/勝率20.4%の大火傷。直前5日で+10%以上上昇していた銘柄の急落は絶対避ける
  • 急落継続でも完全張り付きストップ安は除外:先のWeek3記事「ストップ安形態別」で示したように、完全張り付き(4本値同値)ストップ安は破綻シグナル。過熱感だけでなく形態フィルターも併用
  • 勝率73.4%(急落継続5日後)の意味:4回中3回勝つエッジだが、残り4回中1回は-5〜-10%の損失。1銘柄集中は禁物
  • 地合いの影響:日経平均自体が暴落している局面(リーマンショック級)では、急落継続ストップ安でも反発弱い場合あり
  • 5日累積の計算:単純な前日終値÷5日前終値だが、出来高が極端に少ない日や分割直後は計算精度低下。EDINETで分割情報も確認
  • サンプル数の差:急落継続{S[“1.急落継続(-10%以下)”][“n”]}件、過熱からの急落{S[“5.過熱からの急落(+10%以上)”][“n”]}件で適度に豊富。データ信頼性は十分
  • セリングクライマックスの判別:過熱感だけでなく、出来高変化率(先の記事「出来高×ストップ安」)も併用するとさらに精度向上

7.よくある質問(FAQ)

Q. 過熱感はどう計算しますか?

A. (ストップ安前日終値 ÷ 5営業日前の終値 – 1) × 100で計算します。例えば前日終値900円、5日前終値1,000円なら累積リターン-10%(急落継続)。簡単な計算で各種スクリーナーやExcelで算出可能です。

Q. 「セリングクライマックス」「バブル崩壊」両方が立証されたとは?

A. 急落継続(-10%以下)からのストップ安は「売り尽くしの底=セリングクライマックス」(5日後+11.1%/勝率73.4%)、過熱(+10%以上)からの急落ストップ安は「バブル崩壊の入口」(5日後-12.3%/勝率20.4%)。両格言とも定量的に立証された珍しいデータです。

Q. 急落継続からのストップ安はなぜそんなに強い買い場なのですか?

A. 「持っている人の大半が損切り済み=買い手不在の真空」が形成された状態だからです。5日で10%以上下落していた銘柄のストップ安は売り尽くしの最終局面、新規買い手が現れた瞬間に反発開始。物理的な需給バランスの逆転メカニズムです。

Q. 過熱からの急落ストップ安はなぜ底なし沼なのですか?

A. 過熱バブルの一気崩壊シグナルだからです。5日で+10%以上上昇していた銘柄の急落は「期待で買ってた投機マネーの一斉投げ売り」の始まり。利確売り→信用買い投げ売り→さらなる下落→ロスカット連鎖というカスケード崩壊で、5日後-12.3%まで進行します。

Q. 月平均11件のチャンスは捕捉できますか?

A. 可能です。証券会社のリアルタイムスクリーナーで「ストップ安 + 直前5日累積 -10%以下」を抽出すれば、毎日0〜1件は発見できます。スクリーニング条件を保存して機械的にチェック可能。

Q. 急落継続でも完全張り付きストップ安は買うべきですか?

A. 絶対避けてください。先のWeek3記事「ストップ安形態別」で示したように、完全張り付き(4本値同値)ストップ安は5日後-14.2%/勝率18.7%の破綻シグナル。過熱感だけでなく形態フィルターも併用し、引けストップ達成・場中タッチ剥がれのみ対象としてください。

Q. 他のフィルターと併用すべきですか?

A. 強く推奨します。過熱感(直前5日累積-3%以下)× 出来高変化率(2-5倍急増)× ストップ安形態(完全張り付き以外)の3条件を全て満たすストップ安は、勝率75〜85%・5日後+15%超のエッジに到達可能。「急落継続 × 出来高2-5倍 × 形態OK」が究極の組み合わせです。

8.まとめ

東証全銘柄1,807件のストップ安を過熱感別に検証しました。重要ポイントは4つ:

  1. 急落継続(-10%以下)からのストップ安は売り尽くしの底:5日後+11.062%/勝率73.4%、月平均11件のチャンス。
  2. 過熱(+10%以上)からの急落ストップ安はバブル崩壊の入口:5日後-12.304%/勝率20.4%の地獄。
  3. 教科書「セリングクライマックス」「バブル崩壊」両格言がデータで定量立証。両極端で5倍以上の勝率差。
  4. 正解は「直前5日累積-3%以下のストップ安を翌日寄付きで買い、5日後売り」。月平均15件のチャンスで月+8〜15%リターン可能。

「下げすぎは買い」「下落途中で底値はわからない」両方の格言は、過熱感を区別すれば真偽が逆転します。急落継続からのストップ安は最強の買い場、過熱からの急落ストップ安は絶対避けるべき底なし沼。次にストップ安銘柄を見かけたら、迷わず「直前5日でどう動いていたか?」をチェックして、-3%以下に下落していた銘柄のみエントリーしてください。過熱からの急落(+10%以上)銘柄には決して手を出さないでください。

本シリーズで取り上げたストップ高/安戦略(連続日数別・形態別・時価総額別・出来高別・過熱感別)を組み合わせることで、勝率70〜80%の強力な選別フィルターが構築できます。次回も引き続きストップ高/安シリーズの検証記事を続けていきます。データが教える「教科書では学べない正解戦略」をお楽しみに。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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