日本株

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。


システムトレード

フラッシュクラッシュとは

フラッシュクラッシュとは、相場が瞬間的に急落することです。

2010年5月6日に、ダウ平均株価が数分間で9%(約1,000ドル)下落したことから、このように呼ばれるようになりました。

2018年10~12月の「米中貿易摩擦ショック」や、2020年2~3月の「コロナショック」などは、1日や1週間、1ヶ月といった期間での大きな下落ですが、フラッシュクラッシュは1分や1時間といった極めて短い時間軸での急落という点で違いがあります。

フラッシュクラッシュは株価チャートの日足や週足、月足チャートではなく、5分足チャートや30分足チャートといった分足チャートに出やすい点で、一般的な暴落とは異なります。

フラッシュクラッシュの特徴の一つとしては、数分間で急落してから、急回復するということがあります。

これが、フラッシュクラッシュが週足チャートや月足チャートといった中長期的なチャート上には現れにくい原因の一つです。

フラッシュクラッシュの原因・タイミング

ここからは、フラッシュクラッシュの原因やタイミングを解説します。

高速取引やアルゴリズム取引によって発生する

株式市場や為替市場では、投資ファンドによるAIやプログラムの自動売買が活発化しています。

人間の手ではなくコンピュータ同士が取引をしているため、非常に高速な取引となっており、アルゴリズム取引と呼ばれるプログラムによる自動売買が主流となっているため機械的です。

高速取引とアルゴリズム取引が組み合わさったことによって、人間の手による取引が主流のときにはあり得なかった頻度で取引量が増大しています。

その取引量の増大が、偶然にも一方向に向いてしまった場合に、極端な売りもしくは買いが発生することによって、フラッシュクラッシュが起こるという説明が一般的です。

また、AI取引は、フラッシュクラッシュによって一時的に急落した瞬間も見逃さないため、フラッシュクラッシュ後に急回復するという形にも現れます。

流動性が低い時間帯に発生しやすい

フラッシュクラッシュは、株式市場よりも為替市場でより起こりやすいことが知られています。

特に、為替市場においてフラッシュクラッシュが起こりやすい時間帯とされているのが、ニューヨーク時間の夕方5時から2時間弱の「魔女が出る時間」と呼ばれている時間帯です。

この時間帯は、日本時間の午前6時(冬時間なら午前7時)に相当する時間帯となっており、市場参加者と取引量(流動性)が少なくなっています。

流動性が大きい時間帯には、市場参加者が多く、フラッシュクラッシュのような事態が起こる前に、価格が安くなったときに買い注文が入ってきて是正されるため、フラッシュクラッシュは起こりづらくなります。

フラッシュクラッシュは、市場参加者が少なく、流動性が低い時間帯に発生しやすいと認識しておくようにしましょう。

フラッシュクラッシュの事例

過去のフラッシュクラッシュの事例を見ていきましょう。

2010年5月6日 ダウ平均株価が急落

2010年5月6日、ニューヨーク証券取引所でダウ平均株価が一時1,000ドル以上急落し、「フラッシュクラッシュ」という概念がマーケットで誕生した出来事となりました。

ただ、フラッシュクラッシュ発生から約15分間で値を回復しています。

また、ダウ平均株価の、長期の株価チャートを見てみると、フラッシュクラッシュがあったことは分かりません。

フラッシュクラッシュ,原因

フラッシュクラッシュは、このように後から振り返ってみると、チャート上には現れないことが特徴の一つとなっています。

2017年6月22日 イーサリアム急落

仮想通貨が世間にも広まってきていた2017年6月22日、世界第二の仮想通貨であるイーサリアムが急落しました。

イーサリアムの価格は、317.81ドルから224.48ドルまで急落。

この当時は、市場操作やアカウント乗っ取りなどの疑惑があったものの、GDAXなどによる調査によると不正行為はなく、フラッシュクラッシュであったと結論付けられています。

ただ、イーサリアムの価格チャートを見てみると、2017年6月にはやや下落となっているものの、長期チャート上においては誤差のようなものとなっています。

フラッシュクラッシュ,原因

 

2019年1月2日 米ドル円(USDJPY)と豪ドル米ドル(AUDUSD)が急落

2019年1月2日、為替相場で米ドル日本円(USDJPY)と豪ドル米ドル(AUDUSD)がフラッシュクラッシュとなりました。

米ドルに対して、この2通貨は一時4%以上下落しましたが、その後数分間で価格は急回復しました

ただ、やはり長期チャートで見てみると、フラッシュクラッシュがあったことは分かりません。

フラッシュクラッシュ,原因

 

フラッシュクラッシュへの対策

次に、フラッシュクラッシュの対策を確認しましょう。

流動性の低い銘柄の短期投資は控えておく

フラッシュクラッシュが起こりやすいのは流動性が低い時間帯です。

ほぼ1日中、世界のどこかで市場が開いている為替市場でフラッシュクラッシュは起こりやすくなっており、その中でも流動性が低くなる時間帯に起こりやすくなっています。

少なくとも、株式市場においては、2010年5月6日のダウ平均株価急落以降は、フラッシュクラッシュと思われる現象は特に起こっていませんが、流動性の低い時間帯・銘柄を控えることで、よりリスクは小さくなるでしょう。

長期投資していれば関係ない

仮にフラッシュクラッシュに巻き込まれてしまった場合、短期投資は即座に損切りするしかありません。

一方で、ここまでの事例で見てきたように、長期投資をしていた場合には、フラッシュクラッシュが起こっても問題ありません。

フラッシュクラッシュで短期的に下落したとしても、すぐに戻ってしまうためです。

もしも、長期投資をしていて、チャートを見ているときにフラッシュクラッシュが起こってしまったとしても、フラッシュクラッシュは長期チャートには影響を及ぼさないという過去の事例を思い出してパニックに陥らないようにしましょう。

まとめ

今回は、フラッシュクラッシュについて解説してきました。

フラッシュクラッシュとは、短期的に発生する急落のことで、高速取引やアルゴリズム取引によって、流動性が低い時間帯に発生しやすくなっている現象です。

ただ、株式市場など流動性が大きい市場ではフラッシュクラッシュはほとんど発生せず、後から振り返ってみれば長期チャート上には全く影響がありません。

フラッシュクラッシュは、数分間で急落した後、数分間で元の価格に戻るためです。

短期投資の場合は損切りする他ありませんが、あくまでも長期投資に徹しておけば、そこまで心配する必要はないでしょう。

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