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「この1年よく上がった株は、勢いがあるからこれからも上がる」。一方で、「1年で何倍にもなった株は、さすがに上がりすぎで反落する」という見方もあります。前者は順張りのモメンタム、後者は逆張りの平均回帰という考え方です。

日本株ではどちらが当てはまるのかを、数字で確かめました。2014年1月6日から2026年10月6日までの12,019,161件(銘柄×営業日・5,260銘柄)を、約1年前から約1か月前までの上昇率(MOM)の7つの帯に分けて、その後のリターンを集計しています。

結論を先に述べます。「1年上がったから、これからも上がる」とは言えませんでした。上昇率が-20%〜+100%の4つの帯では、20営業日後の平均が+0.786%〜+0.930%の0.144%の幅に収まり、全体平均の+0.928%とほとんど変わりません。

差が出たのは両端だけです。1年で2倍以上(+100%以上)に上がった株は、20日後が+0.206%・勝率44.1%・中央値-1.695%と弱く、反対に-40%未満の株は+2.071%と高い結果でした。ただし後者は、中央値が+0.000%で、平均を押し上げているのは一部の銘柄です。

さらに、1年の上昇率よりも直近1か月の動きのほうが効いていました。1年で下位かつ直近1か月も-10%未満の組み合わせは20日後+3.378%・勝率56.8%、1年で上位かつ直近1か月も+10%以上の組み合わせは+0.333%・勝率44.8%でした。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

集計条件をすべて開示します。

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)
  • 期間:2014年1月6日〜2026年10月6日(3,116営業日・5,260銘柄・12,019,161件)。最終日の20営業日前までとし、20日後のリターンが必ず測れるようにしました
  • MOM:250営業日前の終値から20営業日前の終値までの上昇率。直近20営業日(約1か月)は含めず、その動きは別に集計します
  • 帯:-40%未満・-40〜-20%・-20〜0%・0〜+20%・+20〜+50%・+50〜+100%・+100%以上の7つ
  • リターン:その日の終値で買ったとして、5営業日後・20営業日後・60営業日後の終値で測定(60営業日後は最終日の60営業日前までの11,810,145件)
  • 超過リターン:上のリターンから、同じ日の全銘柄平均を引いた値。地合いの影響を取り除くためのものです
  • 除外:過去250営業日に、1日で+100%超・-60%未満の値動きがある2,824件(データ不具合の疑い)

お断りしておくと、MOMはゆっくりとしか変わらないため、同じ銘柄が何か月も同じ帯に居続けて、別々の件数として数えられます。12,019,161件ほど独立した観測があるわけではありません。

2.上昇率が真ん中の帯は横並び、差が出るのは両端だけ

約1年前から1か月前までの上昇率別の、その後のリターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

上昇率の帯(構成比)20日後20日後の勝率20日後の中央値60日後
-40%未満(4.1%)+2.071%49.7%+0.000%+4.812%
-40〜-20%(12.0%)+1.290%51.2%+0.312%+3.579%
-20〜0%(27.6%)+0.786%51.5%+0.245%+2.515%
0〜+20%(27.7%)+0.855%52.7%+0.383%+2.750%
+20〜+50%(17.7%)+0.930%51.4%+0.283%+2.934%
+50〜+100%(7.5%)+0.836%48.5%-0.173%+2.640%
+100%以上(3.3%)+0.206%44.1%-1.695%+0.939%
全体平均(比較用)+0.928%51.2%+0.239%+2.834%

上昇率が高い帯ほどその後も高い、という階段にはなっていません。-20〜0%から+50〜+100%までの4帯は、20日後が+0.786%〜+0.930%にそろいます。全体平均の+0.928%との差は、最大でも0.142%です。順張りのモメンタムが働いているなら、右へ行くほど数字が伸びるはずですが、そうなっていません。

右端の+100%以上は、20日後が+0.206%と全体平均を0.722%下回り、60日後も+0.939%(全体平均+2.834%)と伸びません。勝率は20日後で44.1%、60日後で41.8%と、全体平均の51.2%・52.5%を大きく下回りました。中央値も20日後が-1.695%、60日後が-4.500%と、平均だけでなく中央値でもはっきりマイナスです。

左端の-40%未満は、20日後が+2.071%、60日後が+4.812%と、全体平均を上回っています。ところが20日後の中央値は+0.000%で、平均との間に2.071%の開きがあります。半分の銘柄はまったく戻っておらず、大きく戻した一部の銘柄が平均を引き上げた形です。

つまり、両端のうち確かなのは右端の弱さです。左端の強さは、平均だけが高い「一部が大きく戻る」型でした。

3.同じ日の全銘柄平均を引いても、両端は残る

相場が急落した後は、1年の上昇率が低い銘柄が一斉に増え、相場全体も戻りやすくなります。左端の強さがただの地合いの戻りではないか、同じ日の全銘柄平均を引いた超過リターンで見直しました。

MOM帯別の、同じ日の全銘柄平均を引いた超過リターン

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-40%未満の20日後の超過リターンは+0.653%、60日後は+1.396%で、地合いを取り除いてもプラスが残りました。+100%以上は20日後が-0.456%、60日後が-1.447%と、マイナスのままです。一方、-40〜-20%の20日後は-0.002%とゼロに近く、平均値で見えた強さ(+1.290%)は、ほとんど地合いの戻りだったと読めます。

真ん中の帯にも小さな差はあります。+20〜+50%(20日後の超過+0.195%)と+50〜+100%(+0.171%)はわずかにプラス、-20〜0%は-0.266%で最も弱くなりました。ただ、順張りが効いたと言い切れるほどの差ではありません。左端と右端の20日後の平均の差は1.865%、60日後は3.873%と、時間がたつほど開いています。

4.1年の上昇率より、直近1か月の動きのほうが効いていた

MOMは直近1か月を除いて計算しています。では、直近1か月の動きはどうでしょうか。1年の上昇率を3つの区分(下位は-20%未満、中位は-20〜+50%、上位は+50%以上)にまとめ、直近1か月の騰落率(-10%未満・-10〜+10%・+10%以上)との組み合わせで集計しました。

1年の上昇率の区分と直近1か月の動き別の、20営業日後のリターン

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区分20日後20日後の勝率20日後の中央値20日後の超過
下位・直近1か月 -10%未満+3.378%56.8%+2.041%+1.335%
下位・直近1か月 -10〜+10%+1.169%50.5%+0.171%+0.064%
下位・直近1か月 +10%以上+1.401%47.6%-0.413%-0.300%
中位・直近1か月 -10%未満+1.912%56.1%+1.385%+0.202%
中位・直近1か月 -10〜+10%+0.759%52.1%+0.310%-0.045%
中位・直近1か月 +10%以上+0.791%47.4%-0.392%-0.105%
上位・直近1か月 -10%未満+1.051%48.7%-0.230%-0.039%
上位・直近1か月 -10〜+10%+0.617%47.5%-0.368%+0.012%
上位・直近1か月 +10%以上+0.333%44.8%-1.562%-0.097%
全体平均(比較用)+0.928%51.2%+0.239%-0.000%

3つの区分のすべてで、直近1か月に-10%未満と下げていた行の20日後は、+10%以上と上げていた行より高くなりました。差は、下位が2.0ポイント、中位が1.1ポイント、上位が0.7ポイントです。

反対に、直近1か月が横ばいの行どうしで、1年の上昇率の下位(+1.169%)と上位(+0.617%)を比べた差は0.6ポイントです。1年の上昇率の差より、直近1か月の動きの差のほうが大きいことになります。

いちばん強かったのは、下位で直近1か月も-10%未満だった組み合わせです。20日後は+3.378%・勝率56.8%・中央値+2.041%で、平均と中央値がそろって高く、広い銘柄が戻っています。同じ日の全銘柄平均を引いても、20日後+1.335%、60日後+2.570%が残りました。この組み合わせは、下位の行の12.6%です。

いちばん弱かったのは、上位で直近1か月も+10%以上だった組み合わせです。20日後は+0.333%・勝率44.8%・中央値-1.562%で、最も強い組み合わせとの差は20日後で3.0ポイントでした。ただし、同じ日の全銘柄平均を引くと20日後の超過リターンは-0.097%と、ほとんど差がありません。生の数字の弱さの一部は、上位の株が一斉に上がっている時期が相場全体の天井圏に近かった、という時期の問題だった可能性があります。

5.年別に見ると、上位と下位の勝ち負けは入れ替わる

ここまでは全期間をまとめた数字です。年ごとに、1年の上昇率が上位(+50%以上)の20日後と、下位(-20%未満)の20日後を並べました。

年別の20営業日後リターン:1年の上昇率が上位と下位

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上位が下位を上回った年は、13年のうち7年。下回った年は6年です。ほぼ半々で、一方が安定して勝つ形ではありません。

差が最も大きくプラスだったのは2017年で、上位+4.000%・下位+1.702%(差+2.298%)。最もマイナスだったのは2020年で、上位-1.629%・下位+3.836%(差-5.465%)でした。

同じ日の全銘柄平均を引いた超過リターンがプラスだった年は、上位が5年、下位が6年で、どちらも13年の半分前後です。各区分の件数も年によって大きく違い、2019年は上位25,360件に対して下位が341,730件でした。

6.頑健性チェックと、この検証の限界

特定の数日の出来事に偏った結果ではないかも確かめました。各帯の発生日を数え、件数の多かった上位3日の占有率と、その3日を除いて集計し直した結果を並べます。

上昇率の帯上位3日の占有率20日後(そのまま)20日後(上位3日を除く)
-40%未満0.7%+2.071%+2.025%
-20〜0%0.2%+0.786%+0.783%
+100%以上0.4%+0.206%+0.242%

どの帯も、3,115営業日前後に散らばっていて、発生日の集中はほとんどありません。件数の多かった上位3日の占有率は、最も高い-40%未満でも0.7%(2019年1月29日(1,152件)ほか)、+100%以上は0.4%でした。

上位3日を除いて集計し直しても、-40%未満の20日後は+2.071%から+2.025%へ、+100%以上は+0.206%から+0.242%へと、ほとんど変わりません。超過リターンで見ても、-40%未満は+0.653%が+0.639%、+100%以上は-0.456%が-0.445%でした。

最も強い組み合わせ(下位・直近1か月-10%未満)も、上位3日を除いた20日後は+3.378%から+3.208%でした。ただし、日の偏りがないことと結果が安定していることは別で、前の章のとおり年によって上位と下位の勝ち負けは入れ替わります。

  • 独立した観測は少なくなります。同じ銘柄が何か月も同じ帯に居続けるため、日の偏りを見るチェックでは、この重なりは見抜けません
  • 売買コストを含みません。手数料や、売買の難しさは考慮していません
  • 時価総額や業種では分けていません。大きく下げた株や上げた株は、小型株や特定の業種に偏っている可能性があります
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えておらず、あれば左端の成績が実際より良く見える方向に働きます

7.よくある質問(FAQ)

Q. モメンタム効果とは何ですか?

A. 過去に上がった株ほど、その後も上がりやすいという現象です。海外の研究では、約1年前から約1か月前までの上昇率が高い株が、その後も勝つ傾向が報告されています。この記事では日本株の全銘柄で確かめました。

Q. MOMはどのように計算していますか?

A. 250営業日前の終値から20営業日前の終値までの上昇率です。直近1か月を除くのは、直近の動きには短期の反動が混ざるためで、直近1か月は別に集計しています。

Q. 1年で2倍以上に上がった株は、避けたほうがよいのですか?

A. +100%以上の帯の20日後は平均+0.206%・勝率44.1%で、全体平均の+0.928%・51.2%を下回りました。ただし過去の平均の話です。個々の銘柄の売買は、ご自身の責任で判断してください。

Q. 1年で大きく下げた株は、買い場になりますか?

A. -40%未満の帯の20日後は平均+2.071%ですが、中央値は+0.000%で、大きく戻した一部の銘柄が平均を引き上げています。直近1か月も-10%未満と下げていた場合は、20日後の中央値が+2.041%と、広い銘柄が戻りました。

Q. 1年の上昇率と直近1か月の動きでは、どちらが効いていましたか?

A. 直近1か月の動きです。1年の上昇率の3区分のすべてで、直近1か月が-10%未満の行は+10%以上の行より20日後が高く、その差は0.7〜2.0ポイントでした。直近1か月が横ばいの行どうしで1年の上昇率の下位と上位を比べた差は0.6ポイントです。

Q. この結果は毎年同じですか?

A. 違います。上位(+50%以上)の20日後が下位(-20%未満)を上回った年は、13年のうち7年でした。差が最も大きくプラスだったのは2017年(+2.298%)、最もマイナスだったのは2020年(-5.465%)です。

Q. 3か月後(60営業日後)で見ても、同じ傾向ですか?

A. 同じ向きでした。60日後の平均は、-40%未満が+4.812%、+100%以上が+0.939%で、全体平均は+2.834%です。両端の差は20日後より大きく開いています。

8.まとめ

12,019,161件(銘柄×営業日)を、約1年前から約1か月前までの上昇率で分けてわかったことを整理します。

  • モメンタムは、日本株では確認できなかった。-20%〜+100%の4帯の20日後は+0.786%〜+0.930%に収まり、全体平均+0.928%とほぼ同じです
  • 弱かったのは、1年で2倍以上に上がった株。20日後は+0.206%・勝率44.1%・中央値-1.695%で、60日後も+0.939%でした
  • -40%未満の強さは、平均だけ。20日後の平均は+2.071%ですが、中央値は+0.000%。一部の大きな戻りに支えられています
  • 直近1か月の動きのほうが効いていた。1年の上昇率の3区分すべてで、直近1か月に-10%未満と下げていた行の20日後が、+10%以上と上げていた行を上回りました
  • 最も強い組み合わせは、1年で下げて直近1か月も-10%未満。20日後+3.378%・勝率56.8%で、全体平均を引いても+1.335%が残りました
  • 発生日の集中はほとんどなく、上位3日を除いても結果は変わりません。ただし、年によって上位と下位の勝ち負けは入れ替わります

「1年上がった株は勢いがあるから買う」という見方は、日本株の全体では裏づけられませんでした。反対に「1年で上がりすぎた株は反落する」という見方は、2倍以上の右端に限れば、平均でも中央値でも勝率でも当てはまっています。数字が示したのは、1年という長い勢いよりも、直近1か月の短い動きと、平均と中央値の形の違いでした。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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