「過去1か月のうちに一度でもストップ高級に跳ねた株は、宝くじのように人気が出て割高になる。だから、その後は冴えない」。こうした見方は、MAX効果と呼ばれています。
日本株でも当てはまるのかを、数字で確かめました。2014年1月6日から2026年10月6日までの12,427,496件(銘柄×営業日・5,423銘柄)を、直近20営業日で最も大きかった1日の上昇率(MAX)の帯で分けて集計しています。
結論を先に述べます。平均値で見ると、MAXが大きい株ほど、その後の成績はむしろ高くなりました。MAXが8〜12%の帯の20営業日後は+1.772%で、全体平均の+0.915%を0.857%上回ります。
ただし、同じ日の全銘柄平均を引いた超過リターンで見ると、この差はほぼ消えます。弱さが残ったのは、MAXが20%以上の帯だけです。20営業日後は+0.275%・勝率40.4%で、全体平均を0.640%下回りました。
もうひとつ、見えてきたことがあります。MAXが大きい株は、平均こそプラスでも中央値はマイナスで、勝率が低い「宝くじ型」の形をしていました。そして、いちばん弱いのは跳ねた直後の1〜4営業日でした。
1.検証ルール
集計条件をすべて開示します。
- データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)
- 期間:2014年1月6日〜2026年10月6日(3,116営業日・5,423銘柄・12,427,496件)。最終日の20営業日前までとし、20日後のリターンが必ず測れるようにしました
- MAX:直近20営業日の日次騰落率(前日終値比)のうち最大の値。MIN:同じ期間で最小の値(下落の大きさ)
- 帯:3%未満・3〜5%・5〜8%・8〜12%・12〜20%・20%以上の6つ
- リターン:その日の終値で買ったとして、翌日寄付き・翌日終値・5営業日後・20営業日後の終値で測定
- 超過リターン:上のリターンから、同じ日の全銘柄平均を引いた値。相場全体が上がった日・下がった日の影響を取り除くためのものです
- 除外:20営業日の窓の中に、1日で+100%超・-60%未満の値動きがある298件(データ不具合の疑い)
ひとつ、先にお断りしておきます。大きく跳ねた日は、その後20営業日にわたってMAXに残り続けます。つまり同じ銘柄の同じ跳ねが、最大20日分、別々の件数として数えられます。12,427,496件という数字ほど、独立した観測があるわけではありません。
2.平均で見ると、MAXが大きい株ほど高かった
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| 区分(構成比) | 件数 | 翌日終値 | 5日後 | 20日後 | 20日後の勝率 | 20日後の中央値 | 20日後の超過 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 3%未満(44.2%) | 5,493,327 | +0.035% | +0.179% | +0.738% | 52.9% | +0.371% | -0.015% |
| 3〜5%(27.7%) | 3,440,963 | +0.037% | +0.201% | +0.807% | 50.4% | +0.143% | +0.011% |
| 5〜8%(15.9%) | 1,974,288 | +0.064% | +0.335% | +1.161% | 49.9% | +0.000% | -0.003% |
| 8〜12%(6.7%) | 829,462 | +0.095% | +0.506% | +1.772% | 50.1% | +0.076% | +0.182% |
| 12〜20%(4.0%) | 494,376 | +0.131% | +0.498% | +1.455% | 46.6% | -0.642% | +0.110% |
| 20%以上(1.6%) | 195,080 | +0.110% | +0.037% | +0.275% | 40.4% | -2.345% | -0.802% |
| 全体平均(比較用) | 12,427,496 | +0.049% | +0.242% | +0.915% | 51.1% | +0.224% | +0.000% |
20日後の列を上から下へたどってください。3%未満+0.738%、3〜5%+0.807%、5〜8%+1.161%、8〜12%+1.772%、12〜20%+1.455%、20%以上+0.275%。
8〜12%の帯まで、MAXが大きいほど平均は上がっていきます。12〜20%の帯も、全体平均を0.540%上回りました。「跳ねた株は割高で負ける」という見方を、平均値だけで裏づけることはできません。
落ち込むのは、20%以上の帯だけです。20日後は+0.275%と、全体平均+0.915%を大きく下回りました。この帯は全体のわずか1.6%で、ストップ高級の跳ねに限られた話です。
ところが、勝率はまったく違う姿を見せます。20日後の勝率は、3%未満の52.9%から、12〜20%の46.6%、20%以上の40.4%へと下がっていきます。3%未満と20%以上では、12.5ポイントの開きです。
中央値も同じ向きです。MAX12%以上(全体の5.5%)をまとめると、20日後は平均+1.121%なのに中央値は-1.055%。両者の間に2.176ポイントの開きがあります。MAX5%未満の中央値は+0.310%でした。
つまり、MAXが大きい株は少数が大きく上がって平均を押し上げ、半分以上は下がるという形です。
3.同じ日の全銘柄平均を引くと、差が残るのは20%以上だけ
MAXが大きい株は、相場が荒れた時期に増えます。荒れたあとは相場全体が戻りやすく、その分が平均に上乗せされた可能性があります。同じ日の全銘柄平均を引いた超過リターンで見直します。
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MAX帯の20日後の超過リターンは、3%未満-0.015%、3〜5%+0.011%、5〜8%-0.003%、8〜12%+0.182%、12〜20%+0.110%と、ほぼゼロの近くに収まります。平均値で見えた「MAXが大きいほど高い」は、地合いの影響だったと読めます。
例外が20%以上で、超過リターンは-0.802%。5日後でも-0.259%と、はっきり下回りました。
下落側のMINでも見てみましょう。
直近20営業日で1日に20%以上下げた日がある銘柄(全体の0.4%)の20日後は+0.050%・勝率42.1%で、超過リターンは-1.358%でした。12〜20%の帯は-0.141%で、それほど大きくありません。
跳ねた側も、崩れた側も、20%を超える極端な1日があった銘柄だけが、その後の20日間で市場に劣後していました。方向ではなく、値動きの極端さが効いているように見えます。
4.いちばん弱いのは、跳ねた直後の1〜4日
同じMAXの帯でも、最大の上昇日から何営業日たったかは銘柄ごとに違います。経過日数で分けて、集計し直しました。
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| 区分 | 件数 | 翌日寄付き | 翌日終値 | 5日後 | 20日後 | 20日後の勝率 | 20日後の超過 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| MAX20%以上・当日 | 10,279 | +4.721% | +2.367% | +1.914% | +0.342% | 38.4% | -0.863% |
| MAX20%以上・1〜4日前 | 38,325 | +0.600% | -0.154% | -0.943% | -0.957% | 37.6% | -2.094% |
| MAX20%以上・5〜9日前 | 47,265 | +0.248% | -0.039% | +0.101% | +0.640% | 41.0% | -0.490% |
| MAX20%以上・10〜19日前 | 99,211 | +0.199% | +0.050% | +0.191% | +0.570% | 41.4% | -0.445% |
| 全体平均(比較用) | 12,427,496 | +0.081% | +0.049% | +0.242% | +0.915% | 51.1% | +0.000% |
MAX20%以上で、最大の上昇日から1〜4営業日たった銘柄の20日後は-0.957%・勝率37.6%。超過リターンは-2.094%と、全区分の中で最も弱くなりました。5日後でも-0.943%です。
5〜9営業日前では20日後+0.640%(超過-0.490%)、10〜19営業日前では+0.570%(超過-0.445%)と、弱さは和らぎます。跳ねた直後の反動が、いちばん重い時期のようです。
跳ねた当日の終値で買った場合は別の景色になります。翌日寄付きは+4.721%・勝率60.4%と大きく上がり、翌日終値+2.367%、5日後+1.914%、20日後+0.342%と、時間がたつほど伸びが消えていきます。
ただし、20%以上上げた当日はストップ高で引ける銘柄も多く、翌朝の寄付きで買えるとは限りません。この翌日寄付きの数字は、約定できる前提での机上の計算です。
MAX12%以上でまとめると、1〜4営業日前の超過リターンは20日後で-0.522%と、20%以上ほどの差は出ません。
5.値動きが荒い株だから、というだけではないか
MAXが大きい株は、そもそも値動きが荒い株です。弱さの原因がMAXではなく、荒さそのものだとすれば、見方が変わります。
直近20営業日の日次騰落率の標準偏差で、全件を3等分しました。境目は1.325と2.166(いずれも%の単位)です。低ボラの群ではMAXが5%以上になる件が1,477件しかなく、中ボラの群はMAX12%以上が0件です。表は高ボラの群だけを載せます。
| 区分 | 件数 | 5日後 | 20日後 | 20日後の勝率 | 20日後の中央値 | 20日後の超過 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 高ボラ・MAX5%未満 | 1,112,481 | +0.370% | +1.072% | 50.8% | +0.263% | -0.034% |
| 高ボラ・MAX5〜12% | 2,340,562 | +0.415% | +1.403% | 49.8% | +0.000% | +0.024% |
| 高ボラ・MAX12%以上 | 689,456 | +0.368% | +1.121% | 44.9% | -1.055% | -0.148% |
MAX12%以上の件はすべて高ボラの群に入ります。この群の中でMAXの大きさ別に20日後の超過リターンを見ると、5%未満-0.034%、5〜12%+0.024%、12%以上-0.148%です。
値動きの荒さをそろえると、MAXが大きいことによる差は小さくなります。MAX効果と呼べるほどの弱さは、12%以上の全体ではなく、20%以上の極端な跳ねに絞られるという整理になります。
6.頑健性チェックと、この検証の限界
特定の数日の出来事に偏った結果ではないかも確かめました。
MAX12%以上の件は、3,115営業日に散らばっていて、件数の多い上位3日(2020年4月14日(1,068件)、2020年4月13日(1,063件)、2024年8月27日(1,056件))の占有率は0.5%でした。発生日の集中は、ほとんどありません。
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件数の多い上位3日を除いて集計し直しても、MAX12%以上の20日後は+1.121%から+1.097%へ、ほぼ変わりません。20%以上の帯でも+0.275%が+0.252%になるだけです。超過リターンで見ても、-0.148%が-0.153%でした。
次に、年別です。MAX12%以上と、MAX5%未満の20日後を比べました。
MAX12%以上がMAX5%未満を下回った年は、13年のうち7年。MAX12%以上の超過リターンがマイナスだった年は8年でした。2020年は+5.163%、2026年は-1.642%と、年によって向きが入れ替わります。
- 独立した観測は少なくなります。同じ跳ねが最大20日分、重ねて数えられています。日の偏りを見る上のチェックでは、この重なりは見抜けません
- 売買コストを含みません。手数料や、ストップ高で買えるかどうかは考慮していません
- 時価総額や株価水準では分けていません。20%以上の跳ねは、小型株や低位株で多いと考えられます
- 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄のその後は追えていません
7.よくある質問(FAQ)
Q. MAX効果とは何ですか?
A. 直近1か月ほどの間に、1日で大きく上げた日がある株ほど、その後の成績が悪いという現象です。海外の研究で報告されており、宝くじのように一発の跳ね上がりを期待した買いが集まって、割高になるためと説明されます。この記事では日本株の全銘柄で確かめました。
Q. MAXはどのように計算していますか?
A. 各銘柄・各営業日について、直近20営業日の日次騰落率(前日終値に対する当日終値の変化率)のうち、最も大きかった値をMAXとしています。最も小さかった値(下落の大きさ)はMINとして別に集計しました。
Q. 跳ねたことのある株は、買わないほうがよいのですか?
A. そうとは言い切れませんでした。MAXが12〜20%の帯の20日後は+1.455%で、全体平均の+0.915%を上回っています。弱かったのは20%以上の帯で、20日後は+0.275%・勝率40.4%でした。ただし件数全体の中では少数派で、売買の判断はご自身の責任で行ってください。
Q. 平均はプラスなのに、勝率が低いのはなぜですか?
A. MAX12%以上の20日後は、平均が+1.121%なのに中央値は-1.055%、勝率は44.9%でした。大きく上がる少数の銘柄が平均を押し上げ、半分以上の銘柄は下がっている形です。宝くじに近い値動きと言えます。
Q. 跳ねた直後に買うとどうなりますか?
A. MAX20%以上で、最大の上昇日から1〜4営業日たった銘柄の20日後は-0.957%、同じ日の全銘柄平均を引くと-2.094%でした。ほかの経過日数の帯より弱くなっています。跳ねた直後は、反動の売りが出やすい時期だった可能性があります。
Q. 大きく下げた銘柄(MIN)はどうでしたか?
A. 直近20営業日で1日に20%以上下げた日がある銘柄の20日後は+0.050%・勝率42.1%で、超過リターンは-1.358%でした。跳ねた側と同じく、20%以上という極端な日がある場合にだけ弱さが出ています。
Q. この結果は毎年同じですか?
A. 違います。MAX12%以上の20日後がMAX5%未満を下回った年は、13年のうち7年でした。差が最も大きくプラスだったのは2020年(+5.163%)、最も大きくマイナスだったのは2026年(-1.642%)です。相場環境に左右される点にご注意ください。
8.まとめ
12,427,496件(銘柄×営業日)を数え直してわかったことを整理します。
- 平均値では、MAXが大きい株ほど高い。8〜12%の帯の20日後は+1.772%で、全体平均+0.915%を上回りました
- 同じ日の全銘柄平均を引くと、差が残るのは20%以上だけ。20日後は+0.275%・勝率40.4%、超過リターンは-0.802%でした
- 勝率と中央値は、宝くじ型の形。MAX12%以上の20日後は平均+1.121%・中央値-1.055%・勝率44.9%です
- いちばん弱いのは、跳ねた直後の1〜4営業日。MAX20%以上の20日後は-0.957%、超過リターンは-2.094%でした
- 下げの側も同じ。1日に20%以上下げた銘柄の20日後は+0.050%(超過-1.358%)です
- 発生日の集中はほとんどなく、上位3日を除いても結果は変わりません。ただし年によって向きは入れ替わります
「跳ねた株は宝くじだから避けるべき」という見方は、平均値で見る限り、一般論としては成り立ちませんでした。弱さが現れたのは、1日で20%以上という極端な動きがあった銘柄に絞られます。
数字が示したのは、MAXの大きさではなく、勝率と中央値という「形」の違いでした。平均が高くても、半分以上の銘柄は下がっています。ご自身の売買で、平均だけでなく勝率や中央値まで見ているか、一度振り返ってみてください。
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