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「金曜のストップ高は持ち越すな」――株式投資の世界で、昔から繰り返し語られてきた経験則です。土日の間に何が起きるか分からない、悪材料が出れば月曜は寄り付きから叩き売られる、だから週をまたぐポジションは閉じておけ、という話です。同じように「月曜は荒れる」「水曜は動かない」といった曜日の言い伝えも数多く存在します。しかし、これらは本当にデータで裏付けられるのでしょうか。

本記事では、東証プライム・スタンダード・グロースの4,106銘柄について、2022年10月03日〜2026年07月31日までの937営業日を全数走査し、ストップ高6,570件・ストップ安1,819件を抽出しました。その一件ごとに「発生した曜日」「発生した月」を紐づけ、翌営業日と5営業日後のリターンを集計しています。金曜に発生したストップ高だけは、翌営業日が土日を挟んだ月曜になります。この週末ギャップが結果をどう変えるのかが、本稿最大の論点です。

結論を先にお伝えします。金曜のストップ高は、翌営業日の終値まで平均+5.688%・勝率63.0%と全曜日で最も高い成績でした。最も低い水曜(+2.856%・勝率52.6%)の約2.0倍です。しかも金曜のばらつき(標準偏差14.16%)は月曜の14.39%より小さく、「土日を挟むから値動きが荒れる」という前提そのものがデータでは確認できませんでした。

一方でストップ安はまったく逆の姿を見せます。金曜のストップ安は翌営業日-4.125%、5営業日後-7.102%と下げ続け、標準偏差15.53%は全曜日で最大でした。「週末を持ち越すな」という格言は、ストップ高ではなくストップ安にこそ当てはまるというのが本検証の答えです。加えて、ストップ安は集計結果が特定の1日に極端に偏っていました(後述の頑健性チェックで詳述します)。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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検証対象:東証プライム・スタンダード・グロースの4,106銘柄(ETF・REIT・指数は除外)
検証期間:2022年10月3日〜2026年7月31日(937営業日)
サンプル数:ストップ高6,570件/ストップ安1,819件
使用データ:日足4本値(分割・併合調整済み終値)

【ストップ高・ストップ安の判定方法】

  • 取引所が定める値幅制限テーブル(前日終値の水準ごとに上下の制限値が決まる仕組み)を用いて、その日の制限値を計算します
  • 終値が前日終値から制限値の99.5%以上動いた日をストップ高(上方向)/ストップ安(下方向)と判定します。端数処理や株価調整のズレを吸収するために0.5%の余裕を持たせています
  • ザラ場で一時的にストップ値へ触れただけの銘柄は含めません。大引けまでストップ値に張り付いた「引けストップ」だけを対象としています

【計測するリターン】

  • 翌日ON(オーバーナイト):ストップ当日の終値 → 翌営業日の始値
  • 翌日CC:ストップ当日の終値 → 翌営業日の終値
  • 5日後:ストップ当日の終値 → 5営業日後の終値
  • いずれも平均値・中央値・勝率(プラスで終わった割合)・標準偏差を算出

【曜日・月の集計方法】

  • 曜日はストップ高・ストップ安が発生した日の曜日で分類します。金曜発生分は翌営業日が月曜(祝日なら火曜)になります
  • 祝日の入り方で曜日ごとの営業日数が異なる(期間中は月曜170日に対し木曜193日)ため、単純な件数に加えて1営業日あたりの発生件数も算出します
  • 月別集計も同様に、1〜12月それぞれの営業日数で割った1営業日あたり件数を併記します

【頑健性チェック】

  • 好成績の曜日・月が特定の1日や少数銘柄に偏っていないか、最も件数が多かった1日のシェア・上位3日のシェア・上位銘柄のシェアを全区分で算出します
  • 集中が判明した区分については、その日を除いた再集計結果も併記します

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2.検証結果

(1) 曜日別リターン――金曜のストップ高が最も強い

曜日別ストップ高・ストップ安の翌日/5営業日後リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

左のストップ高から見ていきます。翌営業日の終値まで持った場合の平均リターンは、金曜+5.688%が突出し、以下、月曜+4.180%、火曜+3.884%、木曜+3.415%、水曜+2.856%と続きます。勝率でも金曜63.0%が最高で、次点の月曜56.9%を約6.2ポイント引き離しました。中央値で比べても金曜+4.014%に対し水曜+0.891%と差は明確で、一部の大化け銘柄が平均を押し上げているわけではありません。

翌朝の寄り付きで売った場合(翌日ON)も、金曜発生分は+6.841%・勝率74.4%で最上位でした。ここで注目すべきは、どの曜日も翌日CCが翌日ONを下回っている点です。金曜で言えば寄り付きまでが+6.841%、そこから引けまで持つと+5.688%に縮みます。ストップ高の翌日は寄り付きが高く始まり、その後は平均的に値を消していく「寄り天」型の動きになりやすい、ということです。

右のストップ安は正反対です(こちらは後述の理由から2024年8月5日・6日を除いた集計)。全曜日で翌日・5営業日後ともマイナス、勝率も20.4〜34.0%と5割を大きく下回ります。最も深いのは水曜の翌日-7.259%、5営業日後で見ると木曜-8.857%です。ストップ安に対する「突っ込み買い」は、少なくとも曜日を問わず機能していません。

(2) 発生件数は月曜が最多――ただし祝日の影響を外して比較する

発生件数の単純比較では月曜1,416件・火曜1,410件とほぼ横並びに見えます。しかし期間中の営業日数は月曜170日・火曜191日と大きく違います。祝日が月曜に集中する制度(成人の日・海の日・敬老の日・スポーツの日など)があるためです。

そこで1営業日あたりに直すと差がはっきりします。月曜8.33件/日に対し、火曜7.38件、木曜6.66件、水曜6.54件、金曜6.30件/日。月曜は金曜の約1.32倍の頻度でストップ高が出ています。週末に積み上がったニュースが月曜にまとめて株価へ反映される構図で、「材料の数」は月曜が最も多い。一方で「1件あたりの質」は金曜が最も高い、という対照的な結果になりました。

ストップ安も同じ傾向で、1営業日あたりは月曜1.85件(特異日除外後)に対し水曜1.18件と、やはり月曜に集中します。悪材料も好材料も、週末を挟んで月曜に噴き出しやすいということです。

(3) 金曜の「週末リスク」は数字に表れているか

本検証の最大の論点に答えます。「土日を挟むぶん値動きのブレが大きい」が正しいなら、金曜発生分の翌日リターンの標準偏差は他曜日より明確に大きくなるはずです。実測値は以下の通りでした。

金曜14.16%、月曜14.39%、木曜13.41%、火曜13.25%、水曜13.14%。金曜は月曜よりも小さく(差-0.24ポイント)、5曜日の中では2番目という位置づけです。金曜から翌営業日までは平均3.15日(暦日ベース)と、他曜日の1.01〜1.06日の3倍の時間が経過するにもかかわらず、値動きのばらつきはほとんど増えていません。

リターンをばらつきで割った効率で比べると差はさらに際立ちます。標準偏差1単位あたりのリターンは金曜0.402に対し、月曜0.290、水曜0.217。金曜は水曜の約1.8倍の効率です。「週末ギャップのぶん余計なリスクを取っている」という前提は、少なくともストップ高に関しては数字で確認できませんでした。

ただしストップ安は話が別です。金曜のストップ安は標準偏差15.53%と全曜日で最大、5営業日後は-7.102%・勝率25.0%まで悪化します。週末リスクは「下げている銘柄」にだけ非対称に効くという理解が実態に近いといえます。

(4) 月別――2月に集中、7月と9月は数も質も落ちる

月別ストップ高・ストップ安の発生件数と翌日リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

月別のストップ高発生件数は2月が1営業日あたり11.47件で最多、10月の4.80件が最少でした。2月は本決算・第3四半期決算の発表が集中し、上方修正や増配といった好材料が一気に出る時期です。件数だけでなく質も高く、翌日CCは+5.179%・勝率60.7%と上位に入ります。

翌日CCが最も高いのは11月の+5.537%(勝率64.1%)、最も低いのは9月の+2.129%(勝率45.8%)です。5営業日後まで延ばすと3月-1.129%、9月-2.993%とマイナスに沈み、期末・中間期末をまたぐ月は上昇が続きにくいことが分かります。逆に2月+6.575%、8月+8.951%は5日間の伸びが大きい月です。

ストップ安は例年1営業日あたり1〜2件程度と少なく、月別の差はストップ高ほど安定しません。件数が最も多いのは2月(174件)と5月(162件)で、決算発表シーズンに下方修正が出る構図が読み取れます。

(5) 完全データ表

▼ストップ高 曜日別(全6,570件)

発生曜日件数1営業日
あたり
翌日ONON勝率翌日CCCC中央値CC勝率CC標準
偏差
5日後5日勝率
月曜1,4168.33+6.135%74.2%+4.180%+2.282%56.9%14.39%+2.500%45.4%
火曜1,4107.38+5.682%68.3%+3.884%+2.017%56.2%13.25%+3.481%49.6%
水曜1,2506.54+5.727%70.9%+2.856%+0.891%52.6%13.14%+3.104%45.3%
木曜1,2856.66+5.987%69.3%+3.415%+1.500%55.3%13.41%+3.621%47.2%
金曜1,2096.30+6.841%74.4%+5.688%+4.014%63.0%14.16%+4.408%48.6%
全体6,5707.01+6.061%71.4%+3.993%+2.104%56.7%13.71%+3.396%47.2%

▼ストップ安 曜日別(全1,330件/2024年8月5日・6日を除外)

発生曜日件数1営業日
あたり
翌日ONON勝率翌日CCCC中央値CC勝率CC標準
偏差
5日後5日勝率
月曜3121.85-2.892%29.8%-2.716%-3.436%34.0%12.58%-3.259%37.5%
火曜2451.29-4.625%19.2%-5.116%-5.761%25.3%12.49%-5.338%29.4%
水曜2261.18-5.229%20.4%-7.259%-6.373%20.4%13.40%-6.536%27.4%
木曜2711.40-4.533%21.4%-5.798%-6.486%21.8%14.84%-8.857%20.3%
金曜2761.44-3.546%26.8%-4.125%-5.031%26.1%15.53%-7.102%25.0%
全体1,3301.42-4.079%23.9%-4.851%-5.351%25.9%13.90%-6.137%28.2%

▼月別(ストップ高は全件、ストップ安は2024年8月5日・6日を除外)

ストップ高
件数
1営業日
あたり
翌日CCCC勝率5日後5日勝率ストップ安
件数
翌日CC5日後
1月4936.49+3.839%55.0%+4.161%44.4%60-7.485%-7.649%
2月84911.47+5.179%60.7%+6.575%53.0%174-6.726%-9.023%
3月5586.72+3.147%50.4%-1.129%35.8%110-3.729%-8.496%
4月5646.80+3.036%53.0%+3.152%47.9%122-1.909%-0.080%
5月7098.97+4.228%59.9%+4.651%52.6%162-4.658%-5.679%
6月5686.68+4.239%55.6%+1.968%40.5%89-4.615%-2.885%
7月4705.47+2.201%50.4%+0.417%41.7%113-3.574%-6.524%
8月※64110.17+5.316%64.0%+8.951%59.3%112-3.537%-0.800%
9月3195.41+2.129%45.8%-2.993%36.7%62-2.479%-3.896%
10月4084.80+3.466%56.4%+0.653%41.2%95-6.050%-7.420%
11月5517.06+5.537%64.1%+4.028%54.8%146-7.394%-9.850%
12月4405.12+3.366%55.5%+3.747%45.2%85-4.885%-9.419%

※8月のストップ高は特異日を含む全件で641件・翌日CC+5.316%。除外後は556件・翌日CC+5.564%です。

(6) 頑健性チェック――ストップ安の月曜は「たった1日」でできていた

好成績の区分が特定の1日や少数銘柄に偏っていないかを確認しました。結果は下表の通りで、ストップ高は極めて分散している一方、ストップ安は特定日への集中が深刻という明確な差が出ました。

区分件数発生した
日数
最も多い1日の
シェア
上位3日
シェア
対象
銘柄数
最多銘柄
シェア
上位5銘柄
シェア
ストップ高・月曜1,4161693.0%6.6%8471.06%3.32%
ストップ高・火曜1,4101896.0%10.6%8840.92%3.19%
ストップ高・水曜1,2501902.4%6.2%7860.96%3.60%
ストップ高・木曜1,2851912.6%6.5%8100.93%3.04%
ストップ高・金曜1,2091922.0%5.8%7791.32%3.80%
ストップ安・月曜79911261.0%67.0%6530.88%2.88%
ストップ安・火曜2471158.9%15.8%2094.86%9.31%
ストップ安・水曜2261067.1%16.4%1954.42%8.85%
ストップ安・木曜2711186.6%14.0%2214.06%8.49%
ストップ安・金曜2761235.8%13.4%2265.07%9.42%

ストップ高は全6,570件が931日・1,853銘柄に分散しており、最も件数が多かった1日でも全体の1.28%、最も多く登場した銘柄でも1.04%にすぎません。曜日別に見ても最頻日のシェアは2.0〜6.0%の範囲で、金曜に至っては最頻日シェア2.0%・192日に分散と最も偏りが小さい区分です。金曜が強いという結論は、特定のイベント日に依存したものではありません。

問題はストップ安です。全1,819件のうち26.8%が2024年8月5日の1日に集中していました。月曜に限れば61.0%、つまり月曜のストップ安は6割超がこの1日で構成されていたことになります。この日は歴史的な急落が起きた日で、翌日以降は記録的な急反発となりました。集計をそのまま使うと「月曜のストップ安は翌日+3.529%・5営業日後+11.018%で買い場」という、実態とかけ離れた結論が出てしまいます。

そこで本稿では、8月5日と急反発した8月6日を除いた1,330件をストップ安の主データとしました。除外後の月曜は翌日-2.716%・5営業日後-3.259%と、他曜日と同じくマイナス圏に戻ります。1日の暴落が結論を丸ごとひっくり返す――バックテストを読むときは、必ず件数の分布まで確認する必要があるという好例です。なお、ストップ高側は同じ2日を除いても金曜の翌日CCは+5.688%・勝率63.0%とほぼ変わらず、結論は動きませんでした。

3.なぜ曜日で差が出るのか

曜日による差は偶然ではなく、市場参加者の行動サイクルから説明がつきます。数値と対応づけて整理します。

  1. 週末のニュースフローが月曜に集中する:企業の適時開示は平日に出ますが、新聞・雑誌報道や海外市場の動き、政策発表は土日にも積み上がります。その結果、月曜は1営業日あたり8.33件と最も多くのストップ高が発生します(金曜6.30件の約1.32倍)。材料の「量」は月曜がピークです。
  2. 金曜まで買い上がる資金は「本気度」が高い:週末を持ち越すリスクを嫌う短期資金は、金曜の後場に手仕舞う傾向があります。それでも大引けまでストップ高に張り付くということは、売り圧力を吸収してなお買い切る需要があったことを意味します。この選別効果が、金曜の翌日CC+5.688%・勝率63.0%という質の高さにつながっていると考えられます。
  3. 個人投資家は土日に銘柄を検討する:平日は仕事で相場を見られない層が、土日にスクリーニングやチャート確認を行い、月曜の寄り付きに注文を入れます。金曜ストップ高銘柄は週末の話題になりやすく、翌日ONが+6.841%・勝率74.4%と全曜日最高になるのは、この「週末の宿題効果」で説明できます。
  4. 週央は新規材料が枯れる:水曜は翌日CC+2.856%・勝率52.6%と最も弱い曜日でした。週初の材料が出尽くし、週末に向けた新規材料はまだ出ていない、いわば端境期です。決算発表も引け後の集中日は火曜・木曜・金曜に寄りやすく、水曜のストップ高は相対的にサプライズの小さいものが混じりやすくなります。
  5. 機関投資家の週次リバランス:週の半ばはインデックス連動資金やリスクパリティ型の運用でポジション調整が入りやすく、個別材料に対する追随買いが弱まります。水曜の5営業日後リターンが+3.104%と伸び悩むのも、この需給要因と整合的です。
  6. 悪材料は週末に増幅される:ストップ安では金曜発生分の標準偏差が15.53%と最大になりました。不祥事・下方修正・監理銘柄指定といった悪材料は、土日の報道で解説記事が出て理解が広がり、月曜にさらなる売りを呼びます。5営業日後-7.102%という数字は、週末が「悪材料の増幅装置」として働くことを示しています。
  7. 好材料と悪材料では時間の意味が逆になる:好材料は時間が経つほど買い手が増え(金曜ストップ高が最強)、悪材料は時間が経つほど売り手が増える(金曜ストップ安が最悪)。「週末をまたぐな」という格言は、方向を区別せずに語られてきたために誤解を生んだと考えられます。

4.データが示す正解戦略

6,570件のストップ高と1,819件のストップ安から導かれる、曜日の使い方は次の通りです。

  • 金曜のストップ高は最も期待値が高い区分:翌日CC+5.688%・中央値+4.014%・勝率63.0%。年間約318件のペースで発生し、機会量も十分です
  • 水曜のストップ高は評価を一段下げる:翌日CC+2.856%・勝率52.6%。同じストップ高でも金曜との差は約2.0倍あり、資金配分を絞る判断材料になります
  • 決済は翌日の寄り付き〜前場が基本:全曜日で翌日ON(+6.061%)が翌日CC(+3.993%)を上回ります。引けまで引っ張るほど平均リターンは削られます
  • 5営業日保有は平均に頼らない:5日後の平均は+3.396%ですが中央値は-0.903%。半数以上はマイナスで終わり、一部の大幅上昇が平均を押し上げる構造です。短期決済のほうが再現性は高くなります
  • ストップ安の押し目買いは全曜日で不利:除外後の全体で翌日CC-4.851%・勝率25.9%、5営業日後-6.137%。特に金曜発生分は週末を挟んで-7.102%まで沈みます
  • 保有中にストップ安を食らったら週末持ち越しは避ける:金曜ストップ安の翌日勝率は26.1%。「週末をまたぐな」という格言はここでこそ有効です
  • 月別では2月・5月・11月を厚めに:翌日CCはそれぞれ+5.179%・+4.228%・+5.537%。逆に7月(+2.201%)・9月(+2.129%)は期待値が落ちます

5.実践活用

(1) 大引け後のスクリーニング手順

  • 取引ツールの条件検索で、当日の終値が前日比で値幅制限いっぱいまで動いた銘柄(引けストップ)を抽出します
  • 抽出した銘柄に「今日は何曜日か」というタグを付けるだけで、期待値の階層が分かります。金曜>月曜・火曜>木曜>水曜の順です
  • ザラ場で一度ストップ値に触れただけで引けが緩んだ銘柄は、本検証の対象外です。大引けまで張り付いたかどうかを必ず確認してください
  • 1営業日あたりの発生件数は平均7.01件。毎日大量に出るわけではないので、候補は数銘柄に絞られます

(2) エントリーとイグジット

  • エントリー:大引け間際、またはストップ高が確定した後の時間外取引。ストップ高で買い気配のまま引けた銘柄は当日中に買えないことも多く、その場合は翌日の寄り付きが現実的な入り口になります
  • 基本のイグジット:翌営業日の寄り付き(翌日ON基準で全体+6.061%・勝率71.4%)
  • 金曜発生分のイグジット:月曜の寄り付き(+6.841%・勝率74.4%)か、月曜の引け(+5.688%・勝率63.0%)。金曜発生分は引けまで持っても劣化が小さいのが特徴です
  • ロスカット:翌日の寄り付きが前日終値を下回って始まった場合は、戻りを待たず早めに撤退する判断が有効です

(3) 曜日フィルターと月カレンダーの組み合わせ

  • 期待値が高いのは「2月・5月・11月の金曜に発生した引けストップ高」という組み合わせです。ただし条件を重ねるほど該当件数は減り、統計的な信頼度も下がる点は意識してください
  • 逆に避けたいのは「9月・3月の水曜」。5営業日後の平均が3月-1.129%・9月-2.993%とマイナスに沈む月と、最弱曜日の組み合わせです
  • 曜日は単独の売買根拠ではなく、他の条件(材料の内容・出来高・時価総額・過熱度)に掛け合わせる「重み付け」として使うのが実践的です

(4) ストップ安を保有してしまったときの対応

  • ストップ安の翌日は全曜日でマイナス。勝率も20.4〜34.0%と分が悪く、「明日戻るはず」という期待は統計的に支持されません
  • 特に金曜のストップ安は5営業日後-7.102%。週末を挟むと傷が深くなりやすいため、金曜のうちに方針を決めておくことが重要です
  • 反発を狙うにしても、市場全体が急落した日のストップ安と、個別の悪材料によるストップ安はまったく別物です。前者は指数の戻りとともに戻る可能性がありますが、後者は業績や信用に関わる問題が残ります

6.注意点とリスク

  • 手数料とスリッページで実リターンは目減りします:本検証は終値・始値をそのまま用いた理論値です。往復の売買手数料、寄り付きの気配値と実際の約定価格の差(スリッページ)を差し引くと、数値は確実に低下します。特に平均+3.993%といった1%台〜数%のエッジは、コスト次第で大きく削られます
  • ストップ高の銘柄は買いたい価格で買えないことがあります:大引けストップ高は買い注文が売り注文を大きく上回った状態です。当日中に買えず、翌日も気配のまま上に飛ぶケースがあり、検証上の「当日終値で買えた前提」は現実には成立しない場面があります
  • 平均と中央値の乖離:5営業日後リターンは平均+3.396%に対し中央値-0.903%。少数の大幅上昇が平均を押し上げており、「毎回この平均が取れる」という読み方は誤りです
  • 特定日への集中:ストップ安は全体の26.8%が2024年8月5日に集中していました。本稿ではこの日を除いた集計を主データとしていますが、暴落局面ではストップ安が一斉に発生し、通常時とはまったく異なる値動きになります
  • 検証期間の地合い:2022年10月以降は日本株が総じて上昇した局面を多く含みます。ストップ高の翌日リターンが全曜日でプラスなのは、この地合いに支えられている可能性があります。長期の弱気相場では数値が変わり得ます
  • 曜日は補助的な条件です:曜日だけで銘柄を選ぶ手法ではありません。材料の内容、需給、時価総額といった一次情報の評価が先にあり、曜日はその優先順位を微調整する材料と位置づけてください
  • 値幅制限の制度変更リスク:値幅制限のテーブルや、連続してストップ配分となった場合の制限値拡大ルールは、取引所の判断で見直される可能性があります。制度が変われば発生件数も性質も変化します
  • 過去の傾向であり、将来の成果を保証するものではありません:本記事の数値は2022/10/03〜2026/07/31の実測値です。同じ傾向が今後も続く保証はなく、投資判断は自己責任でお願いします

7.よくある質問(FAQ)

Q. 金曜のストップ高は本当に持ち越して良いのですか?

A. 本検証の期間では、金曜に発生した引けストップ高1,209件の翌営業日リターンは平均+5.688%・勝率63.0%で、5曜日の中で最も良好でした。標準偏差も14.16%と月曜の14.39%より小さく、週末を挟むことでリスクが増えている形跡は確認できませんでした。ただし手数料やスリッページを控除すると数値は下がりますし、将来も同じ傾向が続く保証はありません。

Q. なぜ金曜だけ成績が良いのですか?

A. 週末を持ち越すリスクを嫌う短期資金が金曜の後場に売却する中で、それでも大引けまでストップ高に張り付くには相応の買い需要が必要です。この「選別」が効いていると考えられます。加えて土日に個人投資家が銘柄を検討し、月曜の寄り付きに注文が集まりやすいことも、金曜発生分の翌日オーバーナイトが+6.841%・勝率74.4%と最高になった一因とみられます。

Q. ストップ高が最も多く発生する曜日はどこですか?

A. 1営業日あたりでは月曜が8.33件で最多、次いで火曜7.38件、木曜6.66件、水曜6.54件、金曜6.30件でした。祝日の多くが月曜に設定されているため単純な件数では差が見えにくく、営業日数で割って比較する必要があります。週末に積み上がった材料が月曜にまとめて反映される構図です。

Q. ストップ安は翌日に反発しないのですか?

A. 2024年8月5日・6日を除いた1,330件では、翌営業日の平均が-4.851%・勝率25.9%、5営業日後は-6.137%でした。曜日を問わずマイナスで、突っ込み買いは統計的に不利です。例外は市場全体が暴落した日で、この日は翌日以降に記録的な急反発となりましたが、そうした局面をあらかじめ見分けるのは容易ではありません。

Q. なぜ2024年8月5日を除いて集計しているのですか?

A. この1日だけでストップ安全体の26.8%、月曜のストップ安に限れば61.0%を占めていたためです。含めたままだと「月曜のストップ安は翌日+3.529%で買い場」という、平時には再現しない結論になってしまいます。集計結果が特定の1日に支配されていないかを確認するのは、バックテストの基本的な作法です。

Q. 翌日は寄り付きと引け、どちらで売るべきですか?

A. 全体では翌日オーバーナイト(終値→翌日始値)が+6.061%、翌日の引けまで持つと+3.993%でした。寄り付き後は平均して値を消すため、基本は寄り付き決済が有利です。ただし金曜発生分は引けまで持っても+5.688%と劣化が小さく、月曜の値動きを見ながら判断する余地があります。

Q. 月別ではどの時期を狙うべきですか?

A. 翌営業日リターンが高いのは11月(+5.537%・勝率64.1%)、11月(+5.537%)、5月(+4.228%)と、決算発表が集中する月です。逆に9月(+2.129%)や9月(+2.129%)は期待値が落ちます。ただし月別は1区分あたりのサンプルが少なく、曜日別より結論の安定性は劣ります。

8.まとめ

東証4,106銘柄・937営業日から抽出したストップ高6,570件・ストップ安1,819件を、曜日別・月別に集計しました。要点は5つです。

  1. 金曜のストップ高が最強:翌営業日CC+5.688%・中央値+4.014%・勝率63.0%で全曜日1位。最弱の水曜(+2.856%・勝率52.6%)の約2.0倍でした。
  2. 「週末を挟むとブレる」は確認できず:金曜の翌日リターン標準偏差は14.16%で、月曜の14.39%より小さい水準。暦日で平均3.15日空くにもかかわらず、ばらつきはほとんど増えていません。
  3. 件数のピークは月曜:1営業日あたり8.33件と金曜の約1.32倍。材料の「量」は月曜、1件あたりの「質」は金曜という住み分けです。
  4. ストップ安は曜日を問わず翌日も下落:除外後の全体で翌日-4.851%・勝率25.9%。特に金曜発生分は5営業日後-7.102%まで沈み、「週末を持ち越すな」はこちらにこそ当てはまります。
  5. 頑健性チェックは必須:ストップ安は全体の26.8%が2024年8月5日の1日に集中していました。ストップ高側は最頻日でも1.28%と分散しており、結論の信頼度がまったく違います。

「金曜のストップ高は持ち越すな」という経験則は、少なくとも本検証の期間においては、データが支持しませんでした。むしろ週末を越えてでも買われた銘柄には、それだけの理由があると読むほうが実態に近いといえます。一方で下げている銘柄を週末に持ち越すリスクは実在します。次にストップ高・ストップ安の銘柄を見かけたら、値動きの大きさだけでなく「今日が何曜日か」を一度確認してみてください。同じ制限値まで動いた1本の陽線・陰線でも、その先の期待値は曜日によってはっきりと違います。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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