無料レポート 直近25年分の統計データで分かる「株の買い時・売り時」
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「出来高は株価に先行する」――出来高急増を買いサインとする考え方は、株式投資で最もよく知られたセオリーの一つです。しかし、数十円〜数百円の低位株が出来高を爆発させて急騰する場面と、1単元100万円を超える値がさ株に大商いが入る場面とでは、翌日に同じことが起きるのでしょうか。「同じ出来高5倍」でも、買っていい出来高とそうでない出来高があるはずです。データで決着をつけます。

本記事では、東証全銘柄4,797銘柄・2022年10月3日〜2026年7月31日の全営業日データ3,984,696件を、株価帯5段階(300円未満〜10000円以上)×出来高変化率5段階(過去20日平均比0.5倍未満〜5倍以上)の25セルに分類し、それぞれの翌日リターンと5日後リターンを集計しました。

結論を先にお伝えします。翌日買ってよかったのは値がさ株(10000円以上)×出来高5倍以上だけでした。翌日+0.169%/勝率52.7%、5日後は+0.791%/勝率54.5%と全25セル中最強です。一方、低位株(300円未満)×出来高5倍以上は平均+0.179%と一見高く見えますが、中央値は-0.345%、勝率はわずか40.1%。約6割の銘柄が翌日下落し、ごく一部の暴騰銘柄が平均を吊り上げる「宝くじ型」でした。そして中間帯(300〜10000円)の出来高5倍以上は翌日リターンがすべてマイナスです。

「出来高爆発を追いかけるべきか」は、株価帯を見れば答えが変わる――約399万件のデータが示したシンプルな法則を、順を追って解説します。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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検証対象:東証全銘柄 4,797銘柄(期間中に株価・出来高データが存在する銘柄)
検証期間:2022年10月3日〜2026年7月31日(約3年10ヶ月)
サンプル数:3,984,696件(銘柄×営業日、翌日リターン集計対象)

【分類の定義】

  • 出来高変化率 = 当日出来高 ÷ 過去20営業日の平均出来高(当日は含めない)。「0.5倍未満/0.5〜1倍/1〜2倍/2〜5倍/5倍以上」の5帯に分類
  • 株価帯 = 当日終値で「300円未満/300〜1000円/1000〜3000円/3000〜10000円/10000円以上」の5帯に分類(株式分割調整後の株価を使用)
  • 翌日リターン = 翌営業日終値 ÷ 当日終値 − 1(当日終値で買い、翌日終値で売った場合に相当)
  • 5日後リターン = 5営業日後終値 ÷ 当日終値 − 1
  • 終値と出来高がプラスの営業日のみ集計。上場直後など過去20日分の出来高がない日は除外

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2.検証結果

(1) 25セルの全体像――出来高が増えるほど翌日は弱く、例外は「両端」だけ

出来高変化率×株価帯 翌日リターンヒートマップ

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

全サンプルの翌日リターン平均は+0.066%/勝率47.9%です。ヒートマップを横方向に見ると、どの株価帯でも出来高2倍を超えたあたりから翌日リターンが失速し、出来高5倍以上では300〜1000円が-0.034%、1000〜3000円が-0.044%、3000〜10000円が-0.046%と、中間3帯がすべてマイナスに沈みます。「出来高急増は買い」という単純なセオリーは、翌日リターンで見るかぎり中間帯では機能していません。

例外は右端の列の両端です。300円未満×5倍以上が+0.179%、10000円以上×5倍以上が+0.169%と、低位株と値がさ株だけがプラスのU字型になりました。ただし同じプラスでも中身は正反対で、勝率は300円未満が40.1%、10000円以上が52.7%。この差の意味を次で掘り下げます。

(2) 出来高5倍以上の「爆発日」だけ抽出――値がさ株は本物、低位株は宝くじ

出来高5倍以上時の株価帯別 翌日・5日後リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

出来高5倍以上に爆発した日だけを株価帯別に並べると、値がさ株(10000円以上)の5日後+0.791%/勝率54.5%が全25セル中最強です。翌日+0.169%から5日後+0.791%へとリターンが約4.7倍に伸びており、買いが1日で終わらず数日間続くことを示しています。中央値も翌日+0.093%、5日後+0.262%とプラスで、平均・中央値・勝率の3指標がそろってプラスなのはこのセルだけでした。

対照的に、低位株(300円未満)は平均こそ翌日+0.179%/5日後+0.274%ですが、中央値は翌日-0.345%/5日後-0.820%と大幅マイナス、勝率も40.1%〜40.5%にとどまります。つまり10回買えば6回は負け、ごく一部の暴騰銘柄が平均値を吊り上げているだけ。「平均リターンはプラスなのに、典型的な結果はマイナス」という宝くじ構造です。

(3) 完全データ表

まず主役である「出来高5倍以上」の行を株価帯別に示します。

株価帯件数翌日平均翌日中央値翌日勝率5日後平均5日後勝率
300円未満8,544+0.179%-0.345%40.1%+0.274%40.5%
300〜1000円24,633-0.034%-0.131%44.3%+0.182%44.7%
1000〜3000円25,624-0.044%-0.072%45.8%+0.079%47.5%
3000〜10000円6,179-0.046%+0.000%46.3%+0.021%48.1%
10000円以上2,418+0.169%+0.093%52.7%+0.791%54.5%

低位株と値がさ株の平均はほぼ同水準(+0.179%と+0.169%)なのに、中央値は-0.345%と+0.093%で正反対――ここが本検証の核心です。次に、株価帯を無視して出来高変化率だけで集計した表です。

出来高変化率(全株価帯合算)件数翌日平均翌日勝率5日後平均5日後勝率
0.5倍未満946,911+0.071%46.4%+0.313%50.5%
0.5〜1倍1,641,731+0.076%48.6%+0.312%51.7%
1〜2倍1,044,980+0.064%48.6%+0.330%51.4%
2〜5倍283,676+0.013%47.4%+0.366%49.5%
5倍以上67,398-0.004%44.8%+0.161%45.9%

出来高5倍以上をまとめて買うと翌日-0.004%/勝率44.8%と、全体平均(+0.066%/47.9%)を下回ります。「出来高急増の無差別な追いかけ」は平均以下の負け戦略であり、株価帯フィルターを通して初めてエッジが現れます。なお値がさ株は出来高2〜5倍では-0.020%と機能せず、5倍以上の「爆発」ではじめて点火する点も見逃せません。

3.なぜ低位株の出来高爆発はダメで、値がさ株の出来高爆発は買いなのか

25セルの明暗は、「誰がその出来高を作っているか」という市場参加者の構造から説明できます。

  1. 低位株の出来高爆発=短期投機資金の回転売買:数万円から買える低位株は、材料が出ると個人の短期資金が一気に殺到します。急騰当日が需給のピークになりやすく、翌日は利益確定売りが先行。勝率40.1%・中央値-0.345%という数字は「大半は翌日高値掴み」の証拠です。
  2. ごく一部の連騰銘柄が平均を吊り上げる宝くじ構造:低位株は値幅制限の関係で連続ストップ高など極端な上昇が起きやすく、上位数%の暴騰が平均値を押し上げます。平均+0.179%の源泉は「たまの大当たり」であり、狙って引ける再現性はありません。
  3. 値がさ株の出来高爆発=機関投資家の本物のフロー:1単元100万円を超える値がさ株は短期の個人投機が入りにくく、出来高5倍の主役は決算や業績評価に基づく機関投資家の売買です。大口の買いは1日で執行しきれず数日に分けて入るため、翌日+0.169%が5日後+0.791%まで伸びる「継続性」が生まれます。
  4. 中間帯は織り込みが速い:300〜10000円の中間帯は流動性も注目度も高く、材料は当日中に株価へ織り込まれます。翌日から参加しても残っているのは反動安で、5倍以上セルは-0.034%〜-0.046%とすべてマイナスです。
  5. 低位株は出来高に関係なく構造的に弱い:300円未満は出来高帯を問わず勝率が約40%(帯全体で40.4%)。業績不振や希薄化懸念を抱えた銘柄が多く含まれる株価帯であり、出来高というより銘柄の質そのものが足を引っ張っています。
  6. 値がさ株は閑散時でも底堅い:10000円以上は出来高0.5倍未満の閑散日でも翌日+0.080%/勝率51.7%。安定した株価帯に「機関の爆発的な買い」が重なったときだけ、突出したエッジが生まれるのです。

4.データが示す正解戦略

25セルの検証結果から導かれる結論はシンプルです。

  • 翌日買っていいのは「終値10000円以上×出来高5倍以上」だけ:翌日+0.169%/勝率52.7%、5日後+0.791%/勝率54.5%。平均・中央値・勝率すべてプラスの唯一のセルです。
  • 保有は翌日で降りず5営業日まで引っ張る:5日後リターンが翌日の約4.7倍。機関の買いフローが数日続く性質を利用します。
  • 低位株(300円未満)の出来高爆発は見送り:平均+0.179%に惑わされないこと。中央値-0.345%・勝率40.1%が実態です。
  • 中間帯(300〜10000円)の出来高5倍以上も翌日買いは期待値マイナス:-0.046%〜-0.034%。追いかけ買いの対象から外します。
  • 出来高2〜5倍の「中途半端な急増」は買い材料にしない:値がさ株でも-0.020%。シグナルとして採用するのは5倍以上の明確な爆発のみです。

5.実践活用――値がさ株・出来高爆発戦略の具体的フロー

(1) 大引け後のスクリーニング

  • 大引け後に「当日出来高 ÷ 過去20日平均出来高 ≥ 5倍」の銘柄を抽出する
  • そのうち終値10000円以上の銘柄だけに絞る(該当は月平均53件、1日あたり2〜3件)
  • 出来高急増の理由(決算・業績修正・自社株買い・指数イベントなど)をニュースや適時開示で確認する

(2) エントリーとイグジット

  • エントリー:当日大引け間際の成行買い、または翌日寄付き買い(検証値は当日終値基準)
  • イグジット:5営業日後の大引け売りを基本とする(5日後+0.791%/勝率54.5%)
  • ロスカット:保有中に-5%程度下落したら撤退し、次のシグナルを待つ

(3) 資金管理

  • 値がさ株は1単元100万円超のため、資金が限られる場合は単元未満株(1株単位の取引制度)を活用する
  • 1銘柄への集中は避け、シグナルが複数出た日は資金を分散する
  • 期待値は1トレードあたり1%未満の積み上げ型。レバレッジのかけすぎは想定外の下落で一発退場につながるため厳禁です

(4) 併用すると精度が上がるチェック項目

  • 材料の質:決算・上方修正など業績由来の出来高爆発は、思惑由来よりも買いの継続性が期待しやすい
  • 地合い:市場全体が急落している週はシグナルの信頼度が下がるため、ポジションを通常より小さくする
  • 過熱度:すでに数日間急騰した後の出来高爆発は織り込みが進んでいる可能性を考慮する

6.注意点とリスク

  • 低位株の流動性リスク:出来高が急増して見えても板が薄い低位株は多く、成行注文では数%滑ることがあります。ストップ高・ストップ安に張り付くと売買自体ができません。本検証が「低位株の出来高爆発は見送り」と結論づけた最大の実務的理由です。
  • 低位株のボラティリティリスク:300円未満×出来高5倍以上の5日後中央値は-0.820%。約6割の銘柄が下落し、値動きの振れ幅も極端です。「平均がプラスだから買える」という判断は危険です。
  • 手数料・スリッページで実リターンは目減りする:翌日+0.169%という期待値は、往復の売買コストでかなりの部分が相殺されます。実運用ではコスト負けしにくい5営業日保有(+0.791%)を基本にしてください。
  • サンプル数の偏り:値がさ株×5倍以上は2,418件と、25セルの中では相対的に少なめです。特定の決算シーズンや相場局面に偏る可能性があり、期間が変われば数値も変動します。
  • 資金負担と分散の難しさ:値がさ株は1単元の必要資金が大きく、少額資金では分散が困難です。単元未満株の活用や、シグナルを選別して件数を絞る工夫が必要です。
  • 株価帯の判定は分割調整後ベース:本検証は株式分割調整後の株価で帯を判定しているため、期間中に大幅な分割を行った銘柄は、過去時点の帯が当時の実際の売買価格と一部ずれる場合があります。
  • 過去の傾向であり将来を保証しない:本検証は2022年10月〜2026年7月の実績統計です。市場環境や参加者構造が変われば、同じ傾向が続く保証はありません。

7.よくある質問(FAQ)

Q. 出来高変化率はどうやって計算しますか?

A. 当日出来高 ÷ 過去20営業日の平均出来高(当日を含めない)で計算します。例えば過去20日の平均出来高が10万株で当日60万株なら6倍です。多くの証券ツールやスクリーナーに「出来高急増率」として同種の指標が用意されています。

Q. 低位株の出来高爆発は平均リターンがプラスなのに、なぜ買ってはいけないのですか?

A. 平均+0.179%は、ごく一部の暴騰銘柄が吊り上げた数字だからです。中央値は-0.345%、勝率は40.1%で、典型的な結果は「翌日下落」。どの銘柄が暴騰するかを事前に見分ける方法はなく、期待値の実現には宝くじ的な当たりを引き続ける必要があります。

Q. 値がさ株を買う資金がない場合はどうすればいいですか?

A. 単元未満株(1株単位で売買できる制度)を利用すれば、値がさ株でも数万円から投資できます。ただし単元未満株はリアルタイム約定ができない場合があるなど執行面の制約があるため、検証値どおりのリターンにならない可能性がある点は理解しておいてください。

Q. 出来高何倍からが「買っていい爆発」ですか?

A. 本検証では5倍以上で初めて明確なエッジが出ました。値がさ株でも2〜5倍では翌日-0.020%とほぼゼロで、中途半端な出来高増加はシグナルになりません。

Q. エントリーは当日大引けと翌日寄付きのどちらがいいですか?

A. 検証リターンは「当日終値で買った場合」の数値なので、忠実に再現するなら当日大引け間際の成行買いです。大引けに間に合わない場合は翌日寄付き買いでも構いませんが、寄付きが高く始まった分だけ期待値は下がると考えてください。

Q. 翌日売りと5日後売りはどちらがいいですか?

A. データ上は5営業日保有が優位です。値がさ株×出来高5倍以上は翌日+0.169%に対し5日後+0.791%と約4.7倍に伸びます。機関投資家の買いが数日かけて入る構造を考えると、1日で降りるのはもったいない選択です。

Q. この戦略だけで安定して勝てますか?

A. 単独での過信は禁物です。勝率54.5%・1トレード期待値1%未満の統計的優位性であり、負けトレードは普通に発生します。材料の質や地合いのチェックと分散投資を組み合わせ、あくまでポートフォリオの一戦術として使うことをおすすめします。

8.まとめ

東証全銘柄4,797銘柄・3,984,696件を株価帯×出来高変化率の25セルで検証した重要ポイントは以下のとおりです。

  1. 出来高5倍以上の爆発は株価帯で明暗が分かれる:中間帯(300〜10000円)は翌日-0.046%〜-0.034%とすべてマイナス。無差別な追いかけ買いは全体平均を下回る負け戦略です。
  2. 低位株(300円未満)の出来高爆発は宝くじ:平均+0.179%でも中央値-0.345%・勝率40.1%。ごく一部の暴騰が平均を吊り上げているだけで、典型的な結果は翌日下落です。
  3. 値がさ株(10000円以上)の出来高爆発だけが本物:翌日+0.169%/勝率52.7%、5日後+0.791%/勝率54.5%。平均・中央値・勝率がそろってプラスの唯一のセルで、機関投資家の継続的な買いフローが背景にあります。
  4. 正解は「終値10000円以上×出来高5倍以上を、5営業日保有」:シグナルは月平均53件。翌日で降りず5日引っ張ることでコスト負けも回避しやすくなります。

同じ「出来高爆発」でも、低位株では投機資金の回転、値がさ株では機関投資家の本物の買い――出来高の「量」ではなく「誰が作った出来高か」を株価帯で見分ける。これが約399万件のデータが教えてくれた結論です。なお、本検証はあくまで過去の傾向であり、将来の成果を保証するものではありません。資金管理とリスク管理を徹底したうえで、日々の銘柄選びに活かしてみてください。

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「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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