無料レポート 直近25年分の統計データで分かる「株の買い時・売り時」
無料で受け取る →

一目均衡表は、日本で生まれた数少ないテクニカル指標です。なかでも「雲」は目を引きます。株価が雲を上に抜けたら買い、雲の中は方向感がなく、雲の下は弱い――そんな説明を読んだことのある方も多いはずです。

その説明どおりに株価が動いていたのかを、東証全銘柄で確かめました。2022年10月3日から2026年8月8日までの3,977,377件(4,766銘柄・942営業日)から、雲を上に抜けた日110,485件、下に抜けた日110,478件を取り出して集計しています。

結論を先に述べます。雲抜けは買いシグナルとして機能していませんでした。上抜けた日の20営業日後は+1.121%で、市場全体の+1.295%を下回ります。翌日終値までだと-0.002%・勝率44.2%と、半分を割り込みました。

一方、売りシグナルとされる雲の下抜けは+1.561%・勝率55.3%。買いシグナルより売りシグナルのほうが成績が良いという、通説とは逆の形になっています。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

計算の手順をすべて開示します。

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後株価)。出来高がゼロの日は除外
  • 期間:2022/10/03〜2026/08/08(942営業日・4,766銘柄)
  • 転換線:過去9日の高値と安値の平均
  • 基準線:過去26日の高値と安値の平均
  • 先行スパン1:(転換線+基準線)÷2 を26日先行させたもの
  • 先行スパン2:過去52日の高値と安値の平均を26日先行させたもの
  • :先行スパン1と2に挟まれた帯。上限は2本の高いほう、下限は低いほう
  • 雲抜け(上):前日終値が雲の上限以下で、当日終値が雲の上限を上回った日
  • 雲割れ(下):前日終値が雲の下限以上で、当日終値が雲の下限を下回った日
  • 比較対象:同じ期間の全銘柄全日の平均(市場全体)

2.雲抜けと雲割れの成績

まず本題から見ます。

一目均衡表の雲抜け後の平均リターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区分件数翌日寄付き翌日終値勝率5営業日後勝率20営業日後勝率
雲を上抜けた日(買いシグナル)110,485+0.104%-0.002%44.2%+0.167%47.3%+1.121%51.4%
雲を下抜けた日(売りシグナル)110,478+0.146%+0.040%50.5%+0.387%52.9%+1.561%55.3%
市場全体(比較用)3,977,377+0.100%+0.067%48.0%+0.331%51.1%+1.295%53.4%

20営業日後を比べると、雲抜け+1.121%、雲割れ+1.561%、市場全体+1.295%。買いシグナルが最も低いという並びになりました。

翌日の数字はさらに極端です。雲抜けの翌日終値は-0.002%で、わずかながらマイナス。勝率も44.2%と、全体の48.0%を4ポイント近く下回ります。

興味深いのは翌日寄付きです。雲抜けは+0.104%と市場全体と同程度で寄り付きますが、そこから終値までに-0.106ポイント下げています。高く寄って、その日のうちに押し戻されるという形です。

3.雲の上にいる銘柄と、下にいる銘柄

雲抜けという「瞬間」ではなく、いま雲のどこにいるかという「状態」でも分けてみました。

雲に対する位置と、抜けた雲の厚さ別のリターン

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区分件数翌日寄付き翌日終値勝率5営業日後勝率20営業日後勝率
雲の上(全体の45.0%)1,788,214+0.084%+0.049%48.1%+0.278%51.0%+1.270%53.5%
雲の中(全体の13.7%)545,099+0.089%+0.048%47.5%+0.263%50.9%+1.200%53.1%
雲の下(全体の41.3%)1,644,064+0.121%+0.094%48.0%+0.410%51.4%+1.355%53.4%
市場全体(比較用)3,977,377+0.100%+0.067%48.0%+0.331%51.1%+1.295%53.4%

検証期間中、株価が雲の上にいた日は全体の45.0%、雲の中が13.7%、雲の下が41.3%でした。

リターンを見ると、雲の下にいる銘柄が最も高いという結果です。5営業日後は雲の下+0.410%に対し雲の上+0.278%。20営業日後でも+1.355%対+1.270%です。

雲の上は安全で雲の下は危険、という理解でチャートを見ていると、この数字は意外に映るかもしれません。ただ勝率で見ると雲の上51.0%、雲の下51.4%とほとんど差がありません。当たる確率は同じで、当たったときの値幅が雲の下のほうが大きい、という構造です。

4.「厚い雲は抜けにくい」を確かめる

一目均衡表には、雲の厚さに関する言い伝えもあります。厚い雲は抵抗が強く、そこを抜けたときは本物だ、というものです。

雲を上抜けた日を、そのとき雲がどれくらい厚かったかで分けました。

区分件数翌日寄付き翌日終値勝率5営業日後勝率20営業日後勝率
薄い雲(3%未満)69,983+0.037%-0.032%44.0%+0.162%47.7%+1.111%52.3%
中くらい(3〜7%)30,619+0.165%+0.024%44.8%+0.182%47.4%+1.080%50.4%
厚い雲(7%以上)9,883+0.392%+0.128%44.1%+0.153%44.5%+1.329%47.8%
市場全体(比較用)3,977,377+0.100%+0.067%48.0%+0.331%51.1%+1.295%53.4%

翌日寄付きだけを見れば、通説は当たっています。薄い雲を抜けた場合の+0.037%に対し、厚い雲を抜けた場合は+0.392%。10倍以上の差がつきました。厚い雲を抜けた翌朝は、確かに勢いよく買われています。

ところが5営業日後になると逆転します。薄い雲+0.162%、中くらい+0.182%、厚い雲+0.153%。しかも厚い雲の勝率は44.5%と、3つの中で最も低くなりました。

抜けた瞬間の派手さと、その後の成績は一致していません。「厚い雲を抜けたら本物」という理解でその翌日に買うと、いちばん高いところで買うことになりやすい、という結果です。

5.この結果はどれくらい信頼できるか

極端な結果が出たときは、それが特定の日に偏っていないかを確かめます。

雲抜け110,485件は942営業日に分散しており、最も多い上位3日を合わせても全体の1.5%でした。その3日を除いても20営業日後は+1.121%から+1.103%とほぼ変わりません。

雲割れのほうも+1.561%から+1.417%への低下にとどまり、市場全体を上回ったままです。どちらの結論も、特定の相場に引きずられたものではありません

年別では、雲抜けの20営業日後が2022年+0.077%、2023年+1.510%、2024年+0.291%、2025年+2.072%、2026年+0.712%。全ての年でプラスですが、2022年の+0.077%から2025年の+2.072%まで、相場環境による差は大きくなっています。

6.この検証の限界

結果を使う前に、次の点をご承知おきください。

  • 雲だけを見ています。一目均衡表には転換線と基準線の関係、遅行スパンなど他の要素もあります。それらを組み合わせた使い方は検証していません
  • パラメータは標準設定です。9日・26日・52日という一般的な組み合わせを使いました
  • 売買コストを含みません。手数料やスプレッド、実際に約定できるかは考慮していません
  • 終値ベースの判定です。日中に雲を抜けて引けで戻したケースは、抜けたと数えていません

7.よくある質問(FAQ)

Q. 一目均衡表の「雲」とは何ですか?

A. 先行スパン1と先行スパン2という2本の線に挟まれた帯のことです。先行スパン1は転換線(9日の中値)と基準線(26日の中値)の平均、先行スパン2は52日の中値。どちらも26日先に描くため、チャートの右側に帯として現れます。

Q. 雲を上抜けたら買いではないのですか?

A. この期間のデータでは確認できませんでした。雲を上抜けた110,485件の20営業日後は+1.121%で、市場全体の+1.295%を下回ります。翌日終値までだと-0.002%・勝率44.2%と、勝率は半分を切りました。

Q. 雲を下抜けたときのほうが成績が良いのですか?

A. はい。雲を下抜けた110,478件の20営業日後は+1.561%・勝率55.3%で、市場全体を上回りました。売りシグナルのほうが買いシグナルより良い成績になっています。

Q. 株価が雲の上にあると安心、というのは本当ですか?

A. リターンで見るとむしろ逆でした。雲の上にいる日の5営業日後は+0.278%、雲の下にいる日は+0.410%。20営業日後でも+1.270%対+1.355%で、雲の下にいる銘柄のほうが高くなっています。

Q. 「厚い雲は抜けにくい」という説明をどう考えればよいですか?

A. 抜けた後の値動きで見ると、厚い雲を抜けた場合の翌日寄付きは+0.392%と最も高く、勢いよく買われています。ところが5営業日後は+0.153%・勝率44.5%と最も低くなりました。抜けた瞬間は派手だが続かない、という形です。

Q. 株価が雲の中にいるときはどう考えればよいですか?

A. 検証期間中、雲の中にいた日は全体の13.7%でした。5営業日後は+0.263%、20営業日後+1.200%で、雲の上と下の中間というより、雲の上に近い水準です。方向感がないと言われる状態ですが、リターンの面で特別に不利ということはありませんでした。

Q. 一目均衡表は使えない指標ということですか?

A. 本記事が検証したのは「雲を抜けた翌日に買う」という単純なルールだけです。一目均衡表には転換線と基準線の関係、遅行スパンなど他の要素もあり、それらを組み合わせた使い方までは検証していません。雲を抜けたという事実そのものに平均的な優位性がなかった、という点をご理解ください。

8.まとめ

3,977,377件を数え直してわかったことを整理します。

  • 雲抜けは買いシグナルとして機能していませんでした。20営業日後+1.121%は市場全体の+1.295%を下回り、翌日の勝率は44.2%と半分を切ります
  • 売りシグナルとされる雲割れのほうが上でした。20営業日後+1.561%・勝率55.3%で、市場全体を上回っています
  • 雲の下にいる銘柄のほうがリターンは高くなりました。5営業日後で雲の下+0.410%、雲の上+0.278%です
  • 厚い雲を抜けた翌朝は最も高く寄ります(+0.392%)。しかし5営業日後は+0.153%・勝率44.5%と最も低くなりました
  • これらは特定の日に依存していません。発生上位3日を除いても数字はほとんど変わりませんでした

雲は視覚的にわかりやすく、チャートを見たときの印象を強く左右します。だからこそ「雲を抜けた」という事実に意味を感じやすいのだと思います。

ただ今回の数字が示していたのは、抜けた瞬間にはすでに多くの買いが入っており、そこから先に残っている値幅は大きくないという姿でした。目立つ形が現れたときほど、その形が何人の目に同時に映っているかを考えてみてください。

この記事を読んだ方におすすめ

西村剛が今買うべき最有望株を限定公開中

  • 3年連続で売買シグナルコンテスト優勝の実力
  • 日本証券アナリスト協会検定会員が厳選
  • メールアドレスだけで今すぐ確認できる
最有望株を無料で確認する

※ メールアドレスのみで登録できます。いつでも配信停止可能です。

<追伸>
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
↓↓↓↓↓

毎朝届く投資情報メルマガ「西村剛の勝ち株の流儀」(無料)はこちらから登録できます。
すでに22,000名が登録中。今なら10大特典を無料プレゼント中!