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「3日続けて陽線が出たら赤三兵、上昇の勢いが強い買いサイン」「3日続けて陰線が出たら黒三兵、下落が続く売りサイン」。ローソク足の入門書では、そう説明されることが多い形です。

この教えは、実際の株価で成り立っているのでしょうか。2014年1月1日から2026年9月14日までの東証全銘柄の日足、12,217,569件(5,424銘柄・3,103営業日)を使い、赤三兵と黒三兵が成立した後の値動きを数えました。

結論を先に述べます。赤三兵は、買いサインとして働いていませんでした。赤三兵(27,350件)の5日後は-0.039%・勝率45.3%で、全体平均の+0.238%・勝率50.1%を下回っています。

そして黒三兵のほうが、その後は強い結果でした。黒三兵(40,606件)の5日後は+0.690%・勝率52.7%で、全体平均を上回っています。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

  • データ:東証全銘柄の日足(分割調整後)。調整前の終値が100円未満の銘柄は除外
  • 期間:2014年1月1日〜2026年9月14日。20日後の結果が出そろった日までを評価対象にしています
  • 赤三兵:3日続けて陽線(終値が始値より高い)/終値が1本ごとに切り上がる/2本目・3本目の始値が前日の実体の内側/実体がいずれも1%以上
  • 黒三兵:3日続けて陰線/終値が1本ごとに切り下がる/2本目・3本目の始値が前日の実体の内側/実体がいずれも1%以上
  • 数え方:形が成立した最初の日だけを数えます(4本続いても二重に数えません)
  • 買うタイミング:3本目の引け。翌日終値、5営業日後、20営業日後の終値で評価
  • 比較対象:同じ条件の全銘柄全日(12,217,569件)の平均

定義は流派で細部が違うため、形を問わない「3連続陽線(陰線)」と、出来高・ヒゲ・実体の大きさで絞った型も並べました。

2.赤三兵の後は、全体平均を下回った

赤三兵と絞り込み型の翌日以降の平均リターン

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区分件数翌日終値勝率5日後勝率20日後
3連続陽線(形不問)587,858+0.021%46.3%+0.135%48.7%+0.702%
赤三兵27,350-0.011%44.5%-0.039%45.3%+0.454%
赤三兵+出来高増6,511-0.080%43.2%-0.305%42.4%+0.112%
赤三兵+上ヒゲ短い13,040-0.122%43.1%-0.264%44.1%+0.159%
赤三兵+先詰まり5,854+0.064%44.9%+0.034%45.3%+0.368%
全体平均(比較用)12,217,569+0.047%47.2%+0.238%50.1%+0.918%

翌日終値は-0.011%、5日後は-0.039%、20日後は+0.454%。全体平均(+0.047%、+0.238%、+0.918%)と比べると、どの期間でも下回っています。

全体平均との差は、5日後で-0.277%、20日後で-0.464%。勝率も5日後で45.3%と、全体平均の50.1%より低くなっています。形を問わない3連続陽線の5日後は+0.135%(差は-0.103%)で、形を厳しく絞るほど成績が悪くなる並びです。

  • 出来高が3日連続で増えた赤三兵(6,511件):5日後-0.305%・勝率42.4%。赤三兵全体よりさらに低い
  • 上ヒゲが短い赤三兵(13,040件):5日後-0.264%・勝率44.1%
  • 先詰まり(実体が1本ごとに縮む、5,854件):5日後+0.034%。警戒の形とされますが、赤三兵の中では最も差が小さい

勢いよく上がった形ほど伸びていません。「強そうに見える形」は、すでに買われすぎの局面に当たっているのかもしれません。理由は断定できませんが、買いサインとして働いた形跡はありませんでした。

3.黒三兵の後は、むしろ全体平均を上回った

黒三兵と絞り込み型の翌日以降の平均リターン

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区分件数翌日終値勝率5日後勝率20日後
3連続陰線(形不問)702,856+0.121%49.7%+0.357%51.7%+1.132%
黒三兵40,606+0.231%50.4%+0.690%52.7%+1.423%
黒三兵+出来高増7,287+0.289%52.2%+0.929%55.4%+1.746%
黒三兵+下ヒゲ短い20,468+0.277%51.3%+0.713%53.7%+1.395%
黒三兵+実体縮小7,294+0.215%48.8%+0.574%51.3%+1.186%
全体平均(比較用)12,217,569+0.047%47.2%+0.238%50.1%+0.918%

翌日終値は+0.231%・勝率50.4%、5日後は+0.690%・勝率52.7%、20日後は+1.423%。全体平均を、どの期間でも上回りました。

全体平均との差は、翌日終値で+0.184%、5日後で+0.452%、20日後で+0.505%。赤三兵とは正反対の向きです。形を問わない3連続陰線の5日後は+0.357%(差は+0.119%)で、ここでも三兵の形に絞るほど差が大きくなりました。

  • 出来高が3日連続で増えた黒三兵(7,287件):5日後+0.929%・勝率55.4%、20日後+1.746%。今回の全区分で最も高い
  • 下ヒゲが短い黒三兵(20,468件):5日後+0.713%・勝率53.7%
  • 実体が1本ごとに縮む黒三兵(7,294件):5日後+0.574%・勝率51.3%

赤三兵と同じく、勢いが強く見える形ほど、その後は逆に動く方向です。「黒三兵は売り、赤三兵は買い」という教科書の説明は、日足の平均では逆向きでした。

4.直前の位置で変わるのか:20日間の騰落率別

教科書では位置も重視されます。「下落の後の赤三兵は底打ちのサイン」といった具合です。3本の直前20日間の騰落率で5つに分けました(表の括弧内は構成比)。

直前20日の騰落率別の5営業日後の平均リターン

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区分件数翌日終値勝率5日後勝率20日後
-10%以下(18.2%)4,960+0.196%47.9%+0.477%48.7%+1.352%
-10〜0%(32.1%)8,740-0.107%43.0%-0.148%44.8%+0.266%
0〜+10%(30.8%)8,395-0.086%43.7%-0.108%44.7%+0.249%
+10〜+20%(11.3%)3,066+0.119%44.9%-0.089%44.1%+0.556%
+20%超(7.7%)2,091+0.045%45.5%-0.442%42.9%-0.195%
全体平均(比較用)12,217,569+0.047%47.2%+0.238%50.1%+0.918%

赤三兵は、直前20日で10%以上下げていた場合(4,960件)、5日後が+0.477%・20日後が+1.352%と、全体平均を上回って見えます。これが「底打ちの赤三兵」に近い形です。

一方、直前20日で20%を超えて上げていた場合(2,091件)は、5日後-0.442%・20日後-0.195%と、最も弱い結果でした。

区分件数翌日終値勝率5日後勝率20日後
-10%以下(13.6%)5,470+0.506%52.1%+1.455%55.2%+2.695%
-10〜0%(30.6%)12,294+0.190%50.2%+0.616%54.0%+1.447%
0〜+10%(31.8%)12,789+0.154%50.6%+0.469%52.8%+1.084%
+10〜+20%(13.4%)5,404+0.246%50.0%+0.776%51.6%+1.527%
+20%超(10.6%)4,277+0.186%48.8%+0.556%47.6%+0.859%
全体平均(比較用)12,217,569+0.047%47.2%+0.238%50.1%+0.918%

黒三兵は、位置にかかわらず5日後が全体平均を上回りました。とくに直前20日で10%以上下げていた場合(5,470件)は、5日後+1.455%・勝率55.2%、20日後+2.695%と最も高く、「下落の加速」とされる場面から戻る側に傾いていました。

5.発生日の集中と、上位日を除いた再集計

三兵のような形は、相場全体が一方向に動いた日に一斉に発生しやすい性質があります。その数日が結果を決めていないか、発生が多かった上位3日を除いて再集計しました。あわせて、同じ日の全銘柄平均を引いて相場全体の上げ下げを取り除いた値も見ています。

発生が多かった上位3日を除いた場合の5営業日後の平均

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区分件数上位3日の占有率5日後上位3日を除く同日平均との差(5日)同(20日)
赤三兵(全体)27,350 2.1%-0.039%-0.094%-0.339%-0.535%
赤三兵・下落後4,960 8.4%+0.477%+0.104%-0.407%-0.551%
黒三兵(全体)40,606 2.5%+0.690%+0.659%+0.354%+0.432%
黒三兵・下落後5,470 5.7%+1.455%+0.996%+0.727%+0.990%

まず全体の集中度です。赤三兵は2,977日にわたって発生しており、上位3日の占有率は2.1%でした。黒三兵も3,031日・上位3日の占有率は2.5%です。発生日の集中は、ほとんどありません。

上位3日を除いて再集計すると、赤三兵の5日後は-0.039%から-0.094%へ、黒三兵は+0.690%から+0.659%へ動きました。向きは変わらず、赤三兵は全体平均を下回り、黒三兵は上回ったままです。同日の全銘柄平均との差でも、赤三兵は5日後-0.339%・20日後-0.535%、黒三兵は5日後+0.354%・20日後+0.432%でした。

注意が必要なのは、位置で分けた結果のうち「下落後の赤三兵」です。直前20日で10%以上下げていた赤三兵は、上位3日の占有率が8.4%と他より高く、2024年8月8日だけで244件の発生がありました。2024年8月5日の急落から戻る局面にあたる日です。

この3日を除くと、5日後は+0.477%から+0.104%へ大きく縮みます。さらに同日の全銘柄平均との差は-0.407%で、マイナスでした。「下落後の赤三兵は底打ち」に見えた好成績は、相場全体が戻した数日に引っ張られた見かけ上の結果だったということです。

黒三兵の下落後は、上位3日を除いて+0.996%、同日の全銘柄平均との差は+0.727%と、縮みはしてもプラスを保ちました(上位3日の占有率は5.7%)。

6.年別の確認と、この検証の限界

年ごとに見ると、5日後の平均が全体平均を上回った年は、13年(2026年は途中まで)のうち赤三兵が3年、黒三兵が10年でした。同日の全銘柄平均との差でプラスだった年は、赤三兵が2年、黒三兵が12年です。どちらも特定の年だけの現象ではなさそうです。ただ、赤三兵の5日後は年によって-0.709%から+1.057%まで動いており、振れは小さくありません。

結果を使う前に、次の限界をご承知おきください。

  • 売買コストを含みません。手数料やスプレッド、約定できるかは考慮していません。差が+0.452%程度のため、コストを引くと残らない場面もあります
  • 上場廃止の扱い。データが途切れた銘柄は追えていません。黒三兵側は実際より良い数字になっている可能性があります
  • 連続した営業日とは限りません。出来高ゼロの日は除いているため、取引のなかった日をまたぐ並びが一部含まれます

7.よくある質問(FAQ)

Q. 赤三兵・黒三兵はどのように判定していますか?

A. 3日続けて同じ向きの足が出て、終値が1本ごとに切り上がる(切り下がる)こと、始値が前日の実体の内側にあること、実体がいずれも1%以上あることを条件にしました。成立した最初の日だけを数えています。

Q. 赤三兵は買いサインにならないのですか?

A. 今回の検証では働きませんでした。赤三兵の5日後は-0.039%・勝率45.3%で、全体平均の+0.238%・勝率50.1%を下回っています。過去の平均であり、個々の場面を決めるものではありません。

Q. 黒三兵は売りサインではなく買い場だったのですか?

A. 平均的にはそう読める結果でした。5日後は+0.690%・勝率52.7%で、同日の全銘柄平均との差も+0.354%です。ただし売買コストを含まない平均値なので、そのまま利益になるとは限りません。

Q. 出来高が増えている赤三兵なら信頼できますか?

A. 逆でした。出来高が3日連続で増えた赤三兵の5日後は-0.305%で、赤三兵全体の-0.039%よりさらに低くなりました。

Q. 下落のあとの赤三兵は底打ちのサインではありませんか?

A. 直前20日で10%以上下げていた赤三兵の5日後は+0.477%と良く見えますが、発生の多かった上位3日を除くと+0.104%まで下がります。相場全体が戻した日に発生が偏った結果と見るのが妥当です。

Q. 特定の日の相場急変に引っ張られた結果ではありませんか?

A. 確認しました。上位3日の占有率は赤三兵が2.1%、黒三兵が2.5%と、極端な集中はありません。上位3日を除いた5日後は赤三兵が-0.094%、黒三兵が+0.659%で、結論は変わりませんでした。

Q. この結果は毎年同じですか?

A. 完全には同じではありません。13年のうち、同日の全銘柄平均との差がプラスだった年は赤三兵が2年、黒三兵が12年でした。傾きは安定していますが、年ごとの振れは小さくありません。

8.まとめ

  • 赤三兵は買いサインになっていませんでした。5日後は-0.039%・勝率45.3%で、全体平均の+0.238%を下回ります
  • 黒三兵の後は全体平均を上回りました。5日後は+0.690%・勝率52.7%、20日後は+1.423%です
  • 勢いが強く見える形ほど、逆に動きました。出来高を伴う赤三兵は5日後-0.305%、黒三兵は+0.929%でした
  • 上昇後の赤三兵が最も弱く(5日後-0.442%)、下落後の黒三兵が最も強い(5日後+1.455%)結果でした
  • 「下落後の赤三兵は底打ち」は見かけ上の好成績でした。発生が多かった上位3日を除くと5日後は+0.104%まで縮み、同日の全銘柄平均との差はマイナスです
  • 発生日の集中は小さく(上位3日の占有率は赤三兵2.1%・黒三兵2.5%)、上位3日を除いても向きは変わりませんでした

3本続けて上がれば強そうに見え、3本続けて下がれば弱そうに見えます。ただ今回の数字が示したのは、見た目の勢いと、その後の値動きは、必ずしも同じ向きではないということでした。自分が使っている形のサインが実際に働いているのかは、一度数えて確かめる価値があります。

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<追伸>
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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