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「三空踏み上げには売り向かえ、三空叩き込みには買い向かえ」。酒田五法に由来するとされるこの相場格言は、窓あけ(ギャップ)が3回続いたら行き過ぎのサインだ、と教えています。

この格言を数字で確かめました。2014年1月6日から2026年9月17日までの東証全銘柄、延べ12,406,774件(5,430銘柄・3,103営業日)の日足から、窓あけ(上)752,418件・窓あけ(下)713,910件を取り出し、窓が何回続いたかで分けて集計しています。

結論を先に述べます。三空踏み上げに売り向かう優位は見えませんでした。3回目の窓あけ(上)の5営業日後は+0.333%・勝率48.7%で、全銘柄の平均(翌日寄付き+0.082%・翌日終値+0.050%・5営業日後+0.245%・20営業日後+0.938%)と大差がありません。

一方、三空叩き込みの買い向かいは数字の上では当たっていました。3回目の窓あけ(下)の5営業日後は+1.333%・勝率58.4%です。ただし、この優位は発生が集中した数日に支えられていました。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

集計条件をすべて開示します。

  • データ:東証全銘柄の日足(株式分割の影響を除いた調整後の株価)。出来高がゼロの日は除外
  • 期間:2014年1月6日〜2026年9月17日(3,103営業日・5,430銘柄・延べ12,406,774件)。20営業日後までの値が取れる日に限定
  • 窓あけ(上):当日の安値が前日の高値より高い。窓あけ(下):当日の高値が前日の安値より低い
  • 連続回数:窓あけが何日続けて起きているか。その日の時点で分かっている回数で数えるため、先のことは見ていません。途切れれば1回目に戻ります
  • 三空:3回目の窓あけ。上なら三空踏み上げ、下なら三空叩き込み
  • 買値:その日(窓あけが起きた日)の終値。リターンは翌日寄付き・翌日終値・5営業日後・20営業日後の終値で測定

窓あけ(上)のうち、1回目が86.19%、2回目が10.99%、3回目の三空は2.05%、4回目以上は0.77%でした。窓あけ(下)の三空は1.65%です。三空はまれな現象です。

なお、三空は窓あけが3回目になった日だけを数え、4回目以上は別の区分にしています。

2.三空踏み上げの結果:売り向かう優位は見えない

窓あけ(上)が続いた銘柄のその後

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区分件数翌日寄付き翌日終値5営業日後勝率20営業日後勝率
1回目648,479+0.179%+0.099%+0.289%49.6%+1.076%52.0%
2回目82,728+0.318%+0.133%+0.206%48.9%+0.756%51.6%
3回目(三空)15,453+0.427%+0.158%+0.333%48.7%+0.649%52.3%
4回目以上5,758+0.739%+0.428%+0.702%48.6%+0.321%52.7%
全銘柄の平均(比較用)12,406,774+0.082%+0.050%+0.245%49.9%+0.938%51.2%

3回目、つまり三空踏み上げが完成した日の終値で買った場合を見ます。件数は15,453件。翌日寄付きは+0.427%、翌日終値は+0.158%、5営業日後は+0.333%(勝率48.7%)、20営業日後は+0.649%(勝率52.3%)でした。

格言どおりに売り向かっていたとすれば、まず翌日の寄付きで平均+0.427%の上昇を迎えることになります(全銘柄の平均との差は+0.345ポイント)。5営業日後でも全銘柄の平均を下回っておらず、売りで先回りする根拠は見つかりません。

唯一、20営業日後だけは全銘柄の平均を0.289ポイント下回りました。ただ勝率は52.3%と全銘柄の平均(51.2%)より高く、差はわずかです。「そろそろ天井」と決めつけるほどの違いではありません。

3.3日間で大きく上げた三空踏み上げは別物だった

三空踏み上げの15,453件を、3日間の上昇率で分けると景色が変わります。

最も件数が多いのは3日間の上昇率が10%未満の場合で、12,873件です。5営業日後は+0.135%と、全銘柄の平均に近い数字でした。

注目すべきは、3日間で10〜20%上げた1,136件です。翌日終値は-0.567%、5営業日後は-0.560%(中央値-0.741%・勝率43.5%)と、翌日終値・5営業日後ともに全銘柄の平均を下回り、5営業日後の勝率は半数を大きく割りました。

さらに3日間で20%以上上げた1,444件では、翌日寄付きの平均が+4.270%と大きく跳ねます。ところが中央値は0%のままで、5営業日後の中央値は-2.051%、勝率は38.0%です。

この差は、平均と中央値が逆を向いていることを意味します。ごく一部の銘柄が大きく上がって平均を押し上げる一方で、典型的な1銘柄は5営業日後に下がっています。20営業日後の中央値は-2.807%・勝率41.2%で、時間がたつほど典型的な銘柄は苦しくなっていました。

つまり格言が当てはまるのは、「三空だから」ではなく「3日間で急騰しすぎたから」と読めます。この区分は発生日の集中が小さい(上位3日の占有率は1.4%)のに、平均は極端な値に左右されています。

4.三空叩き込みの結果:買い向かいは当たったが…

窓あけ(下)が続いた銘柄のその後

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

区分件数翌日寄付き翌日終値5営業日後勝率20営業日後勝率
1回目622,057+0.031%-0.053%+0.118%51.1%+0.975%52.8%
2回目77,045+0.300%+0.348%+0.709%53.7%+2.343%56.6%
3回目(三空)11,790+0.526%+0.688%+1.333%58.4%+4.255%59.1%
4回目以上3,018+0.298%+0.323%+0.715%55.5%+1.533%56.2%
全銘柄の平均(比較用)12,406,774+0.082%+0.050%+0.245%49.9%+0.938%51.2%

今度は下向きの窓です。3回目まで連続回数が増えるにつれて、その後のリターンが上がっていく様子がグラフからわかります。

1回目の窓あけ(下)の5営業日後は+0.118%で、全銘柄の平均と大きくは変わりません。2回目では+0.709%、そして3回目の三空叩き込みでは、翌日寄付き+0.526%(勝率53.2%)、翌日終値+0.688%(勝率54.2%)、5営業日後+1.333%(勝率58.4%)、20営業日後+4.255%(勝率59.1%)でした。

全銘柄の平均との差は、5営業日後で+1.088ポイントと全区分で最大です。数字だけを見れば「叩き込みには買い向かえ」は的中していました。

ただし、20営業日後の平均+4.255%に対して中央値は+1.425%と、開きが大きいことには注意が必要です。

5.優位は特定の数日に集中していた(頑健性の確認)

極端に下げる局面は、市場全体が急落した数日に一斉に発生しやすいものです。その数日だけで平均が決まっていないかを確認しました。

三空叩き込み(3回目)の11,790件のうち、発生が最も多かった3日は2025年4月7日(864件)、2015年8月24日(259件)、2023年3月14日(256件)で、この3日だけで全体の11.7%を占めます。発生日は全部で2,438日あり、2025年4月7日だけが突出していました。

三空叩き込みの優位は特定の数日に支えられていないか

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この上位3日を除いて再集計すると、5営業日後の平均は+1.333%から+0.444%へ縮みました。全銘柄の平均との差は+1.088ポイントから+0.199ポイントです。20営業日後は+4.255%から+3.216%で、こちらは大きくは崩れませんでした。

これに対して三空踏み上げ(3回目)は、最も多い3日でも全体の2.0%しか占めず、上位3日を除いても5営業日後は+0.333%から+0.330%へとほとんど動きません。三空踏み上げの結果は、特定の日に左右されにくい数字です。

次に、3日間の下落率で三空叩き込みを分けます。

三空叩き込みを3日間の下落率で分けた中央値

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

3日間の下落が深いほど、その後の戻りは大きくなっています。3日間で10〜20%下げた2,040件の5営業日後は平均+3.732%・勝率71.2%、20%以上下げた643件では平均+7.591%・中央値+10.130%・勝率71.7%と、きわめて強い数字です。

しかし発生日の集中度を見ると、話が変わります。10〜20%の区分では、上位3日(2025年4月7日(574件)、2015年8月24日(167件)、2015年8月25日(148件))が全体の43.6%、20%以上の区分では上位3日(2025年4月7日(228件)、2024年8月5日(50件)、2015年8月25日(30件))が47.9%を占めていました。

この上位3日を除くと、10〜20%の区分の5営業日後は+3.732%から+0.358%へ、20%以上の区分は+7.591%から+0.850%へ急低下します。2025年4月7日のように、市場全体が一気に売られた日の後の反発が、深い三空叩き込みの好成績の大半を作っていたと見られます。

なお20%以上の区分の20営業日後は、平均が+43.828%と飛び抜けていますが、中央値は+14.566%です。一部の極端な値に引っ張られた平均で、当てにはなりません。

では、市場全体が崩れていない通常の日はどうでしょうか。同じ日に3回目の窓あけが50件以上出た日を「大量発生日」、それ以外を「通常日」として分けました。

区分件数翌日寄付き翌日終値5営業日後勝率20営業日後勝率
三空叩き込み(3回目)・大量発生日2,739+1.454%+2.352%+4.772%72.4%+7.774%74.6%
三空叩き込み(3回目)・通常日9,051+0.246%+0.184%+0.292%54.1%+3.191%54.3%
全銘柄の平均(比較用)12,406,774+0.082%+0.050%+0.245%49.9%+0.938%51.2%

三空叩き込み(3回目)の大量発生日は17日で、件数では全体の23.2%に当たります。この日の5営業日後は+4.772%・勝率72.4%と突出しています。

通常日の5営業日後は+0.292%(勝率54.1%)で、全銘柄の平均+0.245%とほぼ同じです。三空叩き込みで買う5営業日後の優位は、相場全体が総崩れになった局面のものであって、個別銘柄の三空という形そのものの優位ではなかったと読めます。

6.年別の差と、この検証の限界

年別に見ても、結果はそろいません。三空叩き込み(3回目)の5営業日後は、2014年+0.764%、2015年+2.293%、2016年+0.482%、2017年+0.661%、2018年+1.083%、2019年+0.088%、2020年-1.706%、2021年+0.873%、2022年+0.164%、2023年+0.448%、2024年+1.616%、2025年+6.764%、2026年+0.610%です。

プラスの年が多いものの、2020年のようにマイナスの年もあり、2025年の大きな数字は2025年4月7日の影響を強く受けています。三空踏み上げ(3回目)の20営業日後も、+2.869%(2017年)から-2.476%(2018年)まで、年ごとに符号が入れ替わっています。

結果を使う前に、次の点をご承知おきください。

  • 低位株・薄商いの銘柄が含まれます。値段が小さい銘柄では、呼値(値幅の最小単位)が動くだけで窓があくことがあります
  • 売買コストを含みません。窓あけの直後は板が薄く、想定どおりの値段で売買できないことがあります
  • 空売りの可否は考慮していません。貸株料や売り規制は反映していません

7.よくある質問(FAQ)

Q. 「三空」とは何ですか?窓はどう判定していますか?

A. 窓とは、前日と当日の値動きの範囲が重ならず、チャートに空白ができる状態です。当日の安値が前日の高値より高ければ窓あけ(上)、当日の高値が前日の安値より低ければ窓あけ(下)としました。窓あけ(上)が3日連続すれば三空踏み上げ、窓あけ(下)が3日連続すれば三空叩き込みです。

Q. 「三空踏み上げには売り向かえ」は当たっていましたか?

A. 3回目の窓あけ(上)の5営業日後は+0.333%(勝率48.7%)で、全銘柄の平均(+0.245%)を下回っておらず、売り向かう優位は見えませんでした。

Q. 「三空叩き込みには買い向かえ」は当たっていましたか?

A. そのまま集計すると当たっていました(5営業日後+1.333%・勝率58.4%)。ただし発生日が特定の数日に集中していて、上位3日を除くと5営業日後は+0.444%まで縮みます。

Q. 通常の日には、三空叩き込みの優位はなくなるのですか?

A. 通常日の5営業日後は+0.292%で、全銘柄の平均+0.245%とほぼ同じでした。大量発生日は+4.772%と大きく上回っており、優位は相場全体が急落した局面に限られる可能性が高いと言えます。

Q. 窓あけが4回以上続くと結果は変わりますか?

A. 窓あけ(上)が4回以上続いた場合、翌日終値は+0.428%と高めですが、20営業日後は+0.321%と、全銘柄の平均を0.617ポイント下回りました。窓あけ(下)の4回以上は、5営業日後が+0.715%と3回目より控えめです。件数が少なく、振れも大きくなります。

Q. 3日間で大きく上がった三空踏み上げは危険ですか?

A. 3日間で20%以上上げた1,444件は、5営業日後の平均こそ+2.807%ですが、中央値は-2.051%、勝率は38.0%でした。一部の銘柄が平均を押し上げているだけで、典型的な1銘柄は下がっています。

Q. 結果は毎年同じですか?

A. 同じではありません。三空叩き込み(3回目)の5営業日後は、2015年+2.293%、2020年-1.706%、2025年+6.764%と年によって大きく違い、マイナスの年もあります。

8.まとめ

延べ12,406,774件の日足から、窓あけ(上)752,418件・窓あけ(下)713,910件を数え直してわかったことを整理します。

  • 三空踏み上げに売り向かう優位は見えませんでした。3回目の5営業日後は+0.333%・勝率48.7%で、全銘柄の平均+0.245%と大差なく、翌日寄付きは+0.427%と、むしろ高く始まる傾向でした
  • 3日間で20%以上上げた三空踏み上げは例外。5営業日後の中央値は-2.051%・勝率38.0%で、典型的な銘柄は下がっていました
  • 三空叩き込みの買い向かいは、そのままの集計では当たりでした(5営業日後+1.333%・勝率58.4%)
  • ただしその優位は発生が集中した数日に支えられており、上位3日を除くと5営業日後は+0.444%まで縮みました。通常日の5営業日後は+0.292%で、全銘柄の平均とほぼ同じです

今回の数字が示したのは、格言どおりに動いたように見える結果の多くは、相場全体が動いた数日に作られていたということでした。個別の銘柄の形だけでなく、その日に市場全体で何が起きていたかを同時に確認する。それが、格言を使うときの最初の一歩になりそうです。

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<追伸>
「株システムトレードの教科書」の記事は、機関投資家出身・証券アナリスト検定会員の西村剛が、統計データ・システムトレード・ファンダメンタルズを融合して解説しています。
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