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「ストップ高の翌日は買いか、売りか」――この問いには多くの検証が答えを出してきました。しかし、そこで一括りにされた「ストップ高」は本当に同じ現象でしょうか。海運株のストップ高と新興IT株のストップ高では、買い手の顔ぶれも材料の重さもまるで違うはずです。

本記事では東証全銘柄・2022年10月03日〜2026年07月31日のストップ高7,213件を東証33業種に分類し、翌日リターンをランキングしました。業種を特定できた6,992件が集計対象です。発生件数が30件未満の業種は統計が不安定なためランキングから外し、別枠で一覧にしています。

結論を先にお伝えします。全業種平均の翌日リターン(終値→翌日終値)は+4.17%/勝率57.2%ですが、業種別に割ると1位の陸運業が+9.82%、最下位の食料品が+1.98%。差は7.84ポイント、約5.0倍です。

さらに見逃せないのが件数の偏りです。全体の46.8%が情報・通信業とサービス業で発生していますが、翌日リターンは+3.83%・+3.95%といずれも平均以下。最も頻繁に目にするストップ高ほど期待値が薄いという構図でした。

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。

システムトレード

1.検証ルール

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検証対象:東証上場の全銘柄(データベース収録 4,816コード)
検証期間:2022/10/03〜2026/07/31(933営業日)
サンプル数:ストップ高 7,213件(うち33業種に分類できた 6,992件を集計、1,869銘柄)

【ストップ高の判定方法】

  • 日本取引所グループが定める値幅制限テーブル(前日終値の水準ごとに制限値が決まる方式)を使い、終値ベースで判定します。「当日終値 − 前日終値 ≧ 値幅制限 × 0.995」を満たした日を1件と数えました。ザラ場で一時的に触れただけの日は含みません(0.995は端数処理の誤差を吸収するための係数)。
  • 判定には実際に売買された株価(分割調整前)を使います。調整後の株価では価格水準がずれ、値幅制限テーブルとの対応が崩れるためです。リターンの計算は分割調整後の株価を使い、分割をまたいでも連続した損益になるようにしました。分割・併合の権利落ち日(843日)と出来高ゼロの日は除外しています。

【計測したリターン】翌日ON(当日終値→翌日始値)/翌日日中(翌日始値→翌日終値)/翌日CC(当日終値→翌日終値。ランキング基準)/5営業日後(当日終値→5営業日後の終値)

【業種分類の定義】

  • 銘柄マスターの業種コード(1〜33の整数)を東証33業種に対応させました。対応は次のとおりです。
    1=水産・農林業、2=鉱業、3=建設業、4=食料品、5=繊維製品、6=パルプ・紙、7=化学、8=医薬品、9=石油・石炭製品、10=ゴム製品、11=ガラス・土石製品、12=鉄鋼、13=非鉄金属、14=金属製品、15=機械、16=電気機器、17=輸送用機器、18=精密機器、19=その他製品、20=電気・ガス業、21=陸運業、22=海運業、23=空運業、24=倉庫・運輸関連業、25=情報・通信業、26=卸売業、27=小売業、28=銀行業、29=証券・商品先物取引業、30=保険業、31=その他金融業、32=不動産業、33=サービス業
  • この対応は推定です。コードごとの登録社数が東証33業種の実際の社数分布とほぼ一致すること、各コードの代表的な構成銘柄が業種名と矛盾しないこと(例:コード22に大手海運3社、コード28に大手銀行持株会社、コード8に大手製薬各社が入る)を確認して確定しました。
  • 1〜33以外(0、34〜36、欠損)はETF・REIT・分類不能な旧コードが混在するため「その他・未分類」とし、集計から除外しています(221件)。上場廃止銘柄は、除外すると買収・非公開化を材料にしたストップ高が消えて生存バイアスがかかるため、そのまま含めました。

【ランキングの採用基準】発生件数30件以上の25業種のみ採用。30件未満の8業種(合計101件)は「サンプル僅少」として別枠で一覧にし、全業種合計をベースラインとして各業種を評価します。

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2.検証結果

(1) 業種別 翌日リターンのランキング

東証33業種別 ストップ高翌日リターンのランキング

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

全業種平均は+4.17%(中央値+2.28%、勝率57.2%)。ここを基準線に置くと上位と下位で傾向がはっきり分かれます。

首位は陸運業の+9.82%(47件、勝率70.2%)。2位パルプ・紙が+8.09%(38件)、3位非鉄金属が+6.03%(117件)と続き、上位には鉄鋼・倉庫・運輸関連業・卸売業・不動産業・海運業と重厚長大・素材・物流・不動産といった「地味な業種」が並びました。

対して最下位は食料品の+1.98%(53件、中央値-0.10%)。その上に精密機器+3.12%、医薬品+3.39%、電気機器+3.41%、情報・通信業+3.83%、サービス業+3.95%。個人投資家に人気の高い成長株セクターがそろって下位に沈みました。しかも情報・通信業とサービス業の2業種だけで全体の46.8%(1,944件と1,330件)を占めます。投資家の体感と数字のねじれがここにあります。

(2) 上位業種・下位業種の5営業日後

上位8業種と下位8業種の5営業日後リターンと勝率

※画像はクリックすると拡大してご覧いただけます

5営業日後まで持ち越した成績です。全業種平均は+3.92%、勝率47.8%。まず注目すべきは平均+3.92%に対し中央値が-0.77%という点。勝率も5割割れで、平均は一部の大きく伸びた銘柄が押し上げているとわかります。平均だけを見て「5日持てば約4%取れる」と考えるのは危険です。

業種差を見ると上位群は5営業日後も伸びが続きます。陸運業+9.56%(勝率70.2%)、非鉄金属+10.71%(勝率58.1%)、卸売業+8.64%、海運業+8.18%と、翌日で強かった業種が5日後も強いという一貫性があります。

一方の下位群は情報・通信業+2.46%(勝率43.9%)、サービス業+2.48%(勝率44.0%)、医薬品+1.49%(勝率43.1%)と勝率が軒並み45%割れ。件数の最も多い2業種は、5日保有すると勝率が4割台前半まで落ちます。なお5営業日後がマイナスだったのはガラス・土石製品(-0.88%)だけでした。

(3) 業種別 完全データ表(25業種)

順位業種件数銘柄数翌日ON翌日CCCC中央値CC勝率5日後5日勝率
1陸運業▲4723+9.57%+9.82%+10.55%70.2%+9.56%70.2%
2パルプ・紙▲3810+11.05%+8.09%+1.54%60.5%+15.06%60.5%
3非鉄金属11729+7.67%+6.03%+3.25%59.0%+10.71%58.1%
4鉄鋼▲3919+8.00%+5.95%+4.61%61.5%+2.96%53.9%
5倉庫・運輸関連業6320+7.48%+5.87%+4.02%68.2%+3.60%54.0%
6卸売業31099+6.91%+5.34%+3.75%61.9%+8.64%53.4%
7不動産業16950+7.26%+5.13%+3.82%59.2%+6.35%54.2%
8海運業▲3517+6.05%+5.03%+1.71%51.4%+8.18%51.4%
9機械336110+5.77%+4.96%+3.44%62.5%+7.20%54.6%
10輸送用機器13435+5.76%+4.90%+2.13%61.2%+5.76%56.7%
11化学23890+6.50%+4.77%+2.41%58.8%+6.63%55.3%
12証券・商品先物取引業▲4318+6.34%+4.73%+4.07%69.8%+8.03%58.1%
13電気・ガス業▲3314+8.13%+4.59%+5.57%60.6%+6.11%54.5%
14金属製品14950+7.37%+4.53%+2.27%55.0%+4.45%46.3%
15建設業12562+5.96%+4.51%+4.06%64.8%+4.18%62.4%
16ガラス・土石製品8127+6.71%+4.48%+2.68%58.0%-0.88%44.4%
17小売業400122+7.36%+4.46%+2.86%59.8%+3.31%46.5%
18サービス業1,330320+6.04%+3.95%+1.78%55.7%+2.48%44.0%
19情報・通信業1,944398+6.01%+3.83%+1.94%55.9%+2.46%43.9%
20その他製品20648+6.04%+3.75%+1.75%55.8%+5.01%48.1%
21繊維製品▲5620+5.36%+3.46%+0.00%48.2%+7.39%39.3%
22電気機器465133+4.62%+3.41%+1.62%57.9%+4.67%52.3%
23医薬品31953+6.62%+3.39%+0.55%50.8%+1.49%43.1%
24精密機器16132+6.03%+3.12%+1.12%54.0%+6.22%50.0%
25食料品5333+2.68%+1.98%-0.10%49.1%+1.81%52.8%
全業種平均(ベースライン)6,9921,869+6.21%+4.17%+2.28%57.2%+3.92%47.8%

※▲印は少数の銘柄または特定日に発生が偏っている業種(後述の頑健性チェック参照)。青字は全業種平均を上回った数値。

(4) 頑健性チェック――上位業種の成績は「本物」か

業種別の平均値で必ず確認すべきなのが、好成績が特定の1日や少数の銘柄に集中していないかです。1銘柄が10回ストップ高を出して全部成功していれば、業種平均は簡単に跳ね上がります。そこで上位10業種について「最も発生の多かった1日が全体の何%か(最頻日シェア)」「発生回数の多い上位3銘柄が全体の何%か(上位3銘柄シェア)」を計算しました。

順位業種件数銘柄数最頻日シェア最多1銘柄シェア上位3銘柄シェア判定
1陸運業47234.3%23.4%42.5%偏りあり(割引評価)
2パルプ・紙38102.6%47.4%68.4%偏りあり(割引評価)
3非鉄金属117292.6%12.0%30.8%分散良好
4鉄鋼39195.1%23.1%41.0%偏りあり(割引評価)
5倉庫・運輸関連業63204.8%17.5%39.7%分散良好
6卸売業310991.3%8.4%21.3%分散良好
7不動産業169501.8%10.1%27.8%分散良好
8海運業35172.9%20.0%45.7%偏りあり(割引評価)
9機械3361101.8%4.8%14.0%分散良好
10輸送用機器134353.0%9.0%25.4%分散良好
全業種平均(ベースライン)6,9921,8691.3%0.6%1.7%

日付の集中は全業種で最大6.1%(電気・ガス業)、ベースラインで1.3%。「相場全体が急騰した特定の1日に成績が支えられている」という現象は起きていません

問題は銘柄の集中です。全業種合計では上位3銘柄シェアが1.7%ですが、上位の一部では極端に高くなります。パルプ・紙は上位3銘柄で68.4%(38件をわずか10銘柄が出している)、陸運業も42.5%、海運業45.7%、電気・ガス業63.6%。これらは「その業種が強い」ではなく「その業種の特定の数銘柄が強かった」と読むべきで、本記事では該当業種に▲印を付けて割り引いて評価します。

逆に件数100件以上・上位3銘柄シェアが低く・平均を上回った業種は次の9業種でした。非鉄金属・卸売業・不動産業・機械・輸送用機器・化学・金属製品・建設業・小売業(合計1,978件、加重平均で翌日+4.91%、5営業日後+6.21%)。これが「サンプルが厚く偏りも小さい」実用グループであり、本記事で最も信頼できる結論です。

(5) サンプル僅少の業種(30件未満)

次の8業種は発生件数が30件に届かず、ランキングから除外しました(合計101件)。参考値として掲載しますが、数字を鵜呑みにしないでください。

業種件数銘柄数翌日ON翌日CC5日後
その他金融業2112-0.22%-3.80%-5.49%
鉱業201+6.66%+4.67%-13.49%
銀行業147+2.79%+3.25%+3.67%
水産・農林業133+5.54%-1.02%-7.37%
ゴム製品134+10.75%+6.02%+16.56%
保険業116+9.86%+5.38%-2.15%
石油・石炭製品94+5.52%+3.00%-2.06%
空運業00期間中の終値ストップ高ゼロ

※参考値です。件数が30件に満たないため、平均値は数件の極端な値に左右されます。売買判断の根拠にはできません。

空運業は期間中の終値ストップ高がゼロ件。銀行業14件、保険業11件という数字も、大型の金融株ではそもそもストップ高がほとんど起きないという市場構造を示しています。

3.なぜ業種で差が出るのか

翌日リターンで7.84ポイントもの差が生まれる理由を、データと突き合わせて整理します。

  1. 材料の「重さ」が業種で違う:上位の重厚長大・素材・物流・不動産では、業績の上方修正、価格転嫁、大型受注、資産の再評価など数字に直結する材料が引き金になりがちです。翌日以降も業績予想の修正が続くため上昇が持続しやすい。卸売業(310件)の5営業日後は+8.64%、非鉄金属(117件)は+10.71%と、翌日を超えて伸びています。
  2. 下位業種は「期待」で動くため剥落が早い:情報・通信業やサービス業、医薬品は提携発表や開発ステージの進展など将来価値の見直しが材料になりがちで、数字の裏付けが乏しいぶん冷静な値付けへ戻ります。医薬品は翌日CC+3.39%でも中央値+0.55%、5営業日後は+1.49%/勝率43.1%まで落ちます。
  3. 「寄り天」の深さが業種で違う:全業種平均では翌日寄付きで+6.21%のギャップアップとなり、引けまでの日中に-1.84%(勝率34.7%)と押し戻されます。翌日リターンの大半はオーバーナイトで作られ、日中は平均して削られるのが基本構造です。度合いは業種で異なり、電気・ガス業が日中-3.23%と大きく吐き出す一方、陸運業は+0.30%とランキング25業種で唯一プラスを維持しました。
  4. 浮動株と個人投資家比率:下位業種は時価総額の小さい新興企業を多く含み、値動きの主体が個人投資家に寄ります。翌日は利益確定売りが集中しやすく、日中に押し戻す力が強い。情報・通信業は日中-1.96%、サービス業は-1.87%と平均並みに削られています。
  5. 発生頻度そのものが情報を持つ:全体では6,992件を1,869銘柄が出し、1銘柄あたり3.74件。ところが医薬品は319件を53銘柄が出しており、1銘柄あたり6.02件と突出します。同じ銘柄が何度も繰り返す業種は、材料の賞味期限が短いと読めます。なお食料品(53件)のようにストップ高が滅多に出ない業種もありますが、希少性は期待値に変換されず、翌日CCは+1.98%・中央値-0.10%とほぼゼロでした。
  6. 上位の一部は「銘柄の癖」の可能性:頑健性チェックのとおり陸運業・パルプ・紙・鉄鋼・海運業・証券・商品先物取引業・電気・ガス業・繊維製品は少数銘柄への偏りが大きく、好成績は業種全体の性質ではなく数銘柄が繰り返し強い動きを見せた結果かもしれません。業種という括りを信じすぎないことも、このデータから学べる教訓です。

4.データが示す正解戦略

6,992件のデータから導ける実務的な結論です。

  • 業種フィルターは有効だが、順位そのままには使わない:1位陸運業(+9.82%)はサンプル47件・上位3銘柄シェア42.5%と偏りが大きく鵜呑みにできません。使うべきは「件数が厚く、偏りが小さく、平均を上回る」9業種=非鉄金属・卸売業・不動産業・機械・輸送用機器・化学・金属製品・建設業・小売業(合計1,978件、翌日+4.91%)です。
  • 翌日リターンの主役はオーバーナイト:全業種平均でオーバーナイト+6.21%(勝率72.4%)、日中-1.84%(勝率34.7%)。翌日寄付きで手仕舞う設計のほうが構造には素直です。
  • 持ち越しは業種を選ぶ:5営業日後まで持つなら上記9業種に限定(加重平均+6.21%)。情報・通信業(+2.46%/勝率43.9%)やサービス業(+2.48%/勝率44.0%)は5日保有に向きません。
  • 平均ではなく中央値で期待値を見積もる:5営業日後は平均+3.92%に対し中央値-0.77%。典型的な1回の結果はわずかにマイナスで、平均を押し上げているのは少数の大幅上昇です。1〜2銘柄への集中投資では、この「少数の当たり」を取り逃す確率が高くなります。
  • サンプル僅少業種は根拠にしない:8業種・合計101件。数字が良く見えても偶然の範囲です。
  • 件数が多い=勝ちやすい、ではない:情報・通信業とサービス業で全体の46.8%を占めますが翌日リターンは平均以下。機会の多さと期待値の高さは別物です。

5.実践活用

(1) 大引け後のスクリーニング手順

  • 当日の終値ベースのストップ高銘柄を抽出します。ザラ場で触れただけの銘柄は含めません(本検証の定義に合わせるため)。
  • 抽出した銘柄に業種を紐づけます。銘柄一覧に業種が表示される取引ツールなら、その場で分類できます。
  • 1日あたりの発生件数は期間平均で7.5件。業種で絞れば実際に検討する対象は数銘柄まで減ります。

(2) 業種フィルターの当て方

  • 優先度A(検討する):非鉄金属・卸売業・不動産業・機械・輸送用機器・化学・金属製品・建設業・小売業。サンプルが厚く偏りも小さく、翌日+4.91%・5営業日後+6.21%。
  • 優先度B(条件付き):▲印の業種(陸運業・パルプ・紙・鉄鋼・海運業・証券・商品先物取引業・電気・ガス業・繊維製品)。平均は高いものの少数銘柄に偏っています。その銘柄が過去に繰り返しストップ高を出していないか履歴を確認してから判断します。
  • 優先度C(見送り):情報・通信業・サービス業・医薬品・精密機器・食料品など平均以下の業種。件数は多く目に付きますが、この検証の範囲では優位性を確認できませんでした。

(3) エントリーとイグジットの設計

  • エントリー:当日の大引け、または翌日寄付き。期待値は「当日大引け→翌日寄付き」の区間(全業種平均+6.21%)に集中しています。
  • イグジットA(翌日寄付き):最もシンプルで、日中の押し戻し(平均-1.84%)を回避できます。
  • イグジットB(翌日大引け):全業種平均+4.17%/勝率57.2%。日中を取りにいく分ぶれが大きくなります。
  • イグジットC(5営業日後):優先度Aの業種に限定するのが前提。全業種平均では勝率47.8%と5割を割り込みます。
  • ロスカット:翌日は値動きが荒くなります。許容できる下落幅を決め、割り込んだら機械的に撤退します。

(4) 記録と検証の回し方

  • 売買記録に必ず業種を残します。記録がないと「どの業種で勝っているか」を後から検証できません。
  • 10件、30件と積み上がった段階で成績を業種別に集計し直し、本記事の全業種平均(翌日+4.17%)と比べてどこで削られているかを確認します。
  • 同じ銘柄が何度も出てくる場合は、業種の性質ではなくその銘柄の癖を追っている可能性があります。頑健性チェックと同じ視点を自分の記録にも当ててください。

6.注意点とリスク

  • 手数料とスリッページで実際のリターンは目減りします:本検証は終値・始値の理論値で計算しており売買コストを含みません。翌日は値動きが速く、想定した価格で約定しないこともあります。翌日+4.17%という数%規模の期待値では、コストの影響を無視できません。
  • 過去の傾向であり、将来の成績を保証するものではありません:検証期間は2022/10/03〜2026/07/31の約3年10か月で、この間の相場環境に依存した結果である可能性があります。
  • サンプル僅少業種の数字は使えません:8業種・合計101件(空運業0件、石油・石炭製品9件、保険業11件など)。数件で平均が大きく振れるため順位付けの対象外としています。
  • 上位業種には銘柄の集中が残っています:パルプ・紙は上位3銘柄で68.4%、陸運業は42.5%、海運業は45.7%。業種ではなく特定銘柄の性質を見ている恐れがあり、将来も再現するとは限りません。
  • 平均値と中央値の乖離:5営業日後は平均+3.92%に対し中央値-0.77%、勝率47.8%。平均だけで期待値を見積もると実感と大きくずれます。分散投資が前提です。
  • 業種分類は推定です:業種コードと東証33業種の対応は社数分布と代表銘柄の照合から推定したもので、個別には実際の分類と食い違う銘柄が含まれる可能性があります。分類できなかった221件は集計から除外しています。
  • ストップ高の判定条件に依存します:本検証は終値ベースです。ザラ場で一度触れて引けでは剥がれた銘柄を含めると結果は変わります。
  • 流動性の低い銘柄では執行できないことがあります:翌日は買い気配で始まり寄り付かないケースもあり、データ上の「翌日始値」で必ず売買できるとは限りません。

7.よくある質問(FAQ)

Q. ストップ高翌日のリターンは、業種でどれくらい変わりますか?

A. 1位の陸運業が翌日+9.82%、最下位の食料品が+1.98%で、差は7.84ポイント、約5.0倍でした。全業種平均は+4.17%(勝率57.2%)です。ただし上位の一部は少数銘柄への偏りが大きいため、順位をそのまま信じず件数と偏りをセットで確認してください。

Q. なぜ発生件数が30件未満の業種を除外したのですか?

A. 件数が少ないと1件の極端な結果で平均が大きく動くためです。除外した8業種は合計でも101件しかありません。参考値として一覧は掲載していますが、売買判断の根拠には使えない水準です。

Q. 成績の良い業種は、特定の日や特定の銘柄に偏っていませんか?

A. 日付の集中は全業種で最大6.1%にとどまり、相場全体が急騰した特定の1日に支えられている業種はありませんでした。一方で銘柄の集中はあり、パルプ・紙は上位3銘柄で68.4%、陸運業は42.5%を占めます。該当業種には記事中で▲印を付け、割り引いて評価しています。

Q. 結局どの業種を見ればよいのでしょうか?

A. 件数100件以上・少数銘柄への偏りが小さい・全業種平均を上回る、の3条件を満たした9業種――非鉄金属・卸売業・不動産業・機械・輸送用機器・化学・金属製品・建設業・小売業が最も信頼できるグループです。合計1,978件で、翌日+4.91%、5営業日後+6.21%でした。

Q. 情報・通信業やサービス業のストップ高は狙わないほうがよいですか?

A. この検証の範囲では優位性を確認できませんでした。両業種で全体の46.8%を占めるほど件数は多いのですが、翌日は+3.83%・+3.95%と平均以下、5営業日後の勝率は43.9%・44.0%まで低下します。特に持ち越し戦略との相性は良くありません。

Q. 翌日は寄付きで売るべきですか、引けまで持つべきですか?

A. 翌日リターンの大半はオーバーナイト(当日終値→翌日始値)で作られています。全業種平均でオーバーナイト+6.21%(勝率72.4%)、そこから引けまでの日中が-1.84%(勝率34.7%)。寄付きで手仕舞う設計のほうが構造には素直です。ただし陸運業のように日中もプラスを維持した業種もあります。

Q. 5営業日後まで持ち越す戦略は有効ですか?

A. 業種を選べば選択肢になりますが、無条件では勧められません。全業種平均は+3.92%と見栄えがしますが、中央値-0.77%、勝率47.8%です。少数の大幅上昇が平均を押し上げる構造のため分散投資が前提になります。手数料や逆行時の損切りも考慮して設計してください。

8.まとめ

東証全銘柄のストップ高7,213件(業種を特定できた6,992件)を33業種に分けて検証しました。要点は5つです。

  1. ストップ高は業種で意味が変わります。翌日リターンは1位陸運業+9.82%、最下位食料品+1.98%。差は7.84ポイント、約5.0倍の開きでした。
  2. 上位は重厚長大・素材・物流・不動産、下位は成長株セクターという並びです。業績の数字が動く材料ほど翌日以降も持続し、将来期待が材料の場合は早く剥落するという構図が現れました。
  3. 件数の46.8%を占める情報・通信業・サービス業はいずれも平均以下。目にする機会の多さと期待値の高さは別物です。
  4. 頑健性チェックが不可欠です。日付の集中は最大6.1%と問題ありませんでしたが、パルプ・紙は上位3銘柄で68.4%と偏り、業種の性質とは言い切れません。件数が厚く偏りの小さい9業種(非鉄金属・卸売業・不動産業・機械・輸送用機器・化学・金属製品・建設業・小売業、合計1,978件・翌日+4.91%)が最も安心して使える結論です。
  5. 翌日リターンの主役はオーバーナイト。全業種平均でオーバーナイト+6.21%に対し日中-1.84%。持ち越すなら業種を絞り、平均ではなく中央値(5営業日後-0.77%)で期待値を見積もってください。

「ストップ高が出た」という事実だけで飛びつくのと、「どの業種で出たか」を一手間かけて確認するのとでは、同じ手法でも期待値が変わります。手数料やスリッページを差し引けば数字はさらに削られますし、これはあくまで過去の傾向で将来を保証するものではありません。それでも、業種という無料で手に入る情報をひとつ足すだけで判断の精度が上がるなら、使わない手はないはずです。次にストップ高の一覧を眺めるときは、値上がり率の隣にある業種名にも目を向けてみてください。

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