日本株

執筆者

西村剛
西村剛

フェアトレード株式会社 代表取締役。機関投資家出身で統計データを重視したシステムトレードに注力。2011年株-1グランドチャンピオン大会で+200.4%、2012年+160.1%、2013年157.0%を叩き出し三連覇達成。証券アナリスト検定会員。システムトレードを使った定量分析と、これまでファンドマネジャーとして培ったファンダメンタルズ分析を融合した新しい視点で株式市場を分析し、初心者でもわかりやすい言葉を使った解説に定評がある。



システムトレード

1.  発注方法の違いとシステムトレードの関係


システムトレードでは、売買ルールを作る際、発注方法の違いも成績に影響します。
より良い成績の売買ルールを作成するためには、それぞれの発注方法の違いを理解しておくことが必要です。
システムトレードでは、発注方法の違いも成績に影響を与えます。

以下のグラフと検証結果をご覧ください。

発注方法

【検証結果】

トレード回数:796回
勝率: 67.13 %
平均損益(率): 2.07 %
合計損益(円): 4,954,540 円
最大ドローダウン(時価ベース): 2,314,275 円

これは、ある売買ルールについて、買いシグナルの翌日に「成行で買う」という条件で検証した結果です。
合計損益は、約500万円です。300万円の資産が約800万円にまで増えており、なかなか利益が期待できそうな売買ルールに見えます。

次は、このルールの買い条件を、「シグナルが出た日の終値+4%で買う」という指値注文に変更して検証します。
検証結果は、以下の図の通りです。発注方法

【検証結果】 

トレード回数:797回
勝率: 67.55 %
平均損益(率): 2.22 %
合計損益(円): 5,300,456 円
最大ドローダウン(時価ベース): 2,314,275 円

上図が成行注文を指値注文に変更した検証結果です。
合計損益は、約530万円です。先ほどの検証結果に比べて約30万円増加しています。

このように、発注方法を変更するだけでも、成績が変化することが分かります。
だからこそ、各発注方法の特長を押さえておくことは、今後システムトレードを実践していくあなたにとって有益なのです。

ただし、発注方法といっても、それほど沢山あるわけではありません。
基本は、価格を指定しないで出す「成行」注文と、価格を指定して出す「指値」注文の2つです。
ここから派生したものとして、「不成」や「逆指値」といった発注方法があります。
「成行」と「指値」をしっかり理解しておけば、それほど難しいものではありません。
ぜひ、ここで習得できるようにがんばっていきましょう。

では、次節から、各発注方法の概要について学習を進めましょう。

2.  成行注文/指値注文

株式取引の経験がある方であれば、成行・指値注文は既にご存じかもしれません。
ただし、このように発注方法を改めて勉強することもないと思います。ぜひ、ここで確認しておきましょう。

①  成行注文

成行注文とは、価格を指定せず発注する注文方法です。
ザラ場(取引時間中)に成行注文を出すと、買いの場合はそのとき最も低い価格で出された売り注文に対応して即座に注文が成立します。

一方、売りの場合は、最も価格が高い買い注文に対応して注文が即座に成立することになります。
例えば、現時点での株価が450円、最も価格が低い売り注文が430円、最も価格が高い買い注文が460円のときに買いの成行注文を出すと、430円で買えることになります。

一方、売りの成行注文を出すと、460円で売れることになります。
確実に約定させたい、というときは成行注文を使うとよいでしょう。

非常にシンプルな発注方法ですが、成行注文のデメリットとしては、「スリッページ」が起こるリスクがあることです。
「スリッページ」とは、売りと買いの板に開きがある銘柄に注文(主に成行注文)を出すことで、自分が注文を出した際の株価(前日終値)と約定した際の株価にズレが生じる現象のこと言います。

発注方法

例えば、上図のように、前日に500円で引けた銘柄があるとしましょう。上図のように注文が並んでいるとします。
寄り付きで買いの成行注文を2,000株分発注したとすると、平均約定単価は約509円になります。
想定では、501円で購入できるつもりが、100株あたり509円で約定してしまったことになります。
システムトレードの検証では、その終値ですべて購入できたという前提で検証が行われますが、このように、実際の売買では「スリッページ」がよく発生します。
特に、取引量の少ない(流動性の低い)銘柄で成行注文を使う場合には、要注意だと言えるでしょう。

  【「システムトレードの達人」上での設定画面(成行)】

発注方法

出所:システムトレードの達人 標準モード「買いルール」画面

②  指値注文

指値注文とは、価格を指定して発注する注文方法です。
指値注文には、他に寄り付き時に限定した注文である「寄り指値」注文と、引けに限定した注文である「引け指値」注文があります。
指値注文には、価格を指定して発注できるため、スリッページを起こさずに約定できる、というメリットがある一方、指定した価格に株価が到達せず、約定しない可能性がある、というデメリットもあります。

指値注文に関して、一点補足があります。
指値の発注方法が、「指定した価格でしか約定しない」訳ではない、ということです。
指値注文はその価格でしか約定しない、という印象を持ちがちですが、実際には株価の現在値が優先されるため、買いの場合は指値価格より安い価格で、売りの場合は指値価格より高い価格で約定することがあります。

時折、トレーダーの方から、「指値1,000円で発注したのに、980円で買えたのですが、なぜですか?」と質問を受けることがありますが、まさにこのことです。

次に、システムトレードで指値を利用するメリットについて考えてみましょう。
指値注文では、価格を指定して発注します。よって、約定しないこともあります。
しかし、その反面、成行のように、不用意に高い(低い)価格で買う(売る)ことがなくなります。

買いから入るルールの場合、指値の条件を厳しくすることで、安い価格で買い付けできるトレードに絞りこむことで、成績が改善する可能性があります。

なお、「システムトレードの達人」では、指値の条件を、シグナルが発生した日の始値、高値、安値、終値を基準に設定できます。
また、指値にする株価の値を、「終値+●%」や「終値+●ティック」(ティック:株価の動く最小の刻み)のように、二つのパターンで設定することもできます。

  【「システムトレードの達人」上での設定画面(指値)】

発注方法

出所:システムトレードの達人 標準モード「買いルール」画面

3.  成行注文/指値注文

次は不成注文と逆指値注文です。
不成注文や逆指値注文は、成行注文や指値注文に比べ、使用頻度が低いので、あまり馴染みのない発注方法かもしれません。

しかし、仕組みを理解しておけば、あなたが売買ルールを作る際の幅が広がります。そして、あなたのシステムトレーダーとしてのレベルが一段上がるでしょう。

①  不成注文

「不成注文」とは、大引けまでに指値注文が約定しなかった場合、引けで成行注文に切り替わる方法です。
つまり、ザラ場(寄付きを含む)は、指値注文の状態です。株価が指値に到達すると約定します。
ただし、もしザラ場中に、指値で約定しなかった場合は、引けで「成行注文」に切り替わります。そして、当日中に約定することができます。

「不成注文」は、「成行」と「指値」注文の特徴を合わせ持った発注方法とも表現できるでしょう。
システムトレードでは、売りシグナルが出た翌日に手仕舞いするのが基本です。
「不成」注文では、「成行」注文と同様に、この翌日に手仕舞いを行うことができます。
また、仮にザラ場中に指値に指さった場合には、指値注文で約定します。
よって、ザラ場で約定した場合は、「指値」注文と同様に「スリッページ」を起こすことはありません。

しかし、デメリットもあります。
それは、ザラ場に約定しなかった場合には、前引け(もしくは大引け)で「成行」注文に切り替わることです。
「前引け」とは、前場の引けであり、「大引け」とは、後場の引けのことです。
前引けまでに指値が指さらなかった場合には、「成行」注文で手仕舞いします。
ゆえに、「スリッページ」が起こるリスクがあります。
ただし、すべてトレードを寄付きで「成行」注文するよりは、「スリッページ」を起こすリスクは小さいでしょう。

  【「システムトレードの達人」上での設定画面(不成)】

発注方法

出所:システムトレードの達人 標準モード「買いルール」画面

②  逆指値注文

はじめに、「逆指値」とは、どういった注文方法なのかについて解説していきましょう。

「逆指値」注文を解説するにあたり、「指値注文」について復習しましょう。
トレードする場合、値段を指定して注文する方法を「指値」といいます。

買い注文の場合は、株価が指値を下回ったら注文が約定します。
また、売り注文の場合には、株価が指値を上回ったら注文が成立します。

例えば、「指値100円の買い注文」を出した場合には、株価が「100円以下」の場合には約定しますが、「100円より大きい(101円以上)」の場合には、約定しません。
「指値」注文に関しては、あなたにも馴染み深い注文方法でしょう。

では次に、この「指値」注文を踏まえた上で、以下のような注文について考えてみましょう。
そこで、便利な注文方法として活用できるのが、「逆指値」注文です。
「逆指値」は、指定した価格よりも「株価が高くなったら買い」「安くなったら売り」という注文を出すことができます。
株価が100円を上回ったら買いたいと考えた場合には、「逆指値100円」買い注文を出します。
「逆指値100円買い」では、株価が100円に到達するまでは、注文は約定しません。株価が100円以上になった場合には、注文が約定します。

では、ここで「逆指値」注文をより想像しやすくするために、「指値」と「逆指値」の違いをイメージ図で確認しましょう。以下のイメージ図をご覧下さい。

【指値注文と逆指値注文の違い】

発注方法


上記は、「指値注文と逆指値注文の違い」のイメージ図です。
「指値〇円買い」と注文を出した場合には、「株価が〇円を下回ったら買い」という意味です。

一方で、「逆指値〇円買い」と注文を出した場合には、「株価が〇円を上回ったら買い」という意味になります。
つまり、指値と逆指値では、株価〇円を挟んで、約定する範囲が逆になっていることがわかります。
これは、売り注文についても同様です。約定する範囲が「指値」の逆であることから、「逆指値」と呼ばれています。

「株価が100円を上回ったら買い」といった注文を、「指値」注文で実践する場合には、株価の変動を一日中チェックしている必要があります。

しかし、「逆指値」注文を用いることで、常に株価のチェックをしていなくても、自動的に「100円を上回ったら買い」を実践できるのです。
そういった意味では、とても便利な注文方法と言えるでしょう。

また、システムトレードからは少しずれてしまいますが、逆指値注文は、「損切り」として利用されることも多いです。
株価は刻一刻と変化しており、何らかのニュースや不測の事態によって、大きく暴落することがあります。そこで、逆指値を活用し、「株価〇円を下回ったら売り」と損切りラインを設定することで、想定外の損失を回避することも可能です。

  【「システムトレードの達人」上での設定画面(逆指値)】

発注方法

出所:システムトレードの達人 標準モード「買いルール」画面

以上が発注方法の解説です。発注方法も売買の成績に影響を与える要素の一つです。しっかり理解しておきましょう。

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